流星群~番外編~

流星群~番外編~

番外編ということでちょっとした小話を置いています

ブラック先生

あたしのお母さんは、ホグワーツで『天文学』の教授をしている。

あのクールな態度で、一部の生徒に怖がられているみたい。

あたしはお父さん似らしくて、あんまり“似てるね”とか言われない。

「スピカ、私の顔に何か付いてるかしら?」

しまった、今は惑星の観察中だった。

「…若づくりの術の勉強してただけ」

「変身術の応用だって、何度も言ってるでしょ!」

控えめなクスクス笑いが広がったけど、グリフィンドールは5点マイナスされた。

(あたしを贔屓したり、しないんだもんなぁ)

だからこそ、普通に授業を受けられる。

そう、別に贔屓してほしいわけじゃないんだ。

「ねぇ、お母さん」

「…何?さっきのが冗談だっていうのは、わかってるわよ?」

授業が終わってから、あたしは教壇に駆け寄った。

「うん。でも、天文学じゃなくて変身術の授業を受け持てばいいのに、って思ってた」

「何よ、今更?変身術は得意だけど…感覚的だから、教えるのは難しくて…」

「ふぅん、そうなの?――って、その話じゃなくて。…上手く言えないんだけど」

「私、リーマスじゃないから、言わなきゃわからないわ」

ルーピン先生って呼ばない時点で、プライベートな話題だってのはわかってるくせに。

「…あたし、お母さんみたいに、クールな女の人になりたいって、思わないことも…ないからね?」

「…?…何が言いたいのかはわからないけど、貴女がクールですって?」

「ちょっ、そこじゃないでしょ!」

お母さんはフフッと笑った。

「知ってるわよ。私みたいになりたいって、そう思ってくれてること」

「…開心術?」

「いいえ。──スピカが最初に変身したのは、私だったでしょう?」

「…そう、だったっけ?」

そうよ、と言われて思い返す。

「私、あまり子供好きってわけじゃないの」

「それ、教師としてどうかと思うよ」

「…学校に通うより、もっと幼い頃が苦手で」

ふぅん、と相槌を打つ。

「相談してたリリーは殺され、愛する主人は捕まり、女手一つで育てることになって…私は教育者なのに、どうすればいいかわからなくなった」

「大変…だったね、お母さん」

「ええ。…でも、それを恩着せがましく言うつもりはないわよ?親の義務だもの」

教室は親子二人だけの空間みたいになってる。

「ただね…貴女の育て方が、合ってたかどうか、不安になるときがあるのよ」

「ちょっ、何それ?そんなこと、言わないでよね…」

「あぁ、違うの。ごめんなさい、貴女がどうこうじゃなくて…これは子を持つ親なら、誰しも思うことらしいわ」

「あたし…育て方に、正解とかないと思うけど」

「…そう、その通りなのにね」

お母さんの長い睫毛が、綺麗な青い目に影を落とした。

「だから──話、最初に戻るけど…さっきの言葉は嬉しかった」

「へっ?…あ」

「小さいときはずっと“お父さんみたいになりたい”って言ってたから。…あの人の話ばかり聞かせてたものね」

「お父さんのこと…大好きだよ」

そう、と寂しそうに笑うお母さん。

「…でも、あたしの性格ってお父さん似みたいだし?どっちになりたいかって聞かれると、お母さんかな」

「スピカ…ふふっ、貴女って子は。そういう素直じゃない所、どっちに似たのかしらね」

…どっちもだと思うけど、それは黙っててあげよっと。

この笑顔、お母さんのことを勘違いしてる奴らに見せてやりたい、なんて思った。

ルーピン先生

『闇の魔術に対する防衛術』の教授リーマス・ルーピンは、あたしの名付け親――つまり後見人らしい。

とても健康には見えないが、雰囲気も言動も優しい人。

「ルーピン先生」

「なんだい?スピカ」

「なーんでもない♪」

学校では──ルーピン先生の部屋を除いて──“リーマスおじさん”とは呼ばないことにしている。

お母さんのことは、学校でもお母さんって呼ぶけど。

「こら。気になるじゃないか」

「あたし、ルーピン先生みたいな人と結婚したいなって」

「おや、それは嬉しいが…黒くて大きな犬が怒りそうだ」

「そうかな?」

黒くて大きな犬──お父さんは、怒るというより拗ねそうだと思った。

「今、何してるんだい?」

「自由時間です。先生は?」

「私もだよ。じゃあ、遊びに来るかい?」

「やった♪」

こんなに素直なリアクション、彼にしかしないと思う。

先生の部屋に入ったら、いつもホッとする。

「コーヒー淹れるから、好きにしてて」

「うん」

本棚を眺めてから、椅子に座った。

「はい、どうぞ」

「ありがとう、リーマスおじさん」

「君は何か…聞きたいことが、あるようだね」

「わかったの?流石だね!」

おじさんは開心術が得意だって、前にお母さんが言ってた。

「別に、大したことない…昔話なんだけど」

「いいよ、何でも聞きなさい」

「じゃあ聞くね。ハリーの名付け親はあたしのお父さんなのに、なんであたしの名付け親はリーマスおじさんなの?」

「…すまない。私では不服だったろう」

「えっ、なんでそうなるの?!そんなわけない!」

なんか勘違いしてる?ちょっと説明不足だったかも。

「えっと…違うよ。ごめん、あたしってばストレートすぎて」

「いや、なんだかシリウスを思い出したよ」

微笑むおじさんを一瞥して、コーヒーとは言えない甘い飲み物を流し込んだ。

「…ジェームズおじさんの子供は、お父さんが名前を付けたでしょ?だから、お父さんの子供には、ジェームズおじさんが名前を付けたいって…言ったんじゃないかと思って」

「…言ってたよ。懐かしいね」

コーヒーを口に含んで、昔を思い出してるみたい。

「ジェームズは当然、そのつもりだった。でも、シリウスは私にこう言ったんだ。“この子の名付け親になってくれないか?”ってね」

「…ジェームズおじさん、残念がったんじゃない?」

「ああ。残念そうだったけど、すぐに納得してくれたよ」

どうして?って顔をして話を促す。

「シリウスが、私を好きだったからさ」

「……へぇ」

「ははっ!冗談に決まってるじゃないか」

「…面白くない冗談だね…」

リーマスおじさんはマグカップを見つめた。

「スピカは覚えてないだろうけど…ミラク以外で君を最初に泣き止ませたのは、なんと私だったんだよ」

「そう、なの?」

「あれは…そう、ミラクとリリーは確か、食事を準備してたんだ。だからその間、子供を見ててくれって言われて」

「あぁ…あたし、抱っこしてないと寝ない子だったって、お母さんに聞いた」

そう、とリーマスおじさんが笑った。

「私はもちろん、赤ん坊の扱いなんてわからないから、抱っこするのも断ったんだ。でも、シリウスやジェームズが抱っこしたら、何故かすごく泣いてしまってね」

「リーマスおじさん、嬉しそうだね」

「だって、嬉しかった…嬉しかったよ。幸せな思い出だよ」

おいで、と手を広げるおじさんに驚きつつ、その胸に飛び込んだ。

「私も家族が欲しくなった」

「家族、みたいなもんじゃない」

「…ありがとう、大好きだよ、スピカ」

リーマスおじさんに抱き締められるのは初めてだけど、すっごく落ち着く。

「──あぁ、もうこんな時間か」

「あ、ホント!あたし、行かなきゃ」

「スピカ、またいつでもおいで」

「はーい、ルーピン先生」

お言葉に甘えて、絶対またすぐ来るよ!

次の授業中も、あたしの顔は緩みっぱなしだった。

ブラック夫妻

「──お父さんとお母さんって、ホントに愛し合ってたの?」

ルーピン先生の部屋を訪ねて、第一声がこれだ。

「なっ、何を言っているの、この子は…!」

「あ、お母さん…」

ちゃんと確認すればよかった…。

「…えーっと、スピカ?まずは落ち着こうか」

「あたしは落ち着いてるもん」

「いきなりどうしたんだい?」

「ねぇ、お見合い結婚じゃないよね?」

リーマスおじさんの問いかけをスルーして、お母さんに質問をぶつけた。

「私とシリウスは恋愛結婚よ。…なんだか恥ずかしいわね」

「恋愛、結婚…良かった~」

「両親の結婚までの過程って…そんなに大事、なのかな?」

「なんとなく“お見合い結婚”っていう響きが嫌じゃない?誰かが“うちの両親はラブラブだ”って自慢してたから…」

説明しているうちに、我ながら馬鹿らしくなってきた。

「私達が仲良くしてる記憶がないのよね。ごめんなさい…」

「その言い方、まるで離婚したように聞こえるよ」

「あ、そもそもシリウスのことを覚えてないんだものね…」

流星群~番外編~

流星群~番外編~

ハリポタにオリキャラを二人加えた二次小説です★ シリウスの奥さん&ブラック夫妻の娘

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-11-09

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work
  1. ブラック先生
  2. ルーピン先生
  3. ブラック夫妻