雪道

桐灰悠

ロマンチックな感じで。

 教室には、僕と、僕と同じで早くに学校に来た人が何人か居るだけだった。いつもは賑やかな教室が、今日は一段と静かな気がした。ホームルームが始まるまでの間、僕は窓の外をぼーっと眺めて、今までのこと、これからのことを虚ろに思い出していた。
 高校生活最後の始業式、その日は雪だった――。

 これから春まで、雪は降り続けて、透き通った寒さと共に辺りを白色で埋め尽くしてしまうだろう。そうして僕らは春と共にこの学校を去って、新しい道を歩いて行く。夢とか進路とか大切なものとか、その他上手く歩くために必要なあれこれとか、今でも分からないけれど、もう踏み出さないといけないんだ。
 
 起立。礼。着席。
 ホームルームは、担任からの短く、けれども熱の籠った挨拶と、始業式に関する連絡のみで終わった。始業式では、大学入試に対する注意が為され、皆の気が冬休み前よりさらに締まっていることが伝わって来た。僕には締める気や熱意の心が無かったけれど、勉強は頑張ろうと思った。
 今日はこれで家に帰った。帰り道には図書館に寄って時間を潰して、文庫本を二冊借りた。

 二週間ほどで読もうと思っていたのだけれど、家に帰って読み始めるといつの間にかどちらの本も読み終えてしまっていた。もう十時を過ぎるので、今日はもう、風呂に入って寝る事にした。



 無事に大学に合格出来た、帰り道。電車の中で大切だった人を見つけた。彼女は髪を短くしていて、もう僕の知っている彼女はどこか、遠くへ行ってしまった様に思えた。僕はこれから先、どんな風に生きていくのだろうか。僕は何になれるのだろうか。変わってしまった彼女を見て、そう強く思った。
 人気のない駅で彼女が電車を降りた。これから先、彼女とはもう二度と会えない。何故だろうか、確信出来た。それでも僕は、違えてしまった道を、彼女が辿った道を、もう一度歩く事が出来なかった。

 ふと、彼女が振り返った。雪は彼女の肌に光を反射させ、彼女を白く輝かせた。



 ――何よりも美しくて、何よりも大切なものが、そこにある気がした――

雪道

雪道

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-10-29

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