あの光

あの頃に戻りたい、
戻りたい時代はいつですか?

輝いていた

輝いていた

なにも考えずにただ純粋に遊んだ幼い頃。
毎日が新しい発見だった。
家に帰ると母がいた。

変わったのは世界か、自分か。

プロローグ

「えぇ、あぁ…非定型うつ病…そうですか。」
私が診断された病気。
ここ最近、なにもかもやる気がない。
だるい。めんどくさい。
大学の授業もサボり気味で、
やろうと決めたことも実行できない。
過眠症、過食。気分の浮き沈みが激しい。

そんな症状が非定型うつ病だ。
他人からみたら、こんなの単なる甘えだ。
それに、自分が病気になったという実感が
湧かない。しかも精神の病気。精神病。

「ただいまー。」
「おかえり、今日は授業早く終わったの?」
「うん、まぁね。」
嘘、授業なんか行かないで病院ですよ。

私は部屋に着くなり着替えて横になる。
まだ昼の2時。網戸越しの空がとても綺麗。

「あー…幸せ…」

横になる時間が最高に幸せだ。
ここ1週間、親には授業といいつつ
家でニートみたいな生活。
母は今日たまたま休みだが、普段は仕事。

「いつからこうなったんだろう…」

高校生までは、無遅刻無欠席の皆勤賞。
成績はあまり良くなかった私にとって、
唯一自慢できることだ。

「戻りたいな…」

毎日楽しかった高校生時代、
初めて制服を着た中学生時代、
勉強熱心だった小学生時代、
なにも考えずに遊んだ幼少時代…

そう考えているうちに、私は非定型うつ病に
なってしまった。

「幼稚園時代に戻りたい…」

幼い頃の

今日も大学をサボり、家でDVDを見ていた。
すると急な眠気に襲われた。
まぁ、いつものことだ。
(少し寝よう…)
ケータイのアラームを30分後に設定して、
私は寝た。


………………………………。

幼い頃の遠い記憶、
まだこの家に引っ越す前のボロアパート。
狭いリビングのソファで寝る私。
床に座って手芸をする母…

夢か…
なんていい夢だろう。
このまま覚めなきゃいいのに…

ジブリキャラの懐かしい掛け時計が
2時を指していた。

「母さん、おはよう…なにしてるの?」
「おはよう、もう2時だけど。これ、カナの手提げバッグよ。」
「そう。来週から幼稚園に通うのよ。」
「母さんも幼稚園一緒に行く?」
「母さんは幼稚園の前までしか行かないよ。」
「えーやだ!」

(あぁ…アラーム鳴らないで…)

私は幼い頃の私と母のやりとりを
しばらく眺めていた。

掛け時計は3時を指していた。


(あれ?さっき見たとき2時だったんだけどな…)

すると母がこちらに向かってきた。

(うわ!バレる!)

慌ててタンスの影に隠れようとしたが遅かった。

が、母は私のことが見えてないかのように
その場を去って行った。

(あ、あれ?とりあえずバレなくてよかった…)

と安心したと思ったら、目の前に幼い頃の私。

「ぎゃーーーーーーー!」

叫んでしまった。自分に向かって。

今度こそバレた。

「ねぇまま、カナもお洗濯一緒に干す!」
「カナありがとう。」

あの光

あの光

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青年向け
更新日
登録日
2013-10-08

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