魔法高校とその仲間たち

魔法
それは一部の人間にのみ使える異能であり、それを使う者は魔法使いと言われていたが
今は魔法も職業にする時代であり魔法師と言われている。


   ◇ ◇ ◇
「で、ハル姉、新入生の俺がどうして登校時間の1時間も前に学校に来なくちゃいけないんだ?」
「あら、そんなのアキ君と一緒に登校したいからに決まってるじゃない」
そんな答えを返してくるのは、この俺、桐岡秋人(きりおかあきと)の実の姉の桐岡遥である。
正直、ハル姉は容姿は完璧でモデルみたいな体系をしている。それに、魔法の腕も一流でスポーツも万能だ。弟の俺が言うのも何だが、兄弟じゃなかったら惚れてても不思議じゃないだろう。

「ハル姉は生徒会の仕事で忙しいかもしれないけど、俺はあとの時間どうすればいいんだよっ!」
「アキ君は私の隣に居てくれるだけでいいの」
「なんでだよっ」
先ほども述べたとおり、ハル姉は生徒会役員、それも生徒会長だ。まだ2年なのに東京魔法高校の生徒会長を務めてるのは開校以来ハル姉だけらしい。うむ自慢の姉だ。
だが、その姉にも弱点がある。
それは
「アキ君のことが大好きなんだからしょうがないじゃない」
そう、ブラコンなのだ。それも普通のブラコンではなく超絶ブラコンなのだ。
だから、他の奴が何て言っても、俺としては接し方が難しい。
つまり、苦手なのだ。

「そういうのを言うのは家の中だけにしてくれよ」
「あら、家の中でも怒るくせに」
「当たり前だろうが、弟にそんなベタベタする姉とか普通はいねぇよ」
「あらっ、普通がどうとかは些細な問題だわ。私たちは私たちよ」
「俺を巻き込むなっ」
今にも抱きついてきそうなハル姉を両手でぐいぐい押し返す。
俺の方が体のサイズが一回り大きい分、楽に押し返せるが、一日に何回もこれだと正直疲れる。

「じゃあ俺は先に教室に行っとくからな」
「あっそうだ、アキ君、放課後に生徒会室に来てちょうだい。きっと喜ぶと思うから」
「ハル姉の考えることなんか、どうせろくなことじゃないだろうが」
「あら、それは失礼ね。今回はきっと喜ぶわ」
私がと小声で付け足していたが聞こえなかっただろう。


   ◇ ◇ ◇
俺の教室は1?F、入学時の試験での実技試験(規模などは関係なく何種類の魔法ができるか)と筆記試験でクラスが分かれれいる。ちなみに生徒会長たるハル姉は2?Aでエリートなのだ。
「あー、朝からハル姉の相手は疲れる」
そう言って机に伏したまま浅い眠りにつく。

「おっ、俺より早く来る奴がいたんだな」
「誰だ?」
軽い口調で聞いてみると、そいつは俺の前の席に座った。

「名前を覚えてねぇとはひでぇなぁ。まぁでも昨日は入学式だけだったし仕方ないか」
「で、名前は何なんだよ?」
「あー、わりぃわりぃ、俺の名前は風切郁斗(かぜきりいくと)だ。よろしく頼むぜ」
少しも不機嫌じゃないが、不機嫌そうな顔をして答えると、予想通りでこいつは軽く焦っていた。

「あぁ、こちらこそよろしく頼む。クラスの奴は誰も分からんから、友達ができるのは少なからず嬉しい」
「俺のことは郁斗って呼んでくれてもいいぜ」
「俺の事は秋人でもアキでも好きなように呼んでくれ」
「じゃあ秋人って呼ばせてもらうぜ」

そこまで言って教室にはけっこうな人数がどんどん入ってきた。
通学用のバスや電車の時間的にこの時間が多くなるのだろう。
もしかしたら、ハル姉はこれが分かってたから、わざと早く来たのかも知れない。

「郁斗、朝から何話しとんねん」
「げっ、咲じゃねぇか」
郁斗が明らさまに嫌な顔をした相手は、どんどんこっちに近づいてくる。
「で、郁斗、幼馴染を置いて先に行くとはどうゆうことなんや?説明してくれるんやろな?」
「咲が家出るの遅ぇから先に行ってるっていっつも言ってるじゃねえかよ」
「そんなん関係ないやろ」
「むしろ、関係大有りじゃねえか」
郁斗と話している少女は関西弁の言動と、活動的な雰囲気が特徴的なボーイッシュな少女だった。
いや、この子はかなりの美少女だ。タイプは違うがハル姉レベルの美少女だと思う。

「そいで郁斗」
「なんだよっ!」
「そこの人ってあんたの友達か?」
不機嫌な郁斗に向かって、全く気にする様子もなく俺のことを聞いてきた。
「そうだよ。席が前後だし、早く学校来てるから何となく気があいそうなんだぜ」
早く来てると言うよりも、連れて来られてるとは全く言えない雰囲気だった。

「郁斗の友達ならウチの友達でもあるな。ウチは咲、夏川咲や。気軽に咲って呼んでぇな。あっ、気軽にって言うても軽い女と思わんでな」
思わねえよと言いたかったが、いきなり言ってしまうと新たな友情関係が壊れてしまいそうな気がするのでやめておくことにした。
「俺のことも秋人でいいぞ」
「じゃあ秋人君って呼ぶからよろしく」

「あっそうや、ウチの新しい友達も紹介したるわ。リンちゃんこっち来てぇな」
名前を呼ばれた女子生徒が、一番前の席から一番後ろの俺の席まで歩いてくる。名前の順で男女一緒に並んでいるが、俺の次の番号と言うことは何かと接点も多いだろうから、なるべく良い印象を持って貰いたいものだ。

少し疑問に思っていたが目の前まで来ると改めてその小ささに驚く。
「今、失礼なことを考えている目をしていたのです」
「いや、そんなことはない」
鋭い指摘に思わず棒読みで答えてしまう。
「まぁいいのです。もう慣れましたから」

「それより咲、この方達は咲の友達なのですか?」
「うん、そうやでっ、リンちゃんにも紹介したいからなぁ」
「分かったのです。私は桜井鈴、鈴って呼ぶことを特別に許可してやるです。ありがたく思うのです」
見た目が小学生の少女に言われると、こうも腹が立つのかとも思ったが、根は悪い奴じゃなさそうなので許してやることにした。

「こっちが秋人君で、この猿みたいな奴が郁斗。仲良くしたってなぁ」
「猿じゃねぇよ」
「二人とも呼び捨てで呼んだってなぁ」
郁斗のツッコミも華麗にスルーする関西弁少女こと咲は、勝手に俺達を呼び捨てにすることを許可しやがった。
まぁ、今日何度目になるのかも分からない『秋人って呼んでくれ』って言おうと思ってたから結果的によかったんだが。
「もうすぐSHR始まるから、また昼にな」
そういって咲が自分の席に戻って行き、それを合図に鈴も席に戻っていった。

   ◇ ◇ ◇
昼も四人で楽しくご飯を食べて、今は放課後になっていた。
それにしてもいいクラスメイトに出会えたと思う。こんなにフレンドリーなのは少ないと思うからな。

「帰りはどっか寄って行くか?駅前にあったカフェが何か良さそうだったぜ」
「うわっ、あんたの口からカフェって、似合わなすぎやん」
「べ、別にいいじゃねぇかよ」
どうやら郁斗は咲によくイジメられてるんだなと確信して、朝のハル姉の言葉を思い出す。

「悪い、ちょっと姉ちゃんに生徒会室に呼ばれてんだ」
「えっ、生徒会室って、もしかして秋人君って桐岡遥先輩の弟なん?」
「えっ、そうだけど?」
よく分からないので疑問で返してみる。
「秋人が神様がオーダーメイドで作ったような人間の弟とは信じられないのです」
そんなこと言われてもなぁ、って思ったがとりあえず引き上げることにする。

「とりあえず、今日は一緒には帰れないんだ。明日からは一緒に帰れると思うから」
「そういうことなら分かったぜ。明日は一緒に帰って貰うからな」
「あぁ、約束する」
「また明日なのです」

その言葉を背に生徒会室まで走って行く。

「ここが生徒会室か」
一応のマナーは守ってノックする

コンコン

「どうぞぉ」
返事はすぐに返ってきたが、できえば聞きたくない人物の声だった。
「失礼しま…ってハル姉だけかよっ!」
「あらっ失礼ね 私だけだとまずい?」
「まずくはないけど…他の役員は?」
「私とアキ君しかいないわ」
「あっそうなんだ…って、えぇーっ 何で俺まで生徒会役員に入ってるんだよっ」
さらりと、とんでもないことを言い出したぞ、この女。と思ったが口に出すと殺されかねないのでやめておく。
「アキ君のことが大好きだから、放課後も一緒にいたいだけよ」
「じゃあ、何で他の役員もいないんだよっ!」
ブラコン発言は注意しても無駄なので別の質問をしてみた。
「私一人で全部の仕事が片付いちゃうもん」
「じゃあ俺いらねぇじゃねぇか」
「あらっ、さっきも説明したのに、もう一回説明した方がいいかしら?」
「いや、いいです」
この人には勝てないと完全に諦めて彼女の言う通りにしようと思った。

「で、俺も生徒会役員になれってことだろっ?俺の役職は何なんだ?」
「アキ君は話が早くて助かるわ。なら、そうねぇ…庶務でいいんじゃない?」
「会長職以外が全部空いてるのに庶務?普通に副会長かと思ってたのに」
「なら副会長やりたいって言えばよかったのに。まぁいいわ、特別に副会長にしてあげる」
子供みたいに笑いながら言ってくる。この笑顔は反則だと思う。この可愛らしさに断ろうとしても断れるわけがない。

「じゃあ、明日から毎日放課後はここに来てね」
「放課後は友達と帰るから無理」
「えーっ、じゃあ私も帰る。帰って仕事する」
唇を尖らせて拗ねたかんじで言っているが
そんな表情も可愛さを増幅させてるだけだ。
弟の俺じゃなかったら危なかっただろうと思う。
「じゃあ、今日は学校でやっちゃわなきゃいけないことだけやっちゃって、すぐに家に帰りましょ」

そう言って作業が始まったが、俺は特にやることがなく
30分程でハル姉が一人で仕事を片付けてしまった。
我が姉ながら完璧すぎて怖いものがある。

だが、明日からもこんな日々が続くかと思うと少し憂鬱になる。

魔法高校とその仲間たち

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魔法高校とその仲間たち

全国に5つしかない魔法高校に入学した桐岡秋人は、クラスメイトにも恵まれたが、入学早々に超絶ブラコンで生徒会長の完璧な姉の遥に捕まり、生徒会役員にされてしまう。ほのぼのしつつも慌しい魔法高校ライフ。各校交流戦やいろいろな行事で大忙し。あっ、バトルもそのうちあります。

  • 小説
  • 短編
  • SF
  • 青年向け
更新日
登録日
2011-09-20

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