未来との交信

その交信が、私の未来を大きく変える!?

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 私は今、とある秘密研究施設の一室にいる。
 いや、だからといって私自身は博士でも何でもない。ただの凡人だ。
 そう、私は単に、とある研究のための被験者として、バイトの募集に応募して、たまたま選ばられた。
 ・・・ただ、それだけだった。

 当初、この被験者募集の広告は何処か怪しくて、私はその参加の有無を深く悩んだ。
 けれど意を決し、イチかバチか挑戦してみたのだ。・・・いや、本当は金がなくて仕方なかく応じただけなのだが。
 ・・・だが、しかし、ここに来て、その実験内容を初めて知って、私は驚愕した!

 そう、この日、私は生まれて初めて『真の幸運』を手にしたのだ!!!

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 しかし思えば、かつての人生で、私の選択はことごとく失敗に終わっていた。
 学生時代は、テスト勉強で山を張ると、必ず覚えて来なかった内容ばかりが出題された。
 就職の時も、二社内定が取れて、悩み抜いて入った会社はすぐ倒産!行かなかった方の会社は、その後ヒット商品に恵まれ急成長!
 競馬場に行けば、迷って買わなかった方の馬は勝利して、買った馬券は必ず外れた。そして、一緒に行った同僚は、私の裏を読んではボロ儲けをしていたのである。

 ・・・どうなっているのだろう?

 勿論、株投資でも、悩んだ末に買った株は必ず下落。止めておいた株はその後に急上昇だ。
 その他、車選びも、住居選びも、女運も、結婚も、etc、etc、それ等すべての人生における選択が、皆失敗であった。

 一言でいうならば、考え抜いて実行したことが全て失敗に終わり、考えた挙句断念したことのほとんどが後悔する結果となったのだ。
 なんと、報われなすぎる人生であろうか!酷すぎる!

 ・・・まさに悲劇だ!!!

「・・・ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふっ!」

 だ~がっ、そんな馬鹿げた人生とも、今日でお別れだっ!
 なんと、明日からの私には、何の選択ミスもなくなるのである。
 まさに逆転人生!
 シンデレラストーリーの幕開けだ!

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 そう、その研究とは、いわゆるタイムマシーンの実験だったのだ。
 けれどカプセル型の宇宙船のようなマシーンに乗り込んで、過去や未来に出かけて行くなどというものではない。
 ・・・いや、もしそんな代物なら、危険が大きすぎて、この私は絶対に応じはしない。
 確かに未来を変えられる可能性はあっても、きっと失敗して、時空の狭間にでも放り出されるのがオチである。
 そんなこと絶対ゴメンだ!
 けれど、この実験では、その手の危険は皆無なのだ。
 そう、まるっきり安全なのだ。
 何の心配も不要だ。

 何故なら、なんと、私がするのは、自分に電話をかけるだけ。
 ・・・ただ、それだけ。

 つまり、未来の自分との交信なのである。

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 私の眼前にある、この電話。
 一見、単なる携帯電話だが、実は素晴らしい機能を備えているらしい。
 そう、未来の自分に向けて、電話をかけられる代物なのだ。そして、今回は十年後の自分にかけることになっている。
 しかしながら、その時、本当に未来の自分が電話に出るかには不安が残る。
 ・・・けれど、博士が言うには、
「今の自分が知っていることなので、きっと未来の自分は、この電話が来るのを待っているはずだから、大丈夫!」だというのだ。

 だが実は、その逆に、この時空を超越できる電話は、決して過去の自分には繋がらないらしい。
 ・・・というのも、
「もしこの電話を、現在の自分から昔の自分にかけても、今の自分には、その時電話に出た記憶がないのだから、その事実は成立しない。従って有り得ない」ということなのだ。

 少しややこしいが、つまりはタイムパラドックスが起きてしまうから、過去の歴史は変えられない。しかし、未来のことなら問題なく変えられる。
 つまり、未来から過去に向けて電話をかけることは論理的に問題ありだが、過去から未来に電話をする分には、何の矛盾も生じないから可能なのだということらしい。

 ・・・正直、私には、意味不明な世界の話だ。
 しかし、まあ、平たく言えば、『未来の自分は全てを承知している』ということなのだろう。
 ・・・でも、ということは、今私が、その電話で何を聞きたいかを、未来の自分はよくわかっているはずである。
 だから、未来の今頃、未来の私は、株式や経済の動向などをメモにして、しっかりと伝えられるように準備しているに違いないのだ!
 ・・・そう、だって、それは自分なのだから。

 もはや、大儲け間違いなしだ!十年後の私は、きっと億万長者になっていることだろう。
「・・・くくくくくくくくくっ!」
 笑いが止まらない。

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「では、お願いいたします」
 静まり返った室内で、博士の低い声が響いた。

 私は、震える手を必死で制御しながら、ゆっくりと受話器を手に取り耳にあてた。
 すると、己が鼓膜に、電話のコール音が静かに響いてきた。
 もはや私の心臓はバクバクで、初めて女の子の家に電話をかけた時の百倍くらい胸がドキドキだった。

『カチャッ』と小さな電気ノイズが響いた。
 そして、雑音の奥から、次第にはっきりとした声が聞こえてきた。
 ・・・そう、それは間違いなく、私自身の声だった。

「・・・バカヤローっ!!!なんで、こんな実験の被験者になったりしたんだ~っ!
 なんで、未来の自分なんかに電話をかけたりした~っ!
 おかげで、俺は、あの日から散々だったんだだぞ!!!
 ・・・もはや、俺の人生は真っ暗闇だ。夢も希望もありゃしない。
 ・・・ああ、十年前の俺は、なんて馬鹿だったんだ~っ、」

 未来の自分の言葉を耳にして、私の希望は、一瞬の内に絶望へと反転した。
 ・・・そして、心の奥で、ふと呟いた。

 「 ああ、やっぱりか。 」

                   完

未来との交信

まあ、余りによくあるネタですね。・・・同じような話があってもお許しを。

自分のダメ人生を振り返ってたら、ふと思いついたネタです。・・・汗!

未来との交信

何気なく引き受けたバイト。それは、とある研究の被験者になることだった。 そして、その研究施設の実験が、その、失敗だらけの男の人生を、いまバラ色に変える・・・のか?

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • SF
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-09-25

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