無作為抽出法

誰かになりたいと思ったことがある。今の身を剥いで、成功した誰かの身体を被ってしまえば何れ程楽になるかと。だけどね、今の自分を捨て、誰かになったとしたら、自分自身が振り出しに戻る。
そうか、誰かになりたい訳じゃないんだ。
自分らしく生きていないことに対する焦りだ。
気づいた、一人では生きていけない人間の弱さに。
メディアの発達は、自己の存在を危うくした。
行方は解らないけれど、今を信じて進むことしかできない。

傷んだ心を据えて若者は
ソーシャルメディアに噛り付く
無音のシャッター、切り取って、心の中を隠し撮り

活字の世界は広がっていて、思いは一方通行で、
言葉は何処にもめり込まないまま流れていく
中途半端な優しさで
二十四時間 誰かを
宥めるように話している

なりたい誰かの真似をして、君は誰だと訪ねた所以、
所詮、私達は弱者ですと
只一言、話す者があった

最新技術の先端は、鋭い刃物で微塵切り
あの娘の評判逆立ちで、気になる経緯をお気に入り
今までの過去を天秤に
掬って救い品定め
真面目な顔で予習復習

誰かに頼らないと生ききれないようにされた人間の無表情の孤独は置いといて
チャイムが鳴るまで生きましょう

無作為抽出法

無作為抽出法

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-11-05

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