気付いてよ...バカ -10-

10です。
2桁きました!!!
みなさんのおかげです。
本当に感謝しています(*^^*)

<登場人物>
*岡野 夢空(おかの むく)
*椎名 由仁(しいな ゆに)

...その他

幼なじみのくせに、幼なじみだから...

-10-

次の日。
私は悩んでいた。
昨日告白した私が、
いつも通り奏ちゃんと
一緒に行っていいのだろうか...

奏ちゃんからしたら
迷惑な話なのかもしれない。
でも、何の連絡もしてなかったから
先に行くのは少し躊躇う。

いつもは奏ちゃんが
家の外で待っててくれる。
今日は私から行って
何もなかったように接した方が
奏ちゃんも私も気を遣ったりしないよね??

「...あっ。」

支度をし終え、時計を見ると
奏ちゃんが家を出る時間の30分前。
少し早すぎるけど
私は玄関に向かい、ドアを開いた。

「...」
「奏ちゃん...」

ドアを開けると、
奏ちゃんが外壁に背中を預ける形で
私を待っていた。

「あっ、おはよう夢空。」
「えっ...おっ、おはよう。」
「今日は早いね。行こっか。」

奏ちゃんは歩き始めた。
私は少し混乱したまま後を追った。

「...奏ちゃん、
もしかして私が出てくるまで
ずっと外にいたの??」
「えっ、ずっとって...5分くらいだから
そんなに待ってないよ。」
「いつもより30分以上早く出たのに!?
もし私がもう出てたら
どうするつもりだったの??」
「夢空は絶対行ってないって
分かってたから。」
「...」
「ん??」
「...なんでもない。」
「そう??」
「...うん。」

なんで奏ちゃんがいたのか、
私には全く理解出来なかった。
たまたま早起きしたのか...
それとも...

「奏ちゃん...」
「ん??」

もしかしたら
奏ちゃんも私と同じことを考えていて
待っててくれたんじゃないかって
思ったけど、
そんな期待を持つのはやめた。

「ありがとね、待っててくれて...」
「うん??...うん。」

昨日の夜から今日の朝まで
奏ちゃんの顔を見たら
ツラいんじゃないかとか、
泣いてしまったらどうしようとか
いろいろ考えていた。
確かにツラいし、
奏ちゃんの後ろ姿を見ただけで
ちょっと泣きそうになった。
でも、普通に接してくれることが
自分の思ってる以上に嬉しかった。
それと同時に
やっぱり好きなんだと思って
また胸が少し痛んだ。

今日は私も奏ちゃんも
1限から授業があったけど、
お互い別の授業だったから
私たちは、それぞれの教室に向かって歩いた。

廊下を歩いていると
後ろから思いっきり手を引かれた。

「...!?」
「夢空!!」
「なんだ由仁か...おはよう。」
「おはようじゃなくて、
今日、奏哉と一緒に来たって本当なの??」
「うん。」
「うんって、大丈夫だったの??」
「大丈夫だったよ。
確かに不安はあったけど、
奏ちゃん、普通にしてくれてたし...」
「...夢空??」
「とりあえず、大丈夫だよ!!
...それにしても、なによ由仁ー
ひょっとして私のこと心配してくれたの??」

100%大丈夫なわけじゃないけど、
由仁の心配顔を見たくなくて
私は笑いながら由仁にそう言った。

「バカ夢空。」
「えっ??」
「奏哉に気を遣われたくなくて
気を遣うのは分かるけど、
私にまで気遣って
無理に冗談っぽく笑わなくいい。」

バレてたか...
さすがは由仁だな。

「...ありがとう、由仁。」
「うん。」
「でも、本当に大丈夫だから。」
「だから、そうやって大丈夫じゃないのに
大丈夫って言わないの。」
「へへへ。」
「もう、夢空...」
「由仁...授業、始まるよ。」

由仁の気持ちは嬉しかった。
私のこと、よく知ってるんだって思った。
由仁の言う通り、
今の私は大丈夫じゃないけど、
助けを求めるほど
不安なわけではない。
必要以上に由仁に
心配かけたくない...

教室に入ると、
なんだか、みんなが私を見ている気がする。
こそこそと話してる気がする。

「夢空、今日は後ろがいいな。」
「後ろ??」
「うん。
ちょうど一番後ろ空いてるし、座らない??」
「うん...」

いつもは前の方に座るのに、
なんで一番後ろ??

疑問に思ったけど
私は周りの目が気になっていたせいか、
由仁の気まぐれかなと、
軽くしか考えてなかった。

しばらくして90分間の授業が始まった。
私は奏ちゃんのこととか
いろいろ考えていたら
授業は終わった。

「夢空、喉かわいた。
自販機行かない??」
「えっ、うん...別にいいけど。」

授業が終わり、由仁が突然言った。

「じゃあ、行こ。」
「...」

今日の由仁は変だ。
いつもはチャイムが鳴っても
ゆっくりと片付けるのに、
ましてや今日なんて
この後の授業は今と同じ教室だから
片付けなくても良いはずなのに...
それに一番不思議なのは...

「なに飲もうかなー。」
「由仁。」
「ん??」
「いつも、お茶持ってきてるのに...
自販機行くの??」

由仁は毎日お茶を持参している。
だから自販機なんて行くのが
不思議でしかない。

「...今日忘れちゃったから。」
「...」
「そんな不思議そうな顔しないでよ。
私にだって、そんな日あるから!!」
「うん...」

なんかいつもより挙動不審な由仁。

「ほら、行こ??」
「そうだね。」

私が立ち上がろうとした瞬間、

「岡野さん。」

呼ばれた。
振り返ると女子3人。
あまり話したことがないから
名前は分からないけど、
たしか3人とも
入学当初、奏ちゃんを好きだった人。

「...何かな??」
「ちょっと聞きたいことあるんだけど。」
「...今じゃなきゃダメ??」
「今の方が岡野さんの為だと思うけど??」
「...でも、」
「すぐ終わるから。ねっ??」
「...」

彼女たちの雰囲気は
私は、あまり好きじゃない。
きゃぴきゃぴしてて、正直うるさい。

今だって、
私や由仁にくらいしか聞こえない声で
半強制的に話をしようとしてる。
こういうところは本当に苦手。

「悪いんだけど、
夢空と行くとこあるんだよね。
それ終わってからにしてくれない??」

彼女たちの圧に負けそうになって
困ってる私を見て
由仁が助け船を出してくれた。

「由仁。」
「夢空行こ。」
「うん。」

彼女たちの横を
通りすぎたその時だった。

「岡野さんさー
昨日、奏哉くんに告白したでしょー??」

さっきとは違って
周りの人にも聞こえるような声で
にやにやしながら言った。

「えっ...」

私は思わず足を止めてしまった。
それを見た彼女たちは
何かを確信したかのように笑った。

「あれ、違った??
違わないよねー。ふふ♪」
「...なんで」
「で、どうだったの??
やっぱり幼なじみだから
付き合いも長いし、
OKしてもらえたのかな??」
「...」
「それともー
妹にしか見えないって
フラれちゃった??」
「うわー、
それ恋愛対象外じゃん。」
「ちょっと、
そこまで言っちゃったら
可哀想じゃない。
で、どっちだったの??」
「...」
「黙ってちゃ...分からないんだよね。」

そう言って私を見た彼女の目は
...怖かった。

「ちょっと、あんたたち
さっきからいい加減にしなさいよ。」
「えー、関係ない人は
ちょっと黙っててくれる??
私たちは岡野さんに聞いてるの。
...それとも、答えられないっていうのが
答えなのかしら??」

私はどうして良いのか分からなくて
頭も真っ白だった。
なんだか、泣きそうになった。

「岡野さんさ、覚えてる??
私たち3人が
奏哉くんのこと好きだったの。
...覚えてるよね??
ずっと、岡野さんが邪魔だったんだよね。
たかが幼なじみのくせに
ずっと一緒にいてさ。
私たちがフラれた後も、ずっと。
自分は幼なじみの立場を利用してさ
ずっと奏哉くんの隣にいれたもんね。」
「それは...」
「そんな岡野さんが邪魔だった。
そう思ってたの私たちだけじゃないよ。」
「...」
「でも、そんな岡野さんが
奏哉くんに告白したって聞いて、
最初はムカついた。
付き合い始めたかと思ったからさ。
でも、フラれたんでしょ??
じゃあ、離れなさいよ。
なに今日も一緒に学校来てるの??
...いつまでも一緒とか、
そろそろ、ありえないから。」
「...」

何も言えなかった。
確かに、私が彼女たちみたいな
片想いをしてたら
同じこと思っちゃうのかな...
でも、私は...

「...ふざけんなよ。」
「えっ??」

後ろを向くと、由仁が怒っていた。

「ふざけんなよ、
夢空が幼なじみの立場を利用して
奏哉にくっついてた??邪魔だった??
あんたたち、本当にそう思ってるの??」
「はっ、当たり前じゃない。
岡野さんのせいで、私たちは...」
「夢空のせいでフラれたとでも
言いたいわけ??
そんなのプライドが高いあんたたちが
奏哉にフラれたことを
受け止めたくなくて、
自分に非がないって思いたくて、
勝手に作った理由でしょ!?
そんなことに夢空を巻き込まないでよ!!」
「...由仁。」
「確かに、他の子と比べたら
奏哉と幼なじみの夢空は、
ずるいって思うかもしれない。でも!!
夢空だって、努力してるの!!
一緒にいたいけど、
幼なじみって言う肩書きに
何度も何度も苦しんでたの!!
...幼なじみだからって
簡単に奏哉の
そばにいれるわけじゃないんだから...」

由仁が泣きそうな声で怒るから、
私は泣いてしまった。

「...そんなの、
私たちに比べたら
苦しみでも何でもないじゃない。」
「えっ...」
「私たちが話し掛けても
笑いかけてなんかくれなかった。
...ちょっと顔がいいからって
私たちのこと見下してるんだよ。」

なにそれ...
奏ちゃんが見下してる??

「それは違うよ。
奏ちゃんは...」
「あんたに何が分かるんだよ。
あんたが知らないだけであいつは、」
「奏ちゃんは、
そんなひどい人じゃない!!」

彼女の話を最後まで聞かずに
私は叫んだ。

「何それ...
幼なじみの私には分かりますみたいな??
本当に、それが鬱陶しいんだよ!!
どうせあんたも
顔が好きなだけなんだろ??
自分だけ正当化しようとしてんなよ!!」

...この人たちは
奏ちゃんの顔だけが好きなんだ...
確かに、私も奏ちゃんの顔は好き。
笑った顔も、無表情な顔も。
そんな私も
この人たちと一緒なのかな...

「...まだ分からないの!?
夢空は奏哉の顔じゃなくて
奏哉が好きなの!!」
「...由仁。」
「顔だけ好きで
何年も片想いしてないんだから!!」
「そんなの出会ってたか
出会ってなかったかの違いじゃない。
私たちだって、
今より早く知り合ってたら...」
「今より早く知り合ってたら、何よ??
その分だけ
好きでいられるって言うの??」
「...」
「言えないよね??」
「...うるさいわね!!
じゃあ、岡野さんは
何年片想いしてたって言うのよ!!
偉そうなこと言ってるけど
どうせ3年とかでしょ!?」
「それは私の口から言うことじゃないし
あんたたちにも
言うことじゃないわ。」
「はっ!?」

由仁と彼女たちが喧嘩してるのを見て
なんだか少しムカついてきた。

「...13年。」
「えっ??」
「だから、13年だって言ってるんだけど。
13年間ずっと奏ちゃんが好きだった。
あなたたちの言う通り
確かに奏ちゃんの顔は好き。
でも、顔だけが好きなわけじゃない!!
一緒にしないで。」
「...」

私が反論するなんて
きっと思ってなかったんでしょ??
でも、私だって
自分の親友と大切な人を貶されたら
黙ってなんかいられない。

「...だから、そんなの!!
私たちよりも早く知り合ってたからでしょ!?
たかが13年で威張らないでよ!!」
「...」

さっきの勢いが嘘のように
私は何も言えなかった。

「...たかが13年??」
「えっ...」
「由仁??」

由仁は、もう怒りの表情が消えていた。

「たかが13年って...
まさか本気で言ってないわよね??」
「...」
「じゃあ聞くけど...
13年前に奏哉に会ってたら
今日までずっと好きでいれたって言えるの??
実るかどうか分からないのよ!?」
「それは...」
「なんなら今からでもいい。
今日から13年間、
奏哉を想い続けられるの??」
「...」
「私は出来ない。
ましてや夢空みたいに
純粋に奏哉だけを想い続けるなんて
絶対に出来ない。」
「...由仁。」
「夢空の努力も苦しみも分からないのに
偉そうなことばかり言わないで。」

彼女たちは
何も言わずにその場を立ち去った。

「...ありがとう、由仁。」
「なに謝ってるの。」
「だって...」
「バカ。
私は思ったことを言っただけ。
...あぁー、自販機行けなさそう。」

そう言って由仁は
イスに座って次の授業の準備をした。

「...ありがとう。」

私は小声で再度お礼を言った。
聞こえてたかは分からないけど、
由仁は少し微笑んだ。

気付いてよ...バカ -10-

最近いろいろと立て込みすぎて
数ヵ月も放置してしまいました...

今回も読んでいただき
本当にありがとうございました!!

書き始めた頃よりも
更進するスピードが落ちてきましたが、
1日でも早く更進するつもりです。

これからも頑張っていきますので、
暖かい目で見守って下さい。

気付いてよ...バカ -10-

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-10-22

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