オレステス

2006/10/11 『オレステス』 ドラマシティ

作=エウリピデス

翻訳=山形治江

演出=蜷川幸雄

出演

オレステス=藤原竜也

エレクトラ=中島朋子

ピュラデス=北村有起哉

メネラオス=吉田鋼太郎

ヘレネ=香寿たつき

テュンダレオス=瑳川哲郎

ブリギュア人=横田栄司

アポロン=寺泉憲

ざっとのストーリー(プログラムより引用)

古代ギリシャ、オレステスはつい6日前に実の母・クリュタイムネストラを殺害した。

その行いの訳は母が夫であり彼らの父アガメムノンを不倫相手のアイギストスと共謀して殺したからであった。

だが理由はどうあれ母殺しは大罪。オレステスは復讐の女神に追い立てられ心身ともにすっかり疲弊していた。

神アポロンの声に従いやった事だが、アポロンはその後姿を見せない。

アルゴスの民はオレステス達を罰しようとしていた。片時も離れず看病する姉エレクトラも絶望の淵に追いやられていた。

そこへ叔父メネラオスがトロイ戦争から凱旋してきた。

そもそもアガメムノン一族の破滅はこの戦いに端を発している。

メネラオスの妻ヘレネがトロイアの王子にパリスに連れ去られた為にメネラオスが兵を起こした。彼の兄アガメムノンも共に闘った。

その間にクリュタイムネストラは不倫をおかしていたのだ。

オレステスは叔父に救いを求めるが彼は拒む。祖父(母の父)テュンダレオスにも見捨てられた。

もはや死刑は免れないと諦めかかったところに、従兄弟であり無二の親友ピュラデスがやってきた。母殺しも手伝ってくれた彼に励まされ、オレステスはアルゴスの民の前で無罪を立証しようとしたが論戦に負け死刑が決まってしまう。それでも諦めきれないピュラデスはメネラオス巻き添えにしようと息巻く。

エレクトラが名案を思いついた。

「3人揃って生きるか死ぬか、運命の共同体だ」

3人は決戦の場へと向かう。オレステスたちはヘレネと娘ヘルミネオを人質に取り館に立て籠もった。

此処までがプログラムからの引用だが結末はあっけなかった。

人質を取ったとメネラオスと交渉している時、突然にアポロンの神が登場し館の中でヘレネは姿を消して神の使者になったと告げる。

姉弟は死刑は免れ、オレステスはヘルミネオと、エレクトラはピュラデスと結婚するようにというお告げで舞台は終わったが・・・、ウーーーン(笑)

これはギリシャ悲劇といわれる物語、舞台はぐるっと周辺を高い壁で囲われていてその奥まった正面に大きな×印がある。その下に階段が3段、そして床はそこからズーッと手前の客席まで、つるつるの八百屋舞台。しっかり予習をしていたので知っていたのだが、今回の舞台は大量の雨が降るそうだ!だから最初に舞台装置を見た時これらは全て雨対策だ!と思った。最前列の観客にはビニールシートのような物が配られていた。

舞台は大きな打楽器の鳴り響く音で始まると同時にザーーーーッと大量の雨が降ってきた!確かにこれはスゴイ!

前後に2メートルほどの間を空けて舞台の端から端まで隙間なく降る雨は舞台を流れ、舞台やや上手のベットの上にいるエレクトラの上にも容赦なく飛沫はかかる。

しかしこの舞台にこれほどの雨が必要だったのだろうか?

パンフを読むと蜷川さんが俳優に負荷を掛けるために雨を降らせたのだそうだ。冬のギリシャは雨が多く陰鬱で暗くて寒い。そして我々は父殺し、母殺し、復讐の連鎖どう断ち切るかという理論を構築できていないのだそうだ。その極限状態の中で葛藤してもらう為の雨だと。

しかし雨はエレクトラの登場シーンにだけ多く降るように思えたが・・・。

エレクトラの中嶋朋子さんはその雨音に負けまいと声を張り上げるが声がつぶれかかっていたし、オレステス藤原竜也くんは咳をしている。ただこの咳は演技なのかもしれないけど。雨に濡れたつるつる舞台を転げ回る藤原君は上半身は裸だし脛にはサポーターのような物を当てていたけど肘は擦りむけて赤くなっていた。

稽古の頃は夏だったかもしれないがこれから寒くなるし、風邪がひどくなって公演が続けられなくなるかも・・・、色んな心配が頭をよぎり、観ている私達観客にまで大きな負荷がかかっていると感じた。

賛否両論あるようだけど私はこの雨は反対?!・・・です(笑)

「オレステスとピュラデスはホモセクシアルです」 

稽古の最初の時、翻訳者の山形さんがこう言われたそうです(^^ゞ

そう言えばもうキスをするのではないかと思うばかりに顔を寄せていたし、エレクトラとオレステスは近親相姦を思わせる台詞やシーンも有る。

ギリシャの物語にはこういう事例が多いよなぁ。

そういえばピュラデスの北村さん、オレステスとエレクトラが抱き合っている時上目使いの微妙な顔つきで眺めていたよ?(笑)

北村さんのメークはやや黄色っぽくて、顔色がさえないように見える。

藤原君は台詞もしっかりしているし鼻の下にちょび髭をはやし、発声も随分男らしくなった印象だけど、私は何故か判らないが藤原君にあまりワクワクしないんだなぁ?(^^ゞ そして丸顔・童顔の竜也くんには鬚は似合わない・・・、と私は思う(爆)

物語の発端となるヘレネは絶世の美女と言われている。それを演じた香寿たつきさん、白のロングドレスの前側は太腿の上まで見えるほど切り込みの入ったドレスを着ている。上背はあるしスタイルも良いしよく似合うけど絶世の美女という冷たい感じはなくて、どちらかと言うとニコニコとして親しみやすい女性の印象(^^)

ギリシャ悲劇に付きもののコロスは今回は女性ばかり15人、ビニールの傘に鈴が付いたものを持って登場したが、かなりお年を召した方もいらっしゃる(笑)その傘を広げたりたたんで握り大きな輪になったりしながら状況説明をする。このコロスという集団が後のコーラスになっていくんだそうだ。

ヘレネの夫メネラオス(吉田鋼太郎)は赤い衣装にジャラジャラしたものを沢山ぶら下げていて、客席を通って出入りする時も、カシャカシャした音を聞いただけでメネラオスの登場だ、と判る(笑)

アポロン役の寺泉さんは姿を見せず声だけの出演だし、ヘルミネヲを人質にして建物の中に入った以降の説明はブリュギア人の横田栄司さんが最後の方になってワンシーンのみの登場、もったいない!(^^ゞ

舞台の終りにアメリカ・イスラエル・パレスチナ・レバノン(の4カ国だったと思う)の国旗と国歌をA4版に印刷した物が天井から大量に撒かれた!

パンフレットの蜷川さんのコメントによると「めでたし、めでたし」では終われないと・・・。それがこの国旗の散布なの? 復讐の連鎖は今も続いていると言う意味なのか? 

だが客席の間に散らばったままになった印刷物は観客に踏まれて無残なゴミと化していた。

オレステス

オレステス

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-09-19

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted