カノッサ海賊団~世界一有名な海賊団~

大海賊カノッサ団~世界一有名な海賊~

冬が近くなった。 窓の外の景色を椅子に座りながら見て私は思った。明日には、森に薪を拾いに行かなければいけないな。そそう思いつつ窓の外を見ていると扉の開く音が聞こえた。私が扉の方を見ると、今度五歳になる孫がいた。 「どうした、カノ」私は孫のカノに聞いた。
「ねむれないの」カノはそう言うと私のベッドの端に座った。
「そうか、眠れないのか。それじゃあ、おじいちゃんがお話をしてあげよう」
「本当! ありがとう、おじいちゃん!」カノは、目を輝かせながらいった。私は椅子から立ち上がるとカノの隣に座った。
「それじゃ始めようか」
「うん!」カノは、大きくうなずいた。
「あれは半世紀前のこと。世界で一番強く、有名な海賊がいた。彼らの名前はカノッサ海賊団......

「船長! 島が見えましたぜ!」部屋の外から、自分を呼ぶ声が聞こえる。副船長のスーだ。カノッサは、椅子から立ち上がると、船長室から出た。確かに、スーの言う通り島が見える。
「よし、野郎共! 帆を畳んで、錨を下ろせ!」
「オオー!」部下たちがそれぞれの作業に移っていく のを見届けながら、カノッサはいつの間にか隣にいたスーに話しかけた。 「スー、奴等を解放するぞ」
「了解した、船長」 スーはそう言うと、メインマストの方へ歩いていった 。カノッサもスーの後ろからついっていった。 マストには三人ほど、ロープに巻き付けられていた。
「よう、元気にしてたか。まあ、まだ三日しかたってないけどな」 「......」
「黙ることはないだろう。これまで三食おやつ付きで過ごせたのによ」
「船長」スーがそう呼ぶときは怒っているか、大事なときだけだ。
「冗談だ」カノッサはそう言うと、三人の方へ向き直した。
「お前たちが島で盗みをしたことはお前たちの船長から聞いている。しかしだな、優しい船長である俺が持ち主へと返してやろう。さらには、お前たちを解放して やる」
「......お前たちのやっていることは、海賊じゃない」
「あぁ?」
「お前たちのやっていることは海賊じゃないと言ったんだ。海軍の真似事なんかしやがって、誰が感謝すると言うんだ!」三人のうちのリーダー格の男が大声で言った。
「おいおい、舐めたことイッテんじゃねぇよ。そんな慈善事業するほど、俺たちは暇じゃないんだよ。もう一度舐めた口聞いてみろ
、お前の首切り落とすぞ」スーはそう言うと、腰に挿している剣に手を触れた。
「スー、落ち着け。確かに、俺たちのやっていることは、海軍と一緒だろうな。だけどだ、海軍は殺しをするだろ? そこが俺たちと海軍の違いだ」カノッサはそう言うと、三人を縛っていたロープをほどくとこう言った。
「お前たちは今から自由だ。安心しろ、後ろから銃で撃つような真似はしない。ボートはそこに用意している。それに乗って、どこでも行くんだな」
三人は疑いながらもボートに乗り込んだ。
「別にお前たちに感謝する訳じゃねぇぞ。ただ、これだけ言わせろ。近くに誰も住んでいない島があったはすだ。俺たちはそこに向かう。何かあればそこに来い。礼をする訳じゃないが、食事の礼くらいはする」そう言って、三人はボートで船から離れていった。
「......。結局、感謝してんじゃねぇか」スーが小さく呟いた。
「まあまあ、やっこさんは不器用なんだろうよ。さあ、島へ上陸するぞ」 カノッサは、そう言うと、ボートに荷物を詰め込み始めた。それを見た部下達は、「お前ら急げ! 船長に置いていかれるぞ」と口々にいいながら荷物を積みはじめた。
島の浜辺へと上陸した彼らだが、
「お前たち何者だ!」島の門番らしき、人物に銃を構えられていた。
「海賊だ。お前たちの長に用がある」カノッサは両手を挙げながら言った。
「長に何のようだ! 用件をここで言え!」しかし、彼らは銃を構えたままであった。
「島の宝を返しにきた。何日か前に長の所から盗まれている物だ」
「なぜ、お前がそれを知っている!」
「その宝を盗んだやつから聞いた話だからだ。宝ならここにある」カノッサはそう言って、自分の後ろを指した。そこには、男たちの中に混ざっているカノッサ海賊団の紅一点であるアンナが大事そうに何かを持っていた。
「うむむ、少し待て!」門番たちは、少し話し合ったあと村へと入っていった。しばらくたったあと、「お前たちを長の元へと案内してやる」と言って村の中へ入っていった。
「よくぞ、取り返して下さいました」村長は何度も頭を下げていた。
「頭をあげてください。我々はただ、届けただけですので」
「それでもです。この宝はですな、先祖代々伝わる秘宝でございまして―」村長の話は一時間に及んだ。
「くぁー、話長かったな」カノッサは隣にいたアンナに言った。
「ですね。でも私たちって海賊ですよね?」
「そうだな。でも、海賊がこういうことをしてはいけないというルールはないぞ」カノッサは、歩きながら言った。
その後、村を出ようとしたとき、村長に止められ、一泊していくことになったのでした。

「それでは、我々はこの辺で」
「そうですか、行かれるのですか」
「ええ」カノッサはそう言うと、足元に下ろしていた袋を持った。
「しかし、ありがとうございます。こんなにも食べ物を頂いて」
「いえいえ、村の宝を取り戻してくださった恩人ですので、このくらいは当然です」
カノッサがもう一度礼を言おうとしたその瞬間、
「船長! 海軍だ!」スーの声が聞こえた。スーは一足先に部下と共に、浜辺へと戻っていたがこちらに走ってきた。
「懲りない野郎だな」 カノッサはそう呟くと、村長に向かって、
「ここは危ないので我々にお任せ下さい」と言った。
「その必要はねぇな」スーの後ろから声が聞こえた
「アーノルド、久しぶりだな」カノッサはスーの後ろにいた男に声をかけた。
「ふん、久しぶりも何もついこの間やりあった所じゃねぇか」
「そうだったかな?」
「そうだ、それに今回はお前たちを攻撃しようと俺は思っている訳ではない」アーノルドはそう言うと、両手を挙げた。彼の腰にはいつもぶら下げている愛刀が今回は見当たらなかった。カノッサが怪しんでいると、突然、「船長、後ろだ!」スーの叫び声が聞こえた。
カノッサが後ろを振り向こうとした瞬間、銃を突きつけられた。
「攻撃しないんじゃなかったんじゃなかったのか?」カノッサはアーノルドを睨みながら言った。
「俺はするつもりはないと言ったはずだ」アーノルドはニヤリと笑いながら言った。
「何が目的だ?」
「お前たちの首にぶら下げている黒真珠の首飾りが目的だよ」
「っ!」
「海軍も金欠でね。主にお前たちのせいだがな。まあ、それはおいておくとして、色々と金が必要なんだ。ここまで言えば、あとはわかるな?」
「これを売り捌くつもりだな」カノッサは首にぶら下げている黒真珠を指でさしながら言った。
「ご名答。と言うわけだ、それをこちらへ寄越せ。そうすれば、お前たちとこの村の住民には手を出さないでおこう」
「この村の人たちは関係ないだろ!」
「この会話を聞かれている時点で関係者となっているんだよ。さあ、黒真珠をこちらへ渡してもらおうか」
「嫌だね」カノッサはアーノルドがいい終えるか、終えないかの時点で答えていた。
「なぜだ? お前たちが素直に渡すだけで、村人は助かるんだぞ?」
「へっ、関係ねぇな。こっちは命がかかってんだからよ」
「何をバカなことを。その中に大切な宝の隠し場所でもあるというわけではあるまいし」
「この中にはな、俺たちの魂が入ってんだよ」
アーノルドは、ポカーンとしていたが、次の瞬間大きく笑い始めた。
「ハハハハハ! そんなことがあるわけがない! 魂が黒真珠の中に入っているなんて聞いたことがない!」
「信じる信じないはお前次第だ。そうだな、あるエピソードを聞かせてやろう。昔の話だ。昔、とある島に上陸したときに宝箱を見つけてな。その中には、黄金が入ってたんだ。だけどな、そいつを全て自分の物にしようとした不届きものが、船員の中に居てな、そいつが黄金を全て持ち去ろうとした際に黒い霧が黄金から出てきただな、俺たち全員を飲み込んだんだ。その時にこう言われたんだ。黄金をお前たちに与える代わりに、お前たちの魂を頂くと。もちろん俺は反対した。そんなことで魂を取られては困るからな。しかしだな、その時には魂が身体を離れていてなどうしようもできなかった。そしたら向こうが、黄金の代わりに魂は返してやろう。ただし、貴様らの中にはもう二度と戻らない。代わりとなる器を用意しろと言うもんだから、近くにあった黒真珠の入った宝箱を引き寄せたんだよ。それ以来、肌身離さずに持っていると言うわけだ。だから、お前たちに渡すわけにはいかないんだよ」
「ふむ、それではこうしよう。近くに誰も住んでいない島がある。そこで、闘うと言うのはどうだ? お前たちとは散々闘ってきたからな、此処等でそろそろ決着着けようぜ」
「お前たちが勝手に仕掛けてくるから、殺さないように迎撃しているだけだけどな。いいだろう、死んでも言い訳なしだ」
「もちろんだ。それでは行くとしようか」アーノルドはカノッサに背を向けると、浜辺へと歩き始めた。カノッサたちもアーノルドのあとに続いた。
浜辺では、カノッサの部下たちが海軍の制服に身を包んだ、アーノルドの部下たちに囲まれていた。
「船長! 大丈夫ですかい!」部下の一人がカノッサに向けて声を上げた。
「大丈夫だ」カノッサは言った。
「全員銃を下ろし、船へ戻れ!」アーノルドは部下たちに向かって言った。
その後、アーノルドは部下と共に船へと戻っていった。残された、カノッサたちは、話し合っていた。
「あの野郎、強硬手段に出やがったのか!」部下の一人が声を荒げた。
「とにかくだ、これが最後の闘いだ。逃げたいものは逃げていい。強要はしないからな」カノッサはそう言ったが、誰もその場を去ろうとはしなかった。
「全員、思ってることは一緒さ」いつの間にかスーが 隣に立っていた。
「船長と共にどこまでも行くのさ。例え死んでもな」
「そっか、そうだよな。それが俺たちカノッサ海賊団だよな!」カノッサはそう言うと、部下達に向かって話始めた。
「そんじゃ、最後の闘いと行きますか!」
「オオー!」部下全員が手を上に突き上げて叫んだ。
カノッサ達が船に戻りると、まるで待っていたかのように、アーノルドが乗っている船が動き始めた。
しばらく船を進めると、島が見えてきた。確かに人の住んでいる気配はしなかった。ボートを降ろし、島へと近づいていくカノッサ達と、アーノルド達。
浜辺へとたどり着くと、アーノルドが、「さあ、始めようじゃねぇか! 最後の闘いをよ!」と声高々に言った。
「野郎共行くぞ!」カノッサも叫び返す。
そして、二人はぶつかる。そのあとに、部下たちがぶつかり合う。お互いの命をかけた最後の闘い。
その闘いの最中に、アーノルドは島にある森の中へと入っていった。
「逃がすかよ!」カノッサがアーノルドの後を追いかけようとするも、アーノルドの部下たちが行く手を阻む。とそこへ、
「船長の邪魔をするな!」
スーが斬り込んできた。あっという間に、森への道を開き上げた。
「カノッサ行け! ここは俺たちに任せろ!」
「ああ!」カノッサは森へと走って行った。

しばらく走っていくと、少し拓けた場所に出た。その中央にアーノルドはいた。
「邪魔が入っちゃあれだからな」
「そうか」カノッサは言葉少な目に答えると、腰に挿していた剣を抜いて、構えた。アーノルドも同じように構えた。
二人とも相手の出方を見ているようだった。じわじわと回り始める二人。そして、ほぼ同時に相手へ向かって踏み込んだ。

キィン!......グシャ......キィン!

剣と剣がぶつかり合う金属音が聞こえた後、足元の草を踏みしめる音、そして、金属音。
何度も何度も交差する剣と剣。二人の体力は数多くの打ち合いで残り少なくなっていた。
「ハァハァ、次で最後だな」
「あ、あぁ。そうだろうな」
もはや、どちらがどちらかなんてわからないほど、辺りは暗くなっていた。
それでも、二つの影は......動く。
お互いの身体が交差した後、一つの影が倒れた。
「......。止めをさせよ」
「そんなことをしなくても、お前は死ぬだろ。なぁ、アーノルド」
「フン、分かっていってるだろ」
「さぁ、どうかな? それじゃあな」最後の闘いに勝利したカノッサはアーノルドに背を向けて歩き始めた。
が、少し歩いたところで、バランスを崩し倒れたカノッサ。その足元には、短剣を手に握っているアーノルドがいた。
「......最後の悪あがきだったのか。見事だよ」カノッサは上体を少し起こして、アーノルドに向かって言ったが返事はなかった。
ガサガサ。
カノッサの後ろから音が聞こえた。
「そこにいるのは誰だ?」
「私です!」
「アンナか。無事か?」
「船長ほどではありません! 急いで止血しないと!」
「いい。目の前が少しずつ暗くなってきた。自分の最期なんて大体わかる」
「そんな悲しいこと言わないで下さい! 船長が生き残らないで、カノッサ海賊団はどうなるんですか!」
「そんなこと言われてもな」そこで、カノッサの意識は途切れた。



人の声が聞こえる。神の声か? それとも、地獄に堕ちた者の声か?
「......長......船長!」
「......何で生きてるんだ、俺は?」
「船長! よかった、目を覚まして」突然アンナが抱きついてきた。
「あんた危ない所だったんだぜ。俺たちが見つけて、ここに運ばなければな」
そこにいたのは、いつかカノッサ達に捕まっていた盗賊たちだった。
「近くの島って言ってたが、ここだったのか」
「あぁ。これで貸しは返したぞ」
「律儀なやつだ」カノッサの意識はそこでまた途切れた。

「出るのか、この島を」
「あぁ、いつまでも世話になるのはどうかと思うしな」
「俺としては、いつまでも居てくれてもいいんだがな」
「そうもいきません。私たちの仲間のお墓も作ってあげないと」
「なるほどね」
「そう言うわけだ。世話になった」
「あぁ、またいつか会えるときがあったら会おうぜ」

「結局全員居なくなりましたね」
「よくやったと言うしかないだろ。あの海軍相手に相討ちだからな。そう言えば、お前はなぜあの場所に来れたんだ?」
「実は、副船長が......」
「そうか......。それじゃあ、最後の船長命令でも出すかな」
「一度も出したことないじゃないですか」
「最初で最後だよ。カノッサ海賊団、ここで解散だ!」

......これでカノッサ海賊団のお話はおしまい」私が隣を見ると、カノはグッスリ寝ていた。
「子供には少し早い話だったかしらね」
「そうかも知れないな、アノ」話の途中で部屋に入ってきた私の娘のアノが言った。
「それにしても、お父さんの話す昔話を聞くなんて久しぶりだな」
「子供の頃たくさん聞かせていたのに、いつからかお前が嫌がるようになったからだろう」
「そうだったかな? あまり覚えていないや」カノを抱き抱えながらアノは言った。
「ほら、早くカノをベッドに連れていきなさい。風邪ひくよ」アノの隣にいた、私の妻が言った。
「はいはーい。それじゃ二人ともおやすみなさい」
「あぁ、お休み」私はアノに言った。
アノが部屋から出ていった後、私の妻は、「懐かしいな、あの頃」
と遠くを見る目をしていた。
「もう、あれから半世紀たつからな」私は言った。
「そろそろ寝る?」
「あぁ、明日は薪を拾いにいかねばならんからな」
「そう、それじゃお休み。船長」
「止めてくれ」私はニッコリしている妻に向かってそう言うと、夢の中へと落ちていった。

カノッサ海賊団~世界一有名な海賊団~

カノッサ海賊団~世界一有名な海賊団~

世界で一番有名な海賊団がいた。彼らはカノッサ海賊団。海賊らしからぬ海賊団のお話。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-11-03

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