メイク
ひらがな * えほんちょう *
あるところにぱっちりおめめで、かみはくるくるとまいていて、いろじろのかわいいおひめさまがいました。
おひめさまはそれはそれはえがおがにあい、だれにたいしてもやさしくせっするひとでした。
おひめさまのくには、しんかんせんがとおっていて、すかいつりーがあって、ふじさんがあって、うみにかこまれたくにでした。
あるとき、どうぶつたちがいいました。
ひめさまはだいじょうぶかしら?と。
おひめさまにはかぞくもいてともだちもいてこいびともいましたがほんとうのことをはなせるひとはだれも
いませんでした。しかしそれをおひめさまはおもったこともありませんでした。
まんげつのよる、このくにではせいだいなおまつりがおこなわれました。
おひめさまはそのひ、おひめさまとしてではなく、くにのひとにまぎれておまつりをたのしむことになりました。
おひめさまのめにとまったものは「こころのかがみ」という古いたてものでした。
やぬしのせつめいをきいてめのまえにあるかがみにじぶんをうつしたそのときです。
なぜかかのじょのかおはかなしくなりました。
そのかえりみち、ねずみがおひめさまにこえをかけました。
「ねえ、どうしてそんなかおをしているの?あなたはあかるいひとではありませんか」
いつもならえがおでせっするひめも、まるでなにもみえなかったようにとおりすぎました。
そのかえりみち、かえるがこえをかけました。
「ねえ、どうしてそんなかおをしている?あなたはかわいいからわらっていなくちゃ」
いつもならえがおでせっするひめも、まるでなにもみえなかったようにとおりすぎました。
そのかえりみり、ねこがこえをかけました。
「ねえ、どうしてそんなかおをしているの?あなたにはだいすきなかぞくがいるじゃありませんか」
いつもならえがおでせっするひめも、まるでなにもみえなかったようにとおりすぎました。
そのかえりみち、おおかみがこえをかけました。
「ねえ、どうしてそんなかおをしているの?あなたにはだいすきなこいびとがいるじゃないですか」
いつもならえがおでせっするひめも、そのときはこうこたえました。
「じゆうとはいったいなんでしょうね。わたしには、じゆうがありません。ただ、あるものにすがり、
それをまもっていくただのにんぎょうなんですもの。それがわたしのうまれたいみです」
このくにはかつておとこがしはいしておりました。ですが、ひめさまのだいにはおんなしか
うまれませんでした。もちろん、こいびとはあたらしいおうのこうほでした。
おまつりもそろそろおわりにちかづいてきたころ、ひとりのちいさなおんなのこがつきにてを
かざしていました。そのすがたをみて、ひめもまねをしてみました。
わたしだけがわかっていればいい
ふと、おもったことば
「ほら、あなたにすてきおはなしをしてあげましょうか」
ほら、わたしにはこんなにあいのあるものがたりをつむぐことができる。
ほんとうはわかっていた。わたしはひめであり、それいがいではないということを。
このくにをまもり、もはんでありつづけていかなくてはいけないことを。
おまつりでとおるあのおんなのこたちのえがおはわたしのえがおなんかよりもとてもとても
しあわせそうだったのだ。
「あなたのほんとうのかおはどれでしょうね。」
わたしのほんとうのかおは、、、
「とてもすてきなおはなしね。わたしおねえちゃんみたいになりたいわ」
わたしには、このえがおやぬくもりがある。
わたしにはかぞくがいる。
わたしはこのこたちをまもらなければいけない、わたしをみとめてくれるひともためにも。
さあきょうもいきますか。
かごのなかにとじこめられていることをじかくしなければわたしはしあわせなのですよ。
つくって、つくって、つくって、、、うそをついてもわたしはこのときをいきなければいけ
ないのですから。
メイク
おひめさまがでてくる童話が多いのですが、ほんとうはどんな気持ちなんだろうなあと思って書いてみました。
庶民がなかなかよい暮らしができなっか時代だからこそ身分の高いものに憧れたと思いますがそうでなければ
どうなのだろうと考えました。自分に合った場所を暮らしを知ってしまった以上、もとに戻ることはなかなか難しい
ですよね。それなら知らなかったほうがよかったと思うこともありますし、、、。
今回のおひめさまはある程度今の立場にも満足していて、それでいて納得しています。
新しい世界もみたいけど、おくにのためにがんばる前向きな子にしてみました。
おひめさまじゃなくて、一個人としてみてほしいという気持ちはどんな人にもあると思いますので少女に託してみました。