文の約束
登場人物を紹介しますよ。
高木直也 (たかぎなおや)16歳 文芸部 とある思いから文芸部に入ったがそれを忘れた主人公、事なかれ主義、めんどくさがり屋
村山千百合 (むらやまちゆり)16歳 美術部 クラスの女子のバランスを無意識にとってるようなクラスに一人はいるタイプの女子、肩にかかるくらいの黒髪が美しい。もう一人の主人公
大野健一 (おおのけんいち)16歳 文芸部 イケメン、リア充、直也とは腐れ縁で一方的に親友を語る。誰とでも話せちゃうタイプでクラスの盛り上げ係。
平山美樹 (ひらやまみき)16歳 帰宅部、クラスのリーダー的な女子化粧をしたり髪を染めたりしてる。健一の彼女
井出鈴華 (いですずか)16歳 帰宅部美樹の親友。他のクラスに彼氏あり部活も遊び程度に考えている、悪口がすぐにでる。黙ってれば美人
後藤未来 (ごとうみらい)16歳 千百合の昔からの親友。テニス部、他のクラスに好きな人
あり。別にイケイケな感じでは無いのけど美樹、鈴華と話が合って同じグループに入る。何事にも一生懸命
木田裕太(きだゆうた)16歳 千百合と同じ美術部に所属。千百合に思いをよせる
1、文
4月
『この、どうしようもなくしょうもない世界を生きて行くには僕達は余りにも未熟過ぎた』
なんて、少し中2病な文面を原稿用紙に書いて僕はふと外を見た。
まだ肌寒い春初め、もう外は暗くなっている。
暗いと言えども高校は春時間、運動部は部活をきっちりしているし野球部なんかは甲子園目指して練習を続けている
「直也、また一文だけ書いてんの?」
ビックリした。文芸部の部室に僕以外に人が居るとは思ってなかった。文を描いてると周りが全く見えなくなる。文と言ってもいつも一文だけしか浮かんでこなくて。その一文から妄想が膨らんで周りが見えないだけだけど。無視しても可哀想だからとりあえず答えはする。
「健一いたんだ。」
「いたんだって、最初からずっといたんだけど。」
健一とは何故か小学生の頃からずっと同じクラス、同じ部活。所謂、腐れ縁と言うやつだ。健一は正直凄くイケメンだ。校内ヒエラルキーでは間違いなく上位に位置している。
なんで、僕みたいな奴と二人だけの文芸部をしてるのか、全くわからない。
「なぁ、だから何でお前は一文だけ書くんだよって。この際お前は小説じゃなくてポエム書けよポエム。」
余計なお世話だ、とだけ呟いた。
「んだよ、釣れない奴だな。そんなんだから彼女もできないんだぞ?」
それこそ余計なお世話だ。健一のリア充自慢にはつくづくうんざりする。健一は同じクラスの平山美樹と付き合っている、こないだ自慢したときは半年になるって言ってたっけ
「なぁ、直也って好きなひといんの?」
健一が顔を覗き込んできた。
「は?なんだよいきなり」
「だから、好きな人はいるんですかって。」
うーん、僕は首を傾げる。いる…とも言い難いし。いない…とも言い難い。
わかんないや。と告げると健一は、なんだそりゃと軽く笑いながら僕の頭をポンポンッと軽く叩いた。
「じゃあさ、なんでお前は文芸部はいったの?先輩に好みの女でもいたか?」
さあ?なんでだったっけ。別に先輩どうこうとかじゃなくて。別に中学の時みたいに帰宅部でもよかったんだけど。ってなんで僕は語ってるんだよ。
僕が「そう言うお前は何で文芸部に来たんだよ。お前運動神経良いじゃん。」
と言うと、健一も「さぁ、何でだっけな。んー、わかんない!」
なんで、ちょっとローラっぽいんだよ。おまえが言っても可愛くねえよ。なんて。
「んー、オッケー!」
お前もう帰れよと呟くと。
「そうさせて頂きますよ。」とわざとらしくお辞儀をして部室を出ていった。
部員が二人しかいないから、この部室では一人でいることが多い。
去年までは先輩が5人いたけど、皆卒業してしまった。
一人は嫌いでは無いから別にかまわない。むしろ一人の方が作品作りには良い。
サラサラと文が浮かんでくる。やはり一文だけ。
『これを恋と呼んでも良いのだろうか。彼女の黒髪は決して答えてはくれない。』
「なんだこれ。」
最近こんな文ばっかり書いてる気がする。青春してないからこう言うものに憧れるんだろうな。ノートの隅っこに書いちゃう感じの文だな。
(キーン、コーン、カーン、コーン、後10分で7時です生徒棟の施錠を始めます。部活棟は五分後に施錠始めますので残っている生徒は素早く帰宅しましょう)
下校時間の放送が入る。帰らなければならない。
明日は水曜日か、そう言えば先生明日委員会決めるって言ってたっけ。
委員会決めるのってなかなかめんどくさい。僕は図書委員くらいが良いななんて。
2,グループ
部活が始まる前のおよそ20分。教室の後ろに集まるのが私たちのグループの日常。
何で女子はグループを作りたがるのか、女子ながらわからない。
グループにはだいたい決まりがあって、クラスに3つくらい出来る。委員長とその取り巻きグループ、二次元とかで趣味が合う人達のグループ、そして、イケイケなグループ。
私は、何故かこのクラスのイケイケグループに入っている。帰宅部の美樹、鈴華、テニス部の未来。高校に入ってからいつもこの4人で行動してる。
未来と中学のテニス部で一緒だったからこのグループに入れてる感じ。そうじゃないと美術部の私がこのグループで一緒に行動なんて出来る筈がない。
このグループでは話す事はいつも一緒。彼氏の話とか、お洒落の話。たまに部活の話
「ねぇ、千百合。話聞いてた?」
と、美樹。
「あ、ごめん、ボーッとしてた。」
「最近、多いよ千百合。」
と、未来も。
女子は話の間に突っ込むのが好きみたいだ。
すぐに話を展開させる。
「わかった、好きな男でもできたんでしょ。」
なんでそうなるのよ。私は小さく笑いながら鈴華の発言を軽くながした。それでも話を変えさせないのが女子。
「ねぇ、だれ?だれ?」
だから違うって。
「てか、なんで千百合に彼氏いないのか不思議。うちらの中じゃ一番可愛いじゃん。」
「いやいやいや、可愛く無いよ私は。」
「またまた、ご謙遜を。」
「もしかして、千百合って男興味ない?」
いや、ない訳じゃないけど。
「えー、千百合、レズ?きゃー、やらしー!」
違うよーはははははー。なんて会話
これも何時もの会話。私としてはもっと、別の話をしたい。例えば、、、本とか?
「じゃあさ、千百合はどんな人がすきなのよ。」
美樹が茶々をいれる。美樹と鈴華は苦手では無いが好きって訳でもない。一緒にいて嫌では無いけど、どんどん人の中に入り込もうとするし、男の話しかしないし、平気で悪口言うし。こいつら絶対O型だろ!って思う。じゃあ、別のグループに行けば良いじゃんって話になるけど女子の世界はそんなに簡単でも単純でもない。未来が小学校からの親友だから一緒にいる。それだけの事。
「ねぇってば、どんな人が好きなのって!」
「また、ボーッてしてたの?」
「え、ああ、ごめん」
ホンとは聞いてたけど。
「ヤバい、こんな時間。」
「本当だ行こう。」
んじゃ、ばーい、またー。それぞれの挨拶をしてそれぞれの部活にいく。
美術室に行く途中考えた。私ってどんな人が好きなのか。別にカッコいい人が好きな訳じゃない。運動ができるわけでもない、面白い人が好きなわけでもない。
要は定まってないのだ、だからと言って誰でも良いわけでも無いけど。
好きなのかもって人はいる、一応。でも、かもって程度で好き!とは言えない。
こんなだから私の高校生活はつまらないのかな、なんて思ったり。
告白は結構されてきた、全部ふったけど。
だって、皆中身を見てくれないんだもん。
一目惚れでしたー。とか、可愛いとおもってましたー。とか……薄い、薄すぎる!
皆、「彼女」って言う称号が欲しいだけ。あんな、チャラチャラした薄い輩と付き合うくらいなら、オタクと付き合った方がいい。彼らはきっと女性を大切にしてくれる…次元が一つ下だけど。そう言えば、一人だけ私の中身を見てくれてた男子いたっけ、小学校の1,2年生と6年生。中学2,3年、そして一年飛んで今同じクラス。そこまで考えて思い出した。
私、中2から中3、彼の事好きだったわ。高校に入って全く話さなくなったけど。
あ、彼と仲良くなりたくて美術部入ったんだ……でも、彼は別の部活にはいったんだった。
うわー。凄い黒歴史。黒歴史なのになんだか顔が熱い
あー、いけないいけない。やめよう、これ考えるの
~美術室~
いつも通り、こんにちわーって入ると、こんにちわーって返ってくる。
今年は一年生も6人入ってきた。先輩達は夏の美術展に向けて作品を描いてる。
「千百合ちゃん。どしたの?顔赤いよ?」
先輩やめて、見ないでー。なんて。
「いや、なんでも無いんですよ本当、」
「あ、ホントだ顔赤いですね!」
後輩たちも集まって来おって。この子らは無邪気すぎる。
「あー!先輩そう言えば、聞いてくださいよ!この子彼氏出来たんですよ!早くないですか!?」
女子ってホンとこう言う話好きだよね。なんで部室でまでその話をせねばならないのか。
「あー、うん、早いね。続くといいね。」
とりあえず当たり障りのない返事。
「そう言えば先輩には彼氏いないんですか?」
私がいないよーって答えようとするその前に先輩が口をはさむ
「いないよ、千百合ちゃんは男を片っ端からふってるから」
「ちょっ、先輩なんで言うんですか!」
「うちの部では後輩に隠し事はしなんだよ!」
そう言う問題じゃないでしょ、と言う間もなく後輩達からの追撃
「なんでなんですか?先輩可愛いのに!」
またそれか。別に自分の事を可愛くないとは本気では思ってない。けど可愛いとも思ってない。なんで人は自分の事を可愛いって言うのか。私は普通なのだ。
普通だからいいのか?はたして、、
「先輩!」
「え?あ、ごめん、あのね、先輩にも色々あるのよ」
「えぇー。」
すると、この部活唯一の男子が話しかけてきた。同じ学年だし、別のクラスだけどまぁ、悪い奴じゃないから邪険にもしない。
「村山、この部の奴泣かす奴いたら俺に言えよな。ぶっとばしてくるから。」
「あー、うん、はいはい。木田に助けて頂くほど私たち弱くないから。大丈夫です。」
「なに、その反応!?」
なんて、話込んでいるうちに7時前になってた。
あ、帰らないと、と、皆が一斉に片付けはじめる。でも、たった5分で片付けられるほど美術室は片付いていない、すぐに鍵当番の先生がきて、「おーい、鍵閉めるぞー」とか言って、私達を焦らせる。そして、どうしようもないから部室のすみに固めて置いたりとかしてる。
やっと、帰られるぞー!と、言ったところで思い出した。
明日、委員会決めるんだっけ、何にしよう。
3,総合的な時間
~直也~
僕達のクラスはと言うか、どのクラスもだろうけど。各委員会と係に自分で立候補するスタイルをとっている。こう言うのには決まりがあって、まず委員長を決めようとするけど誰も手を挙げなくて結局先生が「お前去年委員長だったよな?」とか言って。その人を委員長にする。そして皆で盛大な拍手をして「委員長したくない!」って言えなくする空気を作る。
今年もやっぱりそうなった。男子委員長は今年初めて同じクラスになった本田?だったけ?女子は原。まだ新しいクラスになって間もないから、クラスメイトの名前もそんなに覚えてない。
「直也、お前何すんの?」
と健一、総合的な時間あるあるだ。後ろの奴にお前何すんのと聞くやつ。
「図書委員でもしようと思うけど…健一は?」
「俺は余ったので良いや。」
お前は万能型だからな。なにやっても良いよな。世の中理不尽だと思う。天は人に二物を与えず。とか言いながら。健一みたいにイケメンで運動出来て彼女がいて、二物どころか三物、四物与えちゃってる。
「じゃー、次、図書委員やる人。」
あ、手を挙げなきゃ。僕は急いで手を挙げる。
「「はい。」」
え……………………?
僕と一緒に手を挙げたのは村山千百合だった。彼女とは何度か同じクラスになったことがある。
昔はよくしゃべったけど今は一切話さなくなった。高校一年生の時別のクラスになって、一年見ない内にまさかあんなイケイケなグループに入ってるとは思わないよ。
もともとイケイケ女子は苦手だから話しかけにくい。と言うか、彼女達からすれば僕みたいな文科系オタク男子は相手にする価値も無いくらいに思ってるんだろう。
でも、どんなグループに入っても村山千百合の綺麗な黒髪は健在だった。
「他、誰もいないなー。それじゃあ、二人頼むぞ。」
生返事だった。改めて見てみると村山千百合の髪は本当に綺麗だった。
~千百合~
クラス委員なんて籤で決めるのが早いよね。とか。美樹と話してる。
「美樹なにすんの?」って聞いてみる。
「私?私は……健一がやる係。」
あー、はいはい、お幸せに
「何よー。千百合が聞いたんじゃん。」
ごめん、聞いた私が悪かった。
「ちぇー、じゃあ千百合は何すんの?」
私は……何しよう?
「やっぱり、男で決めない?委員会って男女一組でしょ?係はどっちでもいいけど。」
男では決めないでしょー。こう言うのは何をやりたいか…じゃない?みたいな事を美樹に言ってみると、そんなもんかねー。って流されてしまった。
未来はもう保健委員に決まってる。未来は面倒見が良いからね、昔から。流石5人姉弟の長女って感じ。鈴華は美化委員。確か去年もやってた、鈴華曰く凄い楽…らしい。
「てか、健一全然手あげないんだけど。もう図書委員しかないよ?健一係にするのかな」
「大野君の事だから余ったのとかにするんじゃない?」
「ありえる。」
美樹は小さく吹き出した。お洒落な美樹は笑うとホントに可愛い。羨ましいくらいだ。美樹とか鈴華とか本気で笑える娘って羨ましい。私はなんか作ってる…そんな感じがする。
「じゃー、次、図書委員やる人。」
急に声がかかった、図書委員やるか……本好きだし。
私は手を挙げる
「「はい。」」
私と一緒に手を挙げたのは。昨日思い出した彼。高木直也だ。
あー、確か高木君は文芸部だっけ。盲点だった。まさか昨日の今日でこんな展開になるとは。でも、まぁ、悪い人じゃないしいつも通り代わらない毎日になるんだろうな。とか、考えていた。
~直也~
「やべえよ、直也。俺数学係になっちまったよ!俺数学の大塚嫌いだよ。」
健一が悲壮感溢れる顔でしがみついてきた。
「健一が余り物が良いって言ったじゃんか。」
「それはそうだけどさぁ。」
健一の顔をみる限り本当に嫌いなんだな。大塚。
まあ、大塚五月蝿いからな。地声がでかいんだよ。
「なぁ、お前は良いよな。美少女村山と図書委員なんてさ。」
なにを言うんだお前は。
「ここから始まる恋!とかな!」
健一の脳みそはお花畑か何かなのか?
「なぁ、ないの?ねぇ、そういうの。お前昔、あいつと良く話してたじゃん。」
よくおぼえてるよ健一は。
腐れ縁ってのはホントにあるもので小1で出会ってからずっと同じクラス。おまけに僕が図書室に行くって言えばついてくる。
でも、休みの日なんかで一緒に遊んだことは無い。健一人気だからな。金曜日になればいつもクラスのお洒落男子達にカラオケ行こうぜ。とか言われたり。平山美樹とデートに行ったり。充実している。
そんなよくわかんない関係だけど。健一がいてくれて助かったこともある。
ヒエラルキーの頂点グループの健一だ。そんな健一と一緒にいれば僕みたいな文科系男子でもイケイケ男子にいじめられることは無い。
まぁ、女子の陰口はどうも止められないけど。
「なぁ、健一。お前今日部活来る?」
「え?あぁ、今日は行かない。薬局行かないと。」
「なに?風邪?」
「いや、今日は人の家泊まるから。」
聞かなきゃ良かった。これだからリア充は………
「わりぃわりぃ、ま、お前も頑張れ。明日委員会の集会だろ?村山と仲良くなれるかもしれないぜ?」
なにを頑張れと?いらん世話だ。
「じゃー、俺帰るから。じゃあな。」
おう、とだけ返事をした。
僕にとっては村山千百合の存在はもはや過去でしかないのだ。昔話したから何だと言う話だ。
教室の隅っこから少し僕の名前が聞こえた。多分だれか女子の陰口だろう。聞きたくも無いから僕は足早に教室を出て部室に向かった。
~千百合~
「もぉ!何で健一数学係なんかになるのよ!考えらんない!」
と、美樹。読み通り大野君は最後まで手を挙げなかった。数学の大塚先生嫌われてるね。私も一年生の時一回怒られてからあまり好きじゃないんだよね。
ねぇ、未来は安定の保健委員だね。
「うん。そうだね、楽しいし」
「えー、でも面倒じゃない?健康観察簿とか保健室にもってったり。」
と鈴華。
ほら、未来は長女だから面倒見がいいんだよ。ってフォローを入れる。
「そんなんだったら私も長女だしぃ。」
美樹も入ってくる。
「美樹は大野と一緒なんだから、何もいえないじゃんか。」
鈴華の的確な突っ込み。
「そう言えばさぁ、千百合も災難だよね。図書委員で眼鏡のオタク文芸部員といっしょなんて。」
でた、鈴華の悪口節
「だってさぁ、えっと、高木?だっけ。なんかさぁこないだの朝、ノートに何か書いててさ。それが『艶やかな黒髪に目を引かれた』とか書いててさ。キモくない?」
そんなことない。
「そう言えば、さっきも図書委員の時千百合の頭ずっと見てた。絶対黒髪マニアだよ。キモッ」
そんなことないって。
「何故か、健一といつも一緒だし。あいつのせいで健一も文芸部入ってるし。」
美樹もいい加減な事を言う。
「でも、高木君結構良い人だよ?私中学一緒だったけど。優しいひとだった。」
未来がフォローしてくれる。でもそんなフォローをぶち破っての美樹の一言
「あ、こんな時間、私今日健一が、家に来るから帰るね。」
自慢かよ。って呟いた
「えへへ、まぁねー。鈴華はどうする?」
「私はー、帰る!今日見たいドラマあるの。」
「そうなんだ。じゃぁ、リア充組はお先に失礼します!」
なんて事を言いながらリア充は教室を後にした。
未来と二人になった。
「ねえ、未来。さっきはありがとね?」
「何が?」
「高木君のことフォローしてくれて。」
「あー、良いの良いの。だって千百合中学のころ高木君のこと好きだったじゃん。」
まだ覚えてるのかよー。って笑いながら返す。
「千百合さ、何か高木君と仲良かったよね。小学校の時から。」
あー、親友って怖いよくおぼえてるよ。
「ほら、本読むの好きだったからさ、同じ趣味の人いると学校生活楽しいじゃん。」
「え?じゃあ今は楽しくないの?」
「いやいや、そうじゃないけど。」
そうだけど。
「ならいいんだ。千百合さぁ、今はどうなの?高木君。」
えー、今はわかんないよ。だって全然話しないし。
「あ、あのさ、この事は鈴華と美樹には秘密ね。私の昔の事。」
「うん、わかってるよ。当たり前じゃん。」
へへっ、ありがとう。
「えっとさ、千百合?私も一ついいかな。」
「なに?」
「さっきさ、保健委員に入ったの楽しいからとか言ったけどさ、あれ違うんだ。」
違うんだ。じゃあなんなんだ!って話だけど。
「私さ、好きな人がいるんだ。2組の笹山君」
あー、あの男テニ部の……
「未来、小6からずっとじゃんそれ。」
「うん、そうなの。で、今日の朝廊下で保健委員するって話してたから。」
なるほど。
「秘密ね!これ」
もちろん、秘密。女子の秘密は絶対。特に未来は大好きな親友だから。
「じゃ、私達も部活行こうか。」
「そうだね。じゃ、また」
「うん、バイバイ。」
秘密を分かち合った私達はなんだか晴れ晴れしい気持ちで部屋をでた。
明日の集会で話しかけて見よう。高木君に
そう思った。
4,敵
~直也~
翌日の帰りのホームルームが終わり、僕は図書室に向かった。帰り際に健一が
「んじゃ、頑張って。」
とか言ったから。何をだよ。って言ったら笑いながら帰っていった
~図書室~
村山千百合は僕より早く図書室に来ていた。委員会はクラスごとにまとまって座る。だから必然的に僕は村山千百合の隣に座ることになる。女子の隣に座ることにはあまり抵抗は無い、でも村山千百合の隣となると、少し気まずい。村山千百合の方も何か気まずい雰囲気を漂わせている。
~千百合~
高木君は少し遅れてきて私の隣に座った。なんだか凄く気まずい。
一年話さないとこんなに話せなくなるんだって知った。
高木君は昔の事は覚えているのだろうか。そもそも私の事を覚えているのかな?いや、一年じゃ忘れないでしょ。と言うか、高木君から話しかけたりしないのだろうか。いや、それは無い。高木君ってあまり喋らない人だし。昔もクラスでは浮いてたっけ。大野君がいたからいじめられはしなかったけど。こうなると私から話しかけるしか無い。いや、話しかける必要があるのだろうか。別に話さなくても良いじゃないか、なんてことも思う。
~直也~
村山千百合がなんだかキョロキョロしてる。何かあったのだろうか。少し心配する。
「あっ、あの……」
「はい!?」
うわっ、凄い驚かれた。やっぱりイケイケグループなんだな。僕みたいな男子に話しかけられる事がもう心外なんだろう。でも話しかけちゃったら仕方ない。とりあえず聞く
「どうかしましたか?ずっとキョロキョロしてるけど。」
「いや、色々考え事してて……」
そうなんだ。深くは追わない、それが良い。僕は前を向いた。すると、千百合が話しかけてきた。
「ねぇ、高木君?」
「はい。」
凄く普通な返事
「なんだか久しぶりだね。話すの。」
「あぁ、そうですね。」
なんで敬語?凄くよそよそしい。いつも女子から話しかけられると敬語になってしまう。
「敬語じゃなくて良いよ。昔みたいにさ。」
やっぱり言われた。
でも、お陰で少し気が楽になった。すると再び村山千百合が声を入れる
「高木君さ…昔の事覚えてる?小学校の時、図書室で『かいけつゾロリ』シリーズ読んで爆笑してたら、図書の先生に怒られたりとか。』
そんな事もあった。他にも『デルトラ・クエスト』が人気だったときにあまりに借りれないから二人で借りて交換して読んだりしたりとか。
「あー、あった、あった!」
そんな些細な事を覚えてもらっていて少し嬉しかった。
ちょっと、昔の事を思い出してなんだかたのしい。こんな気分は久しぶりだ。すると、そこに別の生徒が来た。
「おー、村山、お前も図書委員か。」
「あ、木田」
だれ?この人その程度の感情しか持てなかった。でもなんかイライラする、別に村山千百合との会話に割って入ったとかじゃなくて何かこの木田とか言うやつの雰囲気と言うか。こいつとは仲良く出来ないな。そう思った。
「あ、高木君、紹介するね。」
いらない。
「美術部の木田君。」
「あ、うん。初めまして。」
邪険にも出来ないからとりあえず返事する。そんな僕の雰囲気を知らず。木田は話続ける。
「なぁ、村山は何曜日にする?図書の当番」
「え?あぁ、まだ決めてない。」
「じゃあさ、火曜日とかどう?俺、火曜日にしようと思うんだ。火曜日って部活の時先生沢山出没するじゃん。」
「確かにねー。でも私、先生には沢山教えてもらいたいから。火曜日はパスかな」
するとあからさまに残念そうな顔をした。わかった木田は村山千百合の事が好きだ。
まぁ、村山千百合は美人だからモテて普通か。
すると、そこに図書の先生が来た。
先生が来てからはかなり早くすんだ。当番は来週の集会までに決めといて下さいって。そんだけだった。
委員長のそれじゃあ今日は解散、の一言で皆一斉に帰り始めた。
だけど村山千百合は動かない。
木田も「先に部活行ってる。」って言って出ていった。
僕も動かない。こう言う時一番最後まで残るタイプの人間だ僕は。
そして、僕と村山千百合だけ残った。
「ねぇ、高木君。高木君は何曜日にするの?」
何曜日にしよう。うーん……しばらく考えていると
「あー、無理に考えなくて良いよ。うん。ごめんね?」
あ、待たせ過ぎた。
「あ、いや、考えてなくて…僕こそごめん。」
「いやいや、じゃ、部活あるから。またね。」
うん、また。それだけ言って僕も図書室をでた。
~千百合~
話せた。そして、覚えてた。凄く嬉しかった。『デルトラクエスト』の事とか、確か第5巻の『恐怖の山』で本を横から見ると文字が浮かんでくる奴を見ながら大興奮してたっけ、昔話って凄く楽しいよね。なんて一人自問自答した。
明日は美樹と鈴華がいないとき、少し本の話してみようと思った。
そんなことを一人考えながら図書室を出ると
そこには……
5,距離
~教室、直也~
「で、どうだったの昨日は。」
健一が話しかけてきた。
「どうって?」
「村山と、どうだったって。」
どうもこうも少し話しただけだよ。だいたい何かあったってお前には関係ないじゃんか。
「無くねぇよ。俺ら親友じゃん。」
「え?」
「え?って、えぇ!?」
「いや、ただの腐れ縁だと。」
ひっでえぇ!と健一は大きなリアクションで声をあげた。
「だって僕達さ、休日遊んだこと無いじゃん。」
「じゃあ、遊ぼう!明日!」
「は?」
「カラオケとか行こうぜ!」
別にいいけど……よくよく考えると休みの日にクラスメイトと遊ぶことって無かったな。健一に限らず。
健一って、こういう時カッコいいよな。思い付いた事はどんどん決めて。端からすればめんどくさいやつだけど。決断力の無い、僕にしてみれば凄くカッコいい。
「じゃ、明日な!えーっと、10時、駅集合!んじゃ!」
「え?部活は?」
「今日はパス!」
あいつ、何で文芸部入ったんだろう。健一は凄くよく部活を休む。話によると近所の小学生野球チームに遊びに行ってるんだとか。
……明日、楽しみだ。10時、駅前。
周りを見渡すと丁度、村山千百合が教室を出ようとするところだった。図書の当番の曜日決めたんだ。
「あ、村山さん」
村山千百合はビクッとして振り返った。何かまずかっただろうか。
「高木君……どうかした?」
「あ、いや。僕、図書の当番木曜日にしようと思って」
「あー、そうなんだ。うん、わかった」
そう言うと村山千百合は走り去ってしまった。僕は何か変なことでもしただろうか。村山千百合との距離を感じた
~千百合~
なんで、こんな事になんたんだろう。
昨日、委員会が終わったあと図書室にから出ると、そこには木田がいた。
「なにしてんの?部活行ったんじゃないの?」
「いや、ちょっとさ。」
何をうじうじしてるんだか。私は早く部活行きたいのに。
「あのさ、村山さ、さっきの奴、えっと、高木?あいつの事好きなの?」
は?思わずそう言ってしまった。なんで木田がそんなこと聞くのよ。そう思ってしまった。
「別にそんなんじゃないよ。昔……仲良かっただけ……」
好きだったとは言えない。それにだったら何だって話。
「そっか!良かった。」
何が?
「あのさ、俺、村山の事好きだ。」
え…………。今なんて?この瞬間に私の時間が硬直した。
「去年からずっと。俺、誰よりもお前の事わかってる。本が好きな事とか。周りのバランスとってることとか!」
あ……………………………。この時、自分が美樹と鈴華と未来のバランス取ってることに初めて気がついた。
断れなかった。はじめてのタイプの告白だった。中身を見てる。そんな告白だった。
でも、なんだろう、この、ザワザワした気分。
そして、今日。図書の当番。私は木曜日にしようと思った。まさか高木君が木曜日を選ぶなんて思わなかったし。でも私の気持ちは変わらない。
良いじゃないか。当番が誰といっしょでも。
木田だって、これから好きになっていけばいいんだ。部活メンバーだから気付かなかっただけ、思いでもこれから作れば良い。
そう、私にとって、高木君はもう過去なんだ………………。
そう私は自分に言い聞かせた。
6,距離2
土曜日
約束通り僕は駅前に来た。遊び目的で駅に来ることなんて何だか新鮮だ。
まだ、9時半か、ちょっと早く来すぎた。
何だろう。デートでも無いのに何かワクワクする。デートしたこと無いけど。相手男だけど。そう考えると何だか凄く悲しくなってきた。
そう言えば、中2の時一回だけ女の子と出掛けた事があった。
村山千百合と。
デートでは無い……と思う。そう言う関係では無かったから。
確か、あの時は街に行って『フェリックスと異界の伝説』と『バーティミアス』を買いに行ったんだ。誘ってきたのは村山千百合だったはず。分厚い本が読みたいって言ったから紹介したら。わからないから一緒に買いに行こうってなったんだよね。
懐かし……でも、何か忘れてる。この時何か約束をした気がする。
それからしばらくして、健一がやって来た。健一の私服姿なんて初めてな気がする。
「わりぃ、わりぃ遅くなった。」
「いや、大丈夫。さっき来たばかりだったから。」
「そっか、じゃあ行こうぜ。カラオケ。」
カラオケ、実は結構行ってる。一人でだけど。
歌を歌うと凄くスッキリするし飽きたらだらだらすればいいし。
何より、個室ってのが良い。
僕の住んでる町のカラオケは安い。時間100円。
カラオケの手続きをサラサラとやってのける僕を見て、少し驚いてたようだった。
それから、二人で13番の部屋にいってカラオケの準備をする
「あー、直也、水いる?」
「うん、いる、お願い。」
僕は少しテンションが上がっていた。二人でのカラオケは初めてだったし。
「なぁ、直也ってどんな歌、歌うの?」
「えー。結構色々歌うよ。小泉今日子とか」
「キョンキョンとか!昭和かよ!」
冗談である。
「嘘だよ。高橋優とか歌う。他には松田聖子とか?」
健一はブッフォって吹き出した。
「何でそこで聖子ちゃんチョイス!」
だから冗談である。
「高橋優ってあれだろ?えっと『桐島、部活やめるってよ』の主題歌うたってる。」
「そうそう、知ってるんだ。」
「おう、去年美樹と見に行った」
あー、ね。そう言うこと。
「直也ってさ。前田っぽいよな。桐島の」
「そんなこと言ったらさ、健一は竜太と宏樹足して二で割ったみたいじゃん。」
なんだそれーと、健一は軽く流す。
「ほら、直也曲入れろよ。最初は譲るからさ。」
「え?うーん何入れよう。よし。」
ピピピピピ…と機械音が響く
「健一、目つぶっといて」
「なんで?」
いいから。
そして、曲が始まる
「風たちーぬー♪」
「ぷ…くくっ…っははははは!」
二人で盛大に吹き出した。健一も思わなかっただろう。本当に松田聖子入れるとはな。
「ごめん、健一、僕ここしか知らない」
なんだよー。じゃあ次俺なとか言って健一は曲を入れる。
「直也、目つむれ」
りょーかい。そういって僕は目を閉じる。
そして曲がはじまり
「マハリーク、マハールタ、ヤンバラヤンヤンヤン!」
二人は再び吹き出した。まさかの魔法使いサリーちゃん。
2時間って物はなかなか早いもので。二人でふざけてたらあっというまに2時間たった。
「あー、歌った!歌った!」
健一は凄く楽しそう。僕も楽しかった。少し疲れたけど。
あのあと、歌えもしないのにやたら昭和曲と演歌を入れまくる事態になった。健一の『津軽海峡雪景色』が滅茶苦茶に上手かったのにも驚いた。
「直也って結構歌上手いのな。」
「あれ?忘れた?僕中学の合唱大会で実はパートリーダーやったりしてたんだけど。」
「あー!そうだわ。中1の時だろ?えっと、たしか男子がかなり音痴でお前だけ音とれてたんだっけ。」
そうそう、僕は笑いながら答える。すると健一が突然
「なぁ、俺たちもう親友だよな?」
なんて言い出した。
え?あー、そう言えば。
「わかんない。」
そうとしか答えられない。親友って何だろう。どうなれば親友なのか。
健一はわかんないってなんだよー。と微笑する。
それから流れで、本とに小さな頃、自我とか確立してなくて校内ヒエラルキーも無いようなころ学年にすれば小1の頃とか。そんなころに遊びに行ってた所めぐりをすることになった。
家の近くの公園、小学校裏の秘密の休憩所。みんな変わってなかった。それで1時間くらいだろうか自転車でまわっていると。川原にでた。まだ春だから日は高いけど。秋になればそれなりに綺麗な光景が浮かんできそうなそんな雰囲気だった。
看板がたってる。『キケン、川では遊ばないようにしよう。』
「昔って、あんまりこう言うの無かったよね。」
そう呟いた。
その時だった。
「あ!」
どうした?
「思い出した。」
何を?
「この看板出来たの俺と直也のせいだ。」
え?そうだっけ?なんだか、凄い衝撃的な告白された気がする。
「小1ん時。俺と直也でここにカエル捕まえに来たんだよ。」
カエル…かえる…蛙………?
「その時だよ。俺がさ溺れたんだ。奥に行けば大きなカエルがいるかもって進んだら足滑らせてさ。」
あ……そう言えば、そんな事あった気がする。
「そしたら、直也俺を助けに来てくれたんだ。」
……………………………………………………………………………………思い出した。
それで、僕も溺れたんだっけ。
「そう、それで近くにいたおっちゃんが助けてくれた。でも…お前いっとき目さまさなかったんだよ。」
そう、泳げないのに行ったからね。
「それで、母ちゃんにめっちゃ怒られた。それで、この看板立てられたんだ。地域の人の力で。」
そうだったんだ。
健一は、話を続ける。
「それでさ、母ちゃんと二人でお前のお見舞いに行ったんだ。それでさ。俺、お前に言ったんだよ。助けに来てくれてありがとうって。」
幼い頃のピースが埋まっていく。
「そしたら、直也なんて言ったと思う?」
当たり前だよ。だって僕ら
「「親友だろ?」」
健一が目を丸くする。
「ありがとう。健一。皆思い出した。」
「そっか、良かった。」
何も、親友になる必要は無かった。だって、元から親友だったんだから。
そして………他にも、思い出した。凄く大切な事。
7,記憶
~千百合中2~
「千百合!千百合ー?聞いてる?」
未来に言われてハッと我に帰る。歩きながらボーッとしてたみたい。最近多いんだよね。私と未来はテニス部。中学に入学したとき、二人でユニフォーム可愛いね!なんて言って勢いで入部してしまった。
「ねぇ、未来。来年さ受験じゃん?」
「何いってんのよー。まだ2年になったばっかりじゃん。」
そうだけどさ、結構時間経つのって早いんだよ?
「そりゃ、まぁ、そうかもだけどさ。」
「未来は高校生になってもテニスやるの?」
「するよー!もちろんする。だってほら、笹山君いるし。」
いい加減告白しなよー。と言うか彼と同じ高校行けるかわからないじゃん。
「あ…」
そこの事は考えて無かったらしい。
「じゃ、じゃあさ千百合はどうするの?部活。」
「私は………テニスはしないかな。多分。」
何で?未来は問いかける。
「んー、絵描きたいから。」
「てことは、美術部行くの?どうして?」
どうして、と、言われても。絵描きたい以外に理由なんて無いような。いや、無いとは言えないけど。
「私さ、男子とあまりしゃべんないじゃん?」
「確かに。あまり見たこと無い。」
「それで、こないだ久しぶりに仲良く話せる男子がいたの。」
「あぁ、えっと、高木君だっけ。」
高木君、彼とは小学校の時知り合った。小学校のころはそこまで仲良く無かった。むしろ最初のころは仲悪った。彼はよく図書室に居て本を借りる。その時によくぶつかった。
「それ、私が借りようとしてたんだけど。」
「でも、今借りたの僕だもん」
なんて、小学生の喧嘩よくしてた。確か小2の時『かいけつゾロリ』が凄く人気になって
皆借りられちゃったんだよね。そしたら彼。図書室の隅っこの紫式部とか置いてあるコーナーの後ろから私がまだ読んでない『かいけつゾロリ』をもってきた。
千百合ちゃんはこっちを借りて。僕こっちを借りるから。って貸してくれたんだよね。
だけど、教室では話さない。図書室だけの関係だった。
で、別それから5年生まで別のクラスになった。
6年生で同じクラス。その時は『ダレン・シャン』とか『デルトラクエスト』この辺が人気だった。同じクラスになった私達は昔と同じことをやってた。
「ねぇ、まさか千百合は高木君好きなの?地味じゃない?まぁ、顔は中の中の上くらいだと思うけど。千百合って庶民派?」
「うーん。わかんない。けど、高木君と話してると楽しいんだ。趣味の話できるひとって、それに、人間表面じゃないよ。大事なのは中身だよ中身。」
「うわー。あんたほどの美少女で人間中身とか言う奴多分日本で千百合だけだよ。」
私は、まあねー。って笑いながら部室へ行った。
「あー!今、まあねーって、美少女って認めたなこいつ!」
そんな、日常。心の奥であー、多分私は高木君好きだ。そう思った。
~直也中2~
僕は絵を描く。暇潰しになるし、読んだ本の内容を絵にするのとか楽しい。
でも、そんな事ばっかりしてるとクラスでは余り馴染めない。そんな中でも僕に話しかけて来る人が何人か居てくれる。健一と村山千百合。それだけで十分。特に村山千百合は最近よく話しかけてくれる。昨日も。今日も話かけてくれた。
「高木君って帰宅部だよね。」
「そうだよ。」
「美術部には入らないの?絵かくじゃん。」
いや、入ろうとはおもったんだけど………僕は絵を描きながら答えた。
「思ったんだけど。自分の時間欲しいし。高校生になったら部活、しようかな。」
「美術部?」
どうだろう。そうかもしれないし、別の部活に入るかも。本読みたいから……例えば……文芸部?とか
「文芸部は本書く部活じゃない?」
「そっか、じゃあ美術部かも。」
やっぱり絵を描きながら答える。
「村山さんは?今、テニス部だよね。」
たしか、小学校の低学年の頃は、千百合ちゃんって呼んでたっけ。小6の時にやめたけど。
「うん、でも、高校では……わかんない。」
ふぅん…
「ねぇ。今は何描いてるの?」
「これは……バーティミアス。」
「バーティミアス?」
そう、600ページくらいある分厚い小説の主人公。
「600ページ?凄いね!ちょっと、読んでみたいかも。どういうお話?」
「えっと、悪魔を召喚する少年が、バーティミアスっていうなかなか有名な悪魔を召喚しちゃって。そこから色々広がる話。あー、わかる?」
「よく、わかんないや。でも何となく面白そう。ファンタジー?」
「うーん、ある意味ファンタジーだけど、人間模様は凄くリアル。村山さんファンタジー好きなの?」
「デルトラ読んでたじゃん。」
そっか、そうだね。
「じゃあ、『フェリックスと異界の伝説』はオススメするよ。」
「どんな、話?」
「えー、これは話すと長くなるんだよね。読んだ方が良いかも。」
と、言っても図書室では結構借りられてるし、僕のやつも健一に貸してるし。
「えっ?大野くん本読むの?」
「うーん、たまに。何か気分で読みたくなるんだって。」
「イメージわかないなー。」
そうだよね。なんて笑ってみせる。すると村山千百合は何か思い付いたようだ。
「ねぇ、日曜日暇?」
日曜日?は凄く暇だよね。うん。暇。
「暇だよ。ごろごろしてるか散歩するか」
「じゃあさ、日曜日、本買いにいこうよ。一緒に。」
え!?思わず顔を上げる。
「だめ?」
駄目じゃない駄目じゃない!女子に初めて誘われてとまどいを隠せない。
「いや、うん。大丈夫。買いに行こう。」
「やった、じゃあ、日曜日、駅に……10時でいい?」
「うん…オッケー。日曜日にー。」
するとそこへ同じクラスの後藤未来が。来て村山千百合を部活に呼んだ。
~日曜日~
僕は早くきた……つもりだった。
村山千百合は僕より早く来ていた。その時思わず立ち止まってしまつた。
村山千百合の私服。可愛い。白基調のヒラヒラした服。女子って私服と制服でこんなに変わるもんなんだ。
「高木君、私服そんな感じなんだ。以外。結構お洒落なんだ。」
「いや、姉ちゃんが、服選んでくるんだ。ダサい弟は嫌だって。」
言っても、基本は家にいるからジャージとかしか着てないんだけど。
「お姉さんいるんだ。」
「うん、4つ上。」
「私もお姉ちゃんいるよ。2個上」
それからしばらくは兄弟の話になった。
人と話すのって楽しいんだって初めて気がついた。
二人とも歩きだったから。本屋まで歩く。この時少しビクビクしていた。もし、クラスの人間に遭遇したら………僕はともかく村山千百合が馬鹿にされるでのはないか。そんな事を思ったりした。
「ねぇ。」
「はい!?何?」
「いや、高木君、ちょっと歩くの早い。」
「あ………ごめん。」
女子の歩く速度って遅い、歩きにくそうな靴を履いてるし。その歩きにくそうな靴のおかげで村山千百合の方が僕より5センチほど背が高い。普段は同じくらいなんだけど。
縦に伸びたせいか、ただでさえ細身の村山千百合の体は余計細く見える。
昔はこんなに意識して他人を見たこと無かった。細くて、色白で、そこに映える綺麗な黒髪。こんな美少女が僕の隣を歩いていていいのだろうかと、罪悪感さえ覚えてしまう。
すると、ふいに村山千百合が話しかけてきた。
「ねぇ、人間的に私ってどういう存在?高木君にとって。」
「え?どういうって、どういう?」
「だから、えっと、えー、友達ー、とかさ、クラスメイトーとか。」
そういうのか、健一がよく聞いてくる感じのやつだな。
「村山さんは……うーん、クラスメイト以上、友達未満、かな?」
「友達以上、恋人未満みたいな言い方。」
「昔はさ、よく話したし、喧嘩もしたけど。今って、そういうの無いじゃん?」
「確かに。」
「だから、友達…いや、僕が言えることじゃ無いんだけど。友達って感じではないかな…と、よく考えると昔も図書室以外では話してないし。」
「なるほど…ね。いや、ごめんね、変なこと聞いて。」
いや、そんなことはない。だから。
「あ、あのっ!」
「どしたの?」
「村山さんは、楽しい。話してると。うん、凄く。僕みたいな人間に話しかけてくれるし、他の皆も村山さんを慕ってる。委員長も便りにしてる。だから、僕にとって村山さんは、すごい人、あこがれる事のできる人。」
すると、村山千百合は綺麗な笑顔になった。思わずどぎまぎしてしまう、笑顔。その笑顔で村山千百合はありがとうとつげた。
それからしばらくして本屋に着いた。僕は本屋の中身は全て記憶してる、どこに何があるのか。
僕は素早く村山千百合を『バーティミアス』に導いた。
文の約束
ここまで、読んで下さってありがとうございます。思いつきで書いているので読みづらかったとおもいます。
書いては更新していきますので
ちょっとずつ読むもよし、まとめて読むもよし。お好きなタイミングで読んでもらえると作者としても嬉しくおもいます。