鳶の舞う空

     
     真昼の空に
     半透明の月が高く
     その青い空の
     冷たき風を切り
     鳶が旋回していた
     生きるために


ーーピーヒョロロォーー
  


人は、あの鳥の舞う姿を優雅と思うかもしれない。
でも鳶は気づきもしない。
餌を求め上空を旋回しているのだ。
生きるための真剣しか、そこにはないだろう。
鳶は、青い空も『ああ、なんて青いのだ』と味わうこともなく。

     
この地上で、人も生きるために真剣だ。
でも人の造り出した都市化した社会は、
この地球で人類が生命を持続させてゆくことからは外れている。

     
欲望を満たすために社会のルールを破り、倫理をも犯し。
それを隠すことに専念する、次は保身のために。
立場を維持するために、対峙するものたちで足を引っ張り合い。
テレビ画面の中に映る世界は遠く感じても、
市井の実生活にやがて波及する、それらの醜い影。
     

金力がものを言い、真実が隠される。
売り物の慈善、幸福の交換条件。
騙され続ける人間は、ある意味、幸せのうちに終るのかもしれない。
心の深きも浅きも死とともに無と帰すのならば。

     
この社会が嫌なら楽園を探し逃れればいい。
でも、それもしないのだから、
ここで暮し行くことを、私は選択している。

     
青い空を見たよ。
それを味わう心は忘れない。
もうそれだけでいいのかもしれない。
それだけでいいのかもしれない。

     
そして嘆くのではなく、囀ろう。
上空に舞う彼のように…。
     
     
     

鳶の舞う空

※冬の作詩です、

鳶の舞う空

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-09-14

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