元気づけないで

 今も哀しみが止まらないから。
 今は好きにさせて。
 プライドが涙をせき止めるから、今は、
 落ち葉の暖かい吹き溜まりに漂いたい。
 約束するから。私が弱い人間だから。
 約束するから。凍みてもいいから。
 これでも少し、変わった。
 歌い続けるだけの力は、まだ、
 残っている。
 私の歌は聞こえないかも知れない。
 まだ。
 私が歌い終わる頃あなたは、
 霜降る落ち葉が枯れてない事、
 どうか気付いて。
 

 今は、哀しみが止まらないから。
 私の歌を聞いて。
 たまに他人の歌を聞けるようになった。
 私と同じ体温の言葉が、目配せしては、
 『お先に。』と先を行く。
 しばらくしたら、鉛色の空は割れて、
 薄い光がさすような、予感。
 遠巻きの元気をくれる歌は聞き飽きた。
 懐に温めた氷は、薄黄緑の風の頃、
 『お先に。』と昇るのだろう。
 私の、哀しみの歌は、私の兄弟たちに、
 優しく降り積もる。たぶん。
 でも、飽きた私は薄黄緑色の風の匂いに、
 酔う。
 元気が湧いてきた。
 

元気づけないで

元気づけないで

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-11-06

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