レモン味~甘酸っぱいのは恋の味~

終わり


約一年になる片思いが終わりを告げた。
ううん。告げられた。

私は、何もしてないのに。
まだ、告白すらしてなかったのに。

彼は私の親友と付き合い始めたんだ。

親友と同時に同じ人を好きになった。
お互いにすべてを打ち明けた。
「どちらがうまくいっても恨みっこ無しだからね!!!」
なんて、青春ドラマを代表する会話をしたのを覚えている。

恨んでなんかない。
紗江はすごくいい子だし、信頼してるし、本当に完璧な子。
むしろ、紗江の恋がうまくいって、うれしいと思ってしまうくらい。

私は彼と仲良しだった。
だから少し紗江よりも有利だと感じて調子に乗ってたんだ。

私と彼が深めたのは、友情以外のなにものでもなかったのに。
証拠に彼は、紗江のことを私に相談してきた。
「雪田紗江が好きだ」って…

体から力が抜けた。
脱力感で、口が動かなかった。
やっとのことで言えたんだ。

「………紗江も…だと思う」

彼らがそういう関係になるのに時間はかからなかった。
放課後に満面の笑みに腕をまっすぐ伸ばした片手ピース。
「うまくいきましたー!!!!」
顔を近づけて耳元に小声でささやく彼。そして誇らしげにニッと笑う。
それだけで、まだ胸がギュッと小さくなる。
笑顔を作った。
「良かったじゃん。おめでとう!!」

…….そうだよ。好きな人が、大好きな人が幸せになれたんだよ?
これ以上に望むことなんて無いでしょ?
初めから、見返りなんて求めてない恋なんだし。
心から祝ってあげなくちゃ。

王道ヒロインになりきった。
その方が、ずっと楽だったから…

レモン味~甘酸っぱいのは恋の味~

レモン味~甘酸っぱいのは恋の味~

  • 小説
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2013-11-02

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