リバースゲーム#6

#6 戦友

 それは翌日の朝のことであった。その廃墟の医療施設で一晩ファムクスは00―Ⅰとアラルス達と一緒にいたと考えられる。三人ともまだ就寝中の様だ。その時のこと、一つの小型の通信機器が音を立てる。その音に気づきファムクスは出るのであった。
「…はい…。クリスト?え、今何処にいるかって?」その相手はクリストだったのであった。ファムクスはアラルスの近くにあったもう一つの通信機器を見て時間を見るのだった。その一方でクリストがファムクスに連絡していたのであった。
「ファムクス、一晩何処にいたんだ?」とクリスト。
 ― 否、流石に、アラルスのところで泊まっていた。なんて言えないよ…なあ…。―
と内心ファムクスはそう思うのであった。何故ファムクスがそう思うのかはさだかではない。するとクリストはため息をつきつつも口には出さずにこう思うのだった。
 ― ファムクス《また》アラルスのところで一晩泊まっていた…のか…。―と。ファムクスは冷静に答えようとするのだった。
「一晩、外にいたよ。何か外に出て寝たくなったからさ。」そう答えるとクリストのため息がはっきり聞こえてくるのだった。
「…。《また》、アラルスのところにいたのか…。」とファムクスは内心。
 ― や、やばい…、やっぱり、解っちゃった…? ―そして観念したのか、口を開くのであった。
「…、正直に言えばその通り…だ。クリスト何故わかったんだよ。」とクリストは口を開き答えるのであった。
「やはり、そうであった、か…。何かと私の感は当たることが多いんだよ。」と。
「それで?クリストが連絡してきたのって、《そういうことを言いに来たわけじゃない》よな?」ファムクスはその《本題の話》をクリストから聞き出すのだった。クリストも気を取り直して口を開くのであった。
「その《本題》なのだが…。急に《本部》から私に連絡が来て、ファムクスは留守だと言ったら《本部》の者がならばファムクスに伝えておいてくれと云って私に伝言を押し付けて行った。全く…、《例の事件》の情報を片づけなければならないというのに…。そのお前への伝言が、《《エーシル軍》による襲撃が開始されると予測したため、大至急、汝ら、クリスト=ルー=ブライン、ファムクス=ビースルフの両名に軍部待機を命ずる。》と伝えておくよう言われていてな。ファムクス休暇中だというのに済まないが本部に戻って来てはくれぬか?」とクリストはファムクスにそう伝えるのであった。ファムクスはとても気が進まなかった様子であった。
「ファムクス、行って来い。おそらく、私がここにいることを知れたか、それともただ単につぶしに来たのか…。解らぬが行って来い。」とアラルスはファムクスに声を掛けるのだった。だが、ファムクスは寝ている00―Ⅰの姿を見て気が進まぬ様子なのであった。アラルスはそれを察した様子で微笑むのであった。
「…、00―Ⅰのことだったら私がそう伝えておこう。だから行って来い。」とアラルスは言うのだった。ファムクスは安心するとクリストに話を戻すのであった。
「今、軍本部に向かおう。」と結論を返すのであった。
「ああ、よろしく頼むぞ、ファムクス。」とクリストは自分の小型の通信機器のボタンを一つ押すのであった。ファムクスも小型の通信機器のボタンを一つ押し切るのであった。アラルスはソファーに座っていたのを立ち上がるのであった。
「サンキュー、アラルス。休暇はいつも通り、三日ぐらいあると思ったんだけれどなあ…。」そうアラルスに感謝するとファムクスはブツブツと呟くのであった。
「いいよ。それに、任務であるのであれば仕方がないこと。だから行って来い。」とアラルスはファムクスにそういうのであった。
「アラルス…行ってきます…。」そう言い残しファムクスは廃墟の建物の部屋を出て行くのであった。その一方で魔が動き出すのであった。《リクア帝国》を滅ぼすため《大死神=エーシル》が同じ魔帝の兵に作戦及び指示を送るのであった。その《大死神=エーシル》という男は灰色の長い髪と右の目元には縦方向に走る稲妻の様な赤い傷跡と赤い瞳に悪しきオーラが漂う。そのエーシルに声を掛ける者は一人の女性なのであった。どうやらもめている様子なのであった。
「アラルスは貴方の《妹》なのでしょう!?何故貴方はあの子から何もかも奪うの?」とその一人の女が口論するのだった。
「そうまでしなくては、アレは戻ってこない。だから全てを奪ってまでも《連れ戻す》のみ。それに、あのファムクスとかいう獣人の男に、全てを打ち明けるようになったからだ。」そう言いその女から去ろうとしたのだった。
「あ、ちょっとエーシル!?」そう呼び止めるがエーシルの姿がなかった。その一方でアラルスの姿があった。そこは廃墟の病院でもともとから備え付けられていたのか台所へと立つ。その時、一人の少女が台所へと入ってくるのであった。
「あれ、ファムクスは?」そう眠い目をこすりながら00―Ⅰは尋ねる姿にアラルスは食材を切っている。
「急に仕事が入ったって言って朝早くから出ていったよ。」アラルスは答えると鍋の中へその切った食材を入れるのだった。
「えー、できればお見送りだけでもしたかったな…。」そう言いながら席へと着くのであった。アラルスは出来上がった料理をテーブルの上に置くというのだった。
「それは仕方がない。仕事であるのならな。」と。00―Ⅰは食器を取りに食器棚へと向かうのだった。
「次は、いつ帰ってくるの?」食器棚から食器を取り出しつつアラルスに00―Ⅰは尋ねるのであった。アラルスは作った料理を運び終わり残りの皿を取り出しテーブルの上に置きながら答えるのであった。
「さあ、私に聞かれても解らないよ。本人に聞かない限り、ね。」そう言い席へと着くのであった。その後から00―Ⅰが席に着くのだった。
「ねえ、アラルスはファムクスのことが好き?」と00―Ⅰに尋ねられるとアラルスは口に放り込んだ料理を喉に詰まらせてしまうのであった。アラルスは飲み物を飲むと口を開くのであった。
「何故、そのことを聞く?」とアラルスは少し落ち着かない様子で答えるのであった。
「《何となく》。アラルスにファムクスは気があるんだと思うの。」と00―Ⅰは返答。アラルスはふと00―Ⅰの言動に不信感を覚えるのだった。
「な、《何となく》って…、そういう理由なのに聞いたのか?」そう言い00―Ⅰは朝食を終えて何処かに行こうとするのだった。そのままアラルスは何も言わずに朝食を摂るのだった。一方でファムクスは《軍本部》へと待機しながらオフィスのソファーへと腰を掛けるのであった。
「落ち着いているか?ファムクス。」そうファムクスに声を掛ける者。ファムクスが顔を上げるとその者はクリストであった。
「クリスト?あ、ああ…。」と返答するファムクスについてクリストは口を開くのであった。
「その様子だと、とても落ち着いている様には見えぬが…?」そう笑いながらファムクスの表情を見て答えるのだった。
「そう…見たい…だな。」と何か考えている様子で答えるのだった。クリストはその様子を察するのだった。
「アラルスが心配、なのか?」と意地悪を言ってみるのであった。ファムクスはそう聞かれて何故か顔を赤らめながらファムクスは言うのであった。
「否、そ、そんなこと、それにっ、アラルスのことだ、何とかやっているよ。」と怪しくも否定するのであった。
「さて、どうだか…。《好き》なら《好き》だと言えばいいものの。」とクリストはファムクスにまた更に意地悪なことを言い始めるのであった。
「今は、警戒する時じゃないのかよ!?」とファムクス。そんなファムクスをお構いなしに言うのだった。
「まあまあ、お前もそろそろ守れる《女性―ヒト―》がいてもいいだろうよ、ファムクス。」とクリストは言うのであった。
「だ、だからっ《そういう関係》では無いって!!クリスト、何故そんなことになるんだよぉ!?」と何故か気持ちが混乱するのであった。クリストがそれを更に察する。
「まあまあ…、冗談だ。そんなことじゃ、お前、いつか戦場で隙を突かれるぞ。」そう言いその場を去ろうとするのだった。
「ど、何処に行く?」とファムクスは問うのだった。
「任務始まるまで、《例の事件》についての仕事さ。」返答し去って行とファムクスは後々そんなクリストが言った台詞が気になり始めるのであった。だがファムクスはそのことを認めはしなかった。
― そんなことじゃ、お前、いつか戦場で隙を突かれるぞ。 ―
と《そういう事》が《本当のこと》になってしまうと、想うのであった。その一方ではこの《リクア帝国》を狙う(魔帝国)が動き出したことは《リクア帝国の民》達と、《リクアを護る者達》は知らない。この先で何が起こるのか予想すらままならないでいる。そして《戦人―イクサビト―》は大切なものたちが散らばっていくことを知らないでいるのだった。



                                                                                                            End

リバースゲーム#6

リバースゲーム#6

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-09-25

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