犬の散歩

ふと出かけた、犬の散歩だったが、・・・

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 我が家には犬がいる。名前はナルトという。ラーメンに入っている、あの渦巻である。
 だが、その名づけ親は私ではなく、我が長男である。当時はやっていた漫画の主人公の名前らしい。そのキャラクターは男であるらしい。我が家のナルトは雌である。まあ、いいや。
 しかし、この犬を我が家に持ち込んだのは息子ではない。何を隠そうこの私だ。会社の帰り道、ふらっと寄り道したおりに見かけたペットショップのガラスケースの中にナルトはいた。実はそれまでの長い人生において、私はペットというものを飼った経験が一度もなかった。
 しかし、動物は幼き頃から好きであった。いつかは必ず犬でも飼いたいと、ひそかに願望し続けていたのである。
 だからつい、あの時はその後のことなど何も考えず、思わず得体のしれない妖術にでも操られるように、一人で勝手にあの犬を購入してしまったのだ。仕方なかったのだ。きっとね。
 まだおもちゃのぬいぐるみのように、小っちゃくヨチヨチのか弱いナルトを見た妻は、即座に激怒した!確かに彼女の言葉のほうに理があった。その通りです!私はアホです。判ってるよ。だって、いつもそうあなたから言われてるもん。うん。
 なにせその時は、二男はまだ3歳で実に手のかかる年頃だったんです。そこへまた子犬の世話など持ち込んで、彼女の負担は半端ではなかった筈です。
 私は楽観していたのだが、現実の子犬の世話というのは、いや、人間のそれとは比較にはならないが、いや、それはそれで大変な作業であったのです。いや、思いもよらなかったなあ、僕はしらなかったの、だから許してね。って、ダメか!
私は当初、「正弘がさあ、(長男です)犬ほしがってたろう!だからさあ、奴のために連れてきたんだって」と言えば事なきを得るって思ってたんです。でも、そう甘い話じゃなかったね。ごめんよ!ゆるして。だって、悪気はないんだもん。
 それでも女の人ってスゴイね!妻は結局その毒舌とは裏腹に、まったく二人の息子たちと接するのと同じぐらいに、その小さな命を大切にいたわって可愛がってた。だから私はほっとして見ていられたんだ。というか、私にできたのは実はそれだけ。
 詰まる所、私はほとんど眺めているだけに徹していて、その世話のほとんどは妻に任せっぱなし、結局彼女が全部やってた。女の人ってホントにスゴイね!感心するよ。
 でもその分だけ、僕の信頼度ゲージはぐんぐん下がっちゃったけど。まあ、それはいいや。
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 だが、そうしたゴタゴタも今は昔。現在のナルトは手のかからない、すっかりいい子に育ちました。そういや、いろんな本読んだりして一生懸命しつけてたっけ。私は勿論見てただけ。あ、それはもう言わなくてもわかってるね。ごめん!
 しかし!実は、こんな私とて楽ではないのだ!ナルトとは反対に、息子たちのほうは日々暴れ度がグングン増すばかり。それこそいよいよ激しく絡んできて、私はおちおちと己が休日を楽しめないのである!なんて悲劇なんだろうね、父親って。男に生まれて損したよ!
 しかもだ、我が妻は、恋愛していたころの、あの清らかな、どこか子供っぽい愛らしさなどすっかりと消え失せて、この最も大切な筈の私に対しては下劣なほど口うるさい鬼嫁。そして可愛い息子たちの前では、ちょっと怖いけど実はすごく懐の大きな温かい母親。そして外では入念なメイクで化けた気品のある大人の女性(ここは自称ですけどね!)。そんな自分をたんたんと使い分けてる。やっぱ、女の人ってスゴイね。真似できないよ!
 そして私と言えば、彼女の言うところの、なんとなーく頼りない、いっつもぼんやりとした、あんまり見栄えのしない男のようらしい。いや、ほんとはそんなことないんだよ、多分!あくまで僕の願望だけどね。まあ、いいや。
 だけど思えば、こんな白髪交じりの年齢になっても、僕って相変わらずの間抜けなんだよね。でも、そこが実はいいとこなんだ!信じてくれ、頼む。
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 そんな、とある休日のことだった。何もやる気がしなくって、ただぼけっとリビングの隅っこで一人ネットサーフを楽しんでいたと思ってください。そんな癒しの時間を過ごしていた私の背後でいつもの声がこだました。いや、妻が命じたのです。はいはい。
 「あなた、暇だったら、たまにはナルトを散歩に連れて行ってあげてよ!だいたい、いつだってあなたっていう人は、・・・(以後延々続きます。そんなの書かなくてもわかるよね)」
 私は素早く反応し、その指令を着実に実行へと移すのであった。僕ってえらい!なんて良い亭主であろうか!
 だが、私が犬の引き綱とうんち回収用手提げを手に玄関を出ようとした、まさにその時である。長男が、背後より激しくとも小刻みな足音とともに迫ってきた。
 「パパーっ!僕も一緒に行く」っと叫びながら。
 がっちりと押さえつけるようにして私がリードをつけてやると、ナルトはその無駄にフサフサとして部屋や私の服を毛だらけにするだけの為のしっぽをブンブン振って喜んだ。
 しかし犬とは現金な生き物だ。こいつがこのように私に対して情愛の念を表すのは、決まって散歩のときかお菓子をねだる時だけだ。それ以外のときはほとんど見向きもしない。私が疲れて仕事先から帰宅をしたって、まったくの無視である。そのくせ妻や息子がドアノブを握った様子を感じるだけで玄関まで吹っ飛んで迎えに行くのだ。
 いったいどういうことだろう。無知な小動物には人の苦労など知らないのだろうね。いや、いいんだけど。
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 ナルトはなんの気兼ねもなく我がリードをグングン引っ張っていく。彼はただ、我が道を突き進んでいくのである。
 そういや以前妻に言われたっけ、犬の勝手にさせちゃダメだって、人間が先導しなきゃいけないって、でもね、僕は思う。いくら犬だって、ペットの立場に甘んじてたって、やっぱ奴にも己が進みたい道があるはず。たまにはね、認めてやろうよ。私はお前の気持ちがわかるのだ!って、ダメか!
 なぜだろう?犬には人の心を見通す力があるらしい。ナルトは私には遠慮しない。妻にはあんなに従順なのにね。もはや私は懸命に彼の暴走を食い止めることに熱心であった。だから嫌なのだよ!ナルトの散歩は。判るよね。
 そして自らの意志で同行していたはずの長男は非常に利口な人間であった。さすが私の息子です。よく似てるよ。彼女は浮気はしてないね、そう思う。浮気相手の子じゃないね。絶対!
 彼は私の周囲をフラフラと、つかず離れず歩いてた。全然私を手伝ってなんかくれないよ。彼はそういう人。よく判るよ、その気持ち。だって親子だもん。
 だが、そんな息子でもこうして付いてきてくれたことに私は大変感謝していた。なぜならこの私は、このあたりの土地にまるっきり不案内なのでした。ここは私の地元じゃない。彼女の故郷。今の私はマサオさん。
 実はこれには深い事情があった。妻は一人娘なのです。他に兄弟はいない。そんなおり、つい最近、妻の母親が病気をしてね、それで同居をすることになったんです。しかも彼女の父親は私と結婚する前にもう亡くなっていたのさ。私はそのお方の顔も知らないのさ、写真以外はね。それもちょっとだけしか見てないけど。そういうこと。
 でも心配ない。今は義母もけっこう元気!私はまんまと騙されちゃったというわけだ。いや、いいんだけど。
 でも、実は私も長男です。でも大丈夫!姉がいる。彼女は夫とともに現在我が実の両親と暮らしている。だから私は自由。そういうこと。
 いや、今はそれが問題ではなかった。私が地理に疎いという話だ。そう、それはそれは疎いのです。私の知るルートは、二つだけだ。仕事先と自宅をつなぐ車道。そして近くのスーパーまでの道のり。
 えっと、二つ目のルートをなぜこの私が知っているかは説明するまでもないね。そうです!妻に無理やり覚えさせられたのです。そして何度も通ってます。パシリとして。いや、いいんだけど。
 そういや、子供ってスゴイね。私も妻も心配してたんだけど平気みたい。彼らはすでにこの土地に順応してるみたいなんだ。友達も結構できたみたいだ。勿論、道もよく知ってるよ。
 昔からよく遊びに来てたから全然判るんだって。未だ僕にはまるで判らんのだけど。そうなんです。方向音痴なのでした。ごめん!
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 「あっ、思い出した!」
 突如、そう長男が叫んだ。
 彼は私の制止をものともせずにひた走っていった。私にはそれを食い止める手だてなどなかった。ナルトが抵抗したからです。皆まで言う必要ないね。彼はさすが我が息子だって、そういうこと。
 こうして私は一人となった。いや違うな!真実はこうだ。私はこの飼い主を見下したナルトのツレ、いやそれどころか単なる下僕となってしまったのでした。トホホ。
 奴は所詮家畜だ!犬畜生だ!こんな私の気持ちなど理解しようもないのだ!っと、愚痴ったところで現実は何の好転もしなかった。
 ナルトはグングン引っ張った。私はただただ引っ張られた。私を包む周囲に景色は、容赦なく未知の世界へと姿を変えていった。もうここが日本列島の中の、いったいどのあたりかも、もはやこの私には知りようがなくなっていた。(ちょっと、大げさでした。反省)
 だが、そんな時、ふとナルトの足が止まった。そこから動こうとしなかった。ふと見上げると、そこにはやはり初めて目にする小さな公園があった。
 公園には鉄棒があった。ブランコがあった。シーソーや滑り台、ジャングルジムがあった。ようするに何処にでもある普通の公園だった。
 でも、そこは何かが変だった。奇妙な違和感があった。あたりが不思議なほど静まり返っていた。今は初夏なのに、公園の中の樹木は美しく紅葉していた。時頼、サーッと木の葉を孕んだ秋風が私の頬をかすめていった。
 公園の中には子供がいた。8歳くらいの可愛らしい女の子が一人、楽しげに遊んでいた。少女を見守るように男性がいた。多分父親だろう。私と同年代に思えた。
 私は何気なくナルトを連れてその公園に足を踏み入れた。そしてブランコを囲う鉄パイプの隅に奴を繋いだ。それから私は一度外へ出だ。
 近くの自販機で缶コーヒ-を買った。そしてまた公園の中へと引き返した。公園の隅には木製の古びたベンチがあって、私はそこへ向かった。
 ふと見ると、女の子がナルトに近づいていた。
 「かわいい、かわいい、可愛いワンちゃんだよ!パパ、パパ、ほら見て!ほら、すごく可愛いよ!うふふ、うふふ」
 少女は父親とナルトの双方に目を配りながら、そう言ってニコニコしていた。私は構わずそれを遠くで眺めていた。問題ないと知っていたのだ。あのバカ犬は確かに私の言うことなど全然聞かない。しかし、人が大好きらしい。とにかく懐こいのだ。絶対に悪さはしない。外面だけはいいのである。うちのカミさんとそっくりだ。
 少女が抱きかかえるようになでると、ナルトはすっかりその気になって女の子の顔をぺろぺろなめた。女の子は結構くすぐったがっているみたいだったけど、とてもうれしそうに笑っていた。
 私はナルトの様子に一応気を配りながらも、当初の目的地を変えなかった。
 そしてゆっくりとそのベンチに腰を預けた。コーヒー缶のプルトップ栓をカチッと開けると、いつもの香りが鼻腔を刺激した。
 だが、そんな時だった。
 ふらっと彼が近づいてきた。あの父親である。彼はにこやかに、でも何処かさびしげな眼で私に軽い会釈をしてきた。無論、私もすぐにそれに答えた。
 初めて見る顔なのに、不思議と浸し身を覚える人だった。また、何処かであったことが有るような気もした。でも、全然思い出せなかった。人違いでしょう、多分。
 彼はそっと私の横に座った。私は構わずコーヒーに口をつけた。
 「あの子は、本当は、犬が飼いたいらしいいんですよ」
 「あ、はあ」
 突如声をかけられ、私は思わず口内の液体を吹き出すところだった。でも、耐えた。
 見れば、彼の眼は私ではなく娘のほうにそそがれていた。
 「でも、あの子はそれを僕には言おうとしないみたいなんだ。言っては迷惑とでも思っているのかもしれない。僕は正直に言ってほしいのだけれど」
 「はあ、」
 私はその重たいい響きの言葉に、ただ相槌を打つしか思いつかなかった。だが、彼は静かに言葉をつづけた。
 「あの子はねえ、まだあんなに幼い子供だというのに、変に自分を抑えてしまうところがあるんですよ。まったく、そんな必要など何もないのに。僕には、それがつらい」
 「はあ、」
 「実はねえ、僕には、いや、僕は少々体が弱くてねえ。どうやらそれを知っていて、あの子は何にも言わないんだが、それを気遣っているようなのですよ」
 「はあ、」
 私は不思議だった。彼はなぜ、こんな重たい話を見ず知らずの相手にするのだろうかと。だが、なんとなく彼の気持ちは判る気がした。彼もまた、形は違えども私と同じ父親なのだなあ、と思ったからだ。
 彼はさらに話をつづけた。
 「でも、僕は本当は、あの子にはずっと自分の夢を追いかけてほしいのですよ!何やらひた隠しにはしているが、どうやらいろいろな夢を持っているらしいのです。だのにあの子は、じっと一人で耐えて、いつも我慢をしているのですよ!だが、僕はこんな体だから、それを助けてやれる気がしない。愚か者なのだ。むしろ、妻にも娘にも、負担ばかりかけている。やはり、結婚など、するべきではなかったのかもしれない。あの時、彼女の言葉に甘えてしまった自分がはずかしい。」
 彼は自分を押し殺すようにそこまで言うと、急に口を堅く噛み締め、そして、その眼には涙が潤んでいた。
 「そんなことないですよ!絶対にない!そんなことを思ってはいけない!きっと、きっと、あなたの奥さんは、そんなあなたの優しさに気づいて、だからこそ強く惹かれたんだ!」
 自分で驚いた!無意識に叫んでいた。
 全然見知らぬ相手の、何の事情もしらない話に、私はまるで何者かに取りつかれたかのようにそう叫んでいた。
 彼は目を丸くして、だが、その後自分を取り戻していくように、徐々にその表情を緩めた。彼は恥ずかしそうに頭を掻いた。
 「いや、すみません。変な話を聞かせてしまって。僕はどうかしていたなあ。でもねえ、あなたを見かけた時、なにか通じるものを感じてしまって、あ、いや、お恥ずかしい」
 彼はそう言って、苦笑いを浮かべた。だが、私はそれを見て驚いた!そのちょっとした苦笑いを目撃して、そしてようやく気が付いた。
 それは、とても身近なものだった。
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 私は彼らと軽く挨拶を交わしたのち、ナルトを引っ張ってその公園を後にした。
 私はナルトに行き先を任せ、自分はぼんやりと歩みながら考えていた。そして、彼のあの寂しげな表情を思うたび、この胸が苦しくなった。
 しばらくして、ふと気づくと、私は自宅の前にいた。ナルトが家まで案内してくれたらしい。私はナルトの顔に無理やり自分の頬をこすり付け、今日の礼を言った。でもナルトの方は、とっても嫌そうだった。
 玄関をくぐると、私はまっすぐにリビングを目指した。やはり、妻は相変わらずそこに居てせっせっと洗濯物を畳んでいた。二男は彼女から少し離れたところにいてテレビゲームに夢中だった。
 「あら、お帰りなさい。随分と長かったじゃない。あれ?もしかして、ナルトをほったらかしで飲んでたの?」
 「えっ?」
 私がその言葉に怪訝な顔をすると、すぐにまた皮肉たっぷりな一言が返ってきた。
 「だって、あなた、目が真っ赤よ!」
 だが、私はそんなことなど気にせずに、黙ってソファーに腰を落ち着けた。そして帰りの道中で思いついた話を切り出した。
 「俊介もさあ、もう小学生になった訳だし、お前も少し、なにか自分のやりたいこと、やったらどう?いや、なに、土日とか、俺の休みのときには、坊主らの面倒ぐらい見るから、いや、ほんと」
 私の言葉に妻は怪訝な顔をした。しかし暫しのち、へらへらと笑った。
 「あなた何言ってんの?ナルトの面倒もろくに看られない人が、フン、まったく。主婦っていうのは土日だって、いろいろやらなきゃいけない用がたくさんあるのよ。あなたみたいに一日ぼんやりしてなんていられないんだから、もう、知ってんでしょ?」
 案の定、いつもの嫌味たっぷりな返答である。だが、今日の私はこんなことでは挫けないのである!
 「おまえ、ホントは、はじめっから犬を飼いたかったんじゃないの?黙ってたって、俺知ってたぜ!」
 「・・・・」
 妻の顔が一瞬固まり、そして動きが止まった。今がチャンス!と私は話をつづけた。
 「そういや、昔おまえ、ぬいぐるみ作りとか熱心にやってたじゃん。あれ、またやったら?あれだったら、ちょっした時間でも出来るんじゃないの?そうそう、結婚前くれたじゃん俺に。なんだか変なやつ。あれ、また作ってよ!」
 彼女は「はあ?」って顔をした。でも私は続けた。
 「そう、いつもいつも、そんな頑張らなくっても、いいって、俺は言ってんの。少しはさあ、こんな俺でも頼んなよ!だって、一応俺、こんなんでも、おまえの亭主なんだぜ。そうだろ?」
 その言葉に、彼女は狐にでも摘ままれたかのような顔をした。そしてようやく、まっすぐにこちらの方へ向き直り、私の顔をじっと見つめた。
 それは、まるで奇怪な生物でも発見したかのような眼であった。
 だが、それも当然かもしれない。
 思い返せば結婚以来、私は一度だって彼女を気遣う言葉など、かけたことがなかった。自分の本心を、心の中の気持ちを、伝えてこなかった。そうなんです。私は彼女に馴染めば馴染むほど、そうだ。彼女に甘えてた。甘えきっていた。
 でも不思議です。この女性は、そんな私をなんとなく許してくれてた。そんな人だった。だから、私にとって、彼女は掛け替えのない存在なのだろうと思うのです。
 「バカね!あたし、あなたを全然、いつも頼ってっるよ。判ってるでしょう。だから、あなたの休みの日には、いつも、ちゃんと休んでいてもらってる。のん気に、ゆっくりしてもらってる。あなたには、いつも好きにしててもらって、それでいいって、あたし思ってるよ。だってそうでしょう。あなたには、頑張ってもらわないと、一生懸命働いてくれないと、困るでしょう。いっぱいお金を稼いでもらわないと困るもの。あの子たちを、二人とも大学まで行かせるとしたら、すごくお金がかかるんだよ。だからね、あなたは、余計な心配いらないの!そんなこと考えている暇があったら、もつと、残業でもなんでもして、もっといっぱい働いてきて。会社でしかっり仕事をしてきてよ。判ってるでしょ?そんなこと」
 妻はそう言い終わると、さっさと畳み終わった洗濯物を一つに重ねて、己が胸に抱え込んだ。だが、私はその時見逃さなかった。
 そう!彼女の、あの、いつものちょっとした苦笑いを。

 彼女の父親のことは、私は知らない。一度も会うことはなかった。もう死んでたから。でも、私は確信している!
 あの、公園で出会った親子が、誰だったかを。

犬の散歩

残念ながら、僕はいい歳して未婚な上、母親も子供の頃に死んでいて、本当のところ夫婦がどんなものなのか全然知りません。
けれど、何気に妄想して書いてみました。

・・・まあ、この話は、単なる僕の願望です(苦笑!)

犬の散歩

妻に言われて、仕方なく出かけた犬の散歩。・・・けれど、何も思わず辿り着いた公園で、私は奇妙な出会いをした。 ・・・何気ない、ささやかな、ちょっとした夫婦愛のお話です。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-09-28

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