Number is dead.
人間に、みんなに、数字が付いている話。
僕には数字がない。
お母さんも、お父さんも、妹もびっくりしてた。ふつう、人間の身体には数字がついてるのに、僕にはついてないんだ。
でも、お母さんは言ってた。「数字がなくても、あなたは立派な人間なの。あなたはお母さんの宝物よ。」
毎日のようにそう言われ続けて育ってきた僕だけど、もちろんいじめられた。だから小学校では「かずなし」って呼ばれてた。算数も嫌いだった。
僕は自分が嫌いだった。みんな、みんな自分の数字をもってる。でも自分にはない。それだけで、この世界の邪魔者なんだって、僕は思ってた。
数字といっても、みんな違うわけじゃない。0から100までしかなくて、血液型みたいな、そんな感じのものなんだ。
仲の良い奴らはみんな数字が似ていた。むしろ似てるから、仲良くなれる。似た数字だから、仲間意識というか、なんかそういう言葉にし辛い何かで、皆は馴れ合っていた。
僕は勉強できないから、施設に飛ばされた。数字欠落障害者自立支援施設、いわゆる「かずなし」のあつまり。
僕はそこで、運命的な出会いをしたんだ。
施設にいた人達は、どうやら働いてる人もみんな「かずなし」らしい。みんな元は施設に入っていた人たちで、社会になかなか馴染めず、ここに戻ってくるらしい。
そこにいたのが、小さい頃仲良くしてくれたいとこのお姉ちゃんだったんだ。僕はびっくりしたよ。お姉ちゃんは僕が小さい頃から明るくて、綺麗で、優しかったから。
僕は中学にもいかず、いじめられた反動で弄れて、根暗な子になっていたんだ。
でもお姉ちゃんは違ったんだ。彼女もきっと、いじめられていたのだろう。でも、それを決しておもてには出さなかったんだ。
おばさんもおじさんも心配するから、ってお姉ちゃんは言ってたけど、僕は親にあたってばかりだったよ。
そんなこんなで、僕はこれから、この施設で、「かずなし」のみんなと生活することになるんだ。
「かずなし」
この施設にはいって、はじめて友達ができた。
ミカドと名乗る小さな男の子は、とにかく笑った顔が可愛くて、自分の妹にどことなく似ている気がした。
ミカドは「かずなし」のことについて、いろいろな事を教えてくれた。
僕らには、「ロストナンバー」だとかいう名前が付いているということ。
しかもそれは、僕の生まれる3年前に起こった事件のせいだということ。
「かずなし」のなかには「デッドナンバー」とかいう、重症な人もいるということ。
そして、僕ら「かずなし」には普通の人とは違う「ある能力」があるということ。
「おかしい話でしょう。いじめられてた人間たちは、3年前の事件でできてしまったミュータント。自分に能力があるだとか、漫画の世界じゃないんだから、馬鹿げた話だ」とミカドに言うと、彼はションボリした顔で何処かへ行ってしまった。
Number is dead.