XYのクンカ
いいんかい
夕日はほとんど沈んでいるが、空にはまだ少し青が残っている初秋。この旧校舎の屋上にはタカオとユウミの二人しかいない。ユウミはどこか悲しそうな顔で空を見上げている。タカオはそんなユウミの後姿を見ているだけであった。
日中は汗ばむ陽気だったが、夕日が沈むと、涼しい風が二人の間をゆっくりと通り抜けた。その風に反抗することなくユウミの黒くて長い髪はなびいた。二人の距離は5mほどあるが、タカオの自慢の嗅覚は、風と共に流れてくるユウミの髪の匂いを見逃さなかった。タカオは相手にバレない程度に、しかし力強く鼻で息を吸い込んだ。予想通り、小さな小さなユウミが鼻の粘膜へ突き刺さる。タカオはご満悦である。
沈黙と風だけが二人の空間を流れている。タカオはこの状況でもとても嬉しかった。彼はユウミのことをとても気に入っているのだ。ただ、このままだと先ほどの"失言"で嫌われてしまうかも知れない…。タカオは意を決し、一言声をかけた。
「風、涼しいな」
ユウミはタカオの言葉にほんの少し反応したが、返事はなく、二人の構図になんら変化は見られなかった。
「その…やっぱり怒ってる…よな?」
エリカは答える素振りすら見せない。
「…もしかしたら、さっきのこと、深く考えてないか?」
会話は続けるタカオ。
「さっきの本当に少しだけなんだ。本当に。信じてくれ」
ユウミに少し反応が見えた。女の子らしく両手を後ろにまわした。しかし、一向に返事をしようともせず、振り向きもしなかった。この様子をみて諦めたタカオ。
「…ごめん。やっぱり、さっきのは忘れてくれ。俺がどうかしてた。すまない…」
「……。……本当?」
ユウミはやっとタカオの方へ振り向いた。タカオはすかさず答える。
「うん!本当だ!さっきまでの俺はどうかしてた。だから、その…さっきのは忘れてくれるよな?」
「…うん。いいよ」
「はぁ、良かったぁ」
「……風、涼しいね」
「…うん」
再び、沈黙が流れた。
「突然だけど私ね…タカオ君のことが好きなの」
「え…」
「だから、さっきはビックリしちゃっただけなの」
「…そ、そうか…」
タカオは顔にこそ出さなかったが、心の中ではカーニバル状態だった。しかし、タカオはユウミのことは気には入っているものの、好きという感情はなかった。…が、このような勝ち戦、みすみす逃す訳にもいかなかった。タカオは再び己を鼓舞し、ユウミに近づいた。
「ユウミ!」
「は、はい!」
「俺もその…ユウミのことが…その…」
ユウミの顔は照れて赤くなっている。
「ユウミ!やっぱり、もう一度言うよ」
「え?」
「ユウミ!お前のアナル、少しだけ匂わせてくれぃっ!!」
「はい(照)」
XYのクンカ