ある日、扉が落ちてきて

ある日、扉が落ちてきて

 題名どうり扉が落ちてくるお話です。

 あなたはいきなり扉が目の前に落ちてきたら・・・

 逃げますか?無視しますか?

 それとも・・・

 あけてみますか?

普通だった日常


もうすぐ後期中間テストがある。

すでにテスト週間に入ってしまっているというのに私はろくに勉強もしていない。

それは周りも一緒だ。

だんだんテストの順位が下がっているのは分かってる。

もう2年生だからがんばんなきゃって、自分で思ってる。

でも無理だ。

私は勉強が嫌いだ。できない。30分で眠くなり実際すわったまま寝てしまう。

「じゃあどうするのだ金沢由紀美ぃ!!」

自分で自分の名前を叫んだってどうしようもない。

うん。わかってる。ただこの状況が辛すぎて。

「金沢さんって、絶対頭いいよね。」

「頭いいくせにバカぶらないでよもぅ。」

ほざきやがれ。私は本当にバカなのだ。

なぜこうメガネをつけているだけで「頭いい」などと決め付ける?

・・・メガネを付けた奴がみんな頭いいと思うなよ。猫型ロボットが出てくるあのアニメの主人公を知っているのか!?

バンッ!!

おもいっきり机を叩いたら結構痛かった。

「イタタ・・・何やってんだ・・・私・・・。」

こんなこと考える暇があるならさっさっとテスト勉をしろ!!

机にひろがる教科書、ノート、参考書。

・・・まずい・・・まだなにも書いていないのに・・・眠気が・・・というか吐き気が・・・。

ギリギリ肩につかない短い髪の毛を両手でわしゃわしゃとやった。

「ああああああ無理無理無理。」

その時、あの今大人気の海賊物のアニメのオープニングテーマがリビングからきこえた。

「うそ!?そんな時間!?」

私は急いでリビングにかけつけた。

もちろん、そのあと、私が勉強をすることはなかった・・・。

扉が落ちてきて


アニメ大好き、漫画大好き、ゲーム大好きな私には

「勉強なんて無理だァァァァっ!!」

「そうだぁぁぁぁっ!!私も無理だァァァァっ!!」

いつもの帰り道。

学校が終わり友達と二人で帰る帰る道では、いつもいろんな話をしていた。

最近はテストへの不満ばかりだが。

「あー、でも由紀美はいいよぉ。まだ私よりはマシだから。」

幸呼愛(ここあ)がため息をついた。

幸呼愛は身長がひくい。

私は160あるから二人ならぶとかなりのでこぼこコンビ。

「あー、二次元に行きたい・・・。」

いつだって二次元に憧れてて。

アニメの世界行きたいなーって。

でも行けるはずないから。

あきらめる。

でも行きたい。

「空から扉落ちてきたりしないかなー。」

「そんなことあるわけないじゃん。何言ってんの。」

笑う幸呼愛。

「そうなんだけど。」

私は空を見上げた。

毎日思う。

扉がふってきて、私をどこか別の世界に誘ってくれないかなーって。

まぁ、でも、そんなこと起こるわけないから。

また、あきらめる。

「じゃあ、由紀美。また明日ねー。」

「うん、じゃねー。」

いつものところで別れる。

手をふりかえし前を見る。

また明日が来るのか。できれば来ないで欲しい。というか来るな。

「はーもう、ほんっとに、扉落ちてきたり・・・。」



ドッスーン!!!!!!!!!!!


由紀美の目の前に巨大な何かが落ちてきた。

とんでもない強風が体にあたり、由紀美は顔をふせた。

えええええ何何!?!?

風がやみ、前を向くとそこにあったのは

「扉・・・?」

「嘘でしょ・・・。」

とてつもなく巨大な扉が目の前に立っていた。

・・・いや、刺さっていたというのが正しいのかもしれない。

まがまがしい紫と黒が混じったような色だった。

いかにもヤバイ扉だ。

開けちゃやばいやつだ。

なんかあけたら魔王復活的な雰囲気だこれ。

「・・・・・・・。」

よし、逃げよう。

後ずさりを何歩かしたところで、目の前で扉が開いた。

みんな、わかってほしい。私は何もしていない。勝手にひらいた。

しかもギギギギギギギギとかいかにも魔物が出てくる扉って感じ。

私は固まってしまいその場に立ち尽くすことしかできなかった。

「・・・ほう。貴様が3人目の『女神に選ばれし者』か・・・。」

出てきたのはいかにも悪者ですみたいな感じのおじいさん?だった。

体は細く、ガリガリでツメが長く紫色をしている。魔術師みたいな服を着ているから多分そういう類のものかなと思うけれど・・・。

つかまっちゃマズイ系ですか?

ですよね。

よし。

そいつらとの距離、10m前後。

多分すぐ捕まるだろうがここはもう全力で逃げるしか・・・。

そう思い後ろを振り向くとそこには


もう一つ扉が出現していた。

光の扉


「嘘でしょぉ・・・。」

また扉だ。

今まであんなにも望んでいた扉を嫌がっている私にびっくりだ。

今度の扉は光っていたのはわかるが私に観察する暇も与えず扉が開いた。

スーっと開いた扉から飛び出してきたのは

「待って待って待って。」

別に、ちょうちょを待ってよ~アハハと追っかけていたわけではない。

頭がついていけない。

目の前にはペカガスに乗った人、馬に乗った人、ファルコンもいればドラゴンもいる。

「おのれ・・・邪魔がはいったか・・・。」

さっきの悪そうなおじいさん。

略して悪じいでいいや。

「貴様らに『女神に選ばれし者』を渡すわけにはいかない!!」

なんかリーダーっぽいお兄さんが話してる。

間にはさまれた私はとにかく家に無事に帰る方法を考えていた。

「つかまえろ!!」

「あいつらを抑えておくんだ!!その間にあの子を連れ出す!!」

いっせいに動き出した謎の人たち。

いやいや待ってくださいよ。何ですか。何言ってんすか。

はっ!!

もしかして何かの映画の撮影なのか!?

じゃあ私おもいっきり写ってんじゃん・・・!!

あれ、でもカメラ・・・・・・・って


「ぎゃぁぁぁぁっ!!」


悪じいの部下的なゾンビみたいな骨みたいな奴がなんかめっちゃくるんですけど!!??

とにかく走った。

「ウォォォォォォォ。」

「アアアアアアア。」

なんかうめいてるよ!?怖いよ!?てか早いよ!?追いつかれるよ!?怖いよ!?

「ちょっ、まてまてまてまてまてぇぇぇっ!!」

なんで私ぃぃぃぃぃぃぃっ!?

「くそっ・・・数が多すぎる・・・。」

「何してんだ!!クロウ!!早くしろ!!」

「わかってる!!!だが!!」

クロウと呼ばれた人が悪じいの部下を次々と剣で倒していく。

「クロウ様!私にお任せを!」

「たのむ!デルス!!」


横から馬のひづめの音が聞こえてくると思ったその瞬間。

浮いた感覚があった。

誰かに腕をつかまれた。

「ひっ!?」

とっさに目をつぶる。


「お怪我はありませんか?」

上から聞こえてくる優しい声。

うっすらと目をひらくととにかく馬に乗っているということは理解した。

そして私がよりかかっているのは・・・

鎧?

異世界へ


「クロウ様!!救出しました!!」

「よくやった!デルス!全員!時空の扉へ飛び込め!!撤退する!!」

デルスと呼ばれた男の人は私を乗せたまま扉へ向かいだした。

私は馬にまたがっているわけではなく、横にして座っているためかなり不安定だ。

こわい・・・というか、私、乗ったままなんだけど・・・。

「え、あの、私は・・・。」

「捕まっててください。」

顔を見て初めて気づいたが・・・


めっちゃハンサムやん!!

歳はもう26か27ぐらいだろうけど、めっちゃカッケーやん!!

私がガン見しているのに気づいたのかデルスさんが私の方を見て優しく微笑んだ。

「大丈夫ですよ。」

あぁ・・・こんなお父さんが欲しかった・・・。

なんて考えていたため、周りの風景が変わっていることに気づかなかった。



扉を通ったと気づくのにしばらく時間がかかってしまった。

マジですか


・・・ここどこだ。

まて・・・・・・まてまてまて。

マジですか

後ろを見ると扉がしまっていくのが見えた。

ねぇあのちょっと!!

「わっ、私乗ったままですよ!?」

「ええ、それでいいんです。」

!?



・・・・・・・・・・・・・・?

!?


驚いたあとによく考えたがよく分からずとりあえず、また驚いた。

「全員いるな!!ベイト!!ベイトはいるな!!」

「ここにいるよ。」

小さくぼそっと返事が聞こえた。

「ティル!!」

「るっせーないるよぉ!!俺はここにいるぞぉっ!!・・・・・ったく、いつまでも子供と思うなよ。」

私と同い年ぐらいの男の子がぶっきらぼうに返事をした。・・・なんかぼそぼそ言ってる。


「いくぞ!基地へ戻る!」

あのクロウって人語尾に「!」がつかないと気がすまないのだろうか・・・。


っていやいやいやちょっとまてよ!!

「あの私!!」

話を聞かずになんかへんな人たちは動き出した。

私が乗っている馬も動き出す。

クロウの横についた。

「あ、あの、デルスさん。私も行くんですか?」

「ええ。とりあえず、話は基地に帰ってからにしましょう。」

そして黙り込む。

何に神経をとがらせているのか。

・・・その時。


ペガサスに乗った女の人が上空から降りてきた。

「クロウ!!前から屍が!!」

クロウがすかさず剣をぬく。

それを見た仲間たちがいっせいに武器をかまえはじめた。

10人くらいいるだろう。

ていうか屍って・・・あれですか?

骨?


「デルス!彼女はまかせた!!いくぞ、リィズ!」

「うん!」

クロウはリィズのペガサスにリィズの後ろにまたがるように飛び乗り、飛んでいった。

「お気を付けて。」

デルスがつぶやいた。


前からさっき襲ってきたゾンビのような骨のような生物が近づいてくる。

13体ぐらいいるだろうか。

こっちは・・・10人

こっちの方が少ない。

もうすでにクロウとリィズは上から攻撃を加えていた。

「あ、あの、私、その・・・ここにいると邪魔だと・・・。」

「それで?どうなさるんですか?おりるんですか?あなたが降り立って何も出来ません。」

グサッ

いや、そうなんだけど。

そうだけど・・・・・・・・・・。


デルスがふっと笑った。

「私は強いです。心配ありません。それより、あなたが馬から落ちないように頑張ってくださいね。」

「・・・・・・・・。はい。でも、もし」

「もし、はありません。・・・落とされないでくださいよ!!」

前方から屍接近。


デルスがヤリで迎え撃つ。

私は必死にしがみつく。顔を鎧の方へ向けるからいったいどんなふうになっているかわからない。

けど

やっぱり動きづらいとは思う。

「あの、やっぱり私!!」

「喋らないでください!舌を噛みますよ!」

そう言われなにも言えなくなった。


お荷物なのがたまらなく嫌だった。

戦闘

まわりで剣と剣がぶつかるような音が響く。

いろいろな声が飛び交う。

怖い。

そう思った。

「きゃぁぁぁぁっ!!」

ふと、横で叫び声が聞こえた。

そっちを見ると女の子が屍から逃げていた。

仲間らしいが武器をもっていない。

いま飛び降りればどうなるかわからない。

きっとデルスさんも怒るだろう。

でも

(やらないで後悔するならやったほうがいい!)

そう思い私は無理やり馬を飛び降りた。

「いけません!!待ちなさい!!」

後ろから聞こえるデルスの声を無視して由紀美は戦場に飛び出した。

今にも女の子の頭に屍の斧が振り下ろされそうだ。

「まにあってっ・・・!!」

全速力で女の子のもとへ走る。

「イダっ」

何かにつまづき転んだ。

どうやら倒された屍の斧らしい。

由紀美はそれをつかむ。

「ヴヴッ・・・重っ・・・」


「ひっ・・・・っ・・・・」

女の子は恐怖で言葉も出ないらしい。

このままでは死んでしまう。

私の運動能力じゃ走ってもまにあわない。

「なら!!」



由紀美が斧をもって振り回し始めた。

「おんどりゃぁぁぁぁぁっ!!」

なんと屍にむけてぶん投げた!!すげぇ!!

斧は屍に命中し屍が崩れ落ちる。

「やった!」

小学生の頃から椀力だけは自信がある。

まさかこんな時に役立つとは。

想像もしていなかったぜ!!

「大丈夫?」

そうとう怖かったのかまだ震えていた。

よく見ると杖をもっている。

・・・?魔法使いみたいなやつかな?

じゃあなんで魔法使わなかったのだろう。

そんなことを考えながら、私はその子に手を差し伸べた。

「立てる?」

女の子はまだ顔が青かったが私に笑顔をむけた。

「ありがとう。」

小さくそう言った。

私より年下かと思ったがちゃんと近くで見るとそうでもないらしい。

腰まであるふわっふわな茶色い髪の毛にかわいい顔。

(ああ・・・この子のフィギュアあったら絶対買ってるよ。)

なんて考えていた。

するとなぜか彼女は私をみてもっと青ざめた。


・・・・・・・・考えよまれたのか!?

うわ、なにこいつ、キモとか思われてる!?

「あっ、いや、その、ちがうんだ、その。」

なんとか弁解をはかるがうまくいかない。

あああクソッ!!



あれ・・・彼女・・・私じゃなくて・・・・

私の後ろを見てる?

双子

嫌な予感がしてそーっと後ろを見た。

屍くんがいた。

しかも3体。

なぜだかわからないが屍の数が最初より増えていた。

「嘘でしょ・・・・。」

私・・・・・ここで死ぬのかな。


「おーい、レイー。」

「なんだー、ライー。」

顔がそっくりな17歳ぐらいの男子が戦いながらも会話をし始めた。

「ヴィルはどこいったー?」

槍をふる。

屍が崩れた。

「ありゃ?ホントだ。どこいった?」

槍をふる。

屍が崩れる。

双子のナイトはきれいに交互に屍をたおしていた。

「どうしよう・・・あの子、武器使えないからそばにおいといたのに・・・。」

心配そうにまわりをキョロキョロする。

こっちの双子は左目の下にほくろがついている。

「どーせ、またジルのところだろ。」

また、槍をふる。

屍が崩れてく。


「あ、いた。」

ライが声をあげた。

「あ、あー・・・あれは・・・。」

「「やばいね。」」

二人はいっせいに馬を走らせた。

青い壁

やばい。

どうするこの状況。

3体の屍がジリジリと近づいてくる。

私は後ろの女の子をかばうように腕をひろげた。

私にはなんの力もない。

このままだと後ろの子も死んでしまう。

こんな時に役立つ力があれば・・・。


屍がいっせいに襲ってくる。


私は体が熱くなるのを感じた。


次の瞬間。



目の前の世界が青くなった。



何がおきたのかわからない。


屍も目の前にいるのになぜか襲ってこなかった。


何かしている。


まるで壁をたたいているような・・・。




壁。



私は青い透明の壁を作り出していた。

守護の力

「うわうわヤバイって!!」

馬を全速力で走らせる。

「わかってるなら早くしろよ!!」

すでに3体もの屍がヴィルとあの子を襲おうとしている。

あの子がヴィルを守ろうと腕を広げた。

「まずいってヤバイって!!」

レイが叫ぶ。

「あの子死んだら俺たちクロウに殺されるよ・・・。」

ライがつぶやいた。


その時。


あの子が青く光りだした。

「うわっ、まぶしっ。」

「っ」

眩しすぎて目をそらす。

光が引いてきて目を上げると


青いバリアができていた。

あの子の目が鈍く青く光る。

「うひゃあ・・・あれが『女神に選ばれし者』の力かぁ・・・。」

「リィのよりはマシでしょ。リィは暴走すると止まんないんだから。」

「今回は『守護』の力だね。」

「っ・・・と、話してる場合じゃねぇな。あいつら片付けねぇと。」

「もーライ言葉遣いー。」

そう言いバリアにたかる屍を一気に倒す。

素晴らしい息の合いようだ。



バリアが薄れていく。

由紀美はその場に倒れた。

おぼえていたのは


ただ

倒れる前に

おぼえていたのは

青い壁と

屍と

女の子の声と

デルスさんの声と

青年の声。


『大丈夫ですか!?』

『いきなり力を発動させてしまうから・・・。』

『ていうかクロウさん来た。』

『とりあえず基地に戻らない?』




・・・・・・・・それだけ。

基地


白い天井が見える。

布団に寝かされているのはわかった。

寝た体制のまま周りを見渡してみる。

どうやらテントらしき所らしい。

建物というか全て布だから多分テント。

・・・・・・・・だと思う。



「ん・・・・・。」

起き上がってみる。

そしてメガネをかけていないことに気がついた。

「メガネ・・・・。」

キョロキョロしてみる。



「っと・・・・・あった。」

メガネをかけて再度周りを確認する。

やはりテントらしきところだった。

私が寝ているのはハンモックだった。

でも揺れないのはかなり固定されているせいだからだろう。



「ここどこだろ・・・・。」

とりあえずハンモックからおりてみる。

「・・・・・・・・・・私ほんとに異世界に来ちゃったのか?」

どうしよう。

いや、めっちゃ嬉しいけど。

嬉しいけどさ。

「帰れないのかな・・・・?」

さすがに不安だ。

とりあえず誰かいないかな・・・。

テントの出口らしきものがあったからそこから出てみる。


「あー・・・なるほど。」

どうやらここが基地らしい。

でっかいテントの中に仕切りを作り部屋を作って布屋敷みたいになっている。

さっきの戦闘をふまえると基地なんてちゃんと作ったっていつ敵に壊されるかわからないのだ。

簡単に作れる布の基地にしたのだろう。

でもこれこんなデカイの作るのはさすがにとは思うけどさ・・・。


先ほどの部屋からでてまっすぐ行くと本当に外への出口を見つけた。

外に出てみる。

「・・・・・・・・異世界の朝・・・・・・・・か・・・・・・・。」

太陽がのぼる。

朝日が世界をてらす。

私はただ、黙って見つめていた。

チャラ男

まわりは目の前の道以外はすべて森だった。

太陽がのぼったことだしそろそろみんな起きる頃だろう。

由紀美は後ろを振り返り布の基地を見る。

そこまでデカくはないが色をカラフルに塗ってしまえばサーカスのテントに見えるだろう。

後ろに後ずさりながらテントをながめる。


次の瞬間


誰かにつかまれ、体が浮く。

なんか体験したことあるような感覚だった。

「キャアッ!?」


やはり馬だった。

ぼーっとしていたそうで馬のひづめの音も聞こえなかったようだ。

馬がスピードを落とすと道のはじっこでとまった。

横向きにすわった私のすぐ後ろに木がある形になる。

私をつかんだ男の人がその木に右手をつき、私の顔を上から覗き込むようにして見てくる。

「こんなところで何してるの・・・?子猫ちゃん?」

「え゛!?」



いや、おまえこそ私に何してんだよ。

その男の人は髪が背中まであるロングヘアでかなりカッコイイが

遊んでいます感ハンパない。

というか胸元あきすぎだろ。

「あ、あの、離れてくださ・・・。」

「もしかして照れてるの?・・・・かわいいね。」

一気に顔が赤面する。

絶対こいつ慣れてる。

「なっ、何言ってるんですか!!」

「顔赤いね・・・やっぱり照れてるんだ。」

「ちが・・・。」



シュン!!


カッと音とともに男の人の頭すれすれに矢が木に刺さった。

私の顔は赤から青へ一気に色を変えた。

あと少しでもずれてたら・・・・。

いや、ずれてても良かったかも。

男の人も固まる。

そして木から引っこ抜いた矢を見てため息をついた。


「君か・・・レイカ。」


ふと見ると弓をもった和風のきれいな美女が立っていた。

レイカ

レイカと呼ばれた人が怖い顔をこちらに向けていた。

「君たしかこの前も邪魔したよね?どうゆうつもり?」

男の人がかったるそうに言った。

「あれは女子(おなご)が嫌がっていたではないか!!なんだその、『いい雰囲気を邪魔された。』的ないいぐさはっ!!」

喋り方も特徴あるなこの人。

「だいったい、女子がいたらあっちへフラフラこっちへフラフラ・・・・。」

「あぁ、ヤキモチね。」


レイカさんが新しい矢を取り出した。



「はぁ・・・・・・わかった、わかったよ。」

男の人は仕方がないという感じで私を馬からおろした。

(よ、よかった・・・。)

胸をなでおろす・・・


暇もなく今度は斧が飛んできた。

「!?」

斧が・・・


私の顔は青を通り越して白くなった。

男の人が飛んできた斧をかわした。

「っと・・・・・・ハハッ・・・・・今回は斧か。前は槍が飛んできたな・・・。」

私はただ斧が木に刺さってるのを眺めることしかできなかった。


「レイジャァァァァァァン!!」

その声に体がビクッと反応した。

今度は何!?

基地の方から馬に乗った人がすごい勢いでかけてくる。

「まーたお前は遊んでたのかぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」



デ、デルスさん・・・・・?


「あはは・・・兄さんおはよう。」

レイジャンがさわやかな笑顔で言った。

「貴様何がおはようだ!!クロウ様とともに戦っていることをわかっているのか!?」

「わかってるよ。僕はクロウの仲間だよ。」

「馬鹿か!!もし町にオルゴの手下がいたらどうするんだ!!」

「だぁいじょうぶだよ。僕は強いから。」

「レイジャン!」


私は二人が会話に熱中している間にここの空間から逃げようと思った。

とりあえずここに突っ立っているだけじゃどうしようもない。

私がそそくさと動き出すと先ほどの和風美女が話しかけてきた。

「面目ない。あの二人はいつもああなのじゃ。許してやってくれ。」

おかっぱの髪に鋭い目つき。

すごい美形だった。

ここまでの美形は私も初めてである。

「あ、はい。」

つい口数が減ってしまう。

私より5つぐらい年上だろう。


「あいつらはほっておいて中に入らぬか?」

「あ、はい。」

私は美女の後ろをついていった。


中に入ってしばらくまっすぐ歩いていくと開けた場所に出た。

家で言うとリビングらしきところだった。

様々な人がいた。

「おーレイカー。レイジャンとデルスはまたやってんのかー?」

赤髪の男の人が話しかける。

「あぁ。」

「とりあえず基地を破壊しないように言っといてくれ。」

「クロウ。言うなら今行け。今日は斧だぞ。」

「・・・・・・・・・・・・。」

クロウさんは頭を抱え込んだ。

「「あれ?その子、一緒だったの?」」

双子が声をそろえて聞いてきた。

「あぁ、レイジャンにからまれてたから助けた。」

「うわぁ・・・・。」

「サイテー。」

「あ、帰ってきたっぽい。」

後ろからレイジャンさんが華麗に宙返りで登場した。

「ははは、兄さん怒ってるなぁ。」

デルスさんが両手に斧をもって登場した。

「きっ、貴様・・・・ゆるさ」

「デルス!!落ち着け!!」

クロウさんが止めにかかる。

「クロウ様!!おはなしください!!今度こそコイツにわからせてやります!!」

「やめろ!!ここでそれを投げたら基地が壊れる!!」

「「壊れるどころか死人も出るよ。」」

双子が小さい声でつぶやいた。

クロウが必死で叫んだ。

「そうだ!そうだった!!デルス!彼女が無事に起きたなら早くこの子にいろいろ聞かなければいけないだろう!?とりあえずこの子に自己紹介してもらおう!!な?」



どうやら落ち着いたらしい。

「先程は失礼致しました。さて、あなたのお名前を知りたいんですが・・・。」

ここにいる全員の目が私にむいた。

やっべ緊張してきた。

「ゆ、由紀美です。」

「ユキミさんですか。では、ユキミさん。とりあえずこの状況を説明させていただきます。」

デルスさんが淡々と話し始めた。

デルスのお話

この世には悪と正義がある。

正義があれば

悪が存在するのだ。



「クロウ様はテルウィン王国の王子であられます。」

「!?」

私はそこらへんに転がっていた正方形の木箱に腰をかけて、デルスさんの話を聞いていた。

クロウさんが・・・王子。

・・・・なんて呼べば・・・・クロウ様?・・・・・いや、クロウ王子・・・・?

ていうかそこは別に問題ない。

「わたくしめはクロウ様の護衛係、その他、世話などクロウ様の身の回りの雑用をしています。」

「はぁ・・・・・。」

だから『クロウ様』か。様づけ気になっていたんだよね。

「テルウイン王国は2年前はとても平和でした。」

「2年前・・・。」

「そう・・・・クロウ様の祖父、オルゴ様・・・がご乱心になられるまでは。」

2年前

「クロウ。」

「オルゴじいさん!起き上がって大丈夫なの?」

この時クロウは16歳。

「大丈夫だ。案ずるでない。」

オルゴは63歳。重い病にかかっているためほぼ寝たきりの生活だった。

「グレイは?」

クロウは顔を曇らせた。

「・・・・グレイ兄さんは1年前に出て行ったきり戻ってきていないよ。忘れたの?」

「あぁ・・・・そうだった・・・・・・。」

オルゴがため息をついた。

杖を付ききびすをかえす。

「オルゴじいさん?」

「すまない。気分が悪い。部屋までついてきてくれぬか?」

「あぁ。もちろん。」

クロウがオルゴの体をささえる。

「ありがとう。」



この頃はまだ普通だった。


でも、ある日を境におかしくなってしまった。

変わってしまった。

それは夜のことだった。

満月が輝く夜。

あの夜は忘れられなかった。



「キャァァァァァッ!!!」

夜中の城に女の叫び声が響き渡る。

クロウはベッドから跳ね起きた。

「なんだ?」

クロウは声が聞こえた方へと走っていった。


しばらく走っていくと女が部屋の前で立っている。

クロウがはしりよっていく。

「どうした!?」

だが女は何も言葉をはっさない。

声を聞きつけた人たちが一斉に集まってきた。

「どうしたんだ?」

「何事だ?」

「この部屋、オルゴ様の部屋じゃなか。」

そのあいだも女はただ立っているだけだった。

目の焦点があっていない。

クロウは女が不自然だと思った。

「おい、どうし・・・。」

「クロウ。」

部屋からオルゴが出てくる。

「オルゴじいさん!!」

「はっはっは、この女、わしがクモを見せたらいきなり叫び出しおってな。つい部屋に逃げてしまったんじゃ。」

クモ・・・・・・・・・・?

すると周りの人々が一斉にちっていった。

ただ、だまって歩き出す。

異様な光景だった。

「みんなどうしたって言うんだ・・・・・?」

さっきの女もどこかへと行ってしまった。

まるで術をかけられたような・・・・・・・。

「オルゴじいさん本当に何もなかったの?」

「大丈夫だよ。クロウや・・・・・。」

オルゴの手がクロウへと伸びてくる。

なぜか恐怖を感じた。

「オルゴじいさ・・・。」



「クロウ様。」



後ろをむくとデルスが立っていた。

「どうなされたのですか?」

「え、あ、いや・・・。」

なんだったんだ。

「夜深いです。お部屋にお戻りください。」

「あ、ああ・・・・・・。オルゴじいさん・・・おやすみ。」

「・・・・・・・・・・・あぁ、おやすみ。クロウや。」

クロウとデルスが歩き出す。

しばらくすると後ろでドアがしまる音がした。

「クロウ様。」

「・・・・・・。」

「クロウ様?」

「!あ、いや、すまない。なんだ。」

「・・・・・・いえ、なんでもございません。」

「・・・・・・・・そうか。」

心が不安で押しつぶされそうだった。

なにかおかしかった。

「オルゴじいさん・・・・・・・・・。」

クロウが小さく呟いた。


その日からオルゴじいさんは部屋に閉じこもるようになった。

召使などによるとどうやら奇妙な音も聞こえるらしい。

日に日にオルゴじいさんは変わっていった。

あの優しい老人はどこにもいなかった。

デルスはクロウよりも早く異変を察知。

クロウにオルゴのことを言うがクロウはデルスの言葉を否定していた。

だが、クロウもオルゴのことは気になっていた。

なにか企んでいる・・・・。

そんな気がしてならなかった。



「王様。オルゴ様の様子が・・・・・最近、おかしいのですが。」

デルスが王座のまえに片膝をついた。

「おかしいとは・・・・どうおかしいのだ?」

「召使のあいだでも噂になっております。奇妙な音が聞こえるだの、爆発音が聞こえるだのと。」

「だからなんなのだ。」

「王様・・・・?」

王の様子がおかしい。

「私の父は素晴らしいのだ。全知全能なのだ。全てなのだ。素晴らしいのだ。」

ブツブツとつぶやき始める。

「お、王様・・・?」

目の焦点があっていない。

まさか・・・もうすでに・・・・・。


王の後ろからオルゴが現れた。

「!?」

「ジャックや・・・どうしたのじゃ・・・。」

「父は素晴らしい。私の父。」

「そうだな・・・。そうだな・・・。」

オルゴがデルスのほうへと目を向ける。

目が真っ赤に光っていた。


すでにこれは計算済みだった。


デルスは王座に背をむけると全速力で走り出した。

城の門を出るとクロウがすでに馬に乗っていた。

「デルス!!」

「お逃げください!!」

デルスは馬に乗ると馬を走らせた。

クロウもそのあとについていった。


後ろから操られた兵たちが追いかけてくる。

「デルス!オルゴじいさんは・・・。」

「何者かに操られているか、ご自身がご乱心なのかどちらかでしょう。王様もすでにオルゴの手駒となりはてました。」

「そんな・・・。」

「クロウ様!国をでましょう!今、ここにいれば私たちもきっと・・・・。」

「わかった・・・。国を・・・でる。」

二人は国の出口へと馬を走らせた。

私が・・・?

「・・・・・ということは・・・・。」

あの悪じい=クロウ王子のおじいさん!?

ええええ!?

「オルゴは『女神に選ばれし者』をすでに一人、手に入れています。」

「!?」

「『女神に選ばれし者』は全部で5人います。そのうち2人はこちらにいるんですが、1人むこうにという感じで・・・。」

「残りの2人をこちらに迎えた後にその1人を救出する!」

クロウが言った。

私はとりあえずわからないことを聞いてみた。

「あの・・・・『女神に選ばれし者』って・・・・・?」

「あぁ・・・・そっから・・・・。」

レイカがつぶやいた。

デルスは話し始める。

「『女神に選ばれし者』とは5人集まるとどんな願いもかなうと言われております。」

「まぁ、一人一人、力はそれぞれあるんだけど。」

「ちなみに君は守護?の力・・・だよね?」

「うん。確かそう。」

レイとライが話し始める。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


「私は・・・・『女神に選ばれし者』?」



「「「「「「そのとうり。」」」」」」



何人かの人が声をあわせて返事をくれた。


あははははははははははは。





「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!?!?!?」


「うそ!?」

「「じゃないお☆」」

双子が返す。



「・・・そう・・・なんだ・・・。」

なるほど。

わたしが女神に選ばれし者ね。

そうか・・・。



夢オチキタコレ


そうに違いない。

こんな似たような夢いままで幾千と見てきた。

ハハ・・・。


私が頭を抱えてブツブツうなっていると


「あり?みんなしてどうしたんだ?」


女の子が部屋に入ってきた。

「お、リィ。」

「いいところに。新しい仲間だ。」

「え!?仲間!?」

「あ!もしかしてうちと同じ?」

「そう、女神に選ばれし者だよ。」

「今回は守護の力だ。」

「はー・・・守護。うちとは反対だ。」


まてまて。オイ。

「うち、リィ。うちも女神に選ばれし者なんだ。ちなみに『力』の力です。うは。」

顔をかわいくかたむけると短いポニーテールがゆれた。

「よろしくー。」

手を出してきたからとりあえず握手。

「よ、よろしく。」

変態レオン


私が・・・

選ばれた者・・・。

・・・・・・。


実感わかねぇ!!


「というかその服。」

「?」

「あんた弱いんだからもう少ししっかりしたのじゃないとすぐに死んじまう。」

グサッ

「ハハハ・・・。そうですネ。」

たしかに今の服装は学校の制服という・・・。

「ねぇ!!それ何!?見た事ない繊維だよね!!あ!!そっか!!異世界から来たから当然か!!でもすごいね!!これどうゆうのでできてるの!?は!!これ名前!?名前書いてるの!?うわぁ!!全く読めない!!すごいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

メガネをかけた黒髪のポニーテールの人が話しかけてきた。

というか一方的にしゃべりだした・・・?

「落ち着いて、レオン・・・。」

「レオンさんは知らない物に極度の興味をもつ性格ですので・・・。」

「しばらくは質問攻めだな。」

リィさんが

「うわぁ!久しぶりだ!!こんなレオン!うちもそうだったなー。もう大変で大変で・・・・・ブハッ!!ちょっ、おまっ、めっちゃ引いてるwwww。引き顔wwwwwwww。」

こんどはリィさんが私の顔を指差して笑い出した。

そりゃ引くでしょ・・・。

「もしかしてそのメガネ!異世界の物質でできてるの!?えええええええ見せて!!あ!ちょ、逃げないでぇぇぇ!!」

「落ち着けレオン。」

後ろで水色の髪の好青年がレオンさんをおさえる。

「ああ!!放して!!ドロォウ!!放してぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

私はそそくさとデルスさんの影にかくれた。

「まぁ、確かにその服ではあまりにも無防備ですね・・・。」

デルスさんが私をみて考える。

「倉庫になかったでしょうか・・・。」

「あ、それでしたら私が探しに・・・。」

茶色の髪の毛で左耳の方の上で横に髪を縛っているタレ目の可愛い女の子がそそくさとどこかへ行ってしまった。

「なんかすみません・・・。」

「いえ。あなたには安全に過ごしてもらわなければなりませんので。」

「はぁ・・・・・・。」

先程部屋を出て行った女の子が戻ってきた。

「あの、こんなものでしたら・・・。」

差し出された物はどうやら魔術師が着るローブみたいなものだった。

そのほか、ズボン、靴、服・・・など、防具がたくさん出てきた。

「よく見つけましたね・・・。」

「ていうかホコリまみれ・・・。」

「・・・・・・どれだけ奥から引っ張り出したんだ・・・。」

「もうすこし綺麗なのあったと思いますが・・・。」

女の子が涙目だ。

「い、いや!でも!ほら!洗濯すればキレイになるよ!!」

別の子がフォローに入る。

「「ねぇ、これ破れてるけど。」」

双子が追い詰める。

「!!」

女の子が泣き出しそう・・・。

この双子絶対楽しんでる。

「でっ、でも!ビナは裁縫得意でしょ!?ビナが直せばいいんだよ!ね?」

さっきの子がなだめるように言う。

どうやら泣かずにすんだらしい。


(やれやれ・・・。)

私はため息を着いた。

ある日、扉が落ちてきて

ある日、扉が落ちてきて

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更新日
登録日
2013-11-10

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  1. 普通だった日常
  2. 扉が落ちてきて
  3. 光の扉
  4. 異世界へ
  5. マジですか
  6. 戦闘
  7. 双子
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