人魚姫の続き。

最近眠るとずっと同じ夢を見るの。

かわいそうな人魚姫の夢。

人魚姫は人間の王子様に恋をした。

人魚姫は王子様のもとへ行くために。

人間の足を手に入れるんだ。

でも人魚姫は声を失った。

それに1週間以内に王子様とキスをしないと。

泡になって消えてしまうんだ。

人魚姫は陸に上がって初めて知った。

王子様には婚約者がいること。

人魚姫の仲間たちが人魚姫を救いたいと。

人魚姫に元に戻る方法を教えたの。

それは王子様をこのナイフで刺すこと。

すると人魚姫は元に戻れる。

だけど人魚姫は王子様を刺せなかった。

落としたナイフを拾えなかった。

・・・・いつもここで私は目を覚ます。

また夜が明けてつまらない朝が来る。

着たくない制服を着て学校に向かう。

学校は地獄だ。女子にはハブられ。男子には聞きたくも無い愛を語られる。

私は学校が大嫌いだ。

私は駅のホームにいた、いつも乗るはずの電車はもう行ってしまった。

私は隣町の海に行くことにした。

なぜかはわからない、けど見えない何かに呼ばれているような。

私はそこに行かなければいけない気がしたんだ。

電車で30分程度、電車を降りてホームを出て改札をくぐればもう海が見える。

私は砂浜まで歩いた。

塩の風が鼻をつつく。少し切ない香りがした。

砂浜につくと誰もいなかった。

私は鞄を置いて靴と靴下を脱いで海水に足をつけた。

冷たくて気持ちいい。

砂浜を歩いてシーグラスや綺麗な貝殻を拾う。

・・・・アレ?前にもこんなことあったような・・・・。

そう思ったとき私の中で何かが弾けたように溢れ出した。


”この思いが言えたら・・・。”
 愛してますと叫べれば。
 声が出れば・・・。
              
溢れ出した何かとともに涙があふれた。

ぼやけて見えない。

私の大好きな王子様・・・・。

声があれば。声さえあれば。あなたとお話できるのに。

私の中のもうひとつ誰かの記憶。

あふれた涙が止まらない・・・。

一人うずくまって泣いていると後ろから声がした。

「大丈夫・・・?」

振り返ると金色の髪に青い目の青年がこちらに手を差し伸べていた。

私の中のもうひとつの記憶が訴えかけてくる。

この声。この瞳知ってる・・・。あの時もあなたはこうやって私に手を差し伸べてくれた・・。

王子様・・・?。

「ねぇ君大丈夫?なんで泣いてるの?」

青い瞳の青年がまた私に話しかける・・・。

私は気づいたんだこの時。

私はあのとき泡になって消えた人魚姫で。

この人は。あの時人魚姫が思っていた王子様だって。

私の中のもうひとつの記憶は人魚姫のものだって。

どうしよう・・・。人魚姫の気持ちを伝えてあげたい。

でも私は声が出ないんだ・・・。

父親が交通事故で亡くなった。

その日から私は声が出なくなってしまったの。

頭の中で色々考えていると王子様が

「・・・前にもどこかで会った?」

!!この人も覚えているのかも。

どうしよう声が・・・声が・・・。

声さえ出ればっっ!!

「あっ・・・・いして・・・」

「えっ?何?。」

「愛しています!」

声が出た。声が出た・・・。伝えられた。

人魚姫の思い・・・。

しばらく沈黙が続いた。

王子様はうつむいて何かを思いついたような顔をして

こっちを見ると

「君は。あの時僕を助けてくれた人魚だね?。
 君は僕の前にもう一度現れてくれたね。
 そのとき君は人間の姿だった。
 でも僕には婚約者がいたんだよね。
 でも僕は君に会ったそのときから。
 君に恋をしていたんだ。
 でも気持ちは伝えられないままだった。
 それから1週間くらいかな?。
 君はいなくなってしまったね・・・。    」

王子様は今にも泣き出してしまいそうな目で私を見つめる。

そのとき私の中のもうひとつの記憶が伝えたかった言葉を唱えだした。

「私はあなたが大好きでした。
 愛していました。
 でも人間と人魚の恋なんて叶うわけなかった。
 私は泡になって海に消えました。
 あの時言えなかった気持ち。
 今言えてよかったです。          」

私の中の人魚姫がぽろぽろと泣き出した。

王子様は優しい笑顔で人魚姫を抱きしめる。

人魚姫は最後に王子様にこう伝えた。

「愛してます。」



あれから何時間たったのだろう?。

気がついたらすでに日は傾いていた。

目を覚ましたら砂浜の上。

隣には金髪の青年が眠っていた。

少しボーっとしていると

腕に違和感を感じた。

腕を見ると綺麗な貝殻で作られたブレスレットがついていた。

そのとき私はすべてを思い出した。

人魚姫と王子様のこと・・・。

本当によかった・・・・。

そんなことを考えていると

「ん~・・・。」

隣で王子様が伸びをして起き上がった。

キョロキョロと周りを見て私を見つめると。

「君は誰?・・・」

どうやら王子様には記憶が無いらしい。

「・・・・君はさっきそこで泣いていた子・・・。
 あれ?僕いつのまに寝ちゃったんだろう?・・。」

少しあわてた様子の王子様に。

私はクスクスと笑いながらこう言った。

「はじめまして。」

人魚姫の続き。

人魚姫の続き。

人魚姫の話。

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更新日
登録日
2013-10-03

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