ゼット博士の憂鬱。
「天才とは1パーセントのひらめきと99パーセントの努力」努力を称える名言として長年知られてきました。
学生時代に、怠けているとこのエジソンのこの名言を引き合いに出されて注意を受けた人は多いはずですが、近年になり
誤訳わかり本当は「1パーセントのひらめきがなければ、99パーセントの努力は無駄である。」とかに変わりました。
本当に「ちょっとまってくれよ」です。
マァ、私は努力してませんでしたが・・・。
不明なもの。
「なぜ、男に乳首があるのか?」こんなくだらない疑問を、ゼット博士は長年研究していた。
そしてこの疑問に答えを出した研究者はまだいない。
「受精してからの成長過程は途中まで男女共通で、乳首が形成されてから、それぞれの性器だとか男女の特徴を持つ」
という科学的根拠に基づいた説が一般的だが、ゼット博士は「その説がただしければ、乳首が細胞分裂の分岐点になるという根拠がなければならない」と納得できない。
また男性の一つの性感帯として、「神が残したもうた」といわれてもゼット博士は残念ながら乳首に快感を感じなかった。
世間では、虚けたお笑いタレントが「医者が聴診器当てるとこ、分からへんや」とか「裸で倒れた時に、裏表が分かるようにや」と茶化している、それを聞くと「全く、ふざけて奴らだ、私が真剣に研究しているのに」ゼット博士は不快に思った。
そもそも「なぜ、男に乳首があるのか?」そう思った気掛けは、20年前の夏の日のことだった。
大学生だったゼット博士はこの日、アルバイトで引っ越しを手伝っていた、作業は荷物の入った段ボールをトラックに積み込む事だったが、トラックの荷台はちょうど胸より少し高かった。
段ボールの数は30個前後だったが、何しろ暑くて汗をかいた、かいた汗はシャツをビッショリと湿らせて、非常に不快だった、かくして彼の乳首は段ボールを荷台に上げる際に擦り上げられ、さらにシャツが塩気を含んだ事で酷く痛んだ。
「痛つったた、なんでこんなに、痛い?乳首がなければスムーズに荷物が積めるのに」
その日以来、彼はこの疑問に取りつかれてしまった。
生物学のパラダイムに大きな影響を与えたダ―ウインの進化論はもちろん、宗教的のモノまで全て目を通したが、彼を納得させなかった。しかし手がかりが無かったわけでもない、ゼット博士は「人間の進化は、他の動植物とは別次元で行われるのではないか?」という推測をしていたが、その説には無理があった。
犬や猫のオスにも乳首がある。「乳首というものは性別をわけるものではないということなのか?」
だから「哺乳類の体には必ず乳首がセットされているという事か?」ではそれはなぜなのか!!。
「乳首こそが哺乳類の証明!」「否、そんなはずは無い,一体誰に証明する必要がある?」思考はいつも堂々巡りで終わった。
「乳首がなぜ?」という疑問解消に為に生物学から人間工学、宗教学、そして畑違いの天文学、物理学までも研究しつくたゼット博士は、やがてマスコミからコメントを求めれる様になったが、ゼット博士のコメントは、視聴者から絶賛された、そしてそれは当然だった。
世俗の事件を科学的に解明したかと思えば、今度は宗教的考察で人々の悩み事に答えたり出来る学者はゼット博士以外には居ないのだ、マスメディアに寄って集って出演を求められ出演する日が続いた。
ゼット博士は忙しくなった、どれ位忙しくなったかを言えばあれ程執着した「なぜ、乳首は?」の疑問が薄れていく程だった。
こうして大金を得てさらに名誉、知識人で文化人のゼット博士を、世の女性がほっておくはずがなかった。
ひらめきの大切さ。
ゼット博士にモテキがやって来た。 ただただ研究に没頭した青春時代は恋愛など無縁で、女性に免疫がなかったので、いとも簡単にゼット博士は20歳代の若い女性に落とされた。
結婚生活は。おままごとみたいに幸せで、もう「なぜ乳首は?」なんてどうでも良くなった。
やがてゼット博士の妻が妊娠したが、若い女性は流行に敏感。
妊娠中から大ごとで、やれ妊婦体操だのラマーズ法はどう?だとかで大騒ぎした、ゼット博士も初めはウキウキする妻を
「可愛いなぁ」と目を細めていたが、あまりにすぎると段々と疎ましくなってくる。
大金持ちになっても根は真面目なゼット博士は働き続けた、そしていつしか働くことが息抜きになった。
やがて臨月を迎え出産、元気な女の子が生まれた、しかし我が子の誕生にもゼット博士はさほど嬉しくなかった。
なぜなら、妻から「最近はイクメンが流行っているのよ、貴方もイクメンしてね」と釘をさされていたからだ。
ゼット博士は、学者として哺乳類、特に類人猿が「メスが一時も欠かさず、我が子を離さないのは愛情だけではなく、そうしなければ、完成した個体に育たないからだ。」と確信していた。
「だから猿とあまり変わりない人間も当然そうするべきである、出来る限り」だった。
育児放棄された子猿は、死んでしまうしかないが人間は、周りによって助けられ育てられて立派に成人するけれど・・・。
『あなたぁ、パパになったのよ、お願い♡意味わかんないし』と若い妻にゼット博士の学説は理解できない、当然子守をする羽目になった。
皮肉にもリビングの大型テレビには、何処其処の政治家が育児休暇を取ったとか、イクメンを奨励するニュースが映し出されている。
「ほら、貴方みてよ、イクメンは大事よ」勝ち誇ったような妻の横顔に「何も考えず流行に乗る、政治家も若い女性も同じレベルか?本当に愚かだ!」思わず口に出そうなゼット博士だったが、堪えてこう言うしかなかった。
「そ~うだね、人類の未来の為だね」皮肉まじりで。
その時抱いていた娘が、ゼット博士の胸辺りを小さな手でまさぐった。
「えっ、まさか乳首をさがしているのか?確かに赤ん坊には、性別の判断はできない」いきなりゼット博士の頭脳に閃光が走った。「ちょっと待てよ?」とつぶやいて脳内が混乱するのを、何とか落ち着けようとする。
一度忘れてしまうほど長年疑問に思っていたことが解けはじめた。
それは南極の巨大な氷壁が、崩れ落ちる映像に似ていた、一つ崩れ落ちれば次々崩れ落ちる、答えはもう目の前だ。
側頭葉脳に記憶、蓄積されらたメモリーベースから前頭葉脳に認識として浮かび上がってくることが、「ひらめき」の正体と脳学者は推理している、今まさにゼット博士はこの状態だった。
「乳幼児は、乳首を吸って母乳が出るのが母で、出ないのが父という訳か?つまりそれならいずれ男性から乳首がなくなる日も来る。」納得しかけたが、テレビは相変わらずイクメンの放送をしていた。
「否、待てよ、ひょっとしたら近い将来、近未来に男性が育児を担当することが定着するとするなら、母乳ならぬ父乳が出る可能性もある、神はすべてお見通しか?!」
結論を導き出したがゼット博士の憂鬱はますます深くなった。
「なぜこんな世になったのか?」新たな憂鬱が生まれた。
(完)
生死一如
ゼット博士の憂鬱。
少子化、待機児童、etc.近代的社会問題の本当は何処にあるのだろうか?
ただ単に、子供を増やせば良いってわけじゃないでしょう、しかるところ経済的な問題だと思いますが・・・
近未来の空洞化した日本では少子化の方が失業率が下がり、それに伴い犯罪率のさらなる低下。
いい事づくめと思いませんか?
政治の介入はまったく無駄で無意味、ノスタルジックに浸って「子供可愛い」って叫んで、やさしい文化人と思われたいのか?。