黒猫に口紅
死に向き合った
アネモネとなる彼女
アネモネの花言葉
「リン、リン」という音で目が覚めた。
胸のあたりに黒猫の『凛』がのってきて、大きなアクビをする。
軽く撫でてやり髪を少し撫でながらベットから降りる
下着を履き鏡の前で軽く髪をとく
顔を洗い済ませると、サイフォンにブルーマンの豆をひいて珈琲を入れる。砂糖はいつも三杯
珈琲が冷める少しの間に葉巻煙草の、Brack Stoneのcherryを吸う。あまり好きな煙草ではないが、匂いがきつく独特なのでお香がわりに毎朝一本だけ吸う。
半分くらい吸うと珈琲が丁度いい熱さになる。
携帯を探そうとすると、凛が鳴くので、朝ご飯の餌をあげた。
少し右耳だけ千切れたところをピンとはねて、携帯を開く
6件LINEがきてたが、内容が軽いのを確認すると既読にせずそのまま、ほったらかし
人差し指でディスクを持ち音楽をかける。
鴉の黒髪ストレンジャーだ。切なく激しく歌う様は歌詞が脳を刺激して、PVの主人公になりきるように、少し陽気になれる。
時間がきてだるだると仕事服をきて、軽くメイクを済ませる。
凛の近くにいき、必ず千切れたほうの耳から撫でおろし、「いってくるね」と家を出る。
会社から現場に行き、打ち合わせをして、作業にとりかかる。
改めて部屋をみると悲惨という単語が相応しい。なにせここに死体が転がっていたのだから。
今日も孤独死の部屋の後片付け。ここは、生と死の狭間などではなく、圧倒的な、虚無感がひしめいている。
アルバムなどを見つけると遺族に渡そうとするが「いらないから。
もぅいいからさっさと全部捨てちゃって下さい」孤独死などの遺族は大体こんなもので。
私はそこが気に入ってこの仕事を続けている。
ここでは上っ面の綺麗な仮面をとった、汚いゴミクズの人間がよく見える。
そんな人間を見て、正直。笑える
だって他ではきっと故人を悲しむふりしてるんですもの。
貴方達とっても笑えるの。
そして線香をあげる
「線香だけでも…」と、遺族に言うと
「臭いから入りたくないよ、やっといて」
いつも此処で私の中の道徳心と、内心笑ってしまうような不思議な感覚が喧嘩をする感じがする。
結論はいつも同じ
「あんたが死ねば良かったんだ」
そして、線香をあげるふりをして、ロケットネックレスをクリクリ触りながら線香の煙をじーっと見つめる。
ロケットの中には、いつでも自殺できるように青酸カリが入ってる。本物かどうか怪しいが、危ない友達から買ったものだ。
青酸カリのロケットを触りながら、死を実感する。
そして私は死の案内人なのだ。
以前に故人の猫を引き取って『凛』と名付けたその時から。
そして帰りの時間は中古で買ったiPodに一曲だけ入ったamazarashiの、ワンルーム叙事詩を聴いて、透明に塗ったマニキュアを上にかざしては、爪鑢で爪を磨く。
寡黙でニコリとも仕事場でしない私に話しかけてくる奴はいない。
それも心地いい。
帰ると凛がお腹が減ったと、待っている。
餌をあげて、私はすぐシャワーを浴びて、急いで真っ赤の口紅を塗り黒のワンピースを着て、できるだけエロティックにして、BARへと向かう。
そこにつくと毎日いる老人がいる。隣に座り何時もの様に話を聞く。毎日毎日飽きもせず
「死にたい、死にたい」
それを毎日聞きに行く私もどうかしてる。だが知りたい。もっと死に触れたい
帰りに花屋により、アネモネを一つ買う。最初はなかったが、毎日通うのでアネモネを私のために置いてくれるようになった。
少し繁華街からそれた脇道にいくと、寂しい路地にチカ、チカ…と光る電柱がある。
私はそこに座り花瓶にアネモネを添え、『彼』を口説く。真っ赤の唇で、ありったけの女性をだして。
独り言だけど、きっと聞こえる
私があの仕事についたきっかけ。
座り込みiPodを耳に当て月をみながらボソボソと歌う。
「唇噛み締めて自分の無力さになす術もなく泣いた悔しさ
身体半分持ってかれるような 別れの痛みとその寂しさ
それさえも奇跡だと言えたなら 思えたなら
無価値な事も特別になる
ありのままで奇跡だから…」
私は青酸カリの入ったロケットネックレスを月に何度もかざした
黒猫に口紅
とある男性知人と仲良くなりました。
その人と画像のイメージです。
傷つきくぎた彼の心は繊細で美しく見えたので
女性を主人公にしました