きょうの雨 あしたの風
4/1 『きょうの雨 あしたの風』 テアトルシェルネ
俳優座公演
原作=藤沢周平
脚本=吉永仁郎
演出=安川修一
キャスト
おとき=川口敦子
幸太=内田夕夜
六助=島英臣
およね=岩瀬晃
おはな=阿部百合子
おしず=清水直子
栄次=関口晴雄
重吉=志村要
時は江戸・深川あたりの貧しい長屋に住む住人のお話。
これは藤沢周平さんの短編小説3作をくっつけたお話で、舞台構成も長屋の3軒のそこに住む、それぞれの住人のお話として独立している。
舞台には3つの家らしきもが見えている。これは舞台の構成上3つに別れているだけで長屋なんだなぁ?と理解して観ていた。中央の家は舞台転換の度にくるりくるりと回りそれぞれ六助とおよね夫婦の家とおときの家に変わる一番上手にはこの長屋の放送局(笑)ともいうべきおもんの家がありその家の前に釣瓶式の井戸がある。下手の家はおしずの家でこれも部屋の中と家の外とに回って変化する。中央にはやや広いすペースがあり奥の突き当りには長屋の木戸が見えている。パンフを読むと当時の長屋は一軒が九尺二間、つまり四畳半の広さの部屋が一間だけ、そこに小さな流しがあるだけの貸家で、井戸もトイレも共同で使う生活が一般的だったらしい。だから長屋で起こる事件は隣には筒抜けと言うわけだ(笑)
左官の六助は酔っ払うと困っている人を我が家に連れ帰る悪い癖がある。今夜も酔って連れて帰ったのはお婆さん、四畳半の狭い部屋に女房のおよねと赤ん坊の三人暮らしなのに部屋の片隅に枕屏風を立てて暮らす羽目になり、夫婦生活もままならない状態になってしまった(~_~) およねもぶつくさいいながらも追い出す気配はない。ある日赤ん坊が病気になって慌てているおよねに対してお婆さんはテキパキと指示を出し赤ん坊は無事回復する。子守をしたりしながらお婆さんはとても居心地がよさそうだ(笑)そんなある日立派な身なりの旦那が年寄りを見かけなかったか?とこの長屋を訪ねてきた。お婆さんはこの髪問屋の主人・利右衛門の母親で嫁と不仲が原因で家出をしてきたらしい。利右衛門がお礼だと言って差し出したお金も、そんな積もりでお世話した訳ではないと受け取らない人の良い六助夫婦、お婆さんは又来ます・・・、と言って息子の家に帰っていった。
その裏に住んでいるのはおとき、主人に死に別れた後下駄の鼻緒つくりをしながら一人でひっそりと暮らしていたが、ある日井戸端でおなかを空かした幸太に出会いめしを食わせた事が縁で両親にも死に別れ天涯孤独の幸太はおときの家の居候になる。親子ほども年の違う二人だったが、どうやらおときは幸太が好きになったらしく、あっと言う間に男女の仲になってしまう。おときは見違えるように若々しくなり着ているものも派手になって長屋の住人の話題となる。だが幸太はあまり評判のよくないおきみと知り合い、やきもちで言うのじゃないがおきみだけはは止めておけというおときの言葉を振り切って、夫婦の約束をしたからとおときの家を出て行ってしまう。おときは以前のやつれた姿に戻ってしまった。幾日か過ぎて幸太がそっとおときの家を窺がいに来たが声をかけずに去っていった。多分おきみとの仲が上手くいかなくなりおときが恋しくなったのだろう。なにかの気配を感じたおときが外へ出てみたがもう誰もいなかった。
おしずは弟と病気の母親の三人暮らしだが、素行のよくない弟・栄次は家にはあまり寄り付かず、めし屋の仲居をしながら生活を立てている。そのめし屋へやくざが二人栄次の行方を尋ねて来て居座っている。そこへめし屋の常連である重吉と作十が食事をしに来て、おしずに絡むやくざをやっつけおしずを助ける。家まで送ってきた作十は栄次が賭場でイカサマ博打で二十両の借金に負われていることを知り、なんとかしようと約束をする。重吉もまたおしずが心配だ。あれ以来音沙汰の無かった作十が三十両の金を持って現れたがどうやら怪我をしているようだ。その金は悪徳金貸しの家から盗んできたもの、その事を知ったやくざに口止め量も含めて三十両を渡し、作十はおしずに江戸を離れろと言う。おしずは重吉と共に重吉の故郷である和歌山へこっそりと旅立った。その夜逃げの手伝いをしたのは長屋の住人達である・・・。
江戸の下町長屋の人情話・・・、観終わった後の会員さんの評判は大変にいいものでした!
やはり藤沢作品の人情話はどこか違う。
藤沢さんの匂いのようなものが感じられ、たまにはこんな心がほっこりとするような舞台も良いなと思う(^^ゞ
きょうの雨 あしたの風