隠し笑顔

隠し笑顔

「笑顔」それは決して、その人が嬉しいから笑っているわけではない。

嬉しい以外にも「笑顔」を作ることはある。

その「笑顔」の裏にはその人の本心が隠れているのかもしれない・・・・・。

隠し笑顔

 私の彼氏はよく笑う。

彼は私の前では良く「笑顔」を見せてくれる。まるで、私に心配かけまいと思わせるぐらい笑ってくれる。

二人でどこかに出かけたときも、少し思いつめた表情を見せるときはあるけれど、すぐにいつもの素敵な笑顔を見せてくれる。

そんな彼の笑顔を見るたびに、私は少し胸の奥が苦しくなる・・・・・・。

本当は、悩みがあるなら話して欲しい・・・・・。泣きたいときには泣いて欲しい・・・・。辛いときには辛いって言って欲しかった・・・・。

けれども、私は彼にはそんなことを言えず、楽しいけれど、どこかやるせないそんな気持ちで彼と付き合っていた。

 ある日、彼から誘いの電話が来た。 「天の川見に行かない?」 その日は七夕で天気も良くテレビでも、今日は綺麗な天の川が見えると言っていた。

私は「うん、行く!!」っと言って、身支度をした後、迎えに来た彼の車に乗り天の川を見に出かけた。

彼は「せっかくだから、人気の無い海岸で見よう。」っと言って、車を走らせ、海に着くと、海岸沿いに車を停めて、砂浜に降りた。

「わー、綺麗・・・。」私は思わず満天の星空を見て言った。

「本当に綺麗だ・・・。」彼も続けて言った。

私達は砂浜に腰を降ろして、満天の星空をしばらく眺めていた。

ふと私が彼の顔を見ると、彼はまた時折見せる悲しそうな顔をしていた・・・・。

しかし彼はすぐに私の視線に気づき、いつもの笑顔で私に微笑みかけた。

私は勇気を振り絞って、今まで彼に言えなかったことを彼に話してみた。

「ねぇ、もし何か辛いことがあるなら話してね・・・。」「何も私の前で、無理に笑う必要はないから・・・・・。」

そのとき、彼が何か言うまでの間が、すごく長く感じて私の胸を苦しくさせた。

彼はゆっくりと口を開いて「ありがとう。でも本当に特に悩みがあるわけでもないんだよ・・・。辛いことがあるわけでもないんだよ・・。ただ何故か知らないけど無性に悲しくなるときがあるだけなんだ・・・・。」

そういうと、彼はまたいつものように笑って見せた。

 天の川を二人で眺めたあとは、彼の車に乗って、海岸を後にし、私の家の前まで彼は送ってくれた。

私が車から降りようとすると、「また、来年も二人で行けるといいな・・・・・。」と彼のつぶやいた声が私の耳に入った。

私は車の助手席の扉を閉める前に「行きましょうよ、来年だけと言わずに、毎年行きましょう。」と彼に微笑んだ。

「そうだね」と言いながら彼は少し虚しい顔を見せたが、すぐに彼女にいつもの笑顔で微笑んだ。

私は彼の仕草が少し気になったが、そのまま助手席の扉を閉めて、自分の家に入って行った。

 翌朝、けたたましい携帯電話の音で、私は目を覚ました。それは、彼の母親からの電話だった「息子の家が火事で・・・・息子が・・・・。」

私はベッドから跳ね起きて、すぐに彼の家へと向かった。

彼の家の前に着くと、アパートの3階にある彼の部屋が赤々と火で燃え上がっているのが見えて、私は言葉が出なく呆然と見つめていると

彼の声が私の後ろで突如聞こえた。「俺の部屋が!!」 私は勢いよく振り向くと彼がそこに居るのが目に映り、私の心はなんともいえない安心感でいっぱいになった。

「無事でよかった本当によかった。」と言いながら私は彼に泣きついた。炎の燃え広がり方がひどく、消防隊の消火作業は、半日に及んだ・・・。

 この事件があってから不思議なことに彼の顔から時折見せる虚しい顔が無くなっていた。

ただ、不思議なことにこの日を境に、七夕の日の次の朝には必ずどこかで火災事故が起きるようになっていた・・・・・・・。

そのことに気づいたとき、私は一瞬恐怖を感じたが怖いのでなるべく考えないようにして、今も彼との交際を続けている・・・・・。

隠し笑顔

隠し笑顔

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-10-23

Public Domain
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