ねずみ問答


「おい、ねずみ公」

「はい、なんでございましょう」

「前々から気にかかってはいたのだが」

「はあ」

「おまえは何故ねずみなのだ」

「いやあ、さあ、何故でございましょうか」

「なんだ、貴公、ねずみのくせにわからんのか」

「はあ」

「おいおい、気のない返事だな」

「いやいや、いやね、なにぶんねずみを始めて此の方、そのようなことに頭をめぐらせたのは初めてでござりまして」

「なるほど、さようか」

「はい、納得していただけましたか」

「ならば、わかるねずみを呼んでまいれ」

「わかるねずみ」

「わかるねずみだ」

「ははあ、わかるねずみをでござりますか」

「仕方あるまい、話のわかるねずみだ」

「へへへ、ねずみは皆わからず仕舞いで」

「なんだと、皆そろってわからんと申すか」

「はい、おそらくは」

「ならばだ、お主は何故ねずみか」

「いやいや、いやあね、旦那、だとすると、もしかするともしかして、ねずみではないのやも知れません」

「なに、ねずみではないのだと」

「へへへ、おそらく」

「こいつはたまげた」

「わたくしもです」

「ははあ」

「なんです」

「しかしだ、それで困ったことになった」

「なんと、お助けしましょうか」

「貴公を何と呼べばよい」

「なんと」

「手招きばかりは何ともいかん」

「それはまたまた」

「難儀であろうに」

「ならば、とりあえずですが」

「なに、いい考えか」

「ねずみと呼んでくださいませ」


D.C.

ねずみ問答

ねずみ問答

小説というより”小噺”でしょうか。「『おい、ねずみ公』 『はい、なんでございましょう』 『前々から気にかかってはいたのだが』 ……」

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-11-05

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