探偵事務所
その1
とある探偵事務所。その中で暇そうに外を眺めていた女性がいた
「依頼…来ないねぇ。」
事務所の中には閑古鳥が鳴き、暖かな日が差し込んでいた。
女性が静かにつぶやくと、近くで雑務をしていたもう一方の女性が
視線をパソコンから離さないままため息まじりに答える。
「誰があなたみたいな馬鹿に仕事を頼む人がいるんですかね。」
「ぐっ…馬鹿はないだろ、本気だしたらすごいんだぞ。僕は。」
机に体をふせ、頬を膨らませながら足をばたつかせてぶつくさと文句を言う。しばらくの沈黙の後、だるそうに聞き流していた女性が自分から口を開き
うつぶせになっている女性に一言。
「いい加減に仕事してください冷菓さん。殴りますよ。」
冷菓と呼ばれた女性は指差された方向にある自分のパソコンを一瞬だけ見、
…体を勢いよく起き上げ、目を大きく見開き、そして叫ぶ。
「働きたくないでござる!!!!」
『ざ』を言いおわる瞬間、数秒のうちに冷菓の背後へ移動し…
そのまま一蹴。 冷菓は吹っ飛ばされ、その先にあったソファーに不時着。
「殴るっていってなかったっけ…」 「だまれ」
「ほら、さっさとこっち来る!はやく!」
そう伊吹に言い放たれ理不尽だとは思いながらも
まぁ、自分が原因だしな、とのそのそと移動してくる。
「伊吹ちゃん…少しは手加減ってことをさぁ…」
「そんな言葉、私の辞書にありませんし、載せるつもりもありません。」
なんて自分勝手な辞書だよ。と言おうとしたが止めた また殴られたら災難だし。
「じゃあ、一仕事しますかね。」
冷菓がパソコンに表示されてる1つのファイルをクリックした直後、
…いっせいに何十枚もある資料が飛び出してきた。
「うっわぁ…溜め込みましたね..」「い、いーじゃん どうせやるんだし」
軽く伸びをし、小さく息を吐く。 作業開始だ。
カタカタと目線を一点に集中させながらキーボードを叩く。この場合、ガタガタと言った方が正しいのだろうか
人は誰もが集中力を持ち、それを使って生活している。
では、それを『最大限』に使用できたら?
その答えを具現化したのがあの人だと伊吹は考えていた。
さあ、こっちも頑張らなきゃ。伊吹もまた、資料に目を向けた。
… 何時間経っただろうか。外はオレンジ色に染まり、きれいな夕日が顔を
のぞかせていた。
一足先に仕事が終わり、まだ隣でカタカタとパソコンを打つ音がする冷菓の方を見ると、額や頬いうっすらと汗を浮かべているのが見えた。
人より集中力がすぐれている、とは言ってもそれが長いこと続くということではない。休憩が必要なのは誰だって同じだ。
探偵事務所
つづきますよー