左側右側
いつものバスで感じていたことを文章にしてみました。
毎日通勤で使うバスは、T駅から出発し、H駅まで20分ってところだろうか・・・。
私が乗り込むのは、H駅寄りのM道路前から終点H駅まで、たった数分間である。
暑い暑い。
夏のある日のことだった。
それまでは徒歩で通っていた職場だったが、あまりの暑さと、痛めてしまった足・・・。
これが原因でバス通勤を決意した。交通費を節約するためだったが、仕方がない。
そろそろ年齢も若い世代ではなくなる。少しずつ、体を労わらなければならなくなって来るのだろう。
バスに乗って、ふと。車内を見渡した・・・・・・。
????????
何故。コチラ側の座席が全て空いているんだろう。
コチラ側とは、バスに乗り込んだ私から向かって左側。左側って事は、進行方向から言えば右側である。
誰も座っていないじゃない。どうして?
私が乗り込むバス停から終点までは、ほぼ、直進。
方角で言えば、北に向かって走っているのだけど・・・。
進行方向右側とは・・・・真東にあたる・・・・。
そうか。直射日光が、暑いのか。
通勤時間の今、太陽はまだ東。
エアコンの冷風が全く感じられない座席なのだ。
今年は猛暑・酷暑・炎暑・・・・・暑さが尋常では無い。
この暑い座席に座るくらいなら、立って乗っていた方がマシ。
そういう事なのか。
次の日も。次の日も。
誰も座らない右側の座席。
ここまで座ってもらえないのも可哀想な気さえしてくる。
・・・・・・・・座ってみようかな・・・・・・。
でも待って。ここまで誰も座らない。座ってもらえない座席。とんでもない暑さなのでは・・・・?
もしかして火傷とかしちゃう系?熱中症とかになってしまう危険性があるとか?
まさか、そこまで暑くないだろうに。
でも乗客の年齢を見ても、若い世代はあまりいない。
当然だよね。時間で言っても学生さんはとっくに授業の始まっている時間帯。
「出来る事なら座りたい世代」ではないかしら…・。
そんな年齢層が殆どの車内で、今日も右側席だけが空いている。
そして満席の左側。
直射日光も届かず、乗客の顔もなんだか涼しげに見えるのは気のせいかしら?
しかし、私が乗り込むバス停からだと左側はいつも満席状態なので、私が座れる事はなかなか無い。
これじゃあ、足のためにバス通勤にしたのに意味が無いのでは・・・・・・・。
う~ん・・・・でも暑い中歩くことを考えたら、やはりバスの方が良いのかな・・・・。歩かなくていい分・・多少暑くても座った方が良いんじゃないかしら?足の痛みは切実で。立ち仕事なんだし、休憩もあったりなかったり。座れるのならば、少しでも座っていた方が良いよね?
ようし。明日は座ってみよう。
バス通勤にしてから2か月が過ぎた時だった。
そんな決心しながら、いざ座ろうと思ったら満席だったりして。
そう思いながら翌日、いつもの時間のバスに乗り込んだ。
・・・・・・・うん。空いてる・・・・・。
なにくわぬ顔で座ってみる。直射日光がガンガン照りつけている座席シート。
座ったらスゴイ暑いのかしら・・・・・・・・。大丈夫かしら・・・・・。
気のせいか視線を感じるわ。
うえ~~。この暑さそこに座るか?
なんて思われているのかしら・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・うん・・・・・・・・・・・・・・。
暑いね。結構な暑さじゃない?
まー。でも足の事を考えたらいいと思うのよ。
終点まで数分だしね。
それ以来私は、その暑い座席に座って通勤する事にした。
毎日毎日座れると思うと、多少の暑さは気にならなくなっていった。ある意味、予約席みたいなものよね。だって必ず空いているんだもの。
ふふふ。そうよ。指定席だわねこれって。気分もそこそこ良かった。
残暑も猛暑と変わらない暑さの中、台風が直撃。運よく仕事は連休だった。
バスは定刻通り運行できたかな?浸水被害が各地で深刻な中、私の地域ではそこまでの被害も無く、私の出勤日には台風も過ぎ去った後で幸運が続いていた。そんな私は台風一過の快晴の日に、久々に出勤。いつもの指定席に・・・・・・
んんんんんんんん?
満席だわ・・・・・・・右も左も・・・・・・・。
私の指定席は・・・・・みんな埋まってるわ・・・・・・。
人間は正直ねえ~。台風が過ぎて、暑い暑い酷暑は段々と落ち着いてきた。
暑さ寒さも彼岸までとは良く言ったものだわ~。気が付けば暦は秋じゃない。
風も秋の気配を感じるようになってきたものね。
寂しかった右側の座席も満席になり、私は立って乗る事が多くなった。
真冬になったらどうなるのだろう・・・・
右側の座席は東の太陽の熱で、暖かく感じるようになるだろう。
今度は逆になるのだろうか?
座る事が出来なくなった今も、私はバスで通勤しているが・・・・・
なんて事の無い、このバスでの時間は今となっては結構重要な時間帯になっていたりする。
無言で乗っている、乗客たちの本心が垣間見れた瞬間はなんとも可笑しいものだ。
左側右側