欲望と言う名の電車
『欲望と言う名の電車』
新国立劇場 2000年10月28日 楽日
作 テネシー・ウイリアムズ
演出 栗山民也
出演 ブランチ 樋口可南子
スタンレー 内野聖陽
ステラ 七瀬なつみ
ミッチー 永島敏行
文学座きっての名女優・杉村春子さんが当り役として過去何回も上演されたと言う話は、お芝居に全く無知な私でも
知っていたし、この有名な作品が内野さんの次の出演作品だいうことも知っていたが、
とても観に来る事はないだろうと思っていた。が、思わぬ事からこの作品の観劇が実現する事になった
先の6月「エリザベート」初観劇の時、ネットで知り合ったお友達と初めてお会いした。
お互い顔も判らないネットだからと些かはしゃいでお話をしていたものだからお会いしましょうと言われて慌てふためいた。
なにしろこちらはオバチャンを過ぎようととしている年齢だもの(笑)
でも愉しくお話が出来た・・・が恐らくこれでお終いだろうな、と思っていたところ、その翌々日主人と2人
ハイヤーで東京見物中に携帯が鳴った。
なんとそのお友達から10月に『欲望』を観に来ませんか、と言うお誘いだった。
グループでチケットが取れますよ、とのお誘いに何が何やら判らない状態のまま「お願いします」と返事をした。
これが以後の観劇遠征することになったきっかけのような作品。
会場へ入ると舞台には幕は無く左手に2階へ上がる鉄の階段のあるアパートらしき部屋が見えている。
そしてその舞台の下、奈落の部分も客席から見えるようになっている。
今までに見た事もないような雰囲気に圧倒されスゴク緊張した事を覚えている。
おまけにお隣に座った方があの有名な○○ちゃんだそうな。 益々緊張!!
物語はこの部屋で暮らしているスタンレーとステラの所へステラの姉、ひらひらした白いワンピースを着た
場違いな感じのするブランチが訪ねてくる所から始まる。
上流階級の育ちのように見えるブランチと、
言葉使いも荒々しく粗野な男性剥き出しのようなスタンレーとは最初からそりが合わない。
おまけにカーテンで仕切っただけで何もかもが筒抜けの生活の中で段々と精神の安定を失っていくブランチ。
そんな中ブランチの昔の事を知ったスタンレーは次第にブランチを追い詰めていく。
スタンレーの友人のミッチーの優しさに縋ろうとしていたが土壇場で全てを知ったミッチーにも突き放される。
ステラがお産の為家を開けたその日、遂にスタンレーに犯されたブランチの精神の糸は切れた。
スタンレーが呼んだ精神病院の医師に手を引かれながら
『どなたかは存じませんが私はいつも見知らぬお方の情けに縋って生きてまいりましたの』(だったかな?)
と言い残し貴婦人のように真っ直ぐ顔を上げ儚げな姿で去っていくブランチ。
この舞台を観た時はスタンを演じている内野さんが中々受け入れられなかった。
その前に観たトートのあでやかな姿が、目にも頭にもしっかりと焼き付いている状態なのに、
筋肉もりもり、汗たらたら、タバコはぷかぷか、冷蔵庫のものを齧る、スイカの種は床に吐き散らす、
教養の無い粗野な男の見本のような内野スタン。
おまけに初めから終わりまで怒鳴ってばかり、もうイメージが滅茶苦茶になったような気がしたものだ。
だがブランチにはひどい仕打ちをしながらステラにはダダッ子のように甘える姿が何故かとても可愛かった(笑)
あの有名な『ステラァァ???ッ!』と切ない声で叫ぶ姿も良かったし納得もできた。
この作品は1回のみしか観ていない。それなのに不思議にどの場面も強烈な印象が残っている。
この2年後に蜷川さん演出のものを観た。
ブランチは大竹しのぶさん、スタンレーは堤真一さん。
この時の大竹ブランチの精神が狂っていく様は凄かった、がこれを観たお陰で新国立の「欲望」の
作品の良さを再認識した結果になった。
堤さんは余りにも爽やか過ぎた。あれはニューオールリンズの男じゃない(笑)
樋口ブランチも大竹さんの狂い様にはとても敵わないが儚げで壊れそうなブランチの感じが出ていたように思う。
蜷川作品を観た途端もう一度この『欲望と言う名の電車』観たいと痛烈に思った。
観劇の後オフ会なるものが有ってネットの中でいつもお名前を聞いていた(見ていた?)
沢山の方とお会いできた。近くの喫茶店でとても愉しいお喋りを聞かせて頂いた。
内野さんの事をもの凄く勉強させて頂いた集まりだった(笑)
欲望と言う名の電車