矛盾


「…三ヶ月ぶりか、ここにくるのは」


廃墟と化した村は雑草が好き勝手に生い茂っていた。気に留めずに中央の祭壇跡へと歩みを進める。

声が聞こえる。怒鳴り声や泣き声、苦しみ呻いている声が。誰かが自分を呼んでいる気がした


それも全ては幻聴だが


ある人は、自分の事を冷酷だと言った。
ある人は使い勝手がいいと言った。
ある人は面白い奴だと言った。
ある人は絶対に許さないと言った。
ある人は自分を好きだと言った。



…いったいどれが本当の私だ?



そんな答え、いくら探しても出るはずもなくて。

祭壇には枯れて原型をとどめていない花が数輪置いてある。
大人34名、子供10名がこの任務で殺された。動物もいたかな、数までは知らないけれど

どうして村を襲ったのか、理由はもう覚えていない。興味もなかった。
過去の任務に固執する気はさらさらない


祭壇に立つと、周りの声が一層頭の中に響く気がした

「私は、お前達の命を背負う気なんてない」

でも。せめてーーーーー

そう言おうとした口からは、続きの言葉は出なくて

くるりと踵を返して祭壇を降りる。そのまま一度も振り返らずに村を出る



みずみずしさが溢れる野花が一輪、祭壇に置かれていた



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必要以上に感情を移入しないベルメリオ。でも昔から、任務で赴いた地の近辺に居るときは、適当な野花を一輪摘んで村に手向けて帰る事を習慣づけている。
これが自分に対する甘えなのか、はたまた任務の延長線なのか。
どちらにしろ自分の行動が信念と矛盾していることには気づいている…

矛盾

矛盾

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-10-16

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