無垢なる針

公園痛

最近の休日の過ごし方があまりにも酷い。つまり昼頃起き出して用を足し、テレビを見るともなく眺めて煙草を吸らい、午後二時頃に眠くなって、また寝る。一週間の内で、この時の眠りが一番深いと思う。いや、でも、はききりと夢は見るし、実はそう深くもないのかもしれない。

こんな休日ではいけないと思い、とにかくあてが無くとも良い、着替えて出掛けようと家を飛び出した。車で出掛けようかとも思ったが考えなおして近くの公園へ歩いて向かう。いかにも日曜日、といった青空の下、すれ違うウォーキング夫婦などに挨拶をしている私は、あたかも健全な休日を過ごしている人間に見えているだろうか。
さて、せっかく歩いて出たのである。道が狭くて最近は通っていない道を行かねば損である。小学生の頃に通っていたルートを歩き出す。昔子犬をもらった家の前を通り、畦道へ。畦道は林へと続き、林を抜けたら踏切がある。踏切を渡りながら、健全な休日と言えば公園、などと思いつく自分の世界の狭さに少なからず落胆した。もっと何かあったはずである。例えばそう…ええと、うんと…。

小学校の側にある児童公園はなかなか賑わっていた。大きな恐竜の滑り台や鉄棒、砂場にジャングルジム。二、三歳の子供が声を上げて走り回っていた。もはや、飛び交っていると言った方が良いかもしれない。
私はベンチに座り、胸ポケットに手をやりかけてやめた。煙草を吸える環境ではない。
やっと歩き出したぐらいの女の子が笑いながらお母さんの元へ歩く。きれいな花を見つけた男の子がお母さんへ報告に走る。腕組みしたお父さんの横で素振りする小学生。
私はそれらを見ながら微笑むでもなく嫌悪するでもなく、ただ痛がっている。よく分からない自分の真ん中あたりに、長い針が少しずつ少しずつ沈み込んでいくような痛み。子供の賑やかな声は、空に消えていくのではない。私の真ん中に刺さって残る。
仕方がないのでそのまま帰る。寄ったコンビニで釣り銭をもらい、野良犬に奇声を上げ、電柱を触る。

ちっとも良い休日じゃなかった。この痛みの原因を思い出したくなかった。

けど仕方ない。思い出したのだから、思い出した私で生きなきゃならない。だからチラシの裏に「この痛みを公園痛と名付ける。ケラケラ!」と書いてケラケラ笑って寝る。

無垢なる針

無垢なる針

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-11-05

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