手紙

僕は好きな人に嫌われた。
嫌われた。うん。正確に言うと、ケンカをした。
僕と彼女の出身地は同じで、彼女は地元で大学生、僕は地元から離れた学校へ進学した。
彼女は特にやりたいことは無かったみたいだけど、僕にはどうしてもやりたいことがあった。その時、僕と彼女は付き合っていたわけじゃないけれど、友達以上恋人未満というか、それなりに連絡も取り合ってたし、うまくいくと、彼女も僕が好きだと、信じていたんだ。

なにを根拠に
その時の自分に言ってやりたい。

とにかく僕は嫌われたんだ。何時ものように彼女と長電話。彼女が疲れているのに気づいてあげられなかったのがいけなかったんだ。
『もう、アドレス変えて、メールも電話もしてこないで』
彼女からの別れの言葉が忘れられない。なぜ僕がアドレスを変えなくてはいけないのかが謎だったが、それ以上触れないことにした。
思えば付き合ってもいないので絶交といったところか。
もちろんそのあと何もしなかったわけじゃない、けれど僕も彼女も学校とバイトがあったし、地元にすぐ帰れる距離では無かったので、地元に残ってる友達に伝えてもらったり、メールも恐々送ってみたり、電話もかけて謝った。

しかし彼女はいつもこう言った。
『そうじゃない。全然わかってくれてないんだね』って、
いい加減僕も怒りの感情が大きくなってきたため、彼女の望み通りに、アドレスも変えてやったし、連絡も一切しなくなった。

そうして3年の月日が流れた。
彼女の噂は何も聞かないし、地元に帰っても何処かで偶然会うなんてことはないけれど、極々稀に、彼女に会いたい気持ちになる。
今なら、会って素直に謝れる気がするからだ。彼女の求めていたものがわかったからだ。

『直接、私に会いに来て』

彼女に惹かれたのは、いつも言葉と裏腹な表情と行動であって、それが少しでも無くなればいいのに。そして彼女がいつでも笑顔でいれたらいいのにと思ったからだった。
もちろん容姿も好みだったけれど。

まあ、これは青春の思い出にしておきましょう。
それに僕は僕で大切な人ができたので、今更、何か過去に踏ん切りをつけたいからと躍起になったところで良い結果など生まれないと思うし。

もう、直接会うことも、メールをすることも、電話をすることもないと思うけれど、願わくば貴女の幸せを願っていることが伝わりますように。
これを貴女への最後の手紙にします。

親愛なる貴女様
僕は僕の幸せを見つけました。
貴女は幸せですか?
僕は貴女の幸せを心から祈っております。

手紙

手紙

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-11-05

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted