似ている僕等
偶然の出会い
「僕の心の中には、暗くて冷たくて悲しい気持ちが沢山沢山詰まっているんだ」
「それは本当?実は僕自身もよく似たような感情を持っているよ」
「君はどんな事を考える?」
「僕は自分が嫌いだ。人間の中で一番ね。僕の周りの人はみんな輝いて見える。夢を持ってる。努力をしている。それに比べて僕は夢もなければ何も行動できない。劣っている部分が多すぎる」
「分かるよ。自らが生み出した劣等感が自分をどんどん苦しめる」
「そう。劣等感だけじゃなく、虚無感や孤独感も常にまとわり付いてくる」
「なるほど。僕もだ」
「けどこんな僕とでも仲良く接してくれる友人は何人かいる。だけど」
「だけど、本当の自分を周りは知らない」
「その通り」
「きっと本当の僕は他人には理解してもらえない。僕も僕が理解できないんだから。寂しさや欲、さっき君が言ったように孤独、虚無…たくさんの感情で僕はぐちゃぐちゃだ。」
「僕等は考えが似ていると思うんだけど君はどう思う?」
「確かにそうだね。初めてだよ、君みたいな人」
「話に戻るよ。感情がぐちゃぐちゃになってどうしようもない時君はどうなる?」
「気持ちが静まるまで泣き喚くよ」
「僕も似たようなものだな。」
「君は自分を見て欲しいと思う事はある?」
「思うよ。すごく。同情や共感を求めているところもあるんだと思う」
「つまり一番求めているモノは?」
「一番求めているモノ?…何かなぁ」
「本当は頭の中に浮かんでるんだろ?」
「まぁね」
「それは愛だね?」
「そう。愛だ。偽りのない、正真正銘真実のね」
「僕も同じだ」
「でもなかなか手に入らないね。…いや、僕には手に入れられないんだろうな」
「…」
「…」
「君は生きたい?」
「僕は何度も死のうと思った事があるよ」
「僕も。でも君も僕も生きている」
「生きる度胸も無かったけど死ぬ度胸も無かったよ」
「同じく」
「まだ死ねないから、生きるしかないんだ」
「寂しくて孤独で辛くて悲しくて生きにくいこの世界でね」
「常に思ってる言葉はある?」
「それはどんな?」
「言いたくてもなかなか言えない言葉さ」
「それは短いけど重い言葉だね?」
「あぁ。きっと僕らは今同じ言葉を思い浮かべている」
「そうだね」
「なら、お別れをしよう」
「うん、そうしよう」
「話せて良かった。ありがとう」
「ありがとう。さようなら」
「さようなら」
男達は別々の道を歩き出した。
意味
こんなに自分の心の深い部分を話したのは初めての事だ。
それにあんなに分かり合えるとは思ってもいなかった。
僕等は仲良くなる事が出来たかもしれない。友人、親友というやつに。
でも考えが似すぎた。
僕は奴の気持ちが分かったし、向こうも同じだと思うから。お別れは正解の選択肢だろう。
奴は僕を救う事は出来ないし、残念ながら僕も奴を救うことは出来ない。
お互い自分を支えることに精一杯だから。
言いたくてもなかなか言えない、短くて重い言葉。
お互いがいつか周りに素直に言える時がきますように。
そう。「たすけて」と。
似ている僕等
読んでいただきありがとうございました。
ん…なんでもないです。ありがとうございました。