君と小惑星。[未完成]
裏切り
―カーテンを開けて陽の光を体中に浴びてみる。
私は、内田有香(うちだ ゆか)
今年で中学二年生になった。
小学校とは違って部活とか勉強とか大変だし、疲れる。
そんな私にも一人の親友が居る。
―居る、というよりは居た。
その子の名前は水原清香(みずはら きよか)
勉強ができて、顔が童顔で身長が小さくて可愛らしい。
肩につくぐらいの髪を耳の位置で二つ縛りにしていた。
運動はできなかったけど、そういうところもまた可愛いんだ。
私たちは違う小学校だったけど去年同じクラスになって、
今年も同じクラスになって仲がとても良くなった。
清香は吹奏楽部で、私は帰宅部。
吹奏楽部ではフルートという清香らしい可愛い楽器を吹いているとのこと。
腕前も皆が羨むほどのものらしい。
清香は、いわゆる「クラスのアイドル」というもの。
天然で、可愛くて優しい。
そんな清香のことを目をハートにして見る男子たち。
清香がいつも隣に居てくれる度、「こんな私と居ていいのかな?」と思っていた。
でもそれは、悪い意味で的中することになった。
ある日私は学校から帰ってきたあと、
清香とお揃いのクマのキーホルダーがなくなっていることに気づいた。
二人で街に行ったときに清香が「これ二人で付けようよ!」と言っていたもの。
有名なブランド物で、少し高めだったから二人ともうんうん唸ってやっと買ったもの。
清香がピンクで、私が黄色。
大切にしてたのに・・・。
私は明日清香に謝ろうと思った。
清香なら許してくれるだろうと思ってた。
このときの私は、あんなことになるとは想像もしなかった。
―次の日
昨日考え事をしていて、寝るのが遅くなった所為で寝坊してしまった。
急いで支度をし、ギリギリで教室に入ってきた私をクラスメート全員が睨む。
私は何事かと思っていたら、教卓の近くで誰かがすすり泣く声が聞こえた。
「うぅ・・・ヒック・・・なんで・・・」
その声の主は・・・清香だった。
私はびっくりしながらも、清香に近寄った。
「どうした『さわらないで!』
私が言い終わる前にクラスのリーダー格でチャラい井上胡桃(いのうえ くるみ)が叫んだ。
胡桃は前から清香を狙い、自分のグループに入れようとしていた。
胡桃の校則違反の折りまくったスカートがひらりと動いた。
『あんた机の上見た?サイッテー!』
私は胡桃に言われたとおり自分の机の上を見てみた。
その上には・・・昨日なくしたクマのキーホルダーだ。
私は自分の机の所まで歩く度にクラスメートからの視線が怖い。
やっと自分の机まで歩き終えたあと、反射的に口を両手で覆った。
―そこには、目が取れ、泥がところどころついた変わり果てたものだった。
「え・・・や・・・誰がやったの・・・?」
『あんたでしょ!?』
先ほどまで泣いていた清香が叫ぶ。
『あたしずっと大事にしてきた。なのにあんたはそうやって粗末に扱うんだ!?
もういいよ、うちらの友情はそんなものだったんだ!!』
そう言って清香は走り去っていく。
胡桃は清香が大好きだから『清香待ってー』と追いかけていく。
それに続いて胡桃の取り巻きたちも追っていく。
私は完全に一人ぼっちになってしまった。
そのあと授業が始まったけど、全ての授業が終わっても清香たちは戻ってこなかった。
クマのキーホルダーはハンカチに包んでスクバの中に入れた。
―私はこんなことしてない。
その思いだけが私をなんとか慰めているように思う。
これは本当に誤解だ。
私は携帯を持っておらず、清香には電話をかけることができないが、
明日本当に謝ろうと思い、教室を出た。
ふと、一つ下の二階から『キャハハ』という独特な笑い声が聞こえた。
あれは―胡桃の声だ。
私は誰にも気づかれないようにこっそりとその声の元へ向かった。
その声は空き教室から聞こえた。
カップルの隠れたスポットや告白スポット、そしていじめスポットとしても有名だ。
私はドアをほんの少しだけ開けてみた。
そこに居たのは―
胡桃とその取り巻きたち(五人)が居た。
私は驚きを隠せなかったが、話に聞き耳を立ててみた。
く『清香も内田のこと嫌い始めたし、いよいよあいついじめ出すか!』
と「おー!」
く『というか、昨日の作戦まさかうまくいくとは・・・ぶつかったぐらいで』
六人が笑い出す。
く『それであのキーホルダーがとれて作戦がうまくいったから今後もうまくいくと思う!』
私は事の内容がよくわかった。
つまり、胡桃たちの罠にはまったということだ。
胡桃たちにバレないようにこっそりその場を後にした。
私はいじめられるのか?
―次の日
いつも通りの時間に起き、いつも通りの時間で通学した。
胡桃はいつも来るのが遅い。
だから居ないと思っていた。
―だけど居た。
朝なのに甲高い声で笑っていた。
教室に入るのを躊躇い、
後ろのガラス貼りのドアから覗いてみた。
そこには取り巻きと・・・清香が居た。
前に『スカート折りたくないな』と言っていたのに、
完璧に折ったと分かるスカート。
校則違反のメイク。
黒かった髪は明るい茶髪へ。
人は一日でこんなに変わるものなのか。
見事に清楚系クラスのアイドルは、
どぎついギャルになってしまった。
入ってきたクラスメートが驚いたのは言うまでもない。
そんな感じで胡桃の仲間になった清香は、
楽しそうに私の悪口を言っていた。
親友だったよね、私たち。
親友だったら信じてよ。
清香は私のこと信じてなかったのか。
その日はなにも考えず無気力で過ごした。
本当に壊れてしまった友情は、次の日には跡形もなくなっていた。
『きもーい』
『ブサイクー』
次の日から本格的に始まった言葉によるいじめ。
その心無い言葉を受け止めていた。
勿論、清香も言っていたのに。
クラスのアイドルとリーダー。
この二人は絶対的存在だから、
正義感の強い人でも怖くてこれを止められないんだ。
私はひたすら黙っていた。
気がついたら放課後になっていた。
皆がどんどん帰っていく。
胡桃たちも最後に『顔面まじ終わってるわ~』と言い、
清香もそれに続いてこちらを睨んだあと、
胡桃たちを追いかけていってしまった。
結局今日も言えなかった。
こんな自分を情けないと思った。
私も帰ろうと席を立ったら、不意に視界の端に写っていた人物が近づいてきた。
『内田さん』
ハスキーな声で私に話しかけるのは、
吉沢真珠(よしざわ まみ)ちゃん。
黒くて長い髪を高い位置で結び、スラッとしたモデル体形。
ハーフのような顔でまさに芸能人みたい。
でも地味だから友達が居ないんだとか。
「どうしたの?」
『内田さんと話してみたくて』
そう言ってニッコリ笑う彼女。
真珠ちゃんは続ける。
『大変だよね…でも内田さんが冤罪だって知ってるし』
「え、何で?」
『見ちゃったの、私。井上さんたちが内田さんのクマを汚してるところ』
「やっぱり胡桃たちが犯人だよね」
『うん。というか、このクラスの殆どの人が知ってるよ』
「そっか…。ありがとう!私負けないから!」
『私応援するよ!あとね、私のお母さんね、有名な占い師なんだよね』
「へー」
『それで、昨日内田さん可哀想だな、って思って、内田さんの運勢占ってもらったの。そしたら…』
真珠ちゃんは一呼吸置いてこう言った。
『今夜内田さんの人生を変えるような人が現れるんだって』
襲撃
『今夜内田さんの人生を変えるような人が現れるんだって』
真珠ちゃんの言葉が頭の中で何回もリピートする。
果たしてどんな人なのか。
その人のことを考えていたら、親友に裏切られたことを忘れていた。
―午後十時
あと二時間で今日が終わる。
少し汚れていた部屋を掃除したり、お風呂に入ったりしたけどまだ来ない。
真美ちゃんは嘘を言っちゃったのか。
ハァー、とため息をつき、何故だかわからないが窓のそばまで歩いていた。
お気に入りの黄色のチェックのカーテンを隅に寄せ、窓を開いた。
雨戸がついてなかったため、夜の星がちゃんと見えた。
「綺麗・・・」
独り言を呟いてみた。
―その時だった。
流れ星が見えた。
「わーすごい!」
一人ではしゃいでいたら・・・。
なんとその星はこちらに向かっていた。
だんだんと大きくなる流れ星。
「え、え、どうしよう」
狼狽しているうちに、
ドスーン!!
何かと衝突した衝撃で、私は部屋の隅まで吹き飛ばされた。
「いたた・・・」
頭を抑えながら前を向くと・・・。
『あ、ごめんごめん。大丈夫?』
そういった男の人はとてもかっこよくて、つい見とれてしまった。
黒髪でクラスの男子がやるようにワックスで髪を立たせず、
少し長めの直毛に180センチメートルはありそうな身長。
整った顔で、黒のライダースジャケットを羽織っている様は正にイケメン。
でも、少しチャラそうだな、と思ってしまった。
『え、大丈夫?本当にごめんね・・・』
「あ、いえいえ!大丈夫ですよ!」
『よかったー』
その人は笑顔を見せる。
私はそれにちょっとドキッとしてしまった。
その人は突然こんなことを言い出した。
『あのさー、ここって内田有香さんのお宅だよね?』
「はい、そうですけど」
『じゃあ、あなたが内田有香さん?」
「そうですよ」
『あなたの家にホームステイしに来ました』
え?
お母さんたち何にもそんな話はしてなかったと思うけど。
「何も聞いてないです」
『そっか…。でもここに行けと言われたもんで』
そう言って一枚の書類を出した。
文面は長ったらしい言葉が書いてあったが、
私の名前が書いてあり、どうやら本当のようだ。
『ね?』
「はい、そうですね」
『あ、ところで君の両親は?』
「仕事が忙しいみたいなのでなかなか会えないです」
私の両親は二人とも同じ会社で、私が小学五年生のとき、
二人とも昇進して忙しくなった。
だから家に居るときは大体一人だ。
一人五歳上に兄がいるが、数年前に独り暮らしを始めた。
だから殆ど一人だ。
『挨拶しようと思ったのに』
「え、してなかったんですか?」
『うん。アポ無し』
「ひどいです」
『ごめんなさい』
私はひさしぶりに笑った。
そうしたら、向こうも笑いだした。
『俺、星野昴(ほしの すばる)。呼び捨てでいいから。よろしく』
「うん、よろしくね!私も呼び捨てでいいから!」
『よろしく、有香』
二人で笑いあった。
真珠ちゃんの占い、本当に当たってしまった。
でも、気になることがあるんだ。
「なんで、ホームステイするの?」
我ながら生真面目な質問かと思ってしまった。
そんな私の心の反省を気にせず、昴は答える。
『地球の文化や勉学を学ぶんだよ』
地球の文化・・・ちきゅうのぶんか・・・ちきゅうの・・・チキュウの・・・
地球の!?
昴は地球人じゃないの!?
「昴は地球人じゃないの!?」
『違うよ』
まずい、思ったことを口に出してしまった。
それでも昴は気にず答えてくれた。
私、ちょっと幼いかな・・・。
でもさ、地球人じゃないとしたら・・・。
私はすぐ近くに居た昴からゆっくり自分の体を抱きしめながら離れた。
昴には悪いけど、地球人じゃないとしたら宇宙人じゃん!
私、まだ十数年しか生きてないから人体実験に使わないで!という意味で。
そんな私に昴は優しく声をかけてくれた。
『人体実験なんかしないから』
「え?そうなの?」
『怖がりすぎ』
そう言って昴は微笑みながら、離れていた私のところまで歩いてきて、
ギュッ、
抱きしめてくれた。
初めてそういうことをされた私は、心臓がバクバク。
顔も多分真っ赤になっているだろう。
『俺の話、聞いてくれる?』
私は黙って頷いた。
流れ星だと思ったら、宇宙人で。
イケメンな宇宙人に襲撃された私。
これからどんなことが待ち受けてるのかなー?
行動
それから、昴は私を抱きしめてくれながら、たくさん話をしてくれた。
自分たちの星は小さな小惑星で、名前も決まってないこと。
小惑星だけど、人はたくさん居るということ。
地球はとても発展した星だから、ホームステイして勉強して地球に追いつこうとしていること。
「そっか・・・。大変だね」
『うん。でも数人しか選ばれないものだから嬉しいし、』
抱きしめられた腕がギュッと力を増す。
『有香に逢えたのも嬉しいよ』
それ反則。
抱きしめられてるから、顔見られてないけど。
初対面の相手にこんなにドキドキしているなんて恥ずかしいな。
お願いだから、顔は見てもらいたくない。
そんな私の願いは叶わなく、呆気なく抱きしめてくれていた腕は解かれ、
両頬を捕まれ、強制的に上を向かされる。
赤いのバレた・・・。
『有香、顔真っ赤』
そんな言葉を言われ、更に赤くなる私。
もう湯気が出そうだな。
『そういえば、俺有香の学校にもお邪魔する予定だから』
「あ、そうなんだーって、え!?」
『えー、だめかな?』
「だめじゃないけど・・・」
私は、親友だった人と絶交状態であること、ギャルグループにいじめられていることを告げた。
本当は人に言いたくなかった。
「弱い」って清香たちに思われるのが嫌だったから。
『そいつらボコしていい?』
「だめだよ!」
『何で?そうしなきゃ有香傷つき続けることになるけど?』
「でも、だめなの」
絶対的存在は、先生でさえも動かすことができないもの。
『じゃあ、俺が守るから』
「そんなの悪いよ」
『ホームステイさせてもらうお礼。これくらいいいだろ?』
「う・・・。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね?」
『俺に任せとけ!!』
昴の言葉でこんなに元気になるのは何でだろう?
何でこんなに嬉しくなっているんだろう?
私はその意味に全く気づけなかった。
その日は、いつもベッドで寝るわたしだけど、
一人だけベッドじゃ昴に申し訳ないな、と思って、昴と私の分の布団を敷いた。
『そんな可愛いことされると襲いたくなるんだけど』
「おそっ・・・!?」
並べて布団を敷いたから、結構昴と距離が近い。
そんな昴から爆弾発言が投下され、タジタジになる私。
『嘘だよー』
「びっくりしたよ!」
『ごめんごめん。でも一応俺も男だしね?』
「・・・・・・」
『無視しないでー!!』
軽くあしらってすぐ寝てしまった。
―次の日
珍しく五時に起きた私は、昴の寝顔を見て、昨日のことは本当だったんだ、と実感した。
昴が起きちゃわないうちに、朝ごはんを作っちゃおう。
いつも一人で作って食べている私は、だんだんと料理が作れるようになった。
一時間で、スクランブルエッグと味噌汁とサラダを作り、ご飯をよそった。
それでも昴は起きる気配が無い。
部屋を見回すと、大きめのダンボールが目に入った。
あれ、こんなのあったっけ?
中を開くと、学生服や男物の服や色んなものが出てきた。
間違いなく、昴のものだ。
きっと、小惑星から昴宛に送られたものだと思う。
私はダンボールを閉じ、親が居ないことに気づいた。
また、会社に残っているのか・・・。
まったく、二人とも真面目だな。
そんなことを考えながら、支度を始めた。
六時三十分を回ったところで、昴が起きてきた。
眠そうだ。
そりゃあ、午前二時まで語り合ったもの。
「おはよう」
『あ、おはよう』
本当に眠そうだな。
「朝食作ったから。あとそこに何か荷物届いてたよ」
『お、ありがとうな』
なかなかまとまらない髪の毛をいじりながら、昴に教えてあげた。
黒髪で胸下まである長めの髪の毛をサイドに縛りながら。
この髪型は、仲良かったころの清香に『その髪型いいね!』と言ってもらっていたものだ。
なんだかんだいってこの髪型は好きだ。
『なんか有香今日可愛いね!』
耳元で低い声で囁かれた私は多分真っ赤だ。
もう、何で朝にこんなことするかな・・・。
そのあとは、二人で朝食を食べて、お互い支度を終えて家を出ようとしたとき思い出した。
「待って」
『何だよ?』
「別々に行かない?」
『何で?』
宇宙から来た昴にはこの意味が分からないみたいだ。
「なんていうか・・・。カップルに間違えられそうだし・・・。それに一緒に暮らしてるのがバレたら・・・」
言うのが恥ずかしくて、最後のほうが尻すぼみの言葉になってしまった。
本当に恥ずかしい・・・。
『別に俺そんなこと気にしないけど?』
「いや、私が気になるんだけど」
『気にすんなって!』
「気にするよ!」
あー、もう!
何でわからないのかな?
結局のところ最後まで私が粘り、昴が最初に行き、私が後から行く形になった。
『あ、でも俺学校の場所知らないんだけど』
「この辺の道が通学路だもんで、同じ中学の人通るし、ついていけば?」
『でも着いたあとに職員室行かなきゃならねえみたいだし』
「職員室なら入ってすぐだよ」
『了解!サンキュ』
そういって昴は出て行ってしまった。
私は少し待って、家を出た。
あっという間に教室へ着いた。
昨日のことがあって忘れてたけど、清香たちまた何か企んでるかな?
怖いな。
でも、入らなきゃせっかく来たのに出席扱いにならないから入らなきゃ。
私は勇気を振り絞って入った。
予想通り、清香と胡桃たちが居た。
でも、私なんかに目もくれず、談笑に夢中になっていた。
私は自分の席まで歩くと、通学カバンをロッカーへしまい、
読書をするフリをして清香たちの談笑に耳を傾けてみた。
と『さっき、用があって職員室行ったんだけど、チョーイケメンがいたのぉ!』
語尾にハートが付きそうな喋り方で話すのは、胡桃の取り巻き一号、鈴木真由(すずき まゆ)。
いわゆるブリッコ。
清香は下のほうで二つに縛っていたけど、鈴木真由は高い位置で二つに縛っている。
以前は清香にライバル意識を燃やしていたが、最近は楽しそうに喋っている。
まあ、私という共通の敵ができたしね。
と『見た!ヤバかったよね!』
一号の鈴木真由に同意する、二号の佐藤由紀(さとう ゆき)。
スポ根少女で、陸上部に所属し、とても明るい。
胡桃の取り巻きの中では一番性格がいい。
でも、男遊びが激しいらしい。
と『ま、私にイチコロだろうけどね』
自信家の三号、本田美里(ほんだ みさと)
ブリッコではないが、かなり自分に自信があるらしいけど、
顔があんまりよろしくない。
クラス一運動音痴。
と『へー、見てなかったよ』
と『見てみたいな』
一番薄い反応を見せた四号と五号の浅野遥(あさの はるか)と浅野恵美歌(あさの えみか)。
二人は双子で、とても似ている。
胡桃の取り巻きにしてはスカートも折らず、髪の毛は染めてない。
しかし、裏でクラスを操っていたらしいから、たまらず胡桃がお願いして二人を取り巻きにした。
頭も良いが、腹黒いらしいので要注意しなければいけない。
取り巻きたちは、クラスの皆から一号とかと呼ばれているため、本名が忘れ去られているらしい。
とりあえず、胡桃たちは昴のことを話している。
今の季節は秋だから、この時期の転入生といえば昴しかいない。
私が転入してくるわけでもないのに、何だか緊張してきた。
―朝のホームルーム。
せ『今日は転校生が来るぞ!』
皆『っしゃー!!』
皆が騒いでいるとき、胡桃の取り巻きたちが目を合わせあったり、回しメッセージを送ったりしていた。
うわ・・・。本当にうちのクラスに来たのか・・・。
まだ転入生が入ってきていないのにそんな予感が頭を支配しているため、こんなことしか考えられない。
―ガラガラ
無機質な教室のドアを開く音が聞こえて、反射的に視線をドアに集中させた。
入ってきたのは、
やっぱり、という感じの人物だった。
昴が入ってきた瞬間、男子の声が消え失せ、代わりに女子の黄色い声が大きくなった。
まあ、大体の声は胡桃たちが出しているんだけど。
『初めまして。星野昴です』
先生が黒板に昴の本名を書いているうちに自己紹介を始めた昴。
やっぱりイケメンだな。
担任の山崎先生は数学担当の中年ハゲだけど、背は小さくはないはず。
でも昴が圧倒的に大きくて、先生が小さく見える。
先生・・・。ドンマイ。
心の中で呟くと、先生の声が聞こえた。
せ『窓際の一番後ろの席に座ってくれ』
す『はい』
スタスタと歩いていく昴を見つめる女子たち。
さすがにそれはイタいぞ、君たち。
昴の席は、隣の人が居なくて列からはみ出してる、って感じの席。
今までは副担任の先生が座っていた席。
君と小惑星。[未完成]