気付いてよ...バカ -11-

11です。
今回は早い(・∀・)←

<登場人物>
*岡野 夢空(おかの むく)
*井上 奏哉(いのうえ そうや)
*椎名 由仁(しいな ゆに)

...その他

本当の答え

-11-

授業のため移動する。
通りすぎる人が俺を見ている気がする。
普段から無表情だから
あまり気にしてないように見えるけど
内心すごく嫌だ。
俺は少し速度を早めて歩いた。

目的の場所に着き、
扉を開こうと手を伸ばした
...その時だった。

「井上くん??」

後ろから呼ばれたから振り向いた。
そしたら、藤池先生がいた。

「...藤池先生。」
「ハハ、やっぱり。
井上くんじゃないかなって思ったんだ。」

夢空に告白されたあの日から...
いや、この人が
ここの大学に来たときから
俺はこの人が苦手かもしれない。

「...何か用ですか??」
「そんなに警戒しなくても
何もしないから。」
「...」
「あと、用があるのは君じゃないよ。」

俺の心を読んでいるのか...
全て分かってるよとでも言うかのように
藤池先生は少し微笑んでいた。

「...夢空ですか??」
「うん、正解。」
「...夢空なら
この後も授業がありますけど??」

なんだか、
このまま黙って
夢空を連れてかれるのは嫌だった。
嘘をついた訳ではないし、
問題はない。

「そうか...それは残念だな。」
「...」
「じゃあ、またあとで出直そうかな。」
「そうした方がいいかと。」
「それにしても、
次の授業まで把握してるなんて
井上くんは、
岡野さんのこと、よく知ってるんだね。」

何が言いたいんだ...

「...別に、幼なじみですし。」
「あぁ、そうだったね。」
「...じゃあ、失礼します。」

俺は軽く頭を下げて
扉を開けて中に入った。

そして見てしまった。
どこかで見覚えのある3人の女子と
夢空と由仁が言い合ってるところを。
最初から聞こえていた訳ではない。
藤池に止められなかったら
きっと始めから聞けていただろうか...

俺が入ってきたことに気付かず
由仁がふざけるなと
彼女たちに少しキレかけた。

そしてそこで
いろいろと分かった。
やっぱり彼女たちは
俺の外見しか見てなくて
そこしか好きじゃなかったこと。
由仁は夢空のことを
よく見てきてて支え続けていたこと。

そして、夢空は13年間も
俺が好きだったこと。
しかも外見だけではなく、
俺自身を好きだったと言うこと。

しばらくして彼女たちが
もといた席に戻り
夢空と由仁もイスに座り、準備をした。
由仁が俺に気付き
そこにいてと目で訴えていた。
俺は黙って頷き、
近くのイスに腰掛けた。

授業はまともに聞いていなくて
腕を組み、そこに頭を伏せて
考え事をしていた。

「奏哉。」
肩を軽く叩かれ、
はっと顔を上げると由仁と夢空がいた。

「...由仁、夢空。授業は??」
「もう終わったけど??」
「奏ちゃんが授業中に寝るなんて
珍しいこともあるんだね。」
「あぁ...うん。」

別に寝ていたわけじゃないけど
ここは話を合わせとく。
考え事してたなんて言って
何を考えてたのかなんて
聞かれたら少し困る。

「寝不足??」
「まぁ、そんなところ??」
「そっか。...あっ。」

夢空が視線を上げて止まった。
俺も同じ方を見た。
さっきの彼女たちが階段を上り、
徐々に近付いてくる。
向こうもこっちに気付いたのか
夢空と由仁を軽く睨み、出て行った。

「何あれ。」
「...やっぱり、気に食わないのかな。」
「夢空が気にすることじゃないし、
私はあいつらの態度に気が食わない。」

ここは知らないふりをすべきか
それとも聞くべきか...
顔を上げるとまた由仁と目が合って、
首を横に動かしていた。
“何も言わないで”
俺はまた黙って頷いた。

「...そういえば夢空。」
「なに??」
「...さっき、この授業が始まる前
藤池先生が夢空のこと探してたよ。」

本当は言いたくなかったし、
頼まれた訳でもないから
言わなくても良かっただろうけど、
なんだかさっきのに
罪悪感が生まれてしまった。
だから夢空に伝えた。

「えっ、本当??」
「うん...また出直すって言ってたけど。」
「そっか、ありがとう。
由仁、私ちょっと行ってくるね。」
「うん、そうしなよ。
急ぎの用だったら、まずいと思うし。」
「うん、じゃあまたあとでね。
奏ちゃんバイバイ。」

そう言って
夢空は少し走って出て行った。

「止めなくて良かったの??」
「...なんで。」
「顔が拗ねてる。」
「...」
「はぁ...本当に手が掛かるわよね。
この2人は。」
「...どの2人??」
「別に??
で、授業中に何考えてたの??」
「...なんで。」
「分かるわよ。
普通、授業中に寝る人は
もっとぐだーとしてるのよ。
悠夜みたいにね。」
「あぁ...」

確かに悠夜が寝てるときは
ぐだーとしてる。
...素っ気なく接するくせに
やっぱり悠夜のこと好きなんだな。

「...なに??」
「いや、別に。」
「で、何考えてたのよ。」
「...俺さ」
「待って。」

自分から聞いたくせに
途中で止めるなよ。

「なに??」
「奏哉このあと授業は??」
「1コマあくけど。」
「じゃあ移動しましょ。
ここで話すのは邪魔になるし、
出来れば大学内じゃない方が
奏哉的には良いでしょ??」
「...」

こいつも人の心読んでるのか。

「私、コーヒー飲みたいな。」
「じゃあ近くのス〇バ行くか...」
「奏哉の奢りね。」
「...お前な」
「ほら、早く行くよー。」
「...」

もう反論しても仕方ない。
俺は由仁のあとを追って
大学の近くのス〇バに向かった。


「で、何考えてたのよ??」
「...なんとなくは分かってるだろ。」
「まぁね。
でも、一応聞こうかなって。」

性格悪いな...
俺はため息をつき、話し始めた。

「さっきの言い合い
全部じゃないけど聞いた。」
「うん。」
「由仁がどんな思いで
夢空を支えてきたのか分かった。」
「うん。」
「あとは...夢空が
13年も前から俺のこと好きだってことも
...初めて知った。」
「それで??」
「...正直驚いた。
こんなこと言ったら夢空には悪いけど、
夢空に告白された時、
さっきの彼女たちと同じで
夢空も俺の外見しか見てないって
ちょっと思ってた。」
「...とりあえず殴っていいかな。」
「...」
「冗談よ...半分ね。」
「ごめん。」
「別に私に謝ってもね、それで??」
「...13年前って、
俺たちまだ小学生じゃん。
そんな前からってことはさ、
夢空はちゃんと
俺を見ててくれたんだなって。」
「そうよ。」
「そう考えてたら、
夢空にすげぇ失礼だったなって。」
「うん。」
「...なのに俺は...」

言葉に詰まってしまった。
結局俺は何を考えてたんだ...

中学生の時のこと、
高校生の時のことを思い出して
ただ想い出に浸ってただけだったのか。

そんな俺に気付いたのか
由仁が話始めた。

「...奏哉はさ、外見はいいと思う。
でも、中身は少し独特だった。
それは昔からね。
だから夢空が奏哉を好きって
言ったときは...」
「頭おかしいって思った??」
「まぁ、少しね。
ずっと一緒にいたから
そう思い込んでるだけだって思ってた。
でも、しばらくして
奏哉への想いは
本当なんだって分かったの。」
「...なんで??」
「“奏ちゃんの顔も好き。
それ以上に私は奏ちゃんの考え方や
ものの感じ方が好き。
ずっと一緒にいたいと思う。”
小学生の夢空がよ??
私にこう言ったの。」
「...そうなんだ。」

平然にしてるけど
考えるだけで顔が緩んでしまう。

「まぁ、昔読んでた本のセリフを
少し借りたみたいだったけど。」
「夢空らしいね。」
「でも、ちゃんと意味は
分かってたわ。」
「うん...」
「それから中学、高校に行っても
夢空の想いは変わらなかった。
むしろ強くなっていってた。
夢空は本当に奏哉が、
奏哉だけを好きだったの。」
「...」
「私は奏哉も夢空となら
上手くやっていけると思ってる。
むしろ夢空じゃなきゃ
1日で破局すると思ってる。」
「1日って...」
「だから早く奏哉にも
自分の気持ちに気づいて欲しいの。」

俺の気持ち...??

「俺の気持ちって...
俺は夢空に告白されて」
「振ったんでしょ??
知ってるわよ。でもそれは、
夢空も奏哉の顔だけが好きなんだって
思い込みがあったからでしょ??」
「...」
「奏哉、自惚れすぎじゃない??
あんたよりも顔がいい人は
たくさんいるんだから、
みんながみんな、
あんなの顔だけを
好きになるわけじゃないんだから。」
「...確かに。」
「さっきの授業中に考えて
自分の気持ちに答えが出たんじゃない??」
「...俺は」
「ストップ。」


私は奏哉の顔の前に
言葉を遮るように手のひらを出した。

「それは私に言うことじゃないし、
私と夢空の話してたから
そう思い込んでる可能性だってある。」
「...それは」
「もっと考えて、
本当の答えが出たときに
それを夢空に言うべきじゃない??」

夢空だって、
その答えを求めてる。

「...」
「分かった??」
「あぁ。
由仁、ありがとな。」
「いーえ。
こちらこそ、ごちそうさま。」

私は空になったカップを
軽く左右に振った。

「...あぁ、そういえば
それ俺の奢りだっけ??忘れてた。」
「バカか。さて、そろそろ戻らない??
夢空も先生と話終わる頃じゃない??」
「...あぁ。」
「なに、急に思い詰めた顔して。」
「...」
「なによ。
もう全部言ってみなよ。」

だいたい予想つくけどね。

「...あいつ...藤池さ、
夢空のこと好きみたいなんだ。」

やっぱりね。
奏哉って普段が無表情だから
こういう時、逆に分かりやすいな。
藤池先生が夢空を好き??
そんな事あるわけないのに。

「そうなの??」

まぁ、面白いから
食い付き気味に聞いてみる。

「...あぁ。
俺が夢空を振った日に
協力してくれって軽く言われたからな。
たぶん好きなんじゃないかって
俺は思ってる。」
「ふーん、さすがは年上ね。」

やることが違うわ。

あの先生も
なかなか腹黒いと思ったけど
期待を裏切らないわね。

「...」
「で、奏哉は今なに思ってるの??」
「えっ??」
「藤池先生の話して
その先生と夢空が
今2人きりでいるって考えたら...
どう思った??」
「...」
「少しでも不快に思ったら
今すぐ行かなきゃじゃない??」
「由仁」
「早く行きなよ。」
「ありがと。
今度何か奢る!!」

そう言って奏哉は店をあとにした。

「...はぁ。
本当に手が掛かる2人なんだから。」

奏哉が夢空を好きなのなんて
なんとなく分かってた。
でも、今日話をしてみて確信した。

これくらい背中を押してあげなきゃ
奏哉は動かないでしょ??

気付いてよ...バカ -11-

11です!!
前回は一ヶ月くらい
放置しちゃったので、
一週間で更新しました!!

このまま
順調にいけたらいいなーなんて
思っています。

これからも
応援よろしくお願いします(*^^*)

気付いてよ...バカ -11-

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-10-28

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