考えるな、考えろ

考えるな、考えろ

 教師という仕事は本当にやりがいがある仕事だと思います。でも時代と共に子供達も世間も考え方も変わっていくと思います。
 綺麗事かもしれませんが、先生になりたての頃は皆さん期待と使命感に沸いていたのではないでしょうか?
 世界の裕福、貧困関係なく、子供達は皆、その様な先生を待ち望んでいるかもしれませんし、すっと自分に本気で教えてくれる人を期待しているのでしょう。それは時代が変わっても変わらない本当の世界遺産だと思います。
 その様な世界遺産に関われる仕事は尊敬いたします。
 モンスターペアレントや学校内の平均化やマニュアル化に疲れている教師の方も居ます。
 幸い、僕には尊敬する先生が居ました。個人の考え方を尊重してくださり、落ちこぼれの僕でも生きる希望を与えくれました。
 いつかは恩返ししたいです。
 社会に出て理想と現実のギャップや壁にぶち当たって凹む時もあると思います。一つ思い出して欲しいんです。小学校で習った事は実は本当に生きていく上で本当に大切な様々な物を貰ったのではないでしょうか?
 今できる事は、どのような形であれ、人の為に一生懸命生に頑張っている全ての方に文章として読んで貰う事だと思っています。
 駆け出しですが、よろしくお願いします。

プロローグ 学園の過去

 12月25日。
 ここ創天閣学園(そうてんかくがくえん)初等教育学校では伝統あるクリスマスパーティが行われていた。
 この創天閣学園初等教育学校(以下、学園)は今年度開校130周年記念式典の話で持ち切りだ。
 日本の司法、立法、行政を明治以来支えてきた伝統ある小学校である。
 OB・OGは日本人なら誰でも知っている歴史的人物を開校以来多数送り出してきた。
 その実績は社会では神格化され、毎年この小学校を受験させる熱心な親子が日本のみならず、世界中に存在する。
しかし、蓋を開けてみればどうだろうか。多額の資金を寄付金として納入する世間一般では裕福、いや、超裕福の家庭のご子息、ご令嬢が入学するシステムとなっていた。
 学園は威厳なる校風でここ東京のみならずアジアの代表する歴史的建築物だが、実際は学校の早朝に担任が高級外国車で来校する親子を迎え、お辞儀をし親子が堂々と我が物顔で闊歩していた。
 教師たちは教師である事を否定され、子供達の為に使える奴隷として、授業をさせらている。
 子供達は、授業中に携帯を弄り、化粧をし、私語は耐えない。
 教師たちは少しでも子供に注意をすればクビどころか、その後の社会的地位は絶望に落ちるのであった。
 もちろん、普通の人間であれでも大変なのだが、教師たちは精神的におかしくなるものが多数続出し約2ヶ月のサイクルで目まぐるしく交代していく。
 創天閣学園初等教育学校は私立小学校であるがここの給料は一般企業の社長クラスの初任給である。社会的地位を約束されたここの教師たちは全てを裏切られたかと感じ辞めていく体は目も当てられないものである。
 子供達は教師を信頼せず、学園に通うのではなく、「ご飯を食べなさい」と言われるので行くような感覚を持ち合わせていたであろう。
 その光景は最早、伝統ある壮言なたたずまいの校舎もただの石の塊が積み上げられていた滑稽なものであったに違いない。
 今日のクリスマスパーティも形だけの儀式であった。

 18時、校舎の前は豪華絢爛な装飾とライトアップが施され、校内のあちらこちらでオーケストラ団がその風景と合致したように「きよしこの夜」を奏でていた。
 学園前の広大な広場には黒ずくめのガードマン達が無線を取り連絡している様は毎年恒例である。
130週年の節目の開学記念日を明後日控えて体育館と言う名の舞踏会場では木の香りどころか、全ての香水にも負けてしまう様な崇高な香りの中、シャンデリアが灯す下で世界中の大富豪と要人、あらゆる業界のトップで活躍する卒業生がシャンパンを片手に取り楽しそうに談笑をしていた。
 これが小学校か?という疑問も出てくるが、多分、世間一般の庶民たちはそうではない。いや、教育機関であるということも誰もが思っていなかった。
 学園の中心に聳えるビッグベンと引けを取らないその時計台が19時を指し、鐘を鳴らしたのである。
 これが祝福の鐘に皆は聞こえていたのかも知れないが、怒りの声を出していたのかもしれない。
 その事を知ることになったのが直ぐなのを誰が分かっていたのであろうか。
 学園長が鐘の知らせと同時に世界のそれはそれは何万人の部下たちを操ってきたであろう権力者たちの鳴り止まぬ拍手で迎えられた。
 学園長は、その拍手に緊張と誇りの中で表情はにこやかだが内心戸惑っていたであろう。それは学校長も失敗が許されないかである。
 彼もタキシードでびしっと決め、白髪の毛一本一本の方向性が全て整えらていたが、彼のチタン製のメガネの向う目の中では違和感を覚えていたであろう。
 しかし、感情として表に出せない。いや出してはいけないのである。こういう場に慣れていたこの学園長でさえも権力の見えざる力の前には全てを完璧にしなければいけない期待感がのしかかっていたのである。それは国内憲法にも勝る完璧な、そしてシルクのハンカチに一つ砂の汚れも許してはならない神の風格を学校長に課せられていたのであろう。
 それもまた、ある意味、教育者どころか人間であると言うことを意識的に否定されていたのでなかろうか。彼、相馬(そうま)誠一郎(せいいちろう)は6代目の学校長して誇りどころか、学園長を”やらされている”感の抱いていた。彼は私たちから見ればそれはやはり滑稽すぎるものにしか見えないであろう。
 相馬氏にはこの15秒間の拍手は砂漠での飢餓とのどの渇きの状態に耐え抜く長い長い5日間と同じようなものであったに違いない。シンバルの様な拍手が止み、サイボーグと改造させられてしまったこの学園長は意を決して胸ポケットから、おそらく京都の高級和紙で造られた手紙を取り出し、年季のはいったアナウンサーのように朗読し始めた。
 相馬氏もこのクリスマスの為に寝る間も惜しみ、毎晩習慣のように飲んでいた30年もののテキーラでさえ飲まないで2ヶ月前から練習してたほどである。しかも、また3日後には記念式典である事にどれだけ神経をすり減らさなければいけない事をわかって頂けるであろうか。
 普通の校長先生ではこんな場面に遭遇することなんて無い。しかし、この為に相馬氏は時間を割いていかなければならなかった伝統という使命下に置かれていた。
 毎年の行事だが、正直彼も嫌々であったのである。その証拠に妻の佳代(かよ)に愚痴を言っていたほどである。

 しかしである。この5枚にまとめられた彼の渾身作のスピーチ内容と発表は誰も覚えていない。
 それは失礼であるがあまりにもつまらないからである。
 発表を終えた相馬誠一郎氏は、ある決心をしていた。
 今年で彼は退任する予定であったのだ。7代目に自分の息子、幸一(こういち)に自分の身を明け渡そうと決めており、妻にだけこの事を話していた。
 幸一もパーティに出席していた。長身でどうどうした風貌でオールバック、服装はパリの有名デザイナーのオーダーメイドのそれはまた、教育者の風格を逸脱していたのである。そして横には彼の妻、美優(みゆ)がウクライナのモデル業界の会長と談話している。
 何度も確認しておくが、ここは”小学校”である。
 しかし、それは小学校と言う名前ばかりで、実際はここでの催し事は国際情勢が左右されいる言わば、世界会議場である。
 10年前、ある事件が起きた。この学園で10年前の12月25日中東の石油王がこの学校の会場で隣の国の外務大臣にシャンパンをこぼされた事件があった。些細な出来事かもしれないが、アラブ人にとってはクリスマスはビジネスの場であり、宗教上、酒そのものを飲まないものが殆どである。彼にとって侮辱的だったのであろう。酔っ払った外交官が、隣の部屋で静かに談話していた所に進入して、感情が高まった時にこぼしてしまったらしい。そしてこれが切欠で、両国の国際情勢が悪化し国連軍が駐留すると言う問題が起きた、石油価格は高騰し、それは民間の家計に大打撃し大変だったらしい。
 政府はこの学園の不祥事のことではなく、外務省の問題とし、正式に謝罪した。
 学校側の問題ではなく、この様な場面では日本国内も、ピリピリしながら注視しているのであった。何回ものデモンストレーションに国の予算が使われたことは、知っている国民も少ない。知ったところでどうしようないのである。

 無事にクリスマスパーティも進行し、後半に近づいていった。お酒も入っていたのであろうか、場内の声もだんだん大きくなってきた。さっきまで緊張に満ちていた誠一郎氏も、顔が緩み笑い声を高々に出していた。
 それはそれは全ての苦労の結晶が光り輝いており、会場の全員がその輝いている結晶を見つめていたのであろう。

 が、

 それは突然と足音を立てないままやってきた。
 オーケストラ団が弦楽器を滑らせながら、軽快よく鳴り響いていており、「あわてんぼうのサンタクロース」が学園中に鳴り響きかせている。
学園の食堂では、料理が次から次へと作られていた。一流のシェフ達がせっせとフレンチ、中華、東南アジア料理のあらゆるものを様々な高級食材から魔法のように、そして科学との融合のように作り出されていく。
 しかし、魔法であれ、科学であれ、全ては悪いものにも行く事がある。それは人間の意思とは関係なく全てのものに歯車を合わせてしまう。それはこの食堂のついこの前まで改装されたばかりのキッチンで起きたのだ。
 華やかな体育館で130年目の歯車が狂い出したのである。
 賑やかなこの体育館の雰囲気にも飽きたのか、1人の白人が料理を持ってきた配膳人若い女性に酔っ払った勢いでナンパしたのである。
「ねぇねぇ、君も飲まない?君の給料の5倍払うから、今日ぐらい仕事なんてさ~?」
 配膳してきた女性はこういうのに慣れているのか、軽く会釈をして断りながら戻っていった。
 でもこの男は食い下がらなかった。どうしても、自分の命令で彼女をねじ伏せたかったのであろう。彼は少し考えて彼女の後追った。一緒にガードマンがついて行ったが、ガードマンも気づいていたようだ。結局は雇われ身で付いていく事しかできない正しいことをしたところで、反することがどうなるのか理解していたであろう。
 残念ながら、正しいことを教えるべきであろう小学校でこういうことが行われていたのである。しかも、歴代著名人が多数生まれたこの130年目を今年に迎える予定のこの創天閣学園初等教育学校で。

 あわてんぼうのサンタクロースの曲もだんだん速くなっていき、5週目に入ったところであった。
 それは、この学園の怒りによって心拍数が早くなっているものであったと捉えるべきなのかもしれない。

 白人の男性は学園のキッチンに配膳人がキッチンに入っていって行くの見たのを確認して髪型を整えた。
 男性が食堂のドアを開けようとした瞬間、空が光った。校庭から花火が打ち上げられていた。夜空には色とりどりの光が一つの点を形を形成し、星の形、月の形、クリスマスツリー等を大都会の星も見えない夜空の真っ暗のキャンバスに擬似的星のアートが描かれていた。この学園の為だけに打ち上げられていたのだ。

 この時だけは誠一郎、佳代、幸一、美優、この学校に集まった世界の国々のリーダー達が一つになったときでもあった。
キッチンの皆も窓で花火を見上げている。子供の時に始めて見たコンクリートの隙間に咲いていたタンポポを思い出したかのように。
 しかし、学園が見せてくれた少しの奇跡を踏みにじってしまった者がいたのである。

 さっきの若い配膳人の女性が出てきたの見計らって、この男性は女性トイレに入っていった。
 この男性は、息を潜め女性の入った隣の個室に篭った。
 その頃、あわてんぼうのサンタクロースも軽やかに11周目を刻んでいった。
 白い服装を綺麗に着こなしたコーラス隊も参加したようである。
 軽やかなリズムと共に、声は音階を様々変えながら、バイオリン、チェロ、コントラバスの奏でる音に混ざり、美しい旋律共に学園内に響いていった。
 花火は夜空をアートを描くどころか、夜空にもう一つの太陽が現れたと思わされる程、光を地上に放射していた。
 綺麗であることは間違いないが、不気味ではなかろうか。
 白人の男性は、配膳人の女性が出てきたところろ見計らって、出てきたのである。
 配膳人の女性は、当たり前であるが、恐怖と自己防衛本能から悲鳴を出した。しかし、それは誰も聞いていなっかた。かく言う白人の男性についていったガードマンは外で花火を撮影しアメリカに住んでいる妻とまだ4歳と2歳の息子に画像を添え、「愛している」とクリスマスをささやかに祝福していたのである。

 白人の男性は彼女の悲鳴にびっくりし、逃げる彼女を追いかけて行った。彼も罪悪心を持っていたのであろう。彼は心の底から謝ろうとしていた。しかし彼は途中で見失ってしまった。彼は短期的記憶と焦りで彼女が食堂に居るだろうと推測しキッチンに入っていった。がそこには誰もいなかったし、電球の光も消えていたのである。
「ふ~。参ったなこりゃ。ま、訴えられたら弁護士を雇うか。こっちには優秀な弁護士がいるからな。まーた無駄金使ったら、彼女に怒られちゃうよ」
 彼は戻ろうとしてドアの手すりを探して開けようとしたが、どうやって開かない。
「なんてこった。自動ロックかよ・・・・・・。こんな古い建物に最新鋭の設備とか無駄だよな」
 彼は携帯でここから助け出すように付添い人に怒りの感情を電話越しにあらわに連絡を取った。
 白人の男性は怒った勢いで酔いがまわったようである。それに連動しながら怒りの感情は冗長していったが、それを表現できるのは足で壁を蹴ることだったのである。
 汚い言葉は虚しく真っ暗の部屋に響き渡るだけであり、怒りの矛先は直ぐに来ない付添い人への向いていった。
 あわてんぼうのサンタクロースが13週目に突入していった。楽しそうな声もだんだん大きくなりクライマックスを迎えようとしていた。
 賑やかな体育館の真っ白いテーブルクロスの上には22時の学園長の話が高級な予定表に書かれていた。学園長は最初のスピーチをとは打って変わってリラックスした模様である。誠一郎氏は右腕に輝く24金の腕時計を見合わせている。どうやら22時を気にしているようだ。
 妻の笑顔に励まされたの意を決したようにマイクの方へと向かう。

 花火もクライマックスを迎えようとしており先ほどよりも夜空が輝いていた。
「煙突のぞいーて落っこちたー、あいたたドンドン~」
 楽しそうなコーラスが響き渡る。
 キッチンでは男性はポケットからタバコを取り出し、禁煙区域のこの学校でタバコを一つ取り出し口に咥えた。
 男性はなかなか火がつかなかったのに嫌気が差していたのだ。しかも、暖房が効いていないこの部屋は温室育ちの彼にとっては不愉快の極みであろう。
 火がついた瞬間だった。
 しかし、もう遅かった。なぜ気づかなかったのか彼にもわからないが約0.4秒の間、彼の嗅覚にたまたま幼少期にいやいや父の経営する会社が建設した石油コンビナートを視察した際に嗅いだ匂いと一致させることになる。日本円にして40万円以上はするであろうオイル式ライターから放たれは炎の熱は無常にも炎拡大させるには十分すぎた。
「まっくろけのお顔~」
 その時、チェコとバイオリンの弦が切れたの同時に閃光の様な光と爆音、そして東京都の高級住宅街では見られない灼熱の炎はキッチンから体育館側へ音速を伴って駆け抜けていった。
 食堂と体育館、時計台への空間は仕切られていなかった。通気口を通じこの三つの部屋は灼熱の炎に包み込まれてしまったのである。
 この衝撃で時計台の歯車は崩れ落ち、21時57分に止まってしまった。

 死者111名、全身火傷21名、生存者不明・・・・・・。
 後にこれはキッチンのガス線が何らかの原因で開栓してプロパンガスが漏れ出しライターの火が燃え移ったと言う事を国民に知らされた。
 この事件は全世界に衝撃を走らせた。
 死傷者よりも国際的損失は甚大であった。世界のあらゆる業界主導者の損失は一国の経済を破綻させ戦争を引き起こし、第二のキューバ危機と言われたほどであった。世界経済は今までに無いほどの不況が始まり、以後10年間、世界は平均台の上を霧の中バランスを保つので精一杯であった。

 創天閣学園初等教育学校は封鎖され、過去の記憶として時間と共に世間の記憶が風化するのを待たなければならなかった。

第一章 再出発の軌跡

 あの悲劇の事件から15年が経った。
 人々の記憶はつい最近の出来事を最早無かったかのように口に出すこともしなくなった。
 時代は変わったとはいえ、あまりにも時代の流れが速すぎており、街は忙しく15年前よりも東京都内は摩天楼やショッピングモールが乱立していた他、人々の生活スタイルは劇的に変化していた。

考えるな、考えろ

考えるな、考えろ

日本一の超お金持ちのご子息、ご令嬢が集まる創天閣学園初等教育学校。 某東京郊外の超高級住宅街に突如と存在するその学校は開校130周年を迎えようとしていた。 圧倒的なOB・OGの権力と壮言なる校風・秩序に満ちた学風は世界中で報道されるほどである。 しかし、内情は教師と生徒の上下関係の転覆、想像を絶する金と言う名の権力が教師と子供の関係が混沌化し世間で叫ばれている以上の学級崩壊を起こしていた。 130周年目を目の前にした3日前に悲劇は起こる。 長い学園封鎖後、学園は再開学に当たり、ある教師を招くことを決定したのである。 創天閣学園初等教育学校6年3組にある教師がやってきた。彼の名前は西海 丹(にしうみ あきら)。 彼の教育が6年3組、そして学園を変えることになる。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-10-17

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  1. プロローグ 学園の過去
  2. 第一章 再出発の軌跡