シナントロプスペキネンシス

北京原人

俺の隣に座っている北京原人は、ふとスマホを取り出すと
「昔さー、ガラケーのことパカパカケータイとか言ってなかった?」
と笑った。
「...いや、普通にケータイだったわ」
「マジで!?じゃあスライドタイプはなんつってたん?」
「スライドケータイ」
「だよねー」
北京原人はラインを既読にしないように通知を消去してまた体毛にしまった。
「つかさ、き聞いて!」
「なに?」
「今、俺ら狩りするとき石斧じゃん?」
「まあ、ステータス1番高いし」
「でもサイとか無理じゃん?かたいじゃん?」
「確かにサイ食ったことないなー」
「んで、俺おもったの!マジ大発明だから心して聞いて!」
「おっけ、バッチコイ」
「...地面におっきな穴掘るじゃん?サイ追い詰めるじゃん?」
「そこにお落とすとか言うなよ」
「...」
「無理だから。サイなめんなよ。サイマジで最強ぞ」
「...」
「サイさんここらへんじゃ敵なしだからな?落とし穴とか作ったら群れでしばきたおされんぞ?」
「...」
「あぁん?」
「...」
「...」
「芋たべる?」
「たべる」

旧石器時代

北京原人はメンズnon-noを買うと、
「あっあとラッキーストライクのライト1つ。あっあっ、BOXで」
と店員の女の子に微笑んだ。


北京原人はコーラスウォーターを飲みながら言った。
「今日さー超絶ラッキーなことあったんだけど聞く?」
「なに?」
「なんかさ、今日電車乗ってたの。めっちゃ人がいてさ、あっ朝ね。7時頃」
「うん」
「んで、前に、座ってんの人が。んで、えーとなんだっけなー、あれ、あれあるじゃん?」
「どれ?」
「なんかさ、なんかCMの歌で、なんだっけなー」
「パミュパミュ?」
「あー!違うわー!なんだっけなー!...つかピャミュピャミュって普通に言えるのすごくない?」
「パミュパミュパミュパミュパミュパミュピャミュ」
「すげー。絶対ピャになるわ」
「すげーだろ?」
「マジ神なんだけど」
北京原人はそう言うと笑った。

壁画

映画観を出た俺と北京原人はティッシュ配りのお兄さんからティッシュを2個貰った。
「いやー、神映画だわ」
「だな」
「俺も強くなりてぇー!ルフィみたいにのびてぇー!」
「だな」
「...なんか反応うすくね?パンフ読みすぎやろ?!どんだけ熟読してんだよ」
「だな」
「はいダメー!もう俺いない!こいつの中に俺いないー!」
「だな」
「海賊王に俺はなる!」
「...」
「なんで?!そこは『だな』っていえよ!」
「だな」
「笑ってんじゃないよ!笑ってんじゃないよ!!」
「ちょっ!マジで読めないから!マジで読んでるから!」
「お前はルフィと北京原人とどっちが大切なわけ?」
「ロビン」
「ちょっ、なぜロビン」
「ロビンいーわー」
「あー、俺はビビだなー」
「ビビって誰?」
「ビビ知らないの?!あれ!クロコダイル編の!あれだよー!」
「あーあーあー!あれね!水色の!」
「それそれそれ!マジで焦ったわー」
「なんかとんでたわ」
「んー」
「お前もパンフ読んでんじゃん」
「...だな」
「...」
「...」
「だな」

まがだま

新宿南口のレンタリースでレンタカーを借りて北京原人と2人で二泊三日の旅に出ることにした。
北京原人は運転している俺に、しつこくフリスクをすすめてくる。
「お前運転中に寝るなよ?マジで寝るなよ?!」
「ねねーよ。来る前にめっちゃ寝てきたし」
「いや、人間わかんないからね?何が起こるかわかんないからね?」
「お前口ミント臭い」
「ミント臭くないだろ。むしろいい匂いじゃないの?」
「あー、俺なんかダメなんだよねー」
「いるわー、ミントダメな奴。ハミガキ粉の匂いキライなヤツ」
「ハミガキ粉は大丈夫」
「なにそれ?!新しくない?!」
「いや、ハミガキ粉ダメなら俺はなにで歯みがけばいいの?」
「...塩?」
「じいちゃんが言ってた」
「俺ばーちゃんだった」
「実際塩で歯って綺麗になんのかね?」
「ならないからうちのばーちゃん入れ歯なんだよ」
「じいちゃんもだなー。ダメじゃん。次左?」
「左」
「じゃあさ、アイスなら何好き?」
「なんで?」
「今アイスの自販機見えたから」
「...チョコミント」
「いや!まてまてまて!!なんで?おかしくね?嫌いじゃんミント!ミント臭いのお前じゃん!!」
「黙れペキン」
「お前もペキンじゃん!?ダブルペキネンシスじゃん!!」
「なんかフリスク系のミントがダメなんだよねー」
「なんか複雑な」
「お前は何好きなの?」
「なにが?」
「アイス」
「あーね、アイスね。忘れてたわ。俺はやっぱ抹茶かなー」
「なんかふつーな。あ、高速まとめて出すから後で割っといて」
「了解。多分6000ぐらい?後で割るわ。抹茶いいじゃん」
「さんきゅー」
「ん」
「次はねなま?」
「うにゅー」

貝塚

パーキングエリアでトイレに行った北京原人から『めっちゃ便座高いwww』とラインが来ていたので無視した。
「ごめんごめんでっかいのだったわ」
「ん、タバコいく?」
「いく。つかさ、さっきめっちゃウケることあったんだけど」
「なに?便座めっちゃ高いとか?」
「それもだけど。つかライン返せや!」
「なんか返したら写真送ってきそうだからシカトした」
「お前な、既読がついたら返信すんのがマナーだから」
「トイレからライン返すやつに言われたくない」
「...言うじゃん?かかってこいよ?」
「いや、かかってこないけど」
「んで、めっちゃ話逸れたけどさっきウケることあって、今のトイレって大体音姫ついてんじゃん?手をかざすとジャーっで鳴るやつ」
「あー、あるね」
「それがさ、俺が暇だからすね毛抜いてたの。めっちゃ痛いじゃん。だからね、ンッって声が出んじゃん」
「それ、この先これ以上面白くなんの?」
「なるなる。オチがある」
「...なんですね毛抜くの?」
「いや、暇じゃん」
「スマホとかいじってれば?」
「俺スマホいじると時間忘れちゃうんだよねー」
「いや、でもすね毛はおかしいわ。...風強くね?」
「な」
「すね毛抜くとき手のひらでこすって蟻つくらなかった?」
「作ったわー!あれ男ならみんなやってるっしょ」
「あれ作るとさすね毛いっきに抜けるけどめっちゃ痛いよなー」
「俺はライターで燃やす派だったわー」
「熱くない?」
「めちゃくちゃ熱かったわ。火傷したし」
「お前昔から頭悪いのなー」
「関係なくない?まあ良くはないけどね」
「...でさ、面白い話ってなんだったん?」
「なんかそれで恥ずかしいから音姫鳴らしたら案外音がデカくて俺がびびってめっちゃデカい屁が出たって話」
「あーね、それは面白いわ」
「なー」
「ヘコキングじゃん」
「ヘコキング違うわ」

シナントロプスペキネンシス

シナントロプスペキネンシス

俺(北京原人)とお前(北京原人)。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-10-14

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  1. 北京原人
  2. 旧石器時代
  3. 壁画
  4. まがだま
  5. 貝塚