その先に

適当な小説。
構想は、一年かかった。
星空では二作目。
一作目は、今度公開。
未完です。
物語はできても、書き起こすのが遅い。
読んでくれた方、本当にありがとう。

序章


世界は静寂に包まれていた。
生命の声や、機械の稼動音すら聞こえない。

世界は終わっていた。
海は黒く濁り粘り気があるためか、
一切波を立てようとしない。
元あったはずの緑の自然は完全に消え去り、
延々と砂漠が続いている。

人間は生きるために、巨大なドームを造った。
様々な宇宙線から、環境から守る透明なドームだ。
そんなドームの中、
空に浮かぶ、砂嵐しか映さないモニター。
ビルから直角に生える居住スペース。
いくつもの居住区が一つに集まった大きな塔のような建物。
それも全てが廃墟となっている。
地面には動く気配のない飛行船。
本当なら空を飛ぶであろう車。
今はどれも、動こうとはしない。


全てを包むのは静寂だけだった。

一章・旅立

ふと足音がする。
ギュッ、ギュッ、と砂漠の砂を踏みしめる音。

足音を発していたのは老人だった。
身なりはボロボロの布を一枚羽織っているだけ。
靴や靴下など履いていない、
あるのはただの布だけだ。
あごの髭は長く伸び、膝まである。
頭は八割近く禿げていて、人工太陽の光が反射している。

老人は辺りをゆっくりと見回して言った。

「最近の若いものは遠慮と言うものを知らない。」

老人は一言だけ、ため息のような独り言を言った。
そして

「使うだけ使って、使えなくなったらすぐ捨てる。
本当にそれでいいのか?」

空を見上げて言う老人。
宇宙には人類がいた。
地球環境の急変、ドーム内の戦争。
人類は地球から逃げ出していたのだ。

ふと、老人がこちらを見つめる。

「おや、まだ人が残っていたのか。
いや、きっと幻覚だろう。
全ての人間は今、あの巨大なコロニーで生活しているからな・・・。」

「・・・・・。」

「まあ、待ちなさい。たとえ幽霊だとしても、私の話を聞いて欲しい。
人間ならばなおさらだ。
わしの昔話をしよう。」

老人に光が集まった気がした。
いや、気のせいではないようだ。
実際に光が集まり、老人の周りを明るく照らし出している。

「未来の技術を使えば、脳波を映像に出来る。
素晴らしい技術じゃな。」

老人は、数年前に発売されたプロジェクターを手にしている。
このプロジェクターは、夢や想像などを映像に出来る。

「わしの生まれた時代から見てもらおう。
あれは・・・。数億年前か。流石に戻りすぎだ。
最初の人間の話でもしようか。」

老人の周辺が、緑豊かな土地に変わっていく。
木々は生い茂り、空は青い。

ふと木の陰に、何かが居る。
・・・猿だ。
猿は一匹だけではない。
十匹程度の群れとなっている。

「こいつらは、もう少しで人間になる所だ。」

ふと、空が黒くなる。
雨雲が空を覆い、雷鳴も聞こえ始める。

猿達は、慌て始めた。
一匹が、近くの洞窟に入り仲間を呼ぶ。
群れは洞窟に飛び込んだ。

同時にどしゃ降りの雨が降ってきた。

「どうじゃ、情けないだろう。
今は天候なんか無いから分からんだろうが、
彼らからしたら死活問題じゃ。ほれ!」

落雷。爆音が辺りに響き渡る。
猿達は、驚き悲鳴を上げる。

「落雷は初めて見たか?
この光の筋に当たれば、猿達は即死じゃ。ほれ!」

またも落雷。
連続して何回も、地面に突き刺さる。

「そう。この雨が止んだとき。
彼らは進化する。」

老人がそう言うと、黒い雲はどこかに流れていく。
日の光に、猿達は洞窟から顔を出す。
安全を確認し、彼らは外へ出る。
そして、いつもの森へと帰ろうとする。
だが・・・。

「森は火に包まれていた。
落雷が激しく、燃え出したのだろう。」

猿達は呆然としている。
住処が燃えているからではない。
初めて見る火と言うものに驚いているのだ。
自然界に、こんな綺麗な橙色があっただろうか。
彼らは、そこに驚いていた。

一匹が、火に近づく。
歩みを止める。
熱を感じたのだ。

しばらくすると一匹は

「燃えた木を、手に取った。
まだ、燃えている木の枝を。」

不思議そうに、じっと見つめる。
そして、熱さに驚き手を放す。

「彼らは、こうやって火を手に入れた。
これが人間の始まりだ。
人間は、冒険の度に、進化する。
つまり、彼らが最初の人間と言うわけだ。」

老人の周りが、元の砂漠に戻っていく。

「ん~ここは一応日本か。
ならば、次に見てもらうのは、これじゃ。」

老人に光が集まった。

二章·誕生

光は、徐々に小さくなっていく。
正確には、プロジェクターで、夜が再現されているのだ。
中央にはキャンプファイアーのように木が組まれ、
炎は力強く、天まで届きそうな勢いだ。

「彼らは火を手に入れて、さらに二足歩行を始めた。
道具の次に広まったのは···。」
「米だー!」
「豊作だ!」
「祝えっ!祝うんだ!」
「酒だ!」

「···農業の始まり。稲作じゃな。」

炎を囲み、人々は踊り出す。
音楽と呼べる物ではないが、音楽に合わせて踊る。

「彼らは、楽しんでいる。
そして、自然への感謝を忘れてはいない。
ただし、稲作だけが進化ではない。
彼らは、歌や踊りなどの文化を作り出し始めた。」

歌や踊り、そして炎は強くなるばかりだ。
人間として生活を始めた原点が、ここにある。

「っと、盛り上がっているところを申し訳ないが、
一旦元の時間に戻るぞ。」

辺りは、元の砂漠に戻る。

「いくつかききたいんじゃが、彼らを見て何を思った?」
「・・・・・。」
「貧相な生活に見えたか?それとも、裕福な生活に見えたか?」
「・・・・・。」
「・・・まあいい。ちなみに彼らは、この後も進化する。
プロジェクターの電池が切れてしまったから戻ってきたがな。」

老人は、目の前に座った。

「彼らの次の進化は、建築だ。それも盛大な。
今残っているのは、大阪城だけかな?
ああいう大きい建設を始めるのが、この後だ。
さて、充電は終わったかな?
なんだまだか。もう少し話でもしよう。」
「・・・・・。」
「さっきの時代。あの時代は良かった。
その少し先の時代もよかった。
人間は冒険して、進化を手に入れていたからな。
・・・そしてその時代までは、自分を楽にしようと考える輩が少なかった···。
···さて、充電は終わった。」

老人が立ち上がる。

「ここから先の時代にいる人間は、何かをなくしている。
何を無くしたか、君もきっと分かるだろう。
もしも分かったなら伝えて欲しい。
その先になにがあったのか。」

三章·進化

先の時代。

彼らは、すごい発明をした。
今まででは、考えられぬ発明。

世界に、電気が満ちようとしていた。
光が常にある生活も、始まろうとしていた。

世界に、エンジンが誕生した。
人々は、陸、海、空。全ての場所で、
自分の速度を越えて走れるようになった。


「すごい進歩だ。原始人は、こうなる事を予想など出来なかっただろう。
だが、縄張り争いが続く事は、予想していたかもしれない。」


爆撃音。
機銃の音。
縄張り争いなど、今に始まった事ではない。
進化によって、人間は道具を手に入れ、
それを縄張り争いに使うようになった。
時代を例えるならば、赤黒い何かだ。

「この時代。人は悲しみに包まれていたかもしれない。
だが、悲しみに包まれるのは、これから先も一緒だ。」


またも轟音。
大雨、雷、地震、火災。
人間とはまた別の何かによって命を落とす人々。
仲間の命を受け継ぐためにも、
彼らは生き続けた。
そして、死んでいった。


「時代は進化し続ける。人間は、冒険せずとも知恵を手に入れる。」


原始人は、火を手に入れる時に、死んでいたかもしれない。
電気が出来るときに、爆発が起きるかもしれない。
戦闘機の実験で、そのまま死んでいったのかもしれない。

死の覚悟と引き換えに行動を起こす事を冒険と呼ぶのならば、
この先の人々は、冒険をしなくなった。

その先に

完成してないけど、後書き。
高校二年の時に、ひょんなことから
この作品の原案が出来た。
色々ダメ出しを食らったが、
一年かけた構想がこれ。
卒業した今でも、色々と考えている。

その先に

老人は、誰も居ない地球を一人で歩く。 そんな中、老人は君たちを見つけた。 どうか、彼の話を聞いて欲しい。 彼を、彼の生涯を、未来に残したいから。 その先に、 何があるのか、 見て欲しい。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 時代・歴史
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-10-30

Copyrighted
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  1. 序章
  2. 一章・旅立
  3. 二章·誕生
  4. 三章·進化