ジン(仮)
~プロローグ~
何億年も昔、宇宙でビッグバンが起こり地球が誕生しました。
ついでに神様も誕生しました。
神様は海を創り大地を創り様々な生命を誕生させました。
「はぁ、力使いすぎてもう疲れた」
そして神様は空よりも高い塔を築き、そのてっぺんを寝床としました。居眠りを邪魔されるのは勘弁なので侵入者対策に内部に凶悪なモンスターを配置しました。
また友達も欲しかったので看板も立てて置きました。~てっぺんまできたら神様と友達になれるよ☆by神~
「しばらくおやすみー」
神様が深い眠りに着いたその後も、地球では食物連鎖が何度も繰り返され生物は繁栄を続けます。
ある朝、何十億年ぶりに目を覚ました神様は驚愕します。
「なんだこれぇ?」
地球は生物が繁栄しきってしまったせいでパンク状態になっていました。
「まずいな。。。数を減らさないと地球が壊れちゃうよ」
神様は創ることはできても壊すことはできませんでした。
「そうだ!何でも喰う生物を創っちゃおっと」
そうして神様は人間を誕生させました。
「さーて二度寝しますか、目覚ましを三億年後にセットして、と」
~三億年後
ジリリリリリリリリリリリリ
「うーん、あと半世紀だけ~むにゃむにゃ」
などと寝言を言いながら神様は目を覚ましました。
「あれ、どうなってんの?」
今度は人間が食物連鎖の頂点に立ち地球を埋め尽くしていたのです。
「随分知能が発達したんだな、、、くそーこうなったらモンスターを送り込んでやる」
神様は増えすぎた人間を減らすために地球にモンスターを送り込みます。
しかし、頭脳の発達した人間達は武器を使いモンスターをことごとく退治していきます。
「うーん困ったぞ。強力なモンスターを創ると疲れちゃって何千年も眠りに着かないといけないし、リスクが高いな・・・」
「・・・そうだ!人間の形そっくりな化け物を送り忍ばせて人間を滅亡させよう!気付かれにくいしきっとうまくいくな!」
神様はそれを神造人間(ジン)と名付け各地に送り込みました。
「これまた力使いすぎて眠気が・・・ぐごぉぉぉぉ」
第一章目覚め
「ん・・ここは」
重たい瞼を開け辺りを見渡す。
「ここは街の中?」
僕は行き交う人々の波を遮るように棒立ちしていた。
「らっしゃい!スライダーゴリラの肉が入ったよ!!」
「なんの!こっちはトーテムポークの肉を今朝仕入れたばっかだ!」
街の商店は賑わいをみせていたがそれは今の僕にはただの騒音でしかなかった。
ズキッ
(頭が痛い・・それにボーっとする。僕は誰だ?一体いつからここに・・・)
そうやって考えを巡らせていると
ドカッ
体格の良い男とぶつかってしまい地面に飛ばされてしまった。
「ゴルァァァ、ボウズてめぇどこ見て歩いてんだよ!」
二メートルはありそうな背丈、太い腕、濃い体毛すべてに威圧されてしまう。
「す、すいません頭がボーっとしてて・・」
必死に謝るが相手の怒りは収まりそうもない。
「きたねぇ恰好しやがって、てめぇ最下層の人間か?どうやってグリドアップしてきたか知らねぇがなぁガキがこんなとk「もうやめなよ、おっさん!」
体格の良い男の話を遮って銀色のきれいな髪にゆるいパーマをかけた少年がズボンのポケットに手を突っ込みながらこちらに歩いてきた。
「なぁそいつ謝ってんだから許してあげなよ。それにこんな街中で喧嘩しちゃあ他の人たちもびっくりしちゃうでしょ」
謝るのに必死で気づかなかったが一連の騒ぎを聞きつけた人たちで人だかりができていた。
「相手は子供じゃないか」「許してやれよ大男」「そうだそうだ!」「ブタ!ゴリラ!」
ヤジが飛び交う。
「ぐ・・くそッ覚えてろガキども!どけー!」
男はその場の空気に耐えられず人だかりを強引に押し進んで消えていった。
「よぉ災難だったな。立てるか?」
銀髪の少年はそう言って僕に手を差し伸べてきた。
「俺の名前はウォル。お前は?」
「僕の名前は・・・わからない」
「はぁ?こけたときに頭でも打ったのか?」
「どうしてここにいるのか?僕は誰なのか何も思い出せないんだ・・」
僕は自分の記憶がないことをウォルに伝えた。
「一時的な記憶障害か?そりゃ大変だな。でもここエリア:Gだからお前もそこそこ何か才能あんだろ」
「エリア:G?」
普段耳にしない言葉に素直に聞き直してしまう。そういえばさっきの大男が言っていた単語も気になる。グリドアップだったか。
「えぇー!お前そんなことも忘れちゃってるのかよ!?」
僕は何も言わずうなずいた。
「まぁ忘れちまったもんはしょうがねーか。こっちに来な。」
ウォルはそう言って僕の手を引っ張り路地裏に連れてきた。
「ちょっと長くなるけどちゃんと説明してやるから聞いとくんだぞ!」
ウォルは近くにあった木の棒を拾って地面に図を描きながら説明を始めた。
「じゃあエリアの話からな。この世界は三つのエリアから成り立っているんだ。上層部がウラノス、中層部がガイア、下層部がカオス。その頭文字を取って上層部はエリア:U、中層部はエリア:G、下層部はエリア:Cって呼ばれてる。ここまでは分かるな。」
「う、うん。。。あっ!さっき男の人が言ってたグリドアップっていうのは?」
「あーあれは一個下の階層から試験に合格して上がってくることを言うんだエリア:Cからエリア:Gにグリドアップってな具合にね。逆の場合はグリドダウンって言うんだ。」
「へぇー試験とかもあるんだ」
「試験のことは後でな。あとあいつお前のこと下層部の人間とかも言ってたろ?」
「そういえば身なりが汚いから下層部から来たんだろとかって言ってたね。」
「それがなんでかっていうとな、この世界は競争社会で主にどこのエリアにいるかで人の価値が決まってくるからだ。金、人脈、コネ、才能、力、偉業、これらを持っているもののみ上層に住むことを許されている。」
「なるほど、それで僕が汚い恰好してて幸薄そうな顔してたからエリア:Cの最下層の人間だと間違えちゃったんだね。」
「お前・・・自分のこと幸薄そうとか言うか・・・」
ウォルは僕のネガティブ発言に呆れているが構わず質問を続ける。
「ねえ、階層を分ける意味って偉い、偉くないのランク付けのためだけにあるの?」
それを聞いた瞬間、ウォルの顔がこわばったように見えた。
「ウォル?」
「ん?ああ、なんでもねーよ。階層を分けてる意味な、それは危険度の有無もある。もともとこんなエリアなんて昔は存在してなくて、みんな地上で暮らしてたんだよ。ただある日、凶悪なモンスターが出現して森にも洞窟にも海にもどこにも逃げ場がなくて何千と人が殺された。ただ、一つだけ安全な場所を見つけたんだ。あれさ」
そういってウォルは首を右に向け商店街の方を指差した。
「あれは?」
ウォルが指を差した先には空を突き刺す巨大な塔があった。
「あれは神の塔。あの塔の周りにはなぜかモンスターは近寄らなかったらしい。人類はそれを神の塔と呼び、それを軸にしてエリア:Cを築きモンスターの手から逃れることに成功した。その後エリア:G、エリア:Uと活動領域を広げてきたんだ。」
「人類の歴史があったんだね」
「でも問題はここからだ。ここ百年の間に急にエリア:Cの壁がモンスターに壊され侵攻されるようになったんだ。モンスターがモンスターを喰らいどんどん成長してとうとう壁を破壊できるまで強靭になったからだと思う。それからというもの、みんな安全な上層部に逃げようと、自分の知恵や力を誇示して自分は価値のある人間だと主張することで上層部での安全な暮らしを手に入れた。他人を蹴落としてまでね・・」
「なるほど。ここエリア:Gより下にいる人たちはいつ襲われるかびくびくしながら暮らしているんだね。上だけ平和ってのも複雑だなぁ、、、」
ジン(仮)