この腕の中の狂喜
この小説には一部同性愛に関する表現が出てきますので苦手な方にはお薦めできません。
複雑に絡み合う人間模様がテーマです。
<登場人物>
アキ…マヤの元同級生。事故で記憶を失う。大学院生。
マヤ…アキの元同級生。恭一の彼女。現役保育士。
恭一…マヤの彼氏。現役看護士。
ハルヤ…恭一の弟。大学院生。
マナミ…マヤの妹。ハルヤが好き。大学生。
おわりのはじまり
「次の方、どうぞ」
短めのノックの後に続いて開く扉の音。
コッコッと控えめなパンプスの音が響き、診察室へと二人の若い女性が入って来た。
「今日は、どうされました」
医師は事務的な口調で来訪の目的を尋ねる。
物言わぬ、車椅子の女性。
しかしよく見るとその女性は白い天井を見つめながら、魚のようにぱくぱくと口を動かしていた。
車椅子を押していたもう一人の女性がこう告げた。
「どうして、彼女がこんな風になってしまったのか診て欲しいんです」
まるで悲しそうに、壊れてしまった車椅子の主を見つめる。
そしてとても愛おしそうな眼差しで。
医者はゾッとするような違和感を覚えた。
この二人の異常な関係に。
電柱が、車が、木々が通り過ぎる。
窓に映るその残像たちを無表情に見つめる黒い瞳と、そこに影を作る長い睫毛。
その横顔をミラー越しに見つめる運転手はぼんやりと今日の出来事を反芻した。
ゼミの仲間たちとの飲み会の帰りだった。
免許の取り立てもあって自分自身浮かれていたのかもしれない。
何より彼女を送っている、という事実がより気分を高揚させていた。
「具合、大丈夫?」
静かな車内に響く男の声。
返事はない。その代わり、窓を見つめたまま傾く白い顎。
これは少し期待してもいいんじゃないだろうか、自然とハンドルを持つ手に力が入る。
慣れない飲み会で疲れていたのだろうか。
先に帰ると言い出した彼女を、唯一ノンアルコールだった自分が自宅まで送り届ける事になった。
白いワンピースに、黒いカーディガン。シンプルな服に身を包んだ彼女の顔はほんのりとピンク色に染まっていた。
レースがふんだんにあしらわれた裾から伸びた脚は、人形かと思うほど白くて綺麗で。
疼いた本能に急いで蓋をする。
「道、こっちであってるんだよね?」
「たぶん」
ようやく声がきけた。
学内でもまだ片手で数える程しか話したことは無くて。
友人を介してやっとこぎづけた願ってもないチャンス。
わかりやすすぎる自分の態度に向こうはとっくに気付いているかもしれない。
自宅まであとどれくらいだろうか。
逸る気持ちを抑え、安全運転を心がけているとふいに彼女が口を開く。
「お兄さん、いるんだっけ」
「え?ああ、うん」
危なかった。左折してきた対向車に注意を払いながら広い道へ出る。
窓の外を見つめたまま彼女はこう続けた。
「私、知ってるよ。あなたのお兄さんのこと」
「え……」
意識が彼女にそれた途端、耳をつんざくようなブレーキ音。
スローモーション再生のように視界がぐにゃりと歪んでいく。
自分の意志とは反対方向へ押し出されていく車体。
そこから景色は瞬く間に暗転した。
どれくらいそうしていただろうか。
ピーポーと言う聞き慣れた音と光が近づいてくる。
事故った、と自覚するまで相当の時間を要した。
ガラスの破片で額を切ったのだろうか。脈打つ血管と鈍い頭痛。
そういえば自分は一人で乗ってたんだっけ。
混濁する意識の中、はっとして助手席を見た。
そこには真っ白なスカートに赤い染みを作り、前方へと倒れこむ彼女の姿。
そこからまた記憶がぷつりと途切れた。
「ハルヤ!」
次に目覚めたのは、病室だった。
見覚えのある面子が四人。
父親と母親、兄とその彼女だった。
なんとか死なずに済んだようだ。
母親の話によると、幸い突っ込んできたトラックの運転手も軽症で、慰謝料その他諸々の費用はお互いの過失ということで相殺となったらしい。
確か、その夜は飲み会の帰りで自分は誰かを送っていて。
「今……何日……」
「今日?8月27日だけど……」
母親は泣き腫らした真っ赤な目で質問に答える。
でも今はそんなことに構っている場合ではなかった。
事故の日から三日も経っている。
「隣にもう一人……女の子が乗ってて……」
「その子も無事だそうだよ」
父親が、今にも泣き崩れそうな母親の代わりに答える。
「よかった……」
ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、直後に待っていたのは無慈悲な現実だった。
「でもな、一つだけ、お前に言わなくちゃいけないことがあるんだが……」
痛む体を引きずりながら、案内された病室に入った途端絶句する。
「どうやら彼女は頭部を強く打っていて、記憶障害があるようなんです」
「うちの精神科医が検査したところ、5歳から後の記憶がなく、自分が事故に遭ったときのことも覚えていないんです」
「引き取りにきてもらおうと身元を調べたのですが、戸籍には彼女の父親の名前しかなくてね。その父親も今は行方不明で、親戚とも絶縁状態のようなんですよ」
医師の話などほとんど耳に入らず、その場にズルズルと崩れ落ちる。
「ハルヤ!」
兄に支えられて立っているのがやっとだった。
「それで、彼女はどうなるんでしょうか」
父親が緊張した面持ちで医師を見る。
「とりあえず、記憶が戻るまでは病院に通っていただく事になるでしょう。その他の費用などはまた後ほど相談させていただくということで……」
医師が淡々と説明を続ける中、また驚くべき事実が発覚する。
「あ……き?」
痛々しい包帯を頭に巻いたベッドの主に向けて、搾り出すように言葉を発したのは兄の彼女だった。
「すみません、彼女の本名は」
「岡崎亜樹さんです。ご存知なんですか」
「はい……なんで……アキが……。こんなとこで会うなんて……」
思ってもない二人の再会だった。
被検体Aの狂気
「せまいけど、気にせずくつろいでね」
そういってマヤは自分とそう歳の変わらない女性の頭を優しく撫でた。
「悪いな、マヤ。うちの弟のせいで……」
「いいって! ちょうどよかったよ、私がアキと同級生で」
一ヶ月後、退院したアキはマヤが預かることになった。
流石に加害者の家で預かるのはお互いの精神衛生上よくないと思い、彼女の同級生であるマヤが「私が預かりましょうか」と申し出た。
もしかしたら、マヤといれば記憶が戻るかもしれない。
そんな淡い期待を抱いて、彼女の言葉に甘える事にした。
恭一にとってマヤは自慢の恋人だった。
料理も出来るし、気が利くし、何より現役保育士だから面倒見が良い。恭一の方が年上だが、何でも頼れる姉御みたいな存在だった。
同時に、関係のない彼女を巻き込んでいるというこの状況に申し訳無い気持ちでいっぱいだった。
「それじゃ、何かあったら連絡して。俺も出来ることは手伝うから」
「ありがとう。それじゃあ」
いつもならこのままマヤの家で夕飯をご馳走になるか泊まっていくパターンが多いのだが、何分「5歳」のアキがいるからそれもできない。
病院を出たときからマヤのスカートの裾を掴んで離さないアキが恭一を玄関まで見送る。
純粋無垢な子供のような目で
「きょういちおにいちゃんばいばい!」
と手を振った。
恭一はそんなアキを何処か複雑な思いで見つめ
「見送りありがとな。バイバイ」
とマヤがしたようにぎこちない手でアキの頭を撫でアパートを後にした。
アキはマヤにとって自慢の同級生だった。
入学当初からその美貌で沢山の人を惹きつけていた。
同クラスで席が近かったアキは、自然と彼女と行動を共にするようになった。
いつしか自他共に認める「親友」になっていた。
アキは、何人もの男子生徒から告白されていたけれど、誰とも付き合おうとはしなかった。
むしろ何処か毛嫌いしているようにも見えた。
その理由を聞いてみると
「汚いから」
としか言わなかった。
高校2年生の夏休み。
気の合う男友達のユウキとマヤとアキの三人でよくつるんで遊ぶようになった。
この頃が一番楽しかった。
マヤはひそかにユウキに恋心を抱いていた。
最初は友達の関係でよかったが日に日にその思いは強くなり、ユウキに告白したいと思うようになった。
とうとう隠し切れないと思ったマヤはアキにそれを打ち明けた。
「応援するよ」と彼女は笑って言ってくれた。
それなのに。
ある日の放課後、マヤは委員会が終わると一目散に二人が待つ教室へと走った。
「遅くなってごめん!」
勢いよくドアを開けた瞬間、マヤが見たものは重なり合う二人の唇だった。
「あ……」
ばつの悪そうに、自分を見るユウキの顔が如実にそれを物語っていた。
ユウキはアキが好きだったのだ。
それからユウキは二人の前に現れなくなった。
アキとも気まずいまま時が過ぎ、卒業を迎えることになった。
アキは大学へ、マヤは専門学校へ。二人とも別々の進路へ進むことになった。
それからアキとは音信不通となってしまった。
心のどこかでは、アキのことが気になってしょうがなかった。
しかし彼女が何処に住んでいるか、アキは携帯をもっていなかったから連絡手段もわからなかった。
そしてマヤは気付いた。
アキのことを何も知らないということに。
被検体Bの狂気
恭一は黙っていた。実は事故より前にアキと出会っていたことを。
「この間、可愛い子入ってきたんだって」
地元の看護学校を卒業し、当時研修生になりたてだった恭一は、日々の激務で忙殺されていた。
そんな折、同期である柳原からこの病院に有名ティーンズ誌の読者モデルが入院するとの情報が入ってきた。
「で?それが何?」
「はあ?お前よく、辛気臭い婆さんしかいないようなとこでそんなこと言ってられるな」
田舎の小さな病院だったから滅多に若い人は来なかった。
柳原は白けきった表情で恭一を見た。
正直今は、可愛い女の子よりも覚えることがいっぱいでそれどころではなかった。
「見に行くからお前も来いよ」
「いや俺は別に……」
「午後は何も無いだろ?ならちょうどいいじゃん。付き合えよ」
一方的に約束を取り付けられ、同僚はさっさと午後の診察に行ってしまった。
「ほらほらあの子。めっちゃ可愛くない?」
確かに顔は可愛いが、細すぎる。腕も脚もガリガリに痩せているし、ちゃんと食べているのか心配な程だ。
そして身体中至る所に巻かれた包帯。何か事故にでも遭ったのだろうか。
「仕事しろ」
診察室の前で雑誌を読みながら順番を待っている彼女を、遠くの壁から覗き見している柳原を小突く。
「次の方どうぞー」
名前を呼ばれて診察室に入っていくと、10分もしないうちに彼女が出てきた。
こちらの方へ彼女が歩いてくると、柳原が満面の笑顔で挨拶する。
「こんにちは!」
「……こんにちは」
無愛想に彼を一瞥し、病棟へと戻っていった。
「なんか、感じ悪くね?」
「いや?アリだな俺は。今流行りのツンデレ?みたいな」
「馬鹿か」
彼女の第一印象はこんなものだった。
そう、あのときまでは。
「あれ、柳原さんは?」
ホワイトボードに同期のネームプレートが見つからない。今日は欠勤だろうか。
「ああ彼なら、クビになったわよ」
忌々しそうに告げる先輩。
「え……何で……」
「患者に手ェ出したのよ。まったくこんな忙しいのに……」
これだから若いやつは、と先輩はブツブツと何かぼやいていた。
当直中の出来事だったらしい。
他にも数名いたが、例の読者モデルに呼び出され柳原が一目散に彼女の病室へ飛んでいった。
そのときにわいせつな行為をされた、と彼女が担当医師に訴えたのだ。
目撃者はいなかったが、それが柳原よりも先に院長の耳に入り、辞令が下った。
何度か院内で彼女と柳原が接触しているのを見かけたが、柳原がそんな事をするような人間にはみえなかった。
一見軽そうでも、プライベートと仕事はきっちり分けるタイプだった。
それとも、人生を棒に振ってまで彼女に対して真剣に想いを寄せていたというのだろうか。
その夜、柳原からメールがあった。
「俺はやってない。あの子に胸が痛いから触って欲しいって頼まれたんだ。
本当に俺が襲ったんじゃない。お前は信じてくれるよな」
メールは返信しなかった。
柳原の言った事が本当なのか、彼女が言った事が本当なのか自分では判断できなかったからだ。
真実はわからないまま、柳原が病院に姿を現さなくなったある日の事。
「退院おめでとう、アキちゃん」
担当医師は抱えきれないほどの大きな花束を彼女に手渡し、両肩に手を置いた。
「もう二度と、自分を傷つけるような真似はしちゃ駄目だよ?」
「はい。もうしません。長い間お世話になりました」
担当医師は院長の息子で独身だった。しかしその肩書きをもってしても、その粘着質な性格と容姿でなかなか相手が見つからなかった。
何度も名残惜しそうに彼女の手を握っては「さみしいなあ」と呟く。
「あ、そうだ。アキちゃんが行きたがっていた映画のチケットとっといたから! 今度一緒に行こうね!」
「楽しみにしてます」
そう笑う彼女は初対面のときとは別人のように、「素直ないい子」だった。
やっと担当医師が部屋から出ていったとき、隣の患者の診察をしていた自分にははっきりとそれが聞き取れた。
「しねよ」
背筋が凍りつくような冷たい声で、何度も何度もアルコール入りのティッシュで手をふき取っていた。
そこで確信してしまった。柳原は彼女にはめられたのだという事に。
被検体Cの狂気
「ハルヤ、最近元気ないよね」
ふいに声をかけられ、我に返る。
そこには人工的な黒い睫をしばたたかせ、自分の顔を覗きこむ彼女の姿があった。
「ごめん、ちょっと考え事してて」
「そう?ならいーけど」
心配そうに見つめながらも食事を再開する。
午前中の講義が終わり、自宅へ帰る途中だった。
彼女から
「暇なら一緒にごはん食べようよ」
と絵文字交じりのメールがあり、最寄りのカフェで一緒に昼食をとることになった。
「ハルヤは悪くないよ。運転中に話しかけたあの女も悪いんだし、死人が出てないだけマシだって」
だから元気出して、と励まされる。
「……うん」
「そんなことより、今からうち来ない?前ハルヤが見たがってたDVD借りたんだけど」
今日親いないし見にきなよ!と誘われる。
その時に鼻を掠めた甘ったるい香水のニオイと、大きく開いたシャツから覗く胸元。
正直今はそんな気分にはなれなかった。
しかし、その誘いを断る理由も今の自分には思いつかなかった。
「もう帰るの?」
「ごめん、明日早いから」
シーツに包まりながらベッドに横たわる彼女を尻目に衣服を整える。
終電に間に合うか微妙だったが、なんとなく此処には長居してはいけないような気がした。
「わたしが、ハルヤのずっとそばにいるから」
同じソファーに腰掛けながら、しなだれかかる彼女。
女なんて皆汚い。
そして、それをわかっていながら受け入れてしまう自分も。
昔から女関係には不自由しなかった。
真面目で正義感が強くて、優しい兄。
母親の連れ子だった自分とは似ても似つかなかった。
両親はそんな兄ばかりを可愛がり優遇するようになった。
高校生になって毎日のように出会い系で知り合った女たちと遊ぶようになった。
事が終わっても、いつもよくわからない感情に胸を支配されていた。
馬鹿な事をしているともっと早くに気付くべきだった。
帰りの電車内で着信があった。
ポケットから取り出し、ディスプレイに映っていたのは、「マヤ」の二文字だった。
被検体Dの狂気
「晴れたね。絶好の温泉日和だ」
運転席に座りながら機嫌よくそう言い放つ恭一に、助手席のマヤと後部座席のハルヤとマナミは、自然と目を雲一つ無い快晴の青い空へと向けた。
秋晴れの10月下旬、4人はとある山奥の温泉旅館へ車で向かっていた。
知り合いからペア旅行宿泊券を二枚貰った恭一はマヤと弟、そしてマヤの妹のマナミを誘った。
「わあ、広ーい!」
旅館に着くと、女将に案内されたのは近くの山を一望できる見晴らしの良い部屋。
一応、ペア旅行なので割り当てられた部屋が二つあったが、寝る時以外はこの部屋で4人で過ごすことにした。
「ハルヤ、お土産屋いこ?」
マナミに腕を引っ張られ、部屋を出て行くハルヤ。
二人が出て行ったのを確認し、おもむろに恭一が口を開いた。
「アキは、連れて来なくてよかったのか」
まるで自分に問いかけるように、紅葉の始まった山の景観を眺めていたマヤに言う。
「やっぱり、二人を会わせるのはまだまずいし。それに……」
「それに?」
「久しぶりに、ゆっくりしたかったしね」
とマヤは笑顔で答えた。
恭一はマヤの言葉にホッとし、「そっか」と同じく絶景を眺めた。
「これ、おそろいで買おうよ!」
有名なご当地キャラクターのキーホルダーを手に取りハルヤに見せる。
しかし彼が見ていたのは別のもの。
いかにも子供が喜びそうなクマのぬいぐるみだった。
誰にあげるのか敏感に察したマナミは、ハルヤの腕を引っ張り無理やりレジへ行く。四人分のキーホルダーを購入しさっさと店を出て行った。
山の幸をふんだんに使った豪勢な夕食を堪能した後、寝てしまったマナミを置いて3人は温泉へ向かった。
どうやら、酔いつぶれてしまったらしい。
無理やり起こすのもどうかと思い、マナミに「温泉へ行ってきます」と置手紙を残した。
一時間後、何も知らずに目を覚ましたマナミは、置手紙をみてあわてて起き上がった。
その時、視界に入ったのはテーブルに置きっぱなしのハルヤの携帯電話。
マナミはそれに手を伸ばす。
いけないと思いつつも、好奇心には勝てずメールフォルダを開いて、自分以外に女の影がないか探していく。
友人、家族、自分の名前が続く中、そこに「マヤ」の二文字を発見した。
日付は2010年、まだアキが事故に遭う前のものだった。
何故だか酷く胸がざわついた。ただの世間話かもしれないのに。
おそるおそる中身を開くと、驚きのあまり手元からそれを落としてしまった。
「温泉、楽しかったね。また、二人で会えるかな。」
何を意味しているのか、瞬時にマナミは理解してしまった。
ハルヤとマナミが出会ったのは、数ヶ月前。
その辺にいるモデルよりも、顔の整ったハルヤは学部内の女子たちの注目の的だった。
自分もその中の一人でしかなかった。
そんな矢先、ハルヤの事故を知る。
マナミの姉が、恭一の彼女だったからだ。
アキを姉が預かるようになってから、頻繁にハルヤとメールするようになった。
優越感だった。他の誰よりもハルヤに近い人間としてハルヤのそばにいられるという事が。
家にも何度か誘い、ハルヤと関係を持ったこともある。
それに身内のみの温泉旅行にだって誘われた。
自分は、自他共に認めるハルヤの「彼女」だと思っていた。
しかし、それよりも既にマヤとハルヤは「二人」だけで「温泉」に行っている。
知ってはいけない事実を知ってしまった為か、体が小刻みに震え出す。
ふと廊下から足音が聞こえ、急いで携帯を元の位置に戻し座布団へ寝転がる。
「ただいまー」
一足先に温泉から帰ってきた恭一は、出て行ったときと同じように横になっているマナミを本気で心配し、隣室へ運ぶ事にした。
彼女を下ろし布団に横にした途端、マナミに浴衣の裾を掴まれる。
「大丈夫?大分酔ってたみたいだけど」
寝ているとばかり思っていた恭一は吃驚したが、再び布団を首元まで掛けなおした。
「恭一さんって、姉と出会ったのって、いつですっけ」
「え?」
何でそんな事聞くの、と質問を質問で返しそうになったが相手の有無を言わせぬ剣幕に誤魔化せるような空気ではなかった。
「えっと、マヤの担当する園児がうちの病院に来たとき……かな。それでよく相談したりするうちに仲良くなって……」
改めて言うのは恥ずかしかった。
だが相手はまだ聞きたいことがあると言わんばかりに浴衣を握る力を強める。
「つきあうようになったのは?」
「多分、一昨年の秋ごろだったかな。こっちから告白してそんでOKもらって……今に至るカンジだけど」
「そうですか。ありがとうございます」
もう用はないとばかりに恭一の腕を開放し、マナミは布団を被った。
「いきなり、どうしたの?」
「いえ、二人ともお似合いだなぁ、と思って」
嫌味ともとれるお世辞に恭一は気付かずありがとう、と礼を言い静かに部屋を出た。
被っていた布団から顔を出し、マナミは考えた。
マヤは恭一とつきあっているときに、二股をかけていたのだ。
しかも相手は恭一の弟だ。もし恭一がこれを知ったらどう思うだろう。
同じ女として、いや同じ女だからこそこんな不貞行為は許せなかった。
そして、自分の愛する男を姉に寝取られていたということを。
沸々と湧き上がる憎悪を抑えるように、マナミは目を閉じた。
被検体Eの狂気
お湯がちゃぷん、と音を立てる。
生暖かい温度に思考ごと溶けてしまいそうだった。
風呂が好きだった。汚れた体を清め、何もかも忘れてしまえるからだ。
でもどんなに洗っても、どんなに温まろうとも胸に広がる空虚を埋める事はできなかった。
新しい父親は酒乱だった。
母親は水商売で生活費、「父親」の娯楽費を稼いでいた。
実の父親は物心着く頃にはいなかった。
それから母が働き始め、いろんな男が家に出入りするうちにこの男が住みつくようになった。
大きな音がする日は大抵、その男が母親に乱暴しているときだった。
幼い自分にはどうすることもできずただじっとそれが終わるのを待つしかなかった。
そんな自分を母は心底疎ましく、憎らしく思っていたのだろう。
「どうして……私ばっかりこんな目に遭わなきゃならないの?
あんたが生れてきたせいで……あんたさえいなければ……」
母は泣いていた。
いつしか母は家に帰らなくなった。
大きな荷物を持って、出て行ってしまった。
家には自分と血の繋がらない父親の二人だけとなった。
つまり、自分は母親に捨てられたのだ。
まだ学生だった自分は、アルバイトを掛け持ちしながら何とか生計を立てていた。
コンビニ、新聞配達、引越し、日雇い、モデル、何でもやった。
しかし全て父親の懐に入り、すぐに底をついた。
そんな生活が続いたある夜、いつも隣の居間で酒を飲んで寝ていた父親が、自分の部屋へとやってきた。
布団に忍び込み、服を脱がされそのまま母と同じように乱暴された。
狂っていると思った。
この世界もこの男も自分もみんな消えてしまえば良いと思った。
何日もそれが続き、耐え切れなくなって台所にあった包丁を持ちだした。
酔いから醒めた顔で「殺さないでくれ」と懇願する彼。
ふりあげた包丁と断末魔の叫び声がせまい家に響き渡った。
気がついたら病院にいて、いつのまにか「父親」だった男は家からいなくなっていた。
「生れてこなければよかった」
母の言葉がいつまでも頭の中でこだましていた。
「おはよう! これ休んでた分の」
退院してからもバイトに明け暮れていた為学校にはほとんど行かなかった。
そんな自分に何も言わずにそっとノートを差し出す。
マヤは、数少ない友人の一人だった。
学校を休む理由も、傷だらけになった自分の体に関しても何も触れてこなかった。
気付けばいつも隣にいた。
「なんで、私のとこにくるの?」
マヤの周りには沢山友達がいた。でも自分が学校にいる日は決まって一緒にいる。
一度疑問に思って尋ねた。
「アキが綺麗だから」
入学式で一目ぼれしたのだ、と言う。
へらへら笑いながら、いつも自分の元へやってくるマヤ。
何も知らないくせに。おせっかい、お人好し、偽善者。
心の中でそう罵るけれど、そんな自分とは正反対のマヤに惹かれていたのかもしれない。
委員会で忙しいマヤをユウキと二人で待っていたある日の放課後。
本当は嫌だった。二人で帰りたかった。
だけどマヤはユウキが好きだから。
「応援する」と嘘をついて、3人でいることを選んだ。
携帯を開いてマヤに電話しようかと悩んでいるとき、ユウキが椅子から立ちあがった。
「あの、話があるんだけど」
「何?」
画面を見ながら適当に返事をする。
マヤがいないときは本当に素っ気無いと我ながら思う。
「アキが好きだ」
メール画面に切り替え、あと何時で終わりそうか打っている最中の事だった。
「だからそれが何?」
「それがって、気付いてたでしょ?てっきりアキも同じ気持ちだと思って…………」
「あなたといたのは、あなたの為じゃない。マヤの為だ。マヤが好きじゃなきゃ、あなたといる理由はない」
「男」という生物が嫌いだった。
父親を思い出すからだ。欲望にまみれ乱暴で自分勝手な醜悪な生き物。
でも一番汚いのは、そんな男に汚されてしまった自分だ。
「何だよそれ……。そんな理由じゃ納得できるわけないだろっ!」
「痛っ!」
強い力で肩を掴んできたユウキにそのまま唇を塞がれてしまう。
そこへ、運悪くマヤが戻ってきてしまった。
「アキ……」
アキに見られたショックで言葉が出てこなかった。
同時に、これでマヤをユウキにとられなくて済む、という邪な打算もあったのかもしれない。
「ごめん、私先帰るね」
その顔にははっきりと「裏切り者」と書かれてあった。
そのままいなくなったマヤが、家を出て行った母親の姿と重なった。
壊れ行くものたち
午後3時。約束の時間よりも30分も前に待ち合わせ場所に到着してしまった。
「すみません、遅れちゃって」
「ううん、私もさっき着いたから」
嘘を吐く。本当はこの日が楽しみで仕方がなかった。
ハルヤとこういう関係になったのは、恭一と出会う前。
大学の教育学部に通うハルヤは保育園へボランティアに来ていた。
「イケメン君が入ってきて仕事がはかどるわ」
と年配の保育士たちは色めき立っていたが、自分は何も期待していなかった。
大学生のボランティアなんて就職時の点数稼ぎがその大半だった。
真面目に仕事する人間は少ないし子供の相手と手抜きされてしまうのがマヤは許せなかった。
しかし予想に反してハルヤは雑用を嫌がらないでやってくれるし、子供たちの面倒見もよかった。
「マヤさん!」
園児が昼寝している最中に呼ばれ目を覚ます。ぐずる園児たちを寝かせつけているうちにいつの間にか居眠りしていたらしい。
ハルヤの横でトイレに行きたくてたまらなそうな子が彼のエプロンを掴みもじもじしていた。
「ああ、ごめんね。今から連れてくから」
慌てて起き上がるとハルヤはくすくすと笑っている。
何がそんなに可笑しいのか、と思っているとそっと髪に触れられる。
「寝癖、ついてますよ」
指摘するように、外に跳ねた毛を摘まれマヤは赤面する。
「案外可愛いところもあるんですね」
好きですよ、そういうところ。
不意打ちだった。
昼寝する園児には聞こえないように声を抑えて言う彼に、しばらくマヤは見惚れたまま動けなかった。
「ハルヤ君の夢って、何?」
ベッドに寝そべりながら、同じく隣で眠る彼に聞く。
柔和な顔とは裏腹に、ほどよく引き締まった体。間接照明のオレンジに染まった肢体が妙に艶かしくて無意識に鼓動が跳ねる。
「まだわからない。特にやりたいこともないし」
でも子供は可愛いから保育士とかいいかもね、と笑った。
「そんな簡単な仕事じゃないよ」
でももしかしたら同じ職場で働けるかもしれない、と思うと期待に胸が膨らんでしまう。
「そしたらもっと一緒にいられるね」
戯れに触れる唇に、再び湧き上がる熱。
溺れるように逢瀬を重ね、溺れるように体を重ねる。
その度に彼に溺れていく自分自身を止める事などできなかった。
ボランティアが終わり、いつしかハルヤとは会わなくなってしまった。
メールをしても返事がないし、電話をしても繋がらなくなってしまった。
そして、仕事上で知り合った恭一と頻繁に会うようになった。
寂しかった。その心の溝を埋めてくれるなら誰でも良かった。
「よかったら、うち来る?」
言われた意味を理解し、小さく頷いた。
彼のことを忘れてしまいたかった。
運転する車中で他愛ない世間話をしながらも、意識は何処か上の空だった。
彼に会いたい。不実だとはわかっているが、マヤはいまだに彼のことが忘れられなかった。
「あれ、アイツ帰ってたのか」
玄関に男物のスニーカーがあった。
向かって右の階段から降りてきた人物に、マヤは大きく目を見開く。
「ごめん。先に紹介する。これうちの弟の……」
会いたくて仕方なくて、頭の中で何度も思い描いていた彼だったからだ。
「久しぶりだね、こうやって二人で会うの」
久々の逢瀬にマヤは自然と顔が綻んでしまう。
ハルヤが事故に遭ったと恭一から聞いたときは、気が気ではなかった。
病院に着いてから、無事だと聞いてホッとしたのも束の間アキと再会した。
しかし、吃驚したのはアキとの再会だけではない。
「ハルヤの助手席にアキが乗っていた」ということに嫉妬してしまっている自分にだった。
「預かりたい」と言ったのはハルヤの為でもあるが、自分の為でもあった。
アキにハルヤを渡したくなかったからだ。
事故のこともハルヤのことも思い出させたくなんてなかった。
一生「アキ」に囚われて生きていく彼の姿を見たくなんてなかった。
もしかしたら、本当は「アキ」に囚われているのは自分の方かもしれない。
なんて卑怯なんだろう、と自嘲した。
しかし、そんなマヤの気持ちに対して彼は何処か浮かない表情だった。
「もう、やめませんか。こういうの」
「え……」
カチャン、手に持っていたカップを置く。
艶々の淡いピンク色のリップグロスはこの日の為におろしたものだった。
彼の好きそうな清楚な白いワンピースも、爪も髪も。
全て台無しになりそうな気配に、マヤは取り繕うように笑顔を浮かべる。
「どうしたの?急に……」
「兄には申し訳ないと思っています。そしてあなたにも…………」
下を向いたまま目を合わそうとしない彼に、平静さを失いそうになる。
「私は後悔していない。だって、あの時、好きだって言ってくれたじゃない。
ハルヤ君は悪くないから、私が……」
「ごめんなさい」
もうあなたとは会えません。
最後の言葉は耳に入ってこなかった。
わかったのは、領収書を持ったまま彼が席を立ってしまったという事だけだった。
雨が降ってきた。
急ぎ足で人々が通り過ぎていく。
止むまで待てばいいのに、立ち止まってしまうのがこわかった。
足が向かった先は、自分の家ではなく恭一のマンションだった。
ピンポーンとチャイムを鳴らす。すると程なくして扉が開いた。
「マヤ?どうしてここに」
予想外の来訪者に恭一は驚く。
「ごめん。近くまできたから」
「そう……」
恭一はびしょ濡れのマヤを見たまま暫く無言でいた。
いつもと違う彼の様子に不思議に思ったマヤは視線を下にずらした。
そこには女物のパンプスがあった。
「誰か……きてるの?」
「……お前には関係ないだろ」
冷たい言葉に耳を疑った。
「俺が誰といようが何をしようが、お前にはもう関係ない。ハルヤとお前がそうしていたように」
そこには自分を好きでいてくれる恭一はなく、心から軽蔑しきった目で自分を見下す彼の姿だった。
「もう二度と家には来ないでくれ」
扉が閉まった。
マヤはその場に立ち尽くした。
雨の音がすべてを掻き消すように、強く降り注いでいた。
「おかえりー」
傘を持っていかなったマヤを心配していたアキはドアの開く音に安堵した。
案の定マヤは濡れ鼠になって帰ってきた。
「大丈夫?タオルもってくるね」
ランドリーから数枚タオルを持ってきて、マヤの顔についた水滴を拭きとっていく。
その際に、マヤの鼻を掠める柔軟剤の香り。
恭一がいつも好きだと言っていた匂いだ。
「……ぅっ……」
マヤは泣いた。困惑するアキを余所に、次々と溢れ出す嗚咽。
大人の威厳など微塵もなかった。
「皆……みんな……私の前からいなくなる……どうして、私ばっかり……なんで……私がこんな目に遭わなくちゃいけないの?私が悪いから?私がはっきりしないから?アキも……恭一も……みんな……みんな……離れていく……みんな……きえちゃえばいいのに……わたしなんか」
いなくなってしまえばいいのに。
マヤは蹲り泣き続けた。
アキはそんなマヤをそっと抱きしめる。
「マヤは悪くないよ」
はっとしてアキを見る。そこにいたのは「五歳」のアキではなく、自分と同じ歳に成長した「アキ」だった。
いつから記憶が戻っていたのか。
今日一日でいろんな事があり過ぎて、マヤの頭では処理しきれなかった。
雨で冷え切った自分の体を温めるアキの腕に、マヤはそれを放棄した。
「復讐しよう。みんな……マヤを傷つけるもの全て……」
首筋へとアキの唇が降りてくる。
すべて忘れてしまえば良い。
悪魔の囁きにマヤは身を委ねた。
マナミから一通のメールが届いた。
「二人の関係、恭一さんにばらすから。この先も隠れて会うならね」
これ以上自分のせいで周りの人間が壊れてしまうのが怖かった。
腹違いといえども、そんな自分を本当の弟のように接してくれた兄をハルヤは心から慕っていた。
そんな兄を裏切り続けてまで会っていたのはどうしてだろう。
本当は兄を憎んでいたのだろうか。それとも。
傷ついたように笑うマヤの顔がいつまでもハルヤの頭から離れなかった。
恭一の家でマナミはコーヒーを飲みながら受信フォルダを開く。
「マヤにはもう会わない。だから兄さんには言わないでくれ」
ハルヤからの返信にほくそ笑む。
「これで満足か」
冷たい目で見下ろす恭一に、マナミは笑顔を消した。
「まだだよ。こんなんじゃ、足りない」
徐に服を脱ぎだすマナミを無表情で見つめる恭一。
マナミを裏切ったマヤ。
恭一を裏切ったハルヤ。
マナミは二人に復讐しようと思った。
その為には何よりもこの男の協力が必要だと思った。
同じ痛みを共有する恭一に。
全てを話し終えたときに、インターホンが鳴った。
予想通りマヤと恭一は別れた。
だがこんなものではマナミの心に湧いた憎悪は消えなかった。
「復讐して。あの人が私たちにやったことと同じように」
恭一の首に腕を回し、耳元で囁く。
一方、恭一は酷く冷静だった。
本当は気付いていた。マヤが浮気している事を。
でも何処かで嘘だと思いたかった。
だが、今日マヤが家に訪ねてきた時にわかってしまったのだ。
心はハルヤに向いていたという事を。
自分はその身代わりでしかなかったという事を。
恭一は、誰かが描いた脚本を筋書き通りに演じている気がしてならなかった。
そんな自分に苛立ちをぶつけるように、恭一はマナミを抱いた。
それぞれの末路
「ありがとうございました」
診察が終わり、部屋を出て行く患者たち。
眉間に皺を寄せ難しそうな顔をする医師に、傍らにいた看護師は疑問に思う。
「さっきの患者さん、何か引っ掛かることでも?」
「うーん……たいしたことじゃないんだけどね」
ファイルから他の診察記録を取り出し、今しがた記入したものと見比べてみる。
「どうもこの間うちに来た患者と似ているような……」
そこには「市村 恭一」と書かれた患者の記録。
「確か、弟が自殺し、付き合っていた女性は行方不明……でしたよね」
看護師が思い出すように言う。
ただの偶然だろうか、と医師はぼんやり考えるが、あくまで「精神科医」としての職務だけをまっとうし患者の治療のみ専念しなければならない。これらは警察の仕事だろう。
しかし、一つ気になるのは。
「車椅子に座っていた彼女よりも、一緒にいた女性の方がもしかしたら……」
そこまで言って言葉を切る。
現代に生きる人々の心には何かしらの病を抱えているのだから。
「今日はいい天気だから、散歩しよっか」
こくんと頷く車椅子の主。
もうすぐクリスマスだからなのか、街は色とりどりの電飾で彩られていた。
「寒い?」
大きなツリーを前に立ち止まったアキは、小刻みに震えていたマヤを後ろからマフラーで包む。
「あったかいね」
その腕に抱いたのは「幸福」か「狂気」か。
その答えは誰も知らないし、知りえない。
この腕の中の狂喜
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
内容のクオリティの低さはどうあれ、完結できてよかったです。
この作品を作ろうとしたのは、自分の人生で何でもいいから何か作品を残したいと思った事がきっかけです。それでいろいろ検索していたらこの「星空文庫」さんがヒットしました。
それと最近、人間関係で修羅場があったので「ドロドロ」したのが書きたいなと思っていました。
この作品はあくまでフィクションであり、実在する、人物・地名・団体とは一切関係ありませんので、こんな人たちもいるんだなあ程度に思っていただければ幸いです。というかいたら怖いです。
お気づきかもしれませんが、「恭一」以外は名前がカタカナ表記なのはわざとです。
恭一は唯一、まともな人間として書きたかったからです。
最終的には壊れてしまいましたが、この中では多分一番まともだと思っています。
あとがきが長くなってしまいましたが、これからもいろんな「人間」を書けたらいいなあと思います。