整った風紀の乱し方2
「原田君ってさ、性欲無いの??」
その一言が鼓膜に届いた途端、陶器の湯呑が砕け散った。
「・・・あのさぁ、高いお茶なんだから粗末にしないでよねー」
「粗末にさせたりはテメェだろうがっっ!」
「勿体ないなぁ」と言いながら机の上に足を乗せ、両手でトランプを遊ばせるこの男・蘇芳は、風紀委員長という肩書をいいように乱用する問題児である。
今日も授業をさぼり、風紀委員の部屋入り浸って俺を相手にギャンブルで一儲けしようとしているのが分かる。
「原田君って彼女いないしエロ本持ってないし・・・弱みがないっていうの?つまんないんだよねー」
「・・・恋人とエロ本を弱点扱いかよ」
「当たり前じゃん。これほど身近にある弱みってないんだからね?作ってよ」
「・・・いらねぇし」
「ほらー、やっぱり性欲ないんじゃん」
「なんで、お前の中では性欲=弱みか?あ?」
「・・・・・・まぁそういうことだね」
蘇芳にしては珍しく、少しだけ考えてから結論を口にした。「よいしょ」と言って机から足をおろし、俺の元へと嬉しそうに歩いてくる。
革製のソファに座っている俺の横に座り、これまた嬉しそうに蘇芳は耳元に顔を寄せた。
「原田君、セックスしようよ」
「ああ?!」
「何言ってんだ」と言いかけた唇が、やんわりと封じられた。
「・・・何だよお前、発情期?」
「・・・・・・さぁね」
べろり、と唇を舐める舌に嵌っているピアスが、きらりと光った。
欲に濡れた目が、部屋の明かりを受けて妖しく光る。
蘇芳の細くて綺麗な指が、制服のボタンをはずしていくのをぼんやりと見つめる。
「ここで原田君に一つ教えてあげるね」
「・・・あんだよ」
「僕ね、この下にワイシャツ着てないの」
「ふふっ」と笑った蘇芳の指が、全部のボタンをはずし終えた。確かにその下に、ワイシャツの白い輝きはない。
代わりにあるのは蘇芳の白い肌と、淡く色づいた胸の突起。初めて見る蘇芳の裸体に、生唾を飲んだ。
「なんだ、ちゃんと性欲あるっぽいね」
「・・・だな」
ぐっと唇を押しつけて、ゆっくりソファに押し倒す。ベルトのバックルを外してズボンを床に投げ落とした。
さらに下着を脱がそうとした時、俺は思わず息を呑んだ。唇を離して、バカみたいに叫ぶ。
「おっまえ・・・パンツも履いてねぇのっっ!?」
「今日だけだよ。いつもは履いてる」
「・・・なんっで今日に限って」
「原田君とセックスがしたかったからだよ?わかんないかなぁ・・・」
「わっかんねぇよ」
気を取り直してもう一度キスをすると、蘇芳が甘ったるい声を出した。
目の前がぐらぐらして、ゆっくりと舌を口内に差し入れてやると、バカみたいに大袈裟に蘇芳の肩が跳ねた。
下品な音をたてながら溢れてくる唾液を飲んでいると、蘇芳の手が俺のベルトに伸びた。流石はギャンブラーと言ったところか。とても器用にベルトを外されて、下着も脱がされた。
「・・・原田君、変なかっこ」
「うっせぇな、今から脱ぐから待ってろ」
唇を離すと、蘇芳の唇は赤く色づいていた。制服をすべて脱いで全裸になった俺に対して、蘇芳は学ラン一枚を素肌に纏っていた。脱ぐ気も脱がされる気もないらしい。
「お前は、脱がねぇのかよ・・・?」
「着たまま汚した方が官能的なんだよ、知らなかった??」
「・・・・・・知らねぇし」
もう一度きつく唇を重ねて、今度は手の指を絡めた。
蘇芳の首筋から、甘ったるいコロンの匂いがした。
「はっ・・・あっ、ぅ・・・んっ」
「・・・きつっ」
あれからキスしたり、色んなところ触ったりしていううちに、蘇芳が焦点の合わない目で「早く挿れて」とねだったから、望み通り挿れてやった。
本来は排泄器官であるそこはとてもきつく、無理矢理広げた時に生臭い臭いがした。
お互い苦しくて、蘇芳に至っては死にそうな顔をしていたので、また何度かキスをしてやった。
すると蘇芳はすぐに落ち着いて、力を弱めて「動いて」とねだってきた。ゆっくり引き抜いて、強く挿してやると、蘇芳の口からは女みたいな声が溢れた。
それに気をよくした俺は、もう何も考えずに腰を振り続けている。
たまに蘇芳が発する制止の声も、聞こえないふりをして。
「ちょっ・・・と原田、君・・・痛いってば・・・っ」
「しっ・・・るかそんなの・・・っぁ誘ったのは、てめぇだろ」
「いっ・・・や、でも・・・痛い・・・からぁっ」
何の光も灯さない目から、綺麗な涙がこぼれた。普段は何の表情も作らない顔が、苦痛と快楽に歪んでいる。
白い肌と、黒い学ランのコントラストに、胸が切なく締まる。
呼吸する度に上下する胸の突起に、性欲が高まる。
「ひっ!」
蘇芳が仰け反って、大きく開けた口から掠れた悲鳴を漏らした。
固くなった乳首に舌を這わせ、飴を舐める要領でべろべろと舐めてやる度に、穴が締まる。
「いやっ・・・だめっ・・・!ちょっ・・・原田君!!」
蘇芳の黒髪が揺れて、ぱさぱさと乾いた音がする。
少しだけ、甘いシャンプーの匂いがした。
「だめだめだめって・・・何なんだよお前は」
「だって・・・」
ぐっ、と唇を噛みしめて涙をこらえる蘇芳に、胸が締まった。
仕方なく乳首から唇を離し、もう一度唇にキスをした。
「んっ・・・ふ・・・んん」
俺も蘇芳もキスが好きなようで、キスをすると鼓動が早まる。
腰を荒々しく振る度に、蘇芳の頬を涙が伝う。
膣と違って終わりのない穴の終わりが知りたくて、腰を奥へと進めても、終わりなんてあるわけがない。
奥歯を噛みしめて、汗を流しながら、蘇芳を揺さぶる。
ふ、と脳裏に昔の彼女の顔がよぎった。
「い・・・やっもう・・・イっちゃ・・・ぅっ、ふあぁぁぁあああ!」
「うっ・・・あっ」
ぐうっ、と細い体を仰け反らせて、蘇芳が射精した。白い胸と、綺麗な顔を精液が汚していく。
俺も腰を震わせ、生暖かい体内に射精した。びくびくと暴れる蘇芳の腰に、何度も性器を扱かれた。
終わった後。俺の手の甲にはみみず腫れが出来ていた。
蘇芳の爪が、手の甲に食い込んだらしい。
「いってぇ・・・」
ちらり、と斜め後ろに目をやれば、蘇芳が穏やかな寝息を立てて眠っている。
「・・・・・・何なんだよこの野郎」
「可愛いじゃねェか」と頬に口づけて、俺も静かに、体を丸めて眠った。
蘇芳の甘ったるい匂いが鼻を掠めた時、また彼女の顔が脳裏をよぎったのは
気付かないふりをした。
整った風紀の乱し方2