頭痛肩こり樋口一葉

7月25日 尾道市民劇場

「頭痛肩こり樋口一葉」

こまつ座

作  井上ひさし

演出 木村光一

出演 樋口夏子(一葉) 有森也実

   母 多喜     大塚道子

   妹 邦子     佐古真弓

   稲葉鉱      久世星佳

   花蛍       新橋耐子

   中野 八重    椿真由美

 色々な所にまだ江戸時代の風習が残る明治16年のお盆から31年のお盆までの樋口家の変遷の物語。

貧しい樋口家の戸主の夏子は様々な仕事に付くがどれも上手くいかなくて妹の邦子が仕立物をして細々と生計を立てている。

そんな樋口家へおこうさまや中野八重が盆参りに訪ねて来る。おこうさまはその昔2500石の旗本のお姫様で母の多喜が乳母に上がっていた事がある。

だがどの家も今は零落れて皆貧しくお互いにお金を貸して欲しい者ばかりだ。

そんな中何故か夏子にだけ見える花蛍という成仏しきれず彷徨っている幽霊が現れる。なぜ成仏できないか・・・辿って行くと思わぬところにその原因があった。

この花蛍さんを演じている新橋耐子さんがなんと言っても素晴らしいのだ!

文学座に所属しているとパンフに書いてあったが、この作品が1984年に初演されてから10回目となる公演の中で9回までこの花蛍を演じていると書いてあるから

如何に当たり役かが判ると言うものだ。その身のこなしは歌舞伎の女形の如く、台詞は女っぽくしとやかな、と思えばアバズレ女に変化、その度に客席から笑いが起こる。

その自由自在な演技に惚れ惚れしてしまった。本来なら夏子を演じる有森さんが主役の筈だが、完全に新橋・花蛍に喰われている。

新橋さんと言い邦子役の椿さんといい劇団でみっちりと台詞の基礎を勉強している人が喋る言葉は舞台でも端々までしっかりと聞こえる。

やっぱりTV等でポット人気が出た人が舞台で喋る台詞とは全然違うなぁ!と改めて感じた。

おこうさまの久世さん、童謡らしき歌を何度も歌うのだが、その独特の声が温かくてその度にほんわかとした気持ちに成る。

「OUT」で見た颯爽とした女性とは全然違う滑稽な部分も違和感無く見せてとても面白かった。

八重は検事に見込まれて結婚するが1年経ったとき夫が浮気をし、挙句の果ては騙されてお女郎さんになってしまう。

おこうさまの方も散々事業に失敗した夫が死に子供を養子に出して再婚する。所がその再婚相手が花街で浮気をしているという。しかもその相手は八重だったのだ。

その事で2人は争った挙句に2人とも死んでしまう。小説家になった夏子も働きすぎて死に、年老いた多喜にもお迎えが来る。

舞台には幽霊になった4人の女達が最後に残った邦子の引越しを見つめている。

 封建時代に生きた女達のやりきれないお話を、様々な灯りがふんわり包んだ舞台だったように思う。

 この舞台装置、何といてっも灯りの使い方がとてもムードがあって良かった。

バックの空に見える明り、盆ちょうちん、仏壇のお灯明、家の門に下げられた提灯、中でも蛍の光の表現がとても素敵だった! 

時には1匹の蛍が舞台の前をふわりふわりと飛び、舞台の前方に植えられた草の中にも沢山の蛍の光が輝いていた。

前に垂れる紗の幕には中央に萩が描かれその周りには秋の七草が配してあり薄っすらと透けて見えるその風情はとても趣があった。

頭痛肩こり樋口一葉

頭痛肩こり樋口一葉

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-09-18

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