愛の宅急便
空模様
小さな手を、高く広がる空に向ける。
今日はとても天気がよかった。
梅雨が続くなかで、久しぶりの快晴。
もうすぐ雨は、過ぎ去っていくだろう。
そんなことを思いながら、荷物を抱えて歩く。
よいしょっと。
水溜まりを飛び越えて、届け先に到着した。
インターホンまで、壁でできた階段を上がる。
鼻先で押すと、すぐに住人が顔を出す。
「おお。いらっしゃい。」
目が合って、優しく微笑んでくれる。
おじいさんは、お得意様でもあるんだ。
「お荷物を、お届けに参りました。」
時代の流れ
腰に巻いていた縄を、器用に解いた。
「ご苦労さん。」
おじいさんが手を伸ばし、荷物を受け取ると。
背中が妙にくすぐったかった。
「ありがとうございました。」
一礼して、階段を飛んで降りる。
その後ろで扉が閉まる音がした。
振り返りはせずに、来た道をまた歩く。
言い忘れてた。
僕は宅急便をしている、白い猫。
時代が変わって、人間と動物が暮らす時代。
人間と言葉を交わせるようにもなって、今ではどんな動物も生き生きと過ごしている。
犬や猫をペットにしていた時代は去り、動物も共に働く時代。
たまにそんな僕らを、毛嫌いする人間や。
時代の風潮に追いつけず、僕たちを反対する人間もいる。
もちろん動物の僕たちだって、人間を嫌うこともある。
売り物にされたり、僕らを使って人を集めたり。
飼い主が悪ければ、罪のない動物が犠牲になったりすることもあった。
それでも今は、お互いに受け入れようとしている。
愛の宅急便