吉原御免状

10/19 『吉原後免状』 梅田芸術劇場

劇団 新感線

原作=隆 慶一郎

脚色=中島かずき

演出=いのうえひでのり

CAST

松永誠一郎=堤真一

勝山太夫=松雪泰子

高尾太夫=京野ことみ

柳生義仙=古田新太

柳生宗冬=橋本じゅん

幻斎=藤村俊二

八百比丘尼=高田聖子

私にとって2度目の新感線の舞台『吉原御免状』だがこの題名を聞いたとき、『御免状』ってなんだろう・・・??? 最初の疑問だった。

会場へ入って何時ものようにプログラムを買ったが、えっ・・・2,700円! 少し高いなぁ?! だが、これが外見も格子のように中抜きになったカバー付きで豪華だし中身も大変読み応えのあるパンフでなんと吉原の成り立ちやら、原作者隆慶一郎の世界から物語の粗筋まで興味深い事柄満載で、開演前に読み耽ってしまった(^^) 

パンフの説明によると家康が江戸に幕府を開いた当時はまだまだ田舎で今の日本橋付近に三百戸くらいしか無かったそうだ。それが幕府建設に伴い色んな職人や商人が全国から集まってきたが、殆どが独身男性で必然的に遊郭が生まれたらしい。建設が進むに従ってあちらこちらに出来た遊郭を一箇所に集めた場所が隅田川河畔の葭(よし)の茂るような場所だった為葭原(よしはら)と呼ばれたそうだ。それが後に吉原と改名されたらしい。本格的な遊郭を作ろうと幕府に嘆願書を出して正式に許可されたのがこの『御免状』という訳だ。 知らなかったなぁ?!

舞台の中では「神君御免状」と呼ばれていて、この中に書かれて「ある言葉」が騒動の火種となっている。

舞台は中央の廻り舞台の上に両サイドが階段で中央は坂になっている一段高い段があり、この廻り舞台がグルグルと本当に良く廻る。

そして吉原といえば格子戸の中にいる遊女をすぐ思い浮かべるが、その格子戸は三角の部屋で幾つも連なっていて、これが廻り舞台に乗って廻ったり横一列になったりと、時に応じて変化していく。 とにかく今日の舞台転換は廻るのも早く、変化もグワァーッと展開して、とてもダイナミック!!そして華やかな吉原が舞台とあってライトは赤が基調。

新しくなった吉原の祝いの日に松永誠一郎という肥後の浪人が甚右衛門という人物を尋ねてくるが、その吉原にいる花魁の高尾太夫が行列を従えて登場する。パンフによると遊女には階級があり上の3階級に居る者を花魁と呼ぶのだがその一番上が太夫で、この花魁道中というのは当時は太夫になれば、吉原とは別の場所に住んでいてお呼びが掛かればお供を連れて吉原まで出向くという仕来りだったらしい。

そしてもう一人勝山太夫というのが居るのだが、実はこれが裏柳生の回し者くの一だったという事がわかってくる。裏柳生とは時の将軍剣術指南役柳生宗冬の弟・義仙が頭で幕府に敵対する者を抹殺する闇の部分を支配する組織であるが、宗冬もその暴走振りに手を焼いている存在。 柳生宗冬の橋本じゅんさんが今回は真面目な宗冬をアドリブもギャグも無く真面目に演じているのがチョッと可笑しい(^^ゞ 

吉原に居候の身となった誠一郎の堤さんは着流し姿、

髪は総髪だがその結び方が真ん中を小さく軽く結んでいる後ろ姿は・・・、おぉ?トートだぁ―!(爆) そして着流し姿がとてもよく似合う!殺陣が始まると着物の上前を片手で掴み、足を大きく開くと太腿まで見えるのが又カッコイイ?ッ!(^^) 着物を脱いでふんどし姿になるシーンもあるが、その後姿はスラリとしていているのに程よく筋肉が付いていて、これも素敵―ッ!(爆)  とにかく堤さんの全てがカッコイイ!  勝山太夫はそんな松永誠一郎に一目惚れしたらしい。

裏柳生は隙あらば吉原を襲う、その訳を吉原の長老幻斎は「神君御免状」を狙っているのだと誠一郎に説明し、吉原は傀儡子の民だという。傀儡とは直訳は操り人形だがこれらを扱う芸人の事、言わば大道芸人のようなものか?義仙は誠一郎と襲うが宗冬が止める、が去り際に誠一郎に向かって「お前は柳生が殺しそこなった天皇の子だ、お前の母や兄弟を殺したのは俺達柳生だ」 と謎の言葉を残して立ち去る。「俺は一体何者なのだ・・・?」衝撃を受けて立ちつくす誠一郎。 

2幕は後水尾天皇の子供達が秀忠の命を受けた裏柳生によって成敗される所から始まるが、ただ一人生き残った子供がいた。その子供を救い出したのは剣豪宮本武蔵、そして彼に育てられたのが松永誠一郎だったのだ。

帰って調べてみると後水尾天皇は将軍秀忠との間に確執があり秀忠は末娘を天皇の妻として送り込んでいて娘の産んだ子を跡継ぎにしたかった。しかし天皇は直属の子を儲けようと側室を沢山持ったが、その多くは秀忠の妻おごうによって阻まれたという。舞台ではおごうの名前は出てこなかったがこれは史実なのだろうと思った。

誠一郎は熊野から来た八百比丘尼によって夢の中で傀儡子の過去へ誘われるが、そこで出会ったのは江戸になって間もない頃の傀儡達、彼らは山の自由の民だった。其処に居たのは甚右衛門で家康から御免状を貰い吉原を造ると言うがそれは表向きの事で実は傀儡の民の砦を作るのが狙いだった。 このシーン、家康の影武者が出てきたりしたが判り難いし、ちょっと長すぎて退屈・・・(^^ゞ

家康から下された御免状の最後には「我が同胞甚右衛門」と書かれてあり、その為に秀忠がこの御免状を奪う事を命じたのだ。  家康が傀儡子と同胞であったと知れては困る。

だがこの御免状を書いたのは影武者の家康なのか? それともホンモノの家康が傀儡だったのか?   そこの所が私には良く判らなかった。

幻斎は誠一郎にこの吉原の名主になってくれと頼む。幻斎は藤村俊二さん、良い味を出しているが台詞が所々怪しくなってヒヤヒヤする(笑)

勝山太夫は裏切りがばれて義仙からリンチを受け磔状になっているところへ誠一郎が駆けつけるが勝山は「とどめを・・・」と誠一郎に懇願し、勝山ぁぁ―っと絶叫しながら止めを刺す。勝山太夫の松雪泰子さんは花魁姿も、くの一も粋で綺麗で捨て身の女の凄艶な美しさ、凄まじさは胸を打つが、台詞の語尾が弱くて聞き取り難いのが惜しかったなぁ?。

義仙と誠一郎との激しい戦いが始まった!この舞台では堤さんと義仙の古田さんとの殺陣が度々有るが、新感線特有の擬音、キーン・バシッ・バサッ・・・、これらが賑やかな音楽に載って舞台狭しと繰り広げられる殺陣のシーンは、これぞ新感線の舞台!凄く迫力がある。そして堤さんの太刀捌きが大きくてとても綺麗!賑やかな音楽がふっと小さくなるとタイミングよく台詞が入り、終わると音楽が又賑やかに鳴るのが面白い!(笑)  

義仙を倒した誠一郎はこれで吉原は安泰だと、肥後へ帰ると言うが幻斎と高尾太夫に懇願されて吉原に残る事を決意する。

吉原は苦界と言われるくらい辛い世界のイメージしかなかったが、この舞台は明るくて、もし傀儡の民が実際に居たのなら未来を展望できる希望に満ちた人々の集まりだったろうに・・・。これは史実かどうかは私には判らない。

新感線としてはこの『吉原』は初の原作物の舞台化だそうだ。遊郭吉原の成り立ちなど史実とフィクションが入り混じった物語はとても興味深く面白かったが、何時もの新感線の舞台のようにアドリブやギャグが殆どなくて、とても真面目に取り組んでいるような気がしたけど、もしかして路線変更・・・? 次の『マクベス』は如何に・・・? 楽しみだわぁ?(^^♪

吉原御免状

吉原御免状

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-09-19

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