私の名はミュー

         私の名はミュー         zefaro

ミューは人工授精、いわゆる試験官Baby、両親の良い所を遺伝子操作で受け継いでいる。
ミューの髪は栗毛で目は大きく吸い込まれそうな青い瞳をして鼻筋がスゥーと通っていて顎はスッキリとしている。
この星では、地球で言う所の美男、美女の星だ、もっとも本人達は少しもそんな事は考えてもいない。
人が歩く道路は40メートルのムーブメント道路で速さの違う細い糸の様な物が道路を埋め尽くし中央に行くほど速くなっている。
人々は器用に中央に向かって歩き目的地で端に行き降りる。
積み木を重ねた様なビルの谷間をエアカーが決められた区画路線を、ひっきりなしに走っている。
ミューは幼い頃から宇宙船のパイロットに志願して毎日訓練に明け暮れていた。そして、実力で最終試験を受ける事を許可され満点で合格を勝ち取った。
配属先は巨大軍事艦メビウスに決まった。
メビウスで発艦訓練や戦闘訓練を繰り返していた3ヶ月後。
かねてよりアピナスの神の教えの解釈の違いで敵対するモン族との交戦の為ワープに入る。
両者、銀河の辺境の木星と土星の間で睨み合う。
木星の影から土星の夜明けと共に戦闘が始まった。
1万隻以上の船が交戦しては大破して行く、ミューも母船メビウスから戦闘宇宙船ジャロで発艦して敵の宇宙船に向かう。
激しい戦闘をくぐり抜け敵艦を捉えミサイルMを発射、と、同時にレーザーを右舷に受け失速する。
何とか体制を整え母艦メビウスに向かうと物凄い閃光と共にメビウスが消えた。
ミューの乗るジャロでは秒単位のワープしか出来ない。
戦闘を逃れる為に闇雲にワープする。
気が付くと月の裏側に居た。
何とか交信を試みるが計機は無言を貫いていた。
気がつくと、あれほど激しかった戦闘も、いつの間にか終わっていた。
ミューは帰る母船を失って涙が溢れて止まらなかった。
戦友のボロ、上官のメド、皆失ってしまった。
アンドロイドのメルと共にジャロの修理を急ぐ。
酸素が後5時間で切れる。
何とか飛行に支障がない様に修理して地球に向かう。

宇宙地図に載っていない星だ。
夜の闇に紛れて地上を目指す。
太平洋にある島の山に着陸した。
メルと共に木でジャロを隠し街へと降りて行く。
原住民が居る事に驚いたが、様々な衣装を着た人達の熱気に圧倒された。
街は仮装カーニバルで賑わっていた。
ミューとメルの宇宙服に不信を抱く者は居なかった。
観光に来ていた亜季男は偶然ミュー達を見つけ近づいて行った。
まさか、こんな島で今まで出会った事の無い美人と出会えるのは奇跡と言うしか無いと思い、アイスクリームを2個買い近づいて行って差し出して話しかける。
言葉が通じない。
亜季男はジェスチャーで食べる仕草をして見せる。
ミューは笑顔で、それを食べた。
何やら喋っているが、何を言っているのか?解らなかった。
暑い日差しの中で食べるアイスクリームは美味しかった。
ミューはジェスチャーで服が欲しいと訴える。
何とか通じてお店に案内してもらう。
どれが良いのか解らずに居ると亜季男が選んでくれた。
お金が無いので指輪を外して渡そうとしたが受け取らず全部払ってくれた。
亜季男が案内するホテルに行く。
ブランデーを出されるが飲めない。
亜季男が何を言って居るのか解らないが、あるお酒をどんどん薦めた。
亜季男が酔いつぶれたのでメルが黒髪を後ろに縛り両手を亜季男の頭の上に置いてサーチする。
手のひらから亜季男の脳波を拾い言語の解析をする。
そしてミューにヘアバンドの様な物を渡す。
ミューに英語と日本語がインプットされる。
同時に世界情勢も理解した。
やはり原始的な星だ。
未だに地上で戦争をしていて宇宙船も無い、あるのはロケットと遅れた人工衛星だけだと解る。
翌朝ペラペラになった英語で亜季男に話かける。
驚いた様に見る。
昨日は、どんな人か解らないので喋れないふりをしていたと誤魔化した。
話によると亜季男は旅行で、この島を訪れ、明日、日本に帰ると言う。
そして、日本では電子機器が豊富にあると言う。
島の図書館で日本の位置を確認して亜季男と別れる。
メルとジャロに戻り夜を待つ。
メルが黒い瞳を輝かせて「あの日本人ミューに惚れていた様だ」と言う。
「まさか?」
「今夜日本に行き何とかお金を作って修理しなきゃね」
「そうね、でも何を売れば良いのかしら」
「取り敢えず日本に行きリサーチね」
「そうね、夜までに少し眠るわ」

闇に紛れて離陸して日本に向かう。
海の上をレーダーを避け低空飛行をする。
富士山の樹海にジャロを隠し翌朝駅に向かう。
亜季男に借りたお金で電車と言う物に乗り秋葉原を目指す。
途中新宿に降りて指輪等をお金に変える。
秋葉原に着き使えそうな物を物色する。
何とか使えそうな電子機器を手に入れ街を散策する。
誰もが2人を振り返る。
夜までに時間があったので亜季男に連絡をしてみる。
すると夜出発して今、帰った所だと言う。
新宿で待ち合わせをして秋葉原を後にする。
「お待たせ、待った?」と西口の改札の出口で亜季男に会う。
朝から何も食べていないと言うとレストランと言う所に連れて行ってくれた。
お腹が空いていた事もあったが、どれも美味しかった。
メルが食べないのを心配してくれるのでメルに促して2人で食べた。
亜季男にはメルがアンドロイドなどと解るはずも無かった。
無論メルにも分解機能がある、味と言うよりも毒見がメルの優先機能だ。
夕方7時、借りていたお金を返して亜季男と別れて宇宙船ジャロに向かう。
「彼、本当にミューに惚れている様ね」
電車の中でメルが言う。
「私達は、ここに長く居たい訳じゃないのよ」
小さな声でささやき合って駅に着いた。
闇に紛れてジャロに乗り込む。
「今夜は徹夜ね」
頷くメルと作業に入る。
無線機の修理をしたり、もろもろ修理すると明け方になった。
すると誰かがノックする。
ハッチを開けると亜季男が立っていた。
亜季男は夜の暗闇で見失っていたが朝日に浮かぶ機体らしき物を発見して、これだと確信していた。
「私達をつけて来たの」
「驚いた君たちの国では、こんな凄い物を作っていたんだ」
まだ、アメリカから来たと思っている。
何とか話を、ごまかそうとしたらハッチの中に強引に入って来た。
宇宙船の中を見て驚きを隠せない亜季男。
何とか追い返そうとするが、のらりくらりと宇宙船から出ようとしない。
ミューは諦めて椅子を薦めた。
妙に憎めない亜季男。
まさか連れて行く訳にも行かないとメルと小声で話合っていると亜季男が、これでアメリカまで連れて行って欲しいと言い出す。
「まだ修理が終わっていなくて、何処にも行けないの」と言う。
諦めたのか、やっと帰ると言う。
ホッと胸をなでおろし見送る。
ミューは夜まで少し眠ると言ってベッドに潜り込む。
メルは酸素の補給とアチコチ補修をして夜を待つ。
夕方、またコンコンとノックがする。
亜季男が袋をぶら下げて立っている。
仕方なくハッチを開ける。
滑りこむ様に入って来て袋を開けて食料を出す。
3人で食べながらお互いに目的を探る。
亜季男は亜季男でアメリカが、こんな凄い物を開発していた事に不信を抱いていた。
しかも乗って居るのが美人2人と言う事も合点が行かなかった。
ミューはミューで何しに来たのかと不審に思っていた。
政府に連絡して軍が大挙して、ここに押し寄せて来るのじゃないかと疑っていた。
メルは「貴方は何を知りたくて、ここに来たの?」と素直に聞く。
亜季男は、あまりにもストレートに聞かれ思わず本音を喋る。
ミューが言う「貴方が政府に連絡して、今にも踏み込んで来るのかとドキドキしてたわ」と。
お互いの誤解が溶けて笑い合う2人。
メルが「この際、全部話して協力して貰った方が良いんじゃない」と言う。
暫く沈黙が、あってミューが口を開く。
亜季男は信じられない顔をして聞いている。
「でも、帰れるかどうか?解らないのよ」
「一度で良いから乗せて宇宙に連れて行って」などと言う。
「燃料のウランを手に入れられるかしら」
「ウランだなんて、それは無理」
「困ったわね、そんな遊んでいるほど燃料が無いの」
「解った帰って来なくて良いから一緒に連れて行ってくれ」
「僕のこの先自分の人生は先が見えている、出来れば冒険をしたい」と言い出す。
ミューは考えた、下手に追い出して政府に干渉されても困ると。
メルにウインクして「解ったわ、そのかわり後悔しても知らないわよ」と。
食料の買いだしに行かせた。
そしてメルに「イザとなったら解っているわよね」と念を押す。

深夜宇宙船を離陸させる。
海上を進み太平洋の真ん中で上昇する。
宇宙に出て土星に向かう。
亜季男は、嬉しくて仕方ない様子。
ワープして土星上空に着く。
残骸が見る影もなく散らばっている。
無線で交信を試みるが応答が無い。
2時間後、生存者を探す船と連絡がついた。
ワープして船に着艦する。
亜季男は不審者として拘留された。
ミューは母星に帰り久々にグッスリと眠った。

翌朝、亜季男に面会に行く。
無害だと言う事と保証人として引き取る事を書類にサインして釈放された。
亜季男は、初めて見る近代的なビルを眺め、あれは、これはと質問攻めにする。
適当に受け答えしながらホテルに案内する。
「いい事、一人で出歩いちゃ駄目よ」
「そんなキツイ目で言わなくても何処にも行けないよ」
「その代わり、案内をお願いします」
「その前に勉強して貰います」と言ってコードの付いたヘアバンドの様な物を壁から取り出す。
壁のキーボードを叩き亜季男に被せる。
目がクラクラとして真っ暗になった。
30分後ミューに取り外して貰ったら、この星の法律から何まで基礎的な事を理解出来た。
唾など吐こうものなら禁錮5年を食らう事も解った。
ピチピチの服装に着替えさせられて何だか気恥ずかしい思いをした。
それからミューに地上165階のレストランに案内された。
言葉も解る様になっていた。
少し頭が痛いが出された物は、どれも美味しかった。
レストランから空を見上げると太陽の横に月があった。
そして、これからアミューズメント施設に行くと言う。
そこには、戦闘宇宙船の運転シミュレーターがあった。
亜季男は夢中になった。
そしてミューと人生初のバトルも経験した。
ロックオンされたら瞬時にワープをしないと撃墜されてしまう。
撃墜されると電撃が走り、暫く動けない。
まったく刃が立たず帰って溫風シャワーを浴びてベットに倒れ込んだ。
明日は、少し観光もしてくれるそうだ。
グッスリと眠り翌朝、モーニングサービスで起きる。
スープとオレンジジュースの様な飲み物で朝食を取る。
10時頃、と言っても亜季男がつけている時計でだが、ミューが迎えに来てくれた。
アンドロイドのメルも一緒だ。
初めメルがアンドロイドと言われても理解出来なかった。
長い黒髪、つぶらな黒い瞳、どう見ても人間としか思えなかった。
今日は、動物園とミュージアムに行くと言う。
動物園には地球の動物に似たものも居たが殆ど初めて見る動物が沢山居た。
ミュージアムと言っても椅子に座りコードの付いたメガネを装着して待つと椅子そのものが動き出し、3Dの様に周りに次々と彫刻やらなにやら通り過ぎる。
装着していたメガネを外すと何処にも移動して居なかった。
メルの勧めで宇宙船運転技能教習所に通う事になった。
この免許があればエアカーでも何でも動く物は運転出来ると言う。
相変わらずシミュレーターでの戦闘でミューには勝てない。
それでも何とか免許を取得出来た。
そんな頃、ミューの新しい配属が決まった。
戦闘母艦イギダスと言う船だ。
亜季男はミューと離れたくないばかりにイギダスのコックに応募した。
地球でもコックをしていた亜季男は何とか補充要員として採用された。
今の所、戦況は五分と五分で明日にも戦闘に参加すると言う。
ミューは今夜、側に居て欲しいと言われワインに似たお酒で乾杯をした。
亜季男にとってミューは人生の全てだった。
お互い自分の思いが受け入れられて必ず生きて帰る事を約束した。
早朝イギダスが離陸した。
目指すは、銀河星の中央のミスリと言う星だ。
ワープを終えると共に戦闘が始まった。
ミューもジャロに乗り込みメルと出撃した。
ボロボロになったジャロでミューが帰還した。
出迎えて抱きしめる亜季男。
メルも跳ね返った破片で右腕を損傷していた。
幸いミューはアザだけで無事だった。
母星メンザに帰国して3ヶ月の休暇が出された。
戦闘も、もうすぐ終わるとニュースで言っていた。
あっと言う間に休暇も終わり出撃。
再びミスリと言う星の近くで戦闘が始まる。
ミューが発艦してすぐ母艦イギダスが戦闘に飲み込まれる。
燃え上がるイギダス、離艦命令が出され亜季男も二人乗りの小型宇宙船で離艦した。
相棒は、アンドロイドG。
戦闘をかい潜りミスリの月の影でミューに連絡を取る。
2時間返事が無い、諦めかけた時メルから応答があった。
エンジンを損傷して動けないと言う。
周りに敵は居ないと言う。
場所を特定して一旦逃げる様に三角にワープしてミューの元へ行く。
ミューも片腕を負傷していた。
メルも片足が無い。
近くの酸素のある星を地図でサーチして曳航しながらたどり着く。
無線で救助を求める。
9時間後奇跡的に救助された。
母星に帰ると停戦協定が、なされ戦闘が終わったと告げていた。
ミューは傷ついた腕を培養して貰い3ヶ月後には信じられない回復をしていた。
メルは帰国後すぐ新しいボディーを手に入れた。

半年後ミューと亜季男は結婚式をあげた。
そして、皆の祝福を受け地球へと新婚旅行に旅立った。

           第二部
新婚旅行から帰ると、ミューは、若手を率いての戦闘訓練が始まった。
新居を構えてすぐの事で亜季男は手持ちぶたさでミューの帰りを待つ様になった。
ミューは一旦訓練に入ると3ヶ月近く帰って来ない。
そんなおりメルが度々訪れて掃除など世話をやいてくれた。
ある時、ふとした弾みでメルを抱きしめてしまった。
黒髪から、漂う甘い香りに我を失う所だった。
慌てて離れる亜季男。
アンドロイドとは言え人間と変わりが無い仕草。
触れてはいけないものに触れた様な気がした。
メルは、そんな亜季男の気持ちなど解るはずもなく淡々と掃除をこなしいく。
ミューは過酷な訓練でヘトヘトになって帰って来た。
亜季男の様子が何処と無くおかしい。
亜季男はミューが怒るだろうと思いながらもメルとの事を話した。
ミューは、おかしくてたまらなかった。
メルはアンドロイド、私が命令すれば、どんな事も顔色1つ変えずに実行する。
亜季男は私が3ヶ月に一度しか帰れないものだから寂しいのだと理解した。
そして亜季男に言う「メルとなら浮気をしても良いのよ」
「だって彼女アンドロイドだもの」と言った。
「もっとも私が命令しなければ何も出来ないでしょうけど」
ミューは自分が側にいてあげられない事を心苦しく思っていた。
そして訓練の前にメルに連絡して亜季男を慰めて欲しいと命令した。

戦闘訓練を繰り返して行く中で、ある日、下級士官のバリと乗っていた訓練用機で事故にあった。
不時着を余儀なくされて近くの酸素がありそうな星に不時着した。
極寒の氷の星だった。
仮設テントを設営して火を起こした、それでも寒くて2人抱き合う様に夜を過ごした。
バリは下級士官の中でも少し危なっかしくて何故かミューの母性本能を擽る人だった。
眠れない深夜どちらともなく唇を合わせた。
その頃、メルはミューに命じられた様に亜季男を誘惑していた。

ミューは翌朝救助され休暇を命じられた。

帰ると亜季男が笑顔で出迎えてくれた。
亜季男は亜季男でミュー公認とは言え後ろめたい気持ちで一杯だった。
ミューも言えない秘密が1つ出来て普段笑わない様な事でも笑って見せた。
そして、どちらともなく子供の話になった。
実質ミューに、そんな子育ての余裕も無ければ時間も無かった。
ミューは亜季男に欲しいなら考えて見ても良いと言った。
ただし、人工授精の人工保育ならと付け加えた。
数日後、医療センターに行き卵子精子の採取の日を決めて、そこを出た。
「遺伝子検査をして僕に1つも良い所が無かったらどうしよう」
「大丈夫よ、病気の遺伝子が無いか調べるだけだから」
「だけど本当に子供を作って良いのか?」
「あら、貴方が言い出して自分で育てると言ったのよ」
「貴方こそ大丈夫」
3ヶ月後ミューに再び出撃命令が出された。
相手は、先の大戦で落ち延びたと言うか逃げ出した奴らが海賊に落ちぶれて商船を襲っていると言う。
メルと共に戦闘母艦イギダスに乗った。
奴らの本拠地は、マルホと言う銀河星の外れにある星だと言う。
久しぶりの長いワープで船内は、これから戦闘に行くと言う雰囲気では無かった。
笑い声が飛び交い冗談に冗談で答える。
30時間後、目的の星に近づいた。
各自戦闘態勢を整え命令を待つ。
マルホの月の影から奴らが来た。
ミューもメルと発艦した。
奴らが何故こんなに武器を持って居るのか不思議な思いがした。
戦闘は一気に片付くと思った。
マルホから次々と奴らが来る。
蹴散らしては引き、蹴散らしては引き、戦闘は長引いた。
ミューは奴らに包囲され逃げ場を失って降参した。
敵の本拠地に連れて行かれ投獄された。
拷問された、特にメルがアンドロイドだと知ると奴ら容赦が無かった。
メルは首だけになってしまった。
戦闘は激しくなるばかりで事態は硬直していた。
ミューは待つ以外出来なかった。
5日目の朝、事態が急変した、奴らが急いで撤退して行った。
取り残されたミュー達は、すぐ救助された。
直ちに帰還する船で病院に搬送された。
亜季男が寄港する空港で待ち構えていた。
特殊培養液の中で眠るミューのもとで亜季男は一睡も出来なかった。
2週間後、体がまるで新品の様になって退院した。
メルは損傷が激しかった為にメインコンピューターだけを外され新しい体に移植された。
長い黒髪は金髪のショートカットになって目もグリーンになっていた。
ミューは、そんなメルを引き取りにメカニカル工場に出向いて書類にサインして引き取った。
亜季男は全く別人の様になったメルを見て驚いていた。
亜季男は培養液の中で育っている我が子を見ようと誘って3人で医療センターを訪れた。
丸々とした男の赤ちゃんだった。
3人で名前を考える。
結局ミューの言うアルムに決まった。
ミューは今回の事で退役を考えていると言う。
亜季男は大賛成だった。
2人と1体の新しい生活が始まった。
そして新しい発見があった。
メルに感情が芽生えている事をミューは見逃さなかった。
赤ん坊を引き取り、育てるのは、メルの仕事の様になった。
そして亜季男はレストランをオープンさせて日々を忙しく過ごしていた。
ミューもレストランを手伝い、幸せを噛み締めていた。
そして、2年が過ぎた。

母星メンザの首都が異空間から突然現れた得体の知れない人種に攻撃された。
ミューの居る都市から2万キロ離れて居たが、ニュースは壊滅的な光景を映しだしていた。
ミューに再び招集が来た。
メルには子供の世話があるのでミュー1人で戦闘に参加した。
奴らの異空間が開いている時間も解った。
科学者達も必死で異空間の謎を解明しようとしていた。
ミューは30人の戦闘部隊を率いて反撃をしていた。
飛び交う戦闘機の嵐。
3回目の異空間が閉じた。
ミューの部隊も17人に減っていた。
敵の捕虜から彼らが違う銀河からやって来たと言う。
そして異空間が5時間で閉じてしまい最低9時間立たないと又開かない事や彼らの星の一番高い青いビルにその機械があると言う。
ミューは戦闘の最中その情報を得て異空間に向かった。
異空間に入れたのはミューも含め3人だった。
異空間の中では真っ暗で何も出来なかった、ただ飛行するだけ。
いきなり異空間から出た。
奴らの母星だ。
青いビルは直ぐ見つかった、ミューは直ぐ瞬間ワープしてビルに近づいた。
光子魚雷3発を瞬間的にぶち込む、仲間が次々とやられた。
ミューは闇雲にワープした。
センサーで銀河系を目指す、何回もワープを繰り返す。
余りにも銀河系は遠かった。
燃料が尽きる頃、目の前にある星に不時着した。

亜季男は連絡を受け、直ちに店を売って中型の最新宇宙船を借りた。
ミューは絶対生きている。
メルとアルマを連れて救助探査船と共に離陸した。
目指す銀河は遠かった。
救助探査船が諦めて帰って行った。
亜季男は絶対にミューの事だから生きていると思っていた。
星々を探査して2年が過ぎていた。

ミューが降りた星は本当に原始の星だった。
槍や刀でマンモスの様な物に挑んでいた。
ミューは暫く高台からそれを見ていた。
マンモスに原住民が蹴散らされていた。
ミューはエアロバイクで近づきレーザーガンで仕留めた。
歓喜の声が上がる。
暫くするとミューに手を合わせて拝み何やら言っている。
メルが居ないから彼らが何を言って居るのか解らなかったが、どうやらミューを神と思っているらしい事は解った。
神殿に案内されて一番高い所に座らされた。
次から次と果物屋や肉が目の前に運ばれた。
ミューは、これは自分に与えられた使命だと思った。

亜季男は、もう諦め掛けていた、あと一回ワープして救難信号がキャッチ出来なければメルと帰ろうと話し合っていた。
燃料も残り少ない、帰るのにギリギリのラインだ。
最後のワープをして暫く探索を続けていると、いきなり救難信号をキャッチした。
無線で呼びかけるも応答は無い。
救難信号を辿り星を見つける。
きっと何処かに居るに違いない、きっと生きて居ると。
亜季男は小型宇宙船で星に降りる。
ミューのジャロを発見した。
レーダーで周りを探査する、すると小さなエネルギーを探査した。
ミューに違い無いと確信した。
エアロバイクでメルとエネルギーに方向に向かう。

ミューは驚いた、まさかこんな辺境まで探しに来てくれるなんて、亜季男に抱きしめられながら涙が溢れて止まらなかった。
メルとの再会も嬉しかった。
「まさかアルムも来ているの」
「当然だろう俺たち家族なんだから」
「しかし、この星で神様をしていたなんて」
「成り行きでこうなったのよ」
「しかし、もう帰ろう、皆に感謝して」
ミューは、たどたどしい原住民の言葉で別れを告げた。

私の名はミュー

私の名はミュー

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-10-06

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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