透明な空に、螺旋状の模様がついている

水槽の中には、何がいるのでしょう

水面がゆらゆらと優柔不断になっているから、もしかしたら、誰かさんを隠しているのかもしれない

ぽちゃんと、石ころを投げた

投げた反動で、空が、大きく笑った

あっ、と思わず声をあげてしまう

三毛猫みたいな色をした淡水魚がいる

いた、泳いでいる

本当だ

ほらね

大きくて、美しい鯉だ

鯉は、青と緑の横断歩道の上を赤信号で渡って、
「私には、高い値が付くでしょうけれど、存在価値なんて、皆一緒よ。生き物なんて、みんな一緒。
鯰髭人間だって、漆塗りの車に乗って威張っているけれど、沢山怖い物があるんだから」
と言った

雲に白く刻まれているのは鍵盤
あの子のランドセルは、初めて塗った、真紅の口紅の色

鯉の目を通す景色は美しい

水面は、相変わらず澄んでいる

透明なものは、透明なだけではいけない
透明には、水底の色を写し取ることができる、心が必要だ

鯉は泳いだ

水面を揺すり、水底の色を豊かに変えたのは、三色の上等な鯉

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-10-16

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