La Vie en rose

森生ゆり子

La Vie en rose

2113年科学の進歩は目覚ましく、ついにタイムカプセルが発明された。

2113年科学の進歩は目覚ましく、ついにタイムカプセルが発明された。

「これはEarthBank社製の最新のタイムカプセルです。今からメッセージデータを作成します。必要なデータを入力してください」

message is recorded by an earth bank time capsule.
date:2113.07.25
Time:16:15
Latitude: 35.648692,139.790061
Placedata:toyosu island
Ipaddress:255.255.32.10
To: The ancestor of an dahlia higashijujo (yuriko morio)
Destination: 100 years ago

こんにちは、森生ゆり子さん。

私のひいひいおばあちゃん。私は東十条ダリアといいます。

私は今、最新のタイムカプセルに、このメッセージを記録しています。全国小学生作文コンテストで一位だったの。その副賞で頂いたものです。このタイムカプセルは、100年後の未来にも、100年前の過去にもメッセージが送れます。誰に送ろうかしらと考えたけど、ゆり子おばあちゃん以外送りたい人はいませんでした。

未来にはどんな人がいるかわからないし、今、私のひいおばあちゃん、梨花おばあちゃんは生きているし、100年前といったらおばあちゃんしか思い浮かびませんでした。

私が作文上手なのは、小説家だったゆり子おばあちゃんのお陰だといつもみんなが言います。なので、一度お話してみたいなあと思っていたの。でも、亡くなった人を蘇らせる技術なんて勿論今の時代にもある筈がなく、なので、こうして、せめて、ゆり子おばあちゃんにメッセージを送っているという訳です。

このタイムカプセルは返事が出来ない事になっていて、そして受け取った人が読んだら自動的に消滅する仕組みになっているそうです。なので、これを受け取ったおばあちゃんがどんなにびっくりしたか、私は確認することが出来ません。でもきっと、すごーく喜んでくれると思います。おばあちゃんは、そういう不思議な事が大好きだったと聞きました。私も不思議、大好きです。

梨花おばあちゃんが、「ダリアはゆり子おばあちゃんにそっくりだ」といつも言っています。梨花おばあちゃんは今108歳。今はみんな長生きするようになって、100歳超えている人はそんなに珍しくないの。特に女の人が長生きするみたいです。男は弱いのよと、ゆり子おばあちゃんがいつも言っています。DNAがそうなっているみたいなんですって。

このタイムカプセルは、自分と同じDNAを持つ人にしか送られないようになっています。未来に送ると、自分の未来の子供とか、孫とか、そういう人に送られるそうです。でも私、自分の未来なんて、想像もつきません。もしかして、結婚しないかもしれないし、子供を生まないかもしれないし、そもそも「恋」ってダサいとお友達と話しているの。だから子孫はいないかもしれません。でも別にそれでもいいと思っています。

未来に送って自分の子孫がいない場合、その場合は送ったところで「NOT FOUND」でそのまま消滅します。ね、未来に送るなんて、タイムカプセルの無駄使いでしょう?だからおばあちゃんに送るのが一番いいと思いました。小説にしてくれるかもしれないし、タイムカプセルを送った途端、豊洲島図書館に、ゆり子おばあちゃんの新しい小説が現れたりしてね。

私は今、豊洲島小学校二年生です。クラスは1学年に10クラスあります。梨花おばあちゃんの小学生の時は、5クラスだったそうです。「子どもだらけの街のマンモス校だと思っていたけれど、あなたの学校と比べたら小さな学校だったわ」なんて言います。梨花おばあちゃんは今も豊洲に住んでいます。

ゆり子おばあちゃんの住んでいた豊洲地区は、一度海に沈んだの。温暖化は過去の科学者の想像以上にすごい早さで北極の氷を溶かしてしまいました。でも大丈夫、30年前に新しく島が出来たから。埋立地で新しい街を作るのは、徳川家康さんの時代から、東京の人は得意なようです。

徳川家康さん、歴史で習ったけれど、西暦1600年の関ヶ原の戦いで勝利して天下人となってから、江戸の町は埋立地で大きくなっていったのでしょう?今から500年も昔に、そんなことが出来たなんてびっくりだけれど、そのお陰で私たちの住む豊洲島が出来、豊洲の人たちは全員そこに一度引っ越し、そして豊洲の土地を高くしてまた元の豊洲に戻りました。

あの時は、日本中の引っ越し屋さんが集まったかと思うくらいの大賑わいでした。

30年前のことだから、ゆり子おばあちゃんはもういなかったから知らなかったでしょう。新しい島は豊洲六丁目と一部繋がっているから、以前は「豊洲七丁目」という住所でしたが、今はもう「東京都江東区豊洲島」です。海抜は25m。

30年前豊洲の人たちがいったん移住する前に何があったと思う?またオリンピックが東京に来たの。開会式はここに出来たオリンピックドームで開催されました。その時から豊洲島は、toyosu islandと呼ばれ、世界中から注目される島になりました。

この島は放射能除去装置完備で、しかも100%クリーンエネルギーです。オリンピック招致の目玉にもなりました。この島が世界で初めて放射能除去装置を採用した場所なのよ。日本の科学はすごいでしょう。勿論ノーベル賞をとりました。

今は世界中のあちらこちらにこの装置が建設され、その周りに人が集まって暮らしています。特に小さい子どもを持つ家族は優先されることになっています。なのでこの装置というか、塔になったこの建物、このタワーの周りには結婚して子供を生んだばかりの家族ばかりが集まってきて、小さい子どもを持つお母さんでいっぱいなの。なので、「MOTHER TOWER」とも言います。

これは、何で動いているかというと、昔の原子力発電所が事故を起こしたり、廃炉となった後の廃棄物となった核燃料で動いています。すごいでしょう?かつては処分に困った核燃料が、放射能除去の燃料になり、なくてはならないものとなりました。

今の科学者の最新の計算では、この燃料達がなくなった時が、世界中から放射能が消える時だそう。予想では更に100年後と言われています。まだまだ時間がかかるみたいです。私、生きているかしら?その時は私は108歳、梨花おばあちゃんと同じ年。うーん、想像もつきません。年をとらない技術が早く出来ないかな。私は長生きしたいです。

この島を動かしている新しいエネルギーは、Earth BANKという会社が100年前に提唱し開発した技術で作られています。このタイムカプセルを作ったのと同じ会社です。色々な事をしているみたい。私も将来はここで働きたいと思います。だって、色々な事をしているということは、色々な事が出来るということでしょう?楽しそうだもの。

この会社の作った、少しのバイオガスや産廃物から出るエネルギーで稼働する「エナジーサーバー」と呼ばれる燃料電池でエネルギーが生み出されます。もう原子力発電所なんてひとつもありません。人が作ったものが永遠なんて、100年前の人たちが本気で信じていたとは思えないんだけれど・・・昔は色々大変だったみたいね。

豊洲も昔は「ホットスポットの街」なんて言われていたんでしょう?勿論今も日本に、ううん、世界中にも放射能の溜まり場、ホットスポットはたくさんあるんだけれど、そういうところには人は住まないから大丈夫です。

この、「MOTHER TOWER」は略して「MOTHER」と呼ばれていて、「MOTHER」といえば、このタワー.の事なの。「今日のMOTHERはピンク」だとか、「ブルーだ」とか。オリンピックの時は勿論五色に輝いていたそうです。みんなタワーの近くに集まってきます。

みんなお母さんが大好きでしょう?みんな「MOTHER」が大好きなの。お母さんの近くにいれば、安全で幸せで、ほっと出来るのと同じよね。

私はまだ生まれていなかったけれど、豊洲と豊洲島の歴史は学校で習いました。豊洲島の小学校は週に一回「豊洲」という科目があるの。豊洲の歴史とか、豊洲の法律とか、豊洲の土地のこととか、豊洲島を作っている、動かしているエネルギーについてとか、そういう事について習うの。

今は「豊洲」が世界の見本みたいになっています。豊洲島を真似して新しい島が世界中に出来ています。「toyosu」を知らない人は世界にそんなに多くありません。そんな島に、私は今住んでいるのです。

話を「MOTHER」、放射能除去装置のついたタワーの話に戻します。話があちらこちらに飛ぶのも、ゆり子おばあちゃん譲りでしょうか。えっと、このタワーの中は施設や部屋がいくつもあって、こうした新しい家庭のお母さんというか、小さな子どものための施設もたくさん入っています。

梨花おばあちゃんが通っていたという幼稚園も入っていて、私も通いました。お陰で今、スポーツが大好きで、得意なの。梨花おばあちゃんは今は車椅子なんだけれど、年齢にしては身体能力が高いってお医者様に言われたそうで、いつも自慢しています。私は梨花おばあちゃんが大好き。お話も面白いし、いつも優しいし、溌剌としていて、いつも私に元気をくれるの。若い時は花が咲いたように美人だったそうよ。今も綺麗だけれどね。

そんな「MOTHER 」のある豊洲島、住んでいるお母さん達は、「island lise」略して「アイランディーゼ」と呼ばれています。ゆり子おばあちゃんは、「キャナリーゼ」だったのでしょう?梨花おばあちゃんもキャナリーゼよ。私のママはアイランディーゼ、私がまだ8歳だから、豊洲島に住んでいるからなの。子供が13歳になったら豊洲島から引っ越さないといけないから、私が13歳になったらキャナリーゼになるそうです。

あ、でも弟が今4歳だから、弟が13歳になったらかな。弟はサスケといいます。サスケというより、猿みたい。梨花おばあちゃんの弟さんにそっくりだそうです。

梨花おばあちゃんの弟さん、ゆり子おばあちゃんの息子さんは、豊洲の総合病院に入院していますが、今も元気です。時々、梨花おばあちゃんとお見舞いに行ったりしますが、あまり来なくていいなんていつも言っています。

みんな放射能のないクリーンな島に住み続けたいから、子供をたくさん産むの。子どもが小さなうちはこの島に住み続けられるからです。なので、少しだけれど、少子化解消に貢献しているようです。

今、私が住んでいる豊洲島、なんでも揃っていて、特に子どもに必要なものは全部あります。病院も学校も塾もえーとそれから、遊ぶところも買い物も、レストランも子ども用のメニューやスペースがあって。ゆり子おばあちゃんの住んでいた時代の豊洲もそんな感じでしたか?

でももっと揃った感じと思ってくれていいと思います。私が子どもを産む時代になれば、もっともっとそうなる筈で、私はそういう街に住んで、豊洲に住むママに子育てを手伝って貰うのでしょう。

そして、もし、女の子が生まれたら花の名前にします。ゆり子おばあちゃんの遺言なのでしょう?

「女性は花のように綺麗に凛と咲かなくてはいけない」って、ゆり子おばあちゃんはいつも梨花おばあちゃんに言っていたのでしょう?

ゆり子おばあちゃん、梨花おばあちゃん、梨花おばあちゃんの子どもで私のおばあちゃんは撫子、私のママは桜子、そして私はダリア、急に私から派手な花の名前になってしまいました。ママは派手な名前が良かったそうで、私に夢を託したそうです。私はどうしようかな。

温暖化でなくなってしまった花の名前にしようかな。今の技術の遺伝子操作で蘇らせることは可能なのですが、法律で禁止されています。消えゆくものはそのままで、地球の力を操作しないということらしいです。それはそうだと私も思います。

絶滅した動物とか、例えばマンモスとかを蘇らせても、マンモスに迷惑だものね。動物や植物の運命を操作すること、それは私たち人間も操作すること、神様に背く事になると授業で習いました。地球はひとつ、全部繋がっているのですって。

それからあと、ゆり子おばあちゃんに是非お知らせしたかったのは、この島には「ママ友公正委員」というのがあって、ママ友達のトラブルに目を光らせています。なにかもめ事があったらこの委員会が調停することになっていて、精度99.999%の嘘発見機にかけられます。

ママハラをした人は、この島の外に出されることになります。小さな子供を放射能のある地域で育てたくないので、小さな子どもを持つお母さん達はもめ事を起こさず、健やかなママ友コミュニティが保たれています。おばあちゃんはこうしたコミュニティで、とても苦労したんでしょう?梨花おばあちゃんから聞いています。

おばあちゃんの書いた、豊洲のママ友コミュニティの話しを書いた小説「キャナリーゼの憂鬱」という本は、今、学校の指定図書になっています。特に女の子は必ず読まないといけません。ママ友の大切さ、難しさ、嬉しさ、悲しさ、全部詰まっているそうです。私はまだ原書を読んでいませんが、学校図書課に簡易版があったので読みました。

どうしてママハラがいけないのか、どうして起こってしまうのか、ママハラに遭遇したらどうしたらいいのか。これって学校のいじめ問題や会社のパワハラやモラハラも同じことで、男性も勿論読んでいます。今はあまり「イジメ」ってないの。

もうそんな小さな世界で争わないといけない時代は終わったのかもしれません。地球規模で、地域で、人や企業を育ててゆかないといけないという考え方が、普通になってきたからかもしれません。最近「デファクトスタンダード」という言葉を習いました。これもそうだと思います。

そうじゃない会社や団体は廃れていきました。ゆり子おばあちゃんが好きじゃなかった、小さなおもちゃがつくLicky set。もう今はありません。代わりにハンバーガーを完食すると、目の前で楽しい3Dのキャラクターが環境問題について話すシステムになって、それ見たさにハンバーガーを食べるという子どもが多いの。物ではなく、情報が付く、ということです。

昔はおもちゃが欲しくてハンバーガーを買い、肝心の食べ物は残されて捨てられたりなんて事もあったみたいだけれど、今はそういうのがなくなりました。だって全部残さず食べないと3Dストーリーは観られないの。とっても面白いのよ。

それが見たいから頑張って全部食べるので、ゴミも減り、食育にもなっています。かつてすぐゴミになるようなおもちゃを大量に世に出し、ゆり子おばあちゃんに文句を言われていたこの企業は、環境問題について取り組むクリーンな企業になりました。

そんな会社だけが、今の世の中に残っているのです。そんな企業内で、いじめや残業代未払いの訴訟なんて、ある筈がありません。

そうそう、大切なお話を忘れていました。

ゆりこおばあちゃんの好きだった100年前のカリスマシンガー、羅瑠駆の灰堂さん、今はお孫さんのお孫さんが「Hydie」という名前で歌手になっています。私も大ファンです。勿論世界のトップアーティストです。

おばあちゃんのオリンピックの頃は、灰堂さんが開会式に歌を歌ったでしょう?図書館の3DVDで観ました。3DVDというのは、本物が目の前に現れるような映像なのです。

灰堂さんて、Hydieさんにそっくり。カッコよくてびっくりしました。そうそう、Hydieさんも豊洲島に住んでいます。時々私たち家族がよく行くCAFÉ;ISLANDでお見かけしたりします。

あ、ママが呼んでる。そうだった、今日はチアの日だったわ。

私はチアリーディングを習っています。梨花おばあちゃんも習っていたそうだから、ゆり子おばあちゃんも知っているでしょう?でも昔と今のチアリーディングはちょっと違うの。ほら、持って振るぽんぽん、あれ、今は電子ぽんぽんになっていて、空中に浮くし、色も変えられるのよ。

レインボーカラーにだってなるし。ちょっと前の大会では私たち、そのぽんぽんを蝶の大群に変えて大会の会場に飛ばしました。その中をチアのトップの人たちは飛んで演技したのよ。会場を蝶の大群が乱舞して、すごく綺麗だったの。

勿論普通に床運動とか、ダンス、タンブリングが得点の一番の対象になるから、あくまでもアイデアというか、私たちチームの見栄えの問題なんだけれど、このアイデアもあり、私たち、アジア大会で優勝したの。顧問のマミー先生の喜びようったら。私たちも勿論大喜びでした。

蝶を飛ばすアイデアは私が考えたの。だって、ゆり子おばあちゃん、蝶が好きだったでしょう?Hydieさんも、その先祖の灰堂さんも蝶が好きでトレードマークにしていましたよね。豊洲島も平和のシンボルといえば蝶なの。蝶は幸せの象徴なのです。

豊洲島のチアクラブはたくさんあるけれど、ぽんぽんを蝶にして飛ばすというアイデアは誰も思いつかなかったみたい。これから流行るかもしれないです。新しい事を考えるのが私も大好きです。

続きはまた今度。まだデータを残すメモリは余裕があるから、たくさんこの世界の事を、このタイムカプセルに記録します。待ってて下さいね。

あ、いけない。ママが本当に怒りだしたわ。ママは普段は優しいのだけれど、怒ると本当に怖いの。ママ、今すぐ行くから、カウントなんかしないで。「今、ママはキレる10秒前です。10,9,8… 」ゆり子おばあちゃんもそうやってよく梨花おばあちゃんを怒っていたでしょう?うちのママもそうなの。そして私も多分、子どもが出来たら同じように怒ると思います。遺伝?DNA?血というのか、そういうのって伝わってゆくのね。

私にそっくりだという、ゆり子おばあちゃん。会ってみたかったな。

ママがまた呼んでいるわ。

わー!ごめんなさい。今すぐ行きますママ。怒らないで、キレないでよ!

そうだ、今日のチアは上のクラスへの進級テストがあるんだった。上のクラスになると、空中に飛べるチアシューズが履けるの。すごく難しいテストなのよ。でも、いっぱい練習したから大丈夫。ゆりこおばあちゃん、行って来ます。私が合格するように、祈っていて下さい。

とにかく今は平和で、ママ友トラブルのないクリーンな世界です。空気も水も食べるものも放射能の影響は全くありません。そんな安全で平和な場所で、あなたの子孫は幸せに楽しく暮らしています。薔薇色の世界、La Vie en roseに住んでいるのです。今日はここまでです。では、本当に行ってきますね。

わーっ!わーっ!ごめんなさい、ごめんなさい。本当に今すぐ行くから。ママ、怒らないでってば。

message is recorded by an earth bank time capsule.
date:2113.10.25
Time:19:12
Latitude: 35.648692,139.790061
Placedata:toyosu island
Ipaddress:255.255.32.11
To: The ancestor of an dahlia higashijujo (yuriko morio)
Destination: 100 years ago

こんにちは、ゆり子おばあちゃん。あなたの孫の孫、東十条ダリアです。

今日はこの前の続きでメッセージを作成しています。前に書いた記録、メッセージ、書き直さないといけなくなりました。この数カ月で私の住む世界は変わってしまいました。

ママ友トラブル、ママハラのない、その他のいじめやハラスメントのない、安全で平和で治安のよい薔薇色の世界だった豊洲島ですが、今はもう薔薇色ではありません。もう以前の豊洲島ではないのです。

世界中から注目され、羨望の的だったtoyosu island。日本の首相と、東京の都知事、それから江東区の偉い人がいっぺんに変わったのです。

このトップの人達は、全員繋がりがある人たちみたいで、一斉に同じ事を言い出しました。

豊洲島の人気に目をつけ、ここをお金持ちの街にしようとしています。今まで13歳以下の子どもを育てる家族優先だった制度をなくしました。勿論、「ママ友公安委員会」もなくなってしまいました。

なので今は昔ながらのママ友達付き合いが復活しています。ゆり子おばあちゃんの書いた小説に出てくるような、地域のコミュニティのハブとなる人たち、ボスママさんがすごく威張っているの。何もかもを決めちゃっています。

ボスママさんは、江東区の偉い人と繋がっているみたいです。ママは「票が欲しいからだ」と言っていますが、私もそう思います。

そして、そういうのに耐えきれなくなった人たちが、放射能より命が大切だと、豊洲島の外に引っ越してしまったりしています。いじめられて死にたくなる前に、離れたいそうです。うちのママもそういうのが嫌で、島.の外に出たいと言い出しました。

でも、ママが決心する前に、出る事になりそうなんです。13歳の子どもを育てる家族優先という制度をなくしたので、お金持ち達がすごく高い値段でこの島のタワーマンションを買うようになったの。国の財源不足を補うために、国は豊洲島のマンションを売りにだしたのです。

今まではこの島のマンションは、法律で守られていたのですが、それがなくなっちゃったから、もう普通の家の人たちは住めません。なので高くなった家賃を払えなくなったり、買えない人達は出ないといけません。

勿論もともと持っている人達はマンションが高く売れればもっと違うところのマンションを買えばいい訳なんですが、マンションを売ったり買ったりする時の税金もすごく高くなってしまって、もう「MOTHER」の近くには住めないと思います。

「MOTHER」というのは前にお話しした、放射能除去装置を装備した塔です。豊洲島だけではなく、日本中の「MOTHER」の近くのマンションは、お金持ち達に買い占められようとしています。

そして、お金持ちや、そうした人たちに選ばれた人たちだけが住めるのです。選ばれた人たちの中には、ボスママさんも入ります。だって、そいういう人たちを大切にすれば、豊洲島に住む大勢のお母さん達、ママ友ネットワークの意思を決めることが出来もの。

個人の意思は、グループの総意に飲み込まれるって、ゆり子おばあちゃんの提唱していた通りよ。そうすれば、選挙の時に票が集まりやすくて有利だものね。今度の首相や都知事や区の偉い人たちは、そういう事をよく知っていて利用しようとしています。

こんなひどい話ってないと思います。うちのママみたいな、個人主義の人は、一番に出されてしまいます。だって、仲良くするメリットがなにもないもの。ゆり子おばあちゃんもそうだったでしょう。

今、おばあちゃんとお話がしたいです。色々な問題の中で、死にそうになりながらも生き抜いたおばあちゃん。今、ここにいたら、きっと一緒に考えてくれる、そして、いいアイデアを私に教えてくれると思います。おばあちゃん、ゆり子おばあちゃん。私を、そして私たち家族を助けて下さい。お願いします。

そうだわ、過去じゃなくて、未来の私と繋がりを持つ人に聞いたらどうかしら。きっと未来には何かいいものや解決策がある筈だわ。でなければ、私たちのDNAを繋ぐ生命体は消えてしまっている筈だもの。だって放射能除去装置「MOTHER」から離れた場所なんて、生きて生命を繋ぐ事なんて出来ない筈です。

今の政府は「放射能は完全にコントロールされている。「MOTHER」を離れても、半径200kmまで安全」なんて発表したけれど、そんなのウソだってみんな知ってる。100年前は大丈夫だったかもしれないけれど、それから色々な災害があり、色々な場所の原子力発電所で事故があったの。

今は放射能の数値は昔の10倍以上になっています。放射能の吹き溜まり、ホットスポットは「MOTHER」からちょっと離れたすぐそばにもたくさんあるし、今は誰も住んでいないわ。でもそう発表されるってことは、科学者も技術者も、みんなコントロールされているってことよね。だって、ボスの意思は組織の総意になるのでしょう?コントロールされてしまうものだもの。

未来に私のDNAを繋ぐ生命体が存在しているなら、私を助けてくれるはず。だって、私が安全なところに存在し続けなければ、その人たちだって存在しない筈だもの。間に合うかしら、でもやってみるわ。ゆり子おばあちゃん、見守っていて下さい。

message is recorded by an earth bank time capsule.
date:2113.10.31
Time:20:32
Latitude: 35.648692,139.790061
Placedata:toyosu island
Ipaddress:255.255.47.5
To: The ancestor of an dahlia higashijujo (a name -- unknown)
Destination: 100 years after

こんにちは、私は東十条ダリアです。このメッセージが届けられた方の、100年前の先祖です。今、私たち家族は大変な問題に直面しています。もし、今から話す事について、今あなたが住んでいる時代、場所で、解決策や道具や技術があるなら、それを私に教えてくれませんか。

今、私たちの時代にはこうしてタイムカプセルがあり、タイムトラベルによりあなたにメッセージを送っています。なので100年後なら、人や物も時間旅行させる機械があるのではないですか。

私たち家族、あなたの先祖は、間もなく放射能で汚れた世界に放り出されることになりそうです。どうしたら放射能のない世界に住み続ける事ができますか?どうしたらいいのですか?お願い、教えて下さい。助けて下さい。

未来に私のDNAを繋ぐ生命体が存在していますように。お願いです。花の名前を持つ私の子どもたち、孫たち、その続きの人たち。あなたの先祖を助けて下さい。

あなた達は存在していますか?豊洲島は今もありますか?100年後の世界は、薔薇色ですか?今、私の住んでいる薔薇色の世界は、消えてなくなりそうです。どうか、どうか、助けて下さい。

神様、私の命が続くように助けて下さい。どうか、どうか・・・バラ色の世界、La Vie en roseが再び訪れますように・・・どうか・・・

The message was transmitted.

(完)

La Vie en rose

現在、小学二年生になった娘は、夫や親族などの5pocketsといわれるモンスター達からのプレゼント攻撃で、物で溺れそうになっています。私は「モノ」ではなく、「モノガタリ」をプレゼントしようとこの小説を書きました。でも、結局なんだか恥ずかしくなり、2013年クリスマスは、小さな絵本をプレゼントしてお茶を濁してしまいました。今読み返すと、なかなかに読みにくい、洗練とは程遠いお話になっていて、尚且つこれらを読破するようになるにはもうちょっと大きくならないと無理かしら、などと感じています。もう少し物語をすっきりさせて、いつか装丁してプレゼントしたいなと思っています。

La Vie en rose

「日経星新一賞」応募用に書いたものです。一般部門とジュニア部門に分かれていて、ジュニア部門は「100年後の世界」をテーマに募集がかけられました。100年後って、とても微妙だなと思いました。すごく遠い未来でもなく、かといってすぐ近い未来でもない、私は勿論生きてはいないでしょうが、もしかしたら子ども達は生きているかもしれない。そんな事を思ううちに、「元キャナリーゼゆり子の豊洲にいた時日記」が誕生しました。そして、主人公東十条ダリアちゃんは小学二年生、小学二年生が書くような文章を心がけました。なので難しい言葉は出てきません。それはそのまま私の語彙力でもありますが、言い訳として書いておきます。ジュニア部門へのエントリーで丁度よい感じだと自負しています。

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