喪失
人間の寿命の在り方を覆す存在、花柄工作は何の為に生まれて来たのか
朝昼晩と顔が変わる
花柄工作、推定年齢25歳は、一日以上、仕事場にいたことがない
朝にはさわやかな青年、昼には落ち着きのある中高年、夜には、老人と、一日で、一生の時間を過ごして、翌日には顔も変わっているのである
成人してからの彼は、毎日が一生の繰り返し、とんでもない速さで老いて行くので、仕事を覚えるのもとんでもなく速かった
一度、雇ってくれた工場では、数秒のうちに仕事を覚え、難しい仕事をいとも簡単に覚えつつ容貌も激変する彼を気味悪がった社長が保健所送りにした翌日、老いていた彼は別の若者になって保健所を後にするのであった
工作は、人が一生がかりで経験する物事を一日で体験就労する能力があり、彼の記憶に残り得た経験は翌日の人生に貢献する事も有ったが大概、意味を見いだせず、
ちぎり捨てる紙の様に、記憶の中に整理されずに散らばるばかりであった
喪失