悪魔の王と若い天使
悪魔の王と若い天使の話。
悪魔の王は万能で、だからとても退屈だ。
赤い薄闇の中に懐かしい光が降りてきたとき、騒ぐ魔物達の毒の息に触れぬ内、若く無知な天使を玉座に引き寄せた。堕天ではなく、好奇心から舞い降りた天使が、神を見たことがないのは明らかだった。話は早い。神を知らない者が悪魔の王を愛するのは自然なこと。一目で恋に落ちた天使を、王は全裸にさせた。
衣服を脱いだのは彼女の意志だが、そうさせたのは王だった。
隠されてはいるが、神の禁により蕊を持たない彼女の脚の付け根に、王は柔らかな花を咲かせた。
花は淫らに開き、耐えきれずに散らされ、何度でも咲かされた。
王のいない日、若い天使は翼で身を覆い、ひとり玉座でうずくまっていた。
懐かしい声に顔を上げると、仲間の天使がひどく悲しそうな瞳で見つめてくる。彼女は問い返し、仲間の天使は涙の代わりに彼女に忠告を傾ける。
仲間の説得に、彼女は頷くことはなかった。
王が戻り、彼女はその腕に抱かれ、仲間の天使のことは一言も口にしなかった。
次に王がいない日、彼女を殺しに違う天使がやってきた。彼女が翼を開くのを待たず、天使は彼女を殺してしまった。
けれど彼女は幸福だった。
最後の瞬間まで王を信じていたから。愛されていることを信じていたから。
やがてその骸の肉も骨も髪の一筋さえ、悪魔の王は残さず食べてしまった。
悪魔の王と若い天使
これも古い作品です。