対面
.ある店に旅人が一人やってきた。瞳は美しい金色でこげ茶色の髪を後で1つに結び上げている。変わった紋章が付いた汚れたマントをバサリと羽織り、首には若干長めの薄桜色の布が巻いてある。彼女が肩から提げているボロボロのバックにはロロと言う名前が茶色の糸で刺繍されている。店主はロロに言った。「お!来たねお客さん。いわれた通りの人材を探しておいたよ」得意げな親父の笑顔にロロも笑顔で答える。「本当か!?ありがたぃ!で、何処にいる?」ロロは狭くて汚い店内を見渡すが店主以外人影はない。店主がスッと1冊の本を差し出す。召喚術の薄汚れた青い本だった。「、、、ぉい。」受け取りつつも睨むロロ。鋭い視線を横に流して店主が答える。「桜ヶ池に行くんだろ?だったらそれなりの相棒がいいだろ?」楽しそうな店主。「どうせあんたは本物の召喚魔が見たかっただけだろ?」溜息をつきながらパラパラと本に目を通すロロ。異様な陣が目の前をドンドン通り過ぎて行く。刹那、トンっと店主の指が陣の流れを止めた。「智勇兼備な人材だ。ご希望通り、だろ?」店主はロロの両肩に手を当てて意見を後から推す。「わ?????かったょ」肩の手を振りほどいてロロはそのページをテーブルの上にバンっと広げた。そしてナイフを自分の親指にグッとあてて数滴の鮮血をそれに垂らす。その瞬間冷たくて煙った空気が本から勢いよく溢れ出し、汚い店を更に汚くなくした。煙が徐々に晴れると狭い部屋の中央に大きな青い陣が描かれているのが分かった。中央では漆黒の獣が周辺に散らばる大破したテーブルの破片をシゲシゲと見ている。そして部屋の瓦礫から這い出てきたロロに獣は近づき、そっと右手でロロの頭にお手をした。「約定成立だ」店主は嬉しそうに告げた。 彼らの長い付き合いはここから始まった。
対面