スミレ

小さな幸せでも、幸せは幸せ。
隠れている幸せを見つけてあげよう?

スミレの花

拝啓、10年前の私へ

幸せですか?

私はとても幸せです。

結婚して、子供もできました。

信じられないよね。

楽しいことも、辛いことも

たくさんたくさん経験したよ。

それで、今、幸せだって

胸を張って言い切れる。

楽しいよ。すごく楽しい。

どんなに小さいことでも、
幸せを感じることができるの。

スミレの花言葉って、知ってる?

スミレの花言葉はね…………


小さな幸せ

私の名前には、そう言う意味が込められてたんだよ。
スミレ、大事にしなよ?
小さな幸せを。

春、桜が満開

「すみれ!早くしなよー!!」
「ま、まってー!!」
高校2年生の春。
高校生活にも、慣れてようやく先輩になる。
私と遙香はは1年生の時から仲がよく、毎朝一緒に登校する。今日は通学路を全速力だ。
だって、遅刻間際だから。新学期早々遅刻はまずい。
遙香は陸上部だから、体力に自信がある。一方私は写真部というなんとも筋肉のつかない部活であるため、朝からダッシュなんて体が追いつかない。
「あーもーすみれーっ」
痺れを切らした遙香は私の手を引っ張り全速力で走る。
私はついていくのに必死…というより、ほとんど引きずられていた。

遙香のおかげで学校には遅刻しなかった。けど、私はヘトヘト。こんなんじゃ体育祭1日持たないぞ?と遙香はからかうように笑った。
「そ、それより、遙香、クラス…」
「…っと、そうだった!すみれはそこで休んでなよ。見てきてあげるー」
遙香は意気揚々と走っていった。あれだけ走ってよくまだ走る元気があるなと水筒のお茶を飲みながらしみじみ思う。我ながら老人のようだ。
ふと視線をあげると見渡す限り淡いピンクに染まっていた。走ってきたから気づかなかったが、春。桜が満開なのだ。
「きれい…」
そうだと思い出し、鞄の中から愛用のカメラを取り出し写真におさめる。
かなりいいできだ。
これから、新学期が始まる。なんだかワクワクしてきたと自然に笑みが零れた。

クラスは遙香と同じだった。クラス発表を見てきた遙香のテンションはものすごく高くて、私と同じクラスになれてそんなに嬉しかったのかと、私も嬉しくなる。
愛されてるなとしみじみ感じる。
2年生もよろしくねと、遙香と話しながら教室へむかう。
今年のクラスはどんな感じなのか。
仲良くできるのか。
1年生の時とはまた別の不安やドキドキで胸を膨らませた。

梓、出会い

ガラッと教室を開けると、ほとんどの生徒が教室に入っていて、友達とおしゃべりしていた。私と遙香は席につき荷物をおろす。遙香は顔が広く、直ぐに話しかけられていた。さすがだと思う。どんな子にも笑顔で接してる遙香はなんだかかっこ良い。そんな遙香と親友でいる自分をすこしばかり誇らしくも思う。
遙香が他の子と話している間、私はどうしようかと教室を見渡す。
いろんな子が集まっているもんだと思いながら、それが当たり前だと自分に突っ込む。
誰か話しやすそうな子はいないかな…とか、遙香のとこに行こうかなとか、もんもんと考えていたら、ふと目の前に大きな影ができた。見上げるとそこには1人の男子がニコニコして立っている。何か用かと聞こうと思ったが、彼のことを私は知らない。
話しかけるか、話しかけないか、迷っているうちに相手から声をかけられた。
「すみれちゃん、だよね?」
なんで私の名前を知ってるのだろう…私は知らない子に名前を知られるほど目立ったことはしない。
「そう、だけど…」
すこし不思議に思いながら、返事を返す。
「ちょっと、梓ー?すみれをナンパしないでくれるかなー?」
と、いつの間にか友達との会話を終わらせた遙香に、後ろからぎゅっと抱きしめられた。
「なんだよ、遙香。別にナンパしてたんじゃないって」
遙香と知り合い?梓って子らしい…
困惑していると、それを悟った遙香が説明をしてくれた。
「こいつは、梓って言うの。部活が同じでさ、まぁ、仲良くしてあげて?」
「あ、うん…」
遙香のお友達なら安心だろう。
「改めてよろしくな!すみれちゃん」
「うん、よろしくね」
なんだか、ノリの軽そうな子だなぁ…
でも、2年生になってからの初めての友達だ。
それに、さっきまでは気づかなかったけど、梓くんは私の席のまん前だった。
これが私と梓くんの、出会い。

ある日、お昼休みのこと

新学期が始まってから、あっという間に1週間がたってしまった。
先輩方が、2年生は早いよ!と言っていたけど、どうやら本当らしい。なんとなく、スピード感を感じる。
あれから、梓くんは私に気遣ってくれるみたいで、よく話しかけてくれる。明るくて元気で運動もできる。顔も良くて、モテるみたい。まぁ、授業中はよく寝てるけど、本人は朝練が大変だからーとかなんとか言って、起こしてあげてもやっぱり爆睡。そんなとこも、梓くんの愛嬌だと思う。
「そういえばさ、遠足4人グループ作れーとかいってたよね?」
新学期から日課になっている、遙香と梓くんと一緒にすごすお昼休み。遙香がふと、1週間後に迫った遠足の話題を出してきた。
「すみれ、一緒に行くよね?」
「もちろん。一緒にいこ」
そんな、ふわふわな空気を漂わせ、にこにこと遠足の約束をする。男子には到底入り込める空気ではないと思っていたが、そこにいとも簡単に入ってくるのが、梓くんだ。
「でも、4人だろ?俺もいれろよー」
「しかたないなー、うちらしか友達いないもんねー」
遙香は悪態をつく。それもこれも、部活が同じで1年生からの付き合いで培った信頼があるからできるのとだと思う。本当に仲良しさんだよなぁ。
「ね、すみれは、こいつ一緒でもいい?」
「もちろんだよ」
私は梓くんを省く理由なんかないよとクスクス笑う。
「すみれは優しいよなー、誰かさんと違ってー」
「うるさいなぁ、あんたに優しくするほど、私は優しさなんて持ち合わせてませんー。」
好きな子ができたら、その子に優しくするし。と、つけたし遙香は好物の卵焼きを頬張る。
「でも、あと1人いなきゃだよね?4人班だから…」
と、つぶやく私に2人は誰かいないかなーと、友達の名前をぽんぽん出していく。
この2人、クラスの情報網を網羅してると思う…だって、誰が誰と行くとか、私、そこまで知らないもん。
「決まらないからさ、また、適当に誰か誘お。」
「そうだね。」
「できれば男なー?さすがに女3人の中に男1人はきついぞー?」
「あー、はいはい」
と、遙香は適当に答えてた。確かに気まずいかもしれないけど、なんだかんだ言って、梓くん女の子3人の中に溶け込んじゃうんだろうな…とか、思う。
そのくらい、梓くんは誰とでも仲良くできる。遙香もだけど、本当にそういうのすごいな…

遠足、4人目決定

結局、遠足のメンバーはなかなか決まらなかった。まぁ、みんなほとんど決めちゃってて…どうしようかと3人で悩んでた。そんなある日のこと…
「なー、お前らー?」
「あ、優也、なんかあったのかー?」
声をかけてきたのはクラスの委員長、優也くん。頭も良くて、ルックスもよく、メガネ男子。
「お前ら、遠足のメンバー決まってないだろ?」
「だれか、1人余ってる人いない?」
「俺。」
「……え?」
「俺が余ってる。名前書いて先生出しておくけど、それでいいよな?」
「え、なに、優也余ってたわけ?」
紙に名前を書いている優也くんに、横から笑って梓くんが言う。
「ん?梓、お前、俺に人気がねーとか思ったな?」
「え、ゆ、優也くん?」
優也くんはにこーっと笑みを浮かべる。普通の笑みじゃない。黒い笑み。
「優也?顔、怖いよ?」
遙香もこんな顔の優也くんは見たことないみたい。
確かに、いつもみんなに笑顔むけて、人当たりがいいのが優也くん。名前通り優しい人だと思ってたんだけど、意外とSっ気なあるのかな…
「って、冗談は置いといて、先生に頼まれたんだよ。お前は1人足りないところに入れって。」
ああ、そういうこと…と、3人で納得。委員長って大変だなぁ…
「てことで、よろしくな。」
「おう!男だったら誰でもよかった!」
「私も、よろしくね。」
「よろしくね、優也くん」
これで、4人揃った!遠足、楽しめたらいいなって思う。だって、2年生最初のイベントだからね!!

スミレ

スミレ

小さな幸せを感じませんか?

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-10-04

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. スミレの花
  2. 春、桜が満開
  3. 梓、出会い
  4. ある日、お昼休みのこと
  5. 遠足、4人目決定